2010年11月アーカイブ

富山に講演で来たのですが、前後でいくつか雑談をしているうちに感じた地方におけるIT産業の印象を残しておきます。これは私が聞いた話が中心なので、真実とは違うかもしれないですが、ひとつの側面としてあることは間違いないでしょう。正直モヤモヤした気持ちは拭いきれない。

地方のソフトウェアベンダの仕事の多くは、当然ですが受託開発が殆どです。その案件も東京での案件がほぼ全てであり、大きめの企業システム構築が多いようです。オフショア開発のようなものであり、中国などがライバルになるのでは?という印象を持ったんですが、やはり言葉の壁もあるし、早めに確認して調整しながら作っていくためには、近くて日本人同士が良いということでした。その辺りで差別化されているのかもしれませんが、おそらくチャネルがすでにあるからというのが大きいでしょう。発注側にとっても今までのパートナー企業をやめてオフショアにするリスクは大きいでしょうから。

一方、発注側のユーザ企業の話。地場の大きめの企業は、内製化に向かっているらしい。大きめの企業であれば、まだシステム開発のニーズはあるらしく、開発案件が出ている状況ではあるが、それが内製でおこなうという流れ。中小企業の場合、5年以上前一昔前に作ったシステムを動かしている。部門ごとにバラバラに部門サーバを持っているような状況。すでにサーバもOSも古くなっていても、動くのだからそのまま動かしているらしい。けっこうな投資として5年前に作ったシステムが、うまく使いこなせずに、5年たって今になってようやく使いだしたという話もあるらしい。

クラウドの波は地方に届くのか。クラウドをどう捉えているかを聞いてみた。ユーザ企業にとっては、クラウドとは何でどんなメリットがあるのかがまだ理解できていない、ということだった。雑誌やセミナーなどで、クラウドの表面的なことはわかるが、それによって自分たちがどう嬉しいのかが見えてこない、ということでした。あえてクラウドとは何かを定義せずに話に出してみたところ、印象としては、AmazonEC2やWindowsAzureのようなIaaSのイメージで話をされていたので、地方におけるクラウドの認識はそうなのかもしれない。地方のユーザ企業は、中小であろうと、やっぱり「自分たちの会社は特別」ということをどこも考えていて、例外処理の固まりだというお約束の言葉もでました。こういった現状があれば、受託開発の市場はなくならない。

中小企業こそ、システムに多大な投資をするのでなく、安価なクラウドIaaSを使うなりして、本業のビジネスに投資する方が良いような気もするのですが、今時点で乗り換えるという選択肢はないようです。というのも、すでに稼働している状況で、戦略的にクラウドの活用をしようという自らの変化のためには、資金的にも人的にもコストがかかるため、それだけの動機付けがない、ということ。今のシステムがどうしようもなくなってきたときに、初めてクラウドなりの可能性を検討することになる。それは、今ではなくまだ数年先の話という。安くて良いものであれば市場が産まれるということではなく、厳然とした必要性がなければ変化してまで新しいものに取り組むということはない、ということ。

中小企業にとっては、変化する必要性がない。少しショックではありますが、当然のことかもしれません。もっと戦略的にシステム投資を考えたり、事業戦略を検討していく企業が強くなり、勝ち残って行くとは思いますが、そうではなく、現状を継続していくことにフォーカスしてる企業も多くあるということですね。だからこそ、中小企業のままなのかもしれません。そして、そこには攻めるための変化はあまりないという事実。地方の中小企業にクラウドはまだまだ届かないような気がしました。また、もっとショックだったことが、現在のシステムの面倒は社内の人間が見ている場合、もしそれが「サービス残業」でメンテしたりしてる状況だったら、クラウドでアウトソーシングすることで、見えてなかったコストが見えるようになってしまって、むしろマイナスかも、と考える経営者もいるかもしれない、という話。その発想はまったくなかったのでショックでした。

ソフトウェアベンダーにとってのクラウドの話。AmazonEC2だけでなく、日本でもIaaSクラウドが広まりつつあるのかと思っていたら、今になってデータセンターを建築しているという話を聞いて、これも驚き。今さらそのビジネスはコスト的にも既に顧客のニーズにあわないのではないか、とも思ったんだけども、ユーザ企業はそんなに新しい情報をもっていないなら、売ることはできるのかも、と思う。やはり、データをクラウドというよくわからないところに置くのは不安という気持ちが多いというところに対応できるらしい。ソフトウェアベンダーの人にとっては、クラウドが広まりすぎると、サーバやサーバOSが売れなくなるだろう、という心配があるらしい。OSも無料になってしまうんじゃないか、とか。今までの自分たちのビジネスを脅かす存在と捉えているのが印象的。クラウドをチャンスと考えているようなところは少ないのだろう。

新しいことや変化に対応するには、相当な体力と動機が必要。今を生きることが重要な中では、そこまで進めることが出来てないというのが、ユーザ企業、ソフトウェアベンダーの両方にあるような印象。特に印象的な言葉は「クラウドにしてその先に本当に何があるの?」と「米国に踊らされているだけではないか?」。一方で、そうした変化は確実に訪れていることを感じており、IT産業が大丈夫だろうか、という危機感はもっている。だけど、変化の波に乗ってその先にいくか、変化の波が過ぎ去ってから乗るか、地方では後者の印象が強かった。

おそらく地方で新しいことに挑戦していこうとされているユーザ企業もソフトウェアベンダーも沢山あるとは思います。そして、あまりポジティブに書けなかったのですが、今の事業を継続するということもとても大切で重要で意味のあることだとも思います。今回は、私の少ない聞いた話をもとに印象を書きました。この状況をひとつの事実と捉え、市場を開拓していくチャレンジもしていく必要があるのだろう、と考えています。


あ、それとは別に、iPadやAndroidの話題や、TwitterやFacebookの話題なども出て、パーソナルな領域では、全然遅れてなくて、地方とか関係ないな、という印象ももちました。

社内ツイッター流行ってますね。

Twitterが非常に注目を集めたので、それを社内でもやってみようというアイデアです。yammerはその先駆けですし、最近だと、SalesforceもChatterという機能をリリースしました。どちらもフォローの仕組みを使ってソーシャルを表現しているのは、Twitterをベンチマークにしているのがうかがえます。

そういった社内ツイッターと呼ばれるサービスの外せないポイントは、


  1. 「タイムライン」の形で発言が表現されること

  2. 「フォロー」の仕組みで発言をフィルタリングできること

だと考えています。

ソーシャルとは個人と個人の結びつきなので、「個人」にフォーカスをあてた仕組みで、それを企業内で実現することは、個人としての情報発信ができることや人脈形成などに意味のあることだと思います。つまり企業内に新しい「情報チャネル」を産む仕組みですね。実は、こうした効果は以前からの「社内SNS」でも考えられていた効果でもあります。SonicGardenで言えばSKIPがそれにあたります。

社内ツイッターや社内SNSの仕組みは、新しい情報チャネルなので、既存の情報共有の手段を置き換えることはありません。社内ツイッターという、企業の社員だけのパブリックな場での情報発信と情報共有があるからといって、グループウェアやメーリングリストが不要にはならないと思います。もちろん、人数の少ない企業であれば、社内ツイッターだけで十分となるかもしれませんが、その場合は逆に、フォローの仕組みはいらないのではないか、とも思います。

以下の図は、以前にThinkITで私が記事中で使った図です。


http://thinkit.co.jp/free/article/0703/11/1/


もし「部長だから絶対にフォローしなければならない」ということがあるとしたら、それは、あまりソーシャルとは言えないでしょう。「業務連絡が流れて見逃した」ということがないように全員のとりとめのない呟きまで全部チェックする、というのもおかしな話です。

youRoomも社内ツイッターとして使って頂く機会も多くありますが、もともとは、youRoomは社内で使うTwitterもどきとして作った訳ではありませんでした。前述の通り、個人の情報発信や人脈形成という目的の新しい情報チャネルの為ということであれば、私たちにはSKIPがあるので新しく作る必要はありません。

youRoomでは、部署やプロジェクトなどといった特定のグループやチーム内での情報共有に特化することを考えてデザインしました。見た目にタイムラインのインタフェースを採用していることから、他の社内ツイッターと同じような機能だと思われてるかもしれません。

youRoomはルーム(グループ)に参加するだけで、参加者全員で発言を共有できます。よって「部長だからフォロー」なんてことは不要です。また未読の状態を管理しているので、「業務連絡が流れて見逃す」ということも起こりません。youRoomであれば「メーリングリスト」を無くすことが出来るのです。

youRoomと他の社内ツイッターとの主な違いは以下の2点です。


  • 「フォロー」でなく「ルーム」でフィルタリングしている

  • 一人のユーザが複数「ルーム」に同時に参加することができる

youRoomには「フォロー」の仕組みはありません。情報を共有したいグループがあれば、そのメンバーが参加できる「ルーム」を作ればよく、ルーム内の発言は参加者であれば全員が見ることができます。youRoomでは「ルーム」というグループの単位でソーシャルを表現しています。

また、youRoomではユーザはいくつもの「ルーム」に同時に参加することができます。社内ツイッターを指向していないので、ひとつのタイムラインだけでなく、いくつものグループに参加することができるようになっています。それぞれの「ルーム」は独立しており、利用者はそれぞれのルームごとにプロフィールを変えることができます。つまり、youRoom単体でマルチアカウントを実現している訳です。

所属する企業のルームに参加するためのアカウントと、勉強会で使うルームに参加するためのアカウント、という形で、別のアカウントにしなくても、ひとつのアカウントでそれぞれのルームに参加し、ホーム画面では時系列にみることができる点が、他の社内ツイッターで使われるサービスとの大きな違いです。

社内ツイッターの定義があるのかどうか知りませんが、もし「フォロー」でソーシャルを表現しなければ社内ツイッターではない、ということであれば、youRoomは違うということになります。しかし、ここで示したようなグループに特化したツールをお探しであれば、他の社内ツイッターと呼ばれるツールより適していると思います。


これからの時代、企業の中だけに閉じて仕事をするのではなく、より外で働く個人や企業ともコラボレーションしながら仕事を進めていく時代が来ると考えています。また、勉強会などのコミュニティも盛んになり、同時にいくつものコミュニティに参加するようになると考えています。youRoomは、そうした場合に便利に使ってもらえるコラボレーションプラットフォームを目指しています。

メーリングリストを使っている勉強会コミュニティなどがあれば、youRoomだったらとても便利に使うことが出来ると思うので、ぜひ使ってもらいたいと思っています。


あわせて読みたい:


昨日、youRoomのTwitter連携機能をリリースしました。TwitterのDMを使っての招待や、リアルタイム通知ができたり、Twitterでの特定のTweetを取り込んだりすることができるようになりました。詳しくはこちら

youRoomを最初に作った当初から、youRoom自身をソーシャルメディアにするのか、つまり、youRoomのユーザ一覧やユーザ検索といったソーシャルの出会いや発見の要素をいれるのか、それとも、そういったソーシャルの要素は既にあるTwitterやFacebook、mixiなどのSNSに任せて、youRoom自身はソーシャルグラフ(人間関係のデータ)を持たないツールでいくのか、ずっと検討を重ねてきました。

そして、今の時点での回答は、youRoomとしては後者を選びました。youRoom自身では、ユーザの一覧をパブリックに共有したり、フレンドとして出会いつながっていくという「ネットワーキング」を起こすソーシャルメディアを「目指さない」という方向です。もちろん、そういう使い方をしても構いませんが。

それは、サイボウズLiveがビジネスSNSとして、ビジネスパーソンのソーシャルネットワーキングを継続する場としてソーシャルグラフを持つ方向にシフトしたのとは別の方向かもしません。ただし、youRoom自身が広大なソーシャルメディアを目指さないとしても、ソーシャルメディアとの関わりは重要です。

youRoomのビジョンでは、今後ソーシャルメディアがさらに大きく成長し、沢山のソーシャルメディアが産まれていく中で、そのソーシャルメディアを越えたプライベートな情報空間を提供する、と考えていますので、ソーシャルメディア上のユーザの繋がりは重要だと考えています。

そこで、今回の「Twitter連携」機能のリリースです。

Twitterのアカウントだけでやりとりを行い、仲間を集め、何かクリエイティブな活動をしようとする機会は増えつつあると感じています。そうした時に、Twitterだけでコラボレーション活動は難しいでしょうし、すべて公開されてしまいます。そこでyouRoomの登場となるのですが、今までは、メールアドレスを知らないといけませんでした。

そうした場面で今回のTwitter連携のひとつ、TwitterのDMによる招待を使えば、メールアドレスを知らない相手とであっても、ルームを作り、コラボレーションすることが可能になるのです。youRoomの画面右上の「設定」から自分のTwitterアカウントと連携設定をすることができます。

この際の設定の項目名を「ソーシャル」にしているのが、私たちのこだわりです。実は今後、このソーシャルの項目に、Twitterだけでなく、Facebookやmixiなどとも連携を可能にしますし、ビジネスでの利用が有効だと思うのでLinkedInやサイボウズLiveのソーシャルグラフを利用する連携も視野にいれていこうと考えています。

「あなたにとって世界はひとつではない」

このyouRoomのバックボーンコンセプトの通り、様々なソーシャルメディアでの自分がいるはずですが、それらを知っているのは一人の自分自身であり、それぞれのソーシャルメディアでのユーザとも、ひとつのプラットフォームで情報共有することが出来るようになっていくのが、youRoomで目指す姿です。

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  • 倉貫 義人
  • SonicGarden 代表取締役社長
  • ソニックガーデンの創業者で代表取締役社長。日々アジャイルソフトウェア開発とリーンスタートアップを実践しています。クラウドを活用したワークスタイルの変革を目指しています。「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットーです。
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