「頭の回転」は才能ではなく努力で鍛えられる 〜 打ち合わせのアドリブ力を上げる4つの要素

「頭の回転」は才能ではなく努力で鍛えられる 〜 打ち合わせのアドリブ力を上げる4つの要素

一方通行の報告だけの会議は生産的ではありません。生産的な会議とは、その場でディスカッションをしてアイデアを出し合って、その打ち合わせの時間内に結論や成果を出すような会議です。そのためには、打ち合わせでの発言の質が大事になります。

会議で良い発言をするためにも、頭の回転の速さが求められますが、それは才能ある人だけの特権でしょうか。否、そんなことはなくて、努力をすることで身につけることができるのではないか、と私は考えています。この記事では、会議でのアドリブに強くなるための思考スピードを鍛える方法について考察しました。

デキる人は「持ち帰って検討します」を言わない

打ち合わせをしていても、その場で考えることをギブアップして「持ち帰って検討します」「あとで考えてみます」みたいな発言が出ることがあります。そうした後回し思考の発言が出ると、打ち合わせは進まなくなってしまいます。

優秀だなと思う人との打ち合わせは、その場その場で瞬時に考えてリアクションしてもらえて物事が決まっていくので、非常に生産的で楽しいものになります。

この違いはいったいどこにあるのでしょうか。それを「頭の回転の速さ」と言ってしまうと、生まれ持った才能に思えます。しかし、才能と言ってしまうと救いがないので、実は「頭の回転」は鍛えることができるのではないか、と考えました。

頭の回転が速いと感じるのは、良いアドリブで対応してくれたときです。そんな打ち合わせでのアドリブを支えているのは、事前のシミュレーション、戦略的思考の判断、対応するパターンの数、自分の軸となる哲学の4つに分解して考えました。この4つを鍛えることで頭の回転の速さを高めていけるかもしれません。

(1)事前のシミュレーションをして準備をしておこう

アドリブに強い人は、その場で考える力が優れていますが、それができるためにはいくつか条件があります。そのうちの一つが、その打ち合わせで話せるだけの準備をしているかどうか、ということです。

やはりまったく門外漢の世界についての打ち合わせだと、話に参加することすら難しいでしょう。事前に知識を得ておくことは最低限のマナーだとして、事前に想定できる準備はすべてしておくと良いでしょう。

どんな打ち合わせでも発言できる人がいますが、その人の行動を見ていると、打ち合わせまでの準備や情報収集を相当に念入りにやっています。打ち合わせの内容や流れについて、頭の中でシミュレーションしているのです。

事前に想像できないことは、その場になったって出来ません。イザとなったら出来るのは準備している人だけなのです。準備の質を上げるためにも情報収集するのです。

しっかりと準備しておけば、たとえ想定から外れたとしても頭が真っ白にならずに対応することができるようになります。準備にかける時間や努力には才能は必要ありません。出来る人はそれを繰り返して日常化しているだけです。

(2)戦略的思考は「DE対策」で先の先を想定して鍛えよう

事前に考えておくと良いのは、打ち合わせのアジェンダは当然として、その場の目的とゴールはどこで、その次のアクションはどうするのか、といったあたりです。当然、想定とは違うことになることも多いですが、それでも良いのです。

私たちはよく社外の関係者やお客さまと打ち合わせをするときは、その直前に社内のメンバー同士で「前打ち」というのをしています。打ち合わせの前にする打ち合わせです。そこで、事前に考えた認識を合わせておきます。

私たちの会社のメンバーが若かりし頃、私との打ち合わせに臨むとき「DE対策」というのをしていたと聞きました。打ち合わせの中で何か発言なり提案をすると、私から「で?」という質問がくるので、そう来たときにどう答えるか事前に準備しておくことを「DE対策」と呼んでいたそうです。

その「で?」は、一度でなく、なんども続くので、5回ほど「で?」と言われても大丈夫なようにシミュレーションしていたそうで、そこで鍛えられたようですね。
(ちなみに「で?」は興味深い提案だったときの「それで?」だったのですが。。)

先の先を考える力を鍛えるのは、戦略的思考を鍛えることにつながります。ゴールまでの道筋、どうすれば提案が通るのか、何度も何度も考えることで、いずれ打ち合わせの最中でも、咄嗟の判断ができるようになるでしょう。

(3)ベテランに同席して「引き出し」の数を増やそう

打ち合わせでの切り返しのうまさは、その返しの「引き出し」を持っていないと発揮できません。引き出しの数を増やすためには、どうすれば良いでしょうか。

当たり前のことですが、最も大事なのは場数を踏むことが大事です。しかし、ただ打ち合わせに出るだけでは、返しが上達するわけではありません。

1000回バットを振れば上達するかというと、それはただ体力はつくかもしれませんが上手にはならないでしょう。どうすれば上手く打てるのかを考えながら経験を積むのが一番です。だから本番こそが一番上達するのです。

打ち合わせも同じことです。ただ打ち合わせに出るのではなく、どうすればうまく返せるのかを考えながら、意識して経験を積むことが大事です。私たちは、打ち合わせの後すぐに「ふりかえり」をして学びを共有しています。

さらに上達を早めるには、ベテランの打ち合わせに同席して見て盗むことです。アドリブ力は非常に暗黙的なナレッジです。ベテランの打ち合わせに同席して、そこで経験値を得るのです。

(4)いつでも自分に問いかけて自分の軸となる哲学を持とう

アドリブに強い人は自信を持って堂々としています。自信をつけるには、自ら考えた仮説が当たることが一番です。たまたまラッキーでうまくいったとしても自信にはなりません。自分で考えることが大事なのです。

自分の考えがしっかりしている人は、急な話であっても対応することができます。私の知っている経営者の人たちはメディアの取材を受けるときや、パネルディスカッションに出るときなど事前に準備などなく、すべてアドリブでこなしています。

どんな質問がきても、それなりに返すことができるし、一貫した回答を返すことができるのは、彼らには自分が話すときの軸となるものがあるからでしょう。それはもはや哲学と言ってもいいかもしれません。

自分の考えに軸を持つためには、常に自分に問いかけて考えることです。そして、なんらかの形で発信を続けることです。ブログを書くでも良いし、誰かに話すのでも良いでしょう。自分以外の誰かに伝えることで、自分の軸が定まっていくものです。

こればかりは一朝一夕には出来ません。ただ、毎日少しずつでも鍛え続けた人と、なにも考えてこなかった人の間には、数年でも経てば大きな違いが生まれます。

とはいえ、普段の仕事をしているとなかなか考えるキッカケがないという人も多いでしょう。私たちの会社でいえば、社員のみんなに私が問いかけることで、考えざるを得ない機会を与えています。それが経営者の仕事のひとつだと考えているからです。

そういった考えるきっかけを与えてくれるメンターを見つけるのも良いかもしれません。

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倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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