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2011年ふりかえり

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2011年は色々と転機になる年になりました。
振り返ってみると、2011年の私の漢字は「起」でした。

社内ベンチャーだったSonicGardenをMBOして、株式会社ソニックガーデンを起業したのが最も大きな変化ですね。会社を退職するという経験も産まれて初めてしましたし、自分の会社を持つということも初めてでした。


1年前の今頃には、すでに会社を作る企画は動き出していたので、今年の動きは自分自身で驚きがあるかというと、元々の想定からそこまで大きく違ったというとそんなことはないですが、結果としては想定よりも一層前向きに進んだように思います。

今年はこれまで以上に沢山ブログを書いた年でもありました。沢山アクセスを頂いた記事を1位から5位まで紹介しながら、ふりかえってみたいと思います。

1位:モチベーションの源泉:何のために働くのか、転職か起業か

この記事を書いたのは7月7日で、事業のMBOが成立するまでは非公開だったのですが、既に株式会社ソニックガーデンを設立した後だったんですね。今回は起業するにあたって、一人で始める訳ではなく、仲間とともに立ち上げたんですが、仲間たちのモチベーションの源泉を深く考える機会があり、それを記事にしたのでした。とても頼もしい仲間たちがいたからこそ、起業することが出来たと思っています。

2位:オフェンシブな開発〜「納品しない受託開発」にみるソフトウェア受託開発の未来

起業するにあたって、やはり自分がずっと考え続けてきたソフトウェア開発の理想的なあり方を追求したいと思い、仲間たちやお客様とディスカッションを繰り返し、考え抜いて作り出したのが「納品のない受託開発」という「ソフトウェアパートナーシップモデル」でした。このビジネスモデルがあったからこそ起業できたとも言えますし、起業したからこそ、このビジネスモデルが実践できているとも言えます。

3位:写経で身につけるプログラミングの基本

SonicGardenではコンサルティング事業の一環として教育事業も行っています。アジャイル開発やRubyでのプログラミング、クラウドでの運用経験などを身につけてもらうものですが、少し普通の教育プランと違うのは、研修スタイルでも、コーチングのスタイルでもなく、SonicGardenのオフィスにきてもらってOJT形式で、一緒に働く中で身につけてもらうというものです。そのOJTの中で考えたことを記事にしました。

4位:『国境なきプログラマ』を目指す~ノマドワークの究極のかたち

SonicGardenのプログラマは、本人の希望によってはノマドでタイムフリーな働きかたが可能です。その最たる事例を紹介したのが、この記事です。海外で働きたいという本人の希望があり、アイルランドに移住しつつ、SonicGardenの仕事をしてもらうというスタイルを実現させました。このスタイルは、これまでの組織の形や契約形態では実現しえなかったことかもしれません。これも起業したことで得られたことの一つです。

5位:株式会社ソニックガーデンを設立しました〜退職から独立の経緯と起業への思い

独立をして株式会社ソニックガーデンの設立が出来たことが、今年の一番の出来事として残っています。私自身は、経営者として大きな賭けに出るタイプではなく、石橋をしっかり叩いてから新しいことに挑戦するタイプだと認識しています。なので、それほど大きな賭けで起業した訳ではないですが、それでも思い切ったことには違いありませんでした。

私が成し遂げたいビジョンのために起業する選択とその実現まで辿り着けたのは、多くの方との出会いがあったからで、厳しい意見や暖かい応援、どれもが私の中で力になっています。

今年もありがとうございました。来年もよろしくお願い致します。

良いお年を。

先日、2011年冬の「ビジョン合宿」に行ってきました。SonicGardenでは、半年に1度くらいに全員で合宿に行くようにしています。これは、よくある「開発合宿」ではなく、あえてパソコンを使わずに自分たちの会社の経営や戦略やビジョンについて徹底的に語り合う合宿で、私たちは「ビジョン合宿」と呼んでいます。


ずっと以前は開発合宿をしていた時期もあったのですが、あれは結局は日常の仕事がそれほどエキサイティングでなかったり、日々の仕事場では会議や電話取りなどがあって開発に没頭できないなどの理由があればこそ価値があったのかもしれません。しかし今の私たちの開発スタイルは、毎日が無駄な会議もなく開発に没頭できるようになっており、もはや毎日が開発合宿のような状態になってしまったので、あえて開発をするためだけに合宿をする必要はなくなったのでした。

そうして開発合宿は必要なくなったのですが、開発合宿中に朝昼晩と一緒にご飯を食べたり、お風呂に入ったりしながら話をする時間というのは、実はチームで一体感をもつのに大事な要素でした。そこで「ビジョン合宿」と称して、徹底的に語り合うことだけをする合宿を定期的に開催するようにしたのです。

どんな場所とスケジュールだったか

今回の合宿では、三浦半島にあるマホロバホテルを利用しました。5名部屋を予約しましたが、部屋は非常に広く、会議用のスペースとディスカッションできる円卓があり、ホワイトボードのレンタルも出来て、とても集中して議論ができる環境でした。そして、京急で品川から1時間でいけるというのも大きなポイントで、午前中から議論を開始できます。また食事も美味しく、三浦海岸のマホロバは今までいくつも行った合宿場所の中で、一番よかったと思います。おすすめです。

特に、部屋の中にある円卓のテーブルが議論をする際に非常によかったです。四角いテーブルではなく、全員がお互いのことを見て話すことができる円卓は、全員が対等に発言できる権利をもっているような印象を与えてくれて、とても活発な議論ができたように思います。今度オフィスを移転する際は、ぜひ部屋の真ん中に円卓をおけるような広さのところを検討したいと思うほどでした。

当日の朝に現地集合し、まるまる一日中ディスカッションできるようにスケジュールを組みました。マホロバは午前中からの早めのチェックインも対応してくれました。昼食と休憩は挟むとはいえ10時から18時までのディスカッションは相当ハードですが、普段そこまですることがないので、合宿ならではということで徹底的にやっています。18時からは風呂に入って食事、レクリエーション、そして宴会で一日目が終わります。2日目は、9時から11時まで最後のまとめとふりかえりを行い、それでホテルをあとにしました。

ディスカッションでの気づき

SonicGardenでは普段から情報共有やビジョンについても話し合ったりしていますが、それでも本人の成長や環境の変化などがあって、少しずつズレたり思うところが出てきたりするものなので、定期的にそうした思いをチームで共有して、改めてチームのビジョンを自分のものにする必要があると考えています。それがビジョン合宿の目的になります。

午前の部では「ビジョンの共有」というテーマです。SonicGardenは7月が期初めなので、この12月末で上期が終わるというタイミングでもあるので、先ず最初は、会社の上期終わっての顧客獲得数や売上高、コスト、利益などといった計数についての共有を行います。基本的にプログラマに対しても、計数情報はすべて社内ではオープンにして誰でも見えるようにするという方針でやっているので、いつでも見えるのですが、あえてプログラマが数字を毎日意識することはないので、こういう機会に説明して共有します。プログラマも数字を理解し意識することで、普段の働きかたの中から全体を意識した行動ができるようになると考えています。

会社の計数を共有したら、そこからビジョンの共有に入っていきます。具体的にはSonicGardenのコーポレートサイトに書かれている内容を改めて読み返しつつ、それについてのディスカッションを交わしていきます。このビジョンの共有のタイミングで、以前からのお決まりですが、社長である私はその議論に参加しないというのをやっています。議論に参加しないだけでなく、部屋からも出て行ってしまって、そこでの議論は聞かないようにしています。これは、やはり普段だったら言えないことを言えるようにするというのと、ビジョンの共有と言うとどうしてもトップダウンに伝えることにしてしまいがちなんですが、それでは腹に落ちないことも多いので、自分たちで考えてもらって認識のあってるところ違ってるところを共有してもらうというやり方をとっています。

なので、午前中は私は三浦海岸をぶらぶら散歩などしてました。

ディスカッションのポイント

午前中のビジョンの共有のポイントは「成果を出そうとしない」ということで、それを最初に明言しておき、全員が言いたいことが言えたら良いというようにしています。ついつい会社の議論だと成果や正解を出そうとしてしまいがちですが、そもそもその前提となるところ、思いの部分の共有はロジカルに理解することよりも、もっと泥臭いやり方の方がしっかりと共有できるものだと思います。

午後は2つのテーマで話し合ってもらいました。「競合に勝つにはどうすればいいか?」と「新しいサービスを生み出すには?」というテーマです。このテーマ出しだけは私がやりますが、そこから先の議論は、午前と同じくみんなで考えてもらいます。午後はさすがに部屋から追い出されることはないのですが、それでもみんなに考えて話してもらうことが大事なので、なるべく私が発言しないようにしないといけません。ただし、発言しない人が同じテーブルにいたら気を使ってしまうので、私はここはあえてだいぶ離れた場所で、議論を聞きながら仕事をしていました。私は各人が話してる様子を見ることで、会社がどういう状態かを把握しようとします。

午後のディスカッションのポイントは「時間をきってしまうこと」ということで、必ずしもベストな回答が出なくても時間がくればまとめるようにします。そうしないとずっと考えてしまうことになるし、長いこと考えたからといって良い答えが出る訳ではないので、時間を決めておき、その時間がきたら議論は終了させます。

宴会とレクリエーション

風呂の後は宴会です。今回の合宿は年の暮れということもあり、会社の忘年会も兼ねてます。こうしてお酒が飲めるというのも、ビジョン合宿の良いところです。開発合宿で来ていたころは、合宿中になんとか作らないとという気持ちばかりで、夜にお酒飲むとかできなかったものでした。

宴会のあとは、恒例になっていますが卓球大会をしてから、続きは部屋飲みです。ウノをしたりスティックボムをしたり、楽しく夜は更けていきます。部屋で呑むといいのは、そのまま寝てしまえることですよね。

ソニックガーデン検定の実施

SonicGardenでは人月ではないので、プログラマの生産性については個人個人が別々であるという前提でいます。なので、ルールを用意して生産性を揃えることは考えていません。とはいえ、それぞれのプログラマの生産性はどれほどのものか、というのは常に把握していなければいけません。そこで、一つの試みとして、ソニックガーデン検定を実施しました。

今回のソニックガーデン検定は、合宿の15日ほど前から、ある特定のアプリケーションを全員でいっせいに別々に開発を行い、そのお披露目を合宿で行うというものです。同じアプリを、同じ制限時間の中で開発することで、それぞれの持ち味や性質などがわかるようになるという狙いです。

今回は、Foursqareをモチーフにしました。すでにあるサービスの完コピを課題にすれば、仕様をどうするかで悩む必要はないですし、外から使ってみながら内部のモデル構造を考えながら作らないといけないので、データモデルを考える訓練にもなります。バンドで言うと耳コピみたいなものでしょうか。

4人のプログラマでエントリしましたが、四者四様のプログラムが出来上がり、発表はかなり楽しめました。全員が12時間以内程度で、iPhone用のインタフェースでのチェックインが出来るような一通りのものが出来上がったのを見るのは心強い思いでした。

ふりかえりと宣言大会

2日目の午前中の9時からチェックアウトの11時までは、合宿そのもののふりかえりと、宣言発表を行います。合宿1日目の午後に話し合った経営戦略について、具体的なアクションとしてどうするかをまとめます。2日目の午前は、私も参加します。ようやく円卓に入って一緒に話をします。特に、みんながまとめてくれた意見に対して、私としてはどう考えているかを話しをします。

一通りのまとめとふりかえりが出来たところで、次は各自で次の半年にすることの宣言をします。宣言のフレームとしては「この半年間でわかったことは何か?」それを受けて「次の半年にやることは何か?」そのために「みんなに協力してほしいことは何か?」の3つです。最後の「みんなへのお願い」があるのが、ひとりでやるわけじゃない感じがして気に入っています。

大企業ならともかく、ベンチャーや小さな会社の場合、ビジョンの共有などといったまどろっこしいことはあまりしなくても、わかりあえて進めていくことは出来るかもしれませんが、私としては、小さい組織だからこそ話し合うことが大事だと思っています。

こうした合宿は必ずしもすぐに成果が出るものでもないので、ついおろそかにしがちですが、人が一緒に働く上で、お互いの気持ちや考えていることなんかをしっかり共有しておくことは、情報共有なんかよりもずっと大事なことなんです。

先日、楽天さんの主催する楽天テクノロジーカンファレンスにて、講演の機会を頂きました。楽天テクノロジーカンファレンスでは、数年前の前職時代に社内SNS:SKIPのオープンソース化についてRuby賞を頂いたことがあり、そこでこうして自分自身が講演させて頂いて感慨深かったです。

私の講演では、私が技術者から経営者にいたるキャリアの中で学んだことや感じたことといった過去から現在に至る話と、こうしていきたいと考えているこれからの未来の話をさせて頂きました。発表資料は以下です。

プログラマを一生の仕事にできるビジネスモデルで目指す未来のビジョン

私としては、これまで様々なコミュニティや社外活動を通じてもらってきた「刺激」を、今回の参加して頂いた皆さんに私から渡せればという思いで引き受けました。コミュニティから始まるペイフォワード(恩送り)ですね。

今回も早口メソッド(落語メソッドとも)ということで、講演中はなるべく沢山の情報を詰め込んで早口で話しつつ興味あるところは後ほど資料などでじっくり考えて頂くというスタイルをとっています。それでも時間が足りず、最後の方は駆け足になってしまったので、今後ブログなどで補足できれば、と思います。

そして、USTで視聴参加いただいたPublickeyさんが3本立てで記事にして頂きました。私の早口メソッドをみごとに、とてもわかりやすく記事にして頂いているので、資料とあわせてご覧ください。

講演では、時間が足りなくて質疑応答の時間が殆どとれなかったため、Twitter上でご質問などを受け付けたところ、色々とご質問を頂いて一つ一つ回答したので以下にまとめておきます。

このたび株式会社ソニックガーデンを設立し、TIS株式会社から独立いたしました。今回、独立に際しマネジメントバイアウトを実施しましたので、TISとの資本関係はなく社員全員が退職し、完全に新たな会社として設立しスタートしました。新しいチャレンジに応じてくれたTISには大変感謝しています。事業に関する公式な内容はプレスリリースをご覧ください。こちらのブログでは、今回の独立に際しての中の人として自分の個人的な考えについてだけを残します。

プレスリリース:「株式会社ソニックガーデン」設立および事業移転のご案内


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最初のきっかけは、この4月に実施されたTISの3社合併でした。合併に関する発表があったのが昨年の秋頃で、その時期から今回の動きは始まっています。なので振り返ってみると1年がかりだったんですね。会社が合併するということは、会社が変わってしまうということです。その変化を必然とするならば、それに向けて私はSonicGardenをどうすれば良いのか考えることになりました。これまでSonicGardenは、社内カンパニーという中途半端な形ではありますが、会社の意向や他人から与えられたものではなく、私たち自身で創り上げてきた思いが強いです。そのため、自分たちのビジョンを実現すること、自分たちのやり方を選べること、何より、一緒にやってきたスタッフと働き続けるためにも、別会社として法人化を目指すことにしました。つまり、大きな変化に飲み込まれる前に、自分たちが自ら変化することを選んだのです。

当初は、私も会社や株式に関する知識もなく100%子会社という方向性で進めてきました。しかし、株式公開している上場企業の中で、新しい法人をつくるということは想像以上にハードルの高いものでした。これまで、大企業の中でアジャイル開発の実践や社内SNSのオープンソース化、社内カンパニーの立ち上げなどのパイオニアをしてきた自負をもっていた私ですが、これ以上は書けませんが、今回は従業員という形では出来ない領域まできてしまったようです。そうしたタイミングで、3.11の大地震が起きました。あのとき私は島根県に出張中で、その地震そのものを直接に感じてはいないのですが、それがより一層の衝撃となりました。テレビの中で起きる惨劇に、なす術のない自分、東京に戻ってもまたいつ地震が来るかわからないという恐怖、なにより人は簡単に死んでしまうということをまざまざとリアリティを持つことになりました。

私は、経営者としても大きな賭けに出るタイプではなく、しっかりリスクヘッジをしながら進めていくタイプだと自分で認識しています。自分の人生においてもそうで、アジャイル開発を世の中に広める手段として大企業の社長になって発信するという目標のために、これまで割と地道に企業内での出世を進めてきました。しかし、この地震をきっかけに思ったのは、そこまで到達するためにそんなに長く待てない、ということでした。本当にいつ死ぬかわからないとしたら、そんなに先のために今耐えるという選択肢で良いのだろうか、と。自分の生き方に後悔したくないという思いが強くなったのです。また、株式公開している企業でトップになったところで、果たしてどこまでの自分のビジョンを貫き通すことが出来るのか、上場企業の中を知れば知るほど、疑問をもったというのも正直なところです。ここはリスクをとるべきだと判断しました。

そうした私の思いをこれまで一緒にやってきてくれた仲間たちと何度も話し合いました。今回の思いの源泉には、親会社の意向などで解散することなく、今のメンバーでチャレンジを続けていきたいというところから始まっているので、彼らが一緒でなければ意味がありません。しかし、安定していると思われる企業で働いてきた中で、転職ではなく起業をするという選択肢は本人の気持ちだけでなく、その家族も含めての大きな決断になります。特にお子さんが産まれて間もない家庭を持っているメンバーたちは本当に大変な決断だったと思いますが、全員が共にチャレンジしてくれるという決意を固めてくれました。みんなの決断に本当に感謝しています。

起業することと法人を作ることは別の話です。よく同一視されますが、事業を興すだけであれば学生でも出来ますし、会社に勤めながらでも出来ますし、会社の中で事業を立ち上げることも起業と言えるでしょう。法人を作ることの手続きは簡単ですが、その作った会社で事業をして生活をしていくというのは大変なことです。ビジョンがあって、仲間がいるからといって、それだけでやっていけると思い込めるほど若くはありません。ビジョンの実現のためには事業戦略とビジネスモデルが必要だと知っています。よくあるベンチャーの姿だと、しばらくは無収入で頑張ったあとにひとやま当てて急成長するということを目指すのかもしれませんが、私たちが目指す姿は違います。家族を大事にする私たちは、最初から安定した収益もあげられるようなビジネスを組み込んだ上で会社を作ることにしました。それが「ソフトウェアパートナーシップモデル」です。

未来に成し遂げたい「ビジョン」、今を一緒に戦ってくれる「仲間」、未来と今を繋ぐ「ビジネスモデル」この3つが揃ったことで、ようやく会社としての第一歩を踏み出すことになりました。なので、今回の独立にしても一か八かの大きな賭けという感じでもなく、割と現実を見据え堅実にいけるところは堅実にいっています。それでも、起業というのは実験のようなものだと私は思っています。人にとって自分の信じるビジョンがあったとしても、それは仮説に過ぎません。仮説では理解してもらえる人は少なく、自分が正しかったことを証明するには実験をするしかありません。多くの起業家は、自分自身の正しさを証明するために実験で試しているように思います。そう思えたら、もしうまくいかない時があっても、それは仮説が間違っているだけなので、修正すれば良いだけです。会社の終わりが自分の人生の終わりではないと割り切ること。

ここに書ききれないことと、当然ここに書けないことなど沢山ありますが、誰にとっても今時点の最良の選択ということで、今回のチャレンジが決まりました。今回の発表で、多くの方々から励ましのお言葉を頂きました。ありがとうございました。またちょうど、このブログを書いているときに、Facebook上で、ブレイクスルーパートナーズの赤羽さんからもお祝いのコメントを頂きました。その続きで、SonicGardenが会社として目指したい姿や、ソフトウェアパートナーシップモデルに関する質問などを頂き、お答えさせて頂く中で、改めて自分の考えの整理が出来ました。ありがとうございました。そのやり取りの一部始終が私にとっても興味深いものとなったので、転載をしておきます。




Yuji Akaba:
設立、おめでとうございます。ぜひ素晴らしいベンチャーとして急成長していってください。不安な時はいつでもご連絡ください。

Yoshihito Kuranuki:
ありがとうございます!私たちの目指す企業像は、(急成長するという)今現在のベンチャーの目指すべきとされる姿とは違うという自覚もあり、だからこそ次の起業のモデルとなれるよう考えています。

Yuji Akaba:
なるほど! もう少し解説していただけますか?

Yoshihito Kuranuki:
SonicGardenとしては、IPOやバイアウトでのEXITを今は目指していません。ソフトウェア企業はナレッジワーカーの集団で、ナレッジワーカーの組織は大企業である必要はないと思っています。そして、ソフトウェア企業は、物理的な工場を作る必要などなく、大規模な資金投入がなくても良いのではないか、と考えています。そうなると、キャピタルゲインを諦めさえすれば、IPOを目指す必要はなくなります。IPOしてビジョン実現の戦略が採れなくなることもあり、結局MBOするくらいなら、最初からIPOしない、という選択です。

Yoshihito Kuranuki:
株式市場を前提とした経済が行き着くところまでいくとして、その次があるとしたら、少なくとも知識社会においては、大規模な資本投資による大量の生産や従業員での企業という形ではなく、お客様への価値提供とそこからの収益だけで成り立つ社会が出来れば良いし、そのためにもITを活用することが重要になってくるのではないか、と考えてます。

Yuji Akaba:
それだと資金調達に困りませんか?

Yoshihito Kuranuki:
果たして大規模な資金調達が必要なのか、というとそれはないと思っています。しかし、新しいイノベーションのための商品開発をしていくための原資は稼ぐ必要がありますね。そのために、私の考えたのは「ソフトウェアパートナーシップモデル」と呼んでいる受託だけれども、かなりの時間の自由度を持つことが出来る仕事をしながら、新しいサービスの開発も出来るようにしています。

Yuji Akaba:
もう一つ質問させてください。ソフトウェアパートナーシップモデルというのは、どういったものでしょうか? どういう条件、スキル・スタイルの時に可能なものでしょうか。 大半のベンチャーはこの問題に苦しんでおり、答えが全くないものですから。

Yoshihito Kuranuki:
そうですね、普通であれば商品開発をする時間をとりたいけれども、資金が足りなくなり受託に手を出すものの、コンサルにせよ開発にせよ時間を切り売りすれば、時間が足りなくなってしまいますね。私のビジョンではプログラマを中心に考えているので、出来るのはプログラマ限定になりますが、先日ブログに書きました。 http://kuranuki.sonicgarden.jp/2011/09/post-50.html (オフェンシブな開発〜「納品しない受託開発」にみるソフトウェア受託開発の未来)

Yoshihito Kuranuki:
私たちは、よくある(企業:サービス)=1:1、になるのでなく、(1:他)で、沢山の新しいサービス開発を失敗も含めてチャレンジすることで成功確率を高めようとしています。そのために、ちゃんとお客様をつけて仕事をしつつ、失敗も経験として次に活かせるスタートアップのプラットフォームのような企業になりたいと考えています。それもブログで書きました。 http://kuranuki.sonicgarden.jp/2011/09/post-45.html (リーンスタートアップを実践してのこれまでとこれから)

Yoshihito Kuranuki:
これでようやく最初の話に戻りますが、SonicGardenでは短期的な急成長でEXITを目指すプロジェクト型の企業ではなく、むしろゴーイングコンサーンとして、日本から世界で使われて喜ばれるサービスを作り出す仕組みを持つ企業になることがビジョンです。 http://www.sonicgarden.jp/company (株式会社ソニックガーデン会社案内)

Yuji Akaba:
倉貫さん
お気持ちはよくわかりました。このアプローチが適用しやすい業種、分野があるように思います。
1.一番フィットする分野、サービス
2.比較的実施しやすい分野、サービス
3.向かない、お勧めできない分野、サービス

はどういったものになるでしょうか。

Yoshihito Kuranuki:
ソフトウェアパートナーシップモデルの方は、お客様がビジネスオーナーになるので、営業体制などはお客様が持つので比較的どういった分野でも対応できます。それでも、外向けの売上のたつサービスや新規事業などが向いてると思います。

Yoshihito Kuranuki:
スタートアッププラットフォームモデルとして自社で作るサービスの方は、当たり前ですが、ウェブのビジネスをするサービスが前提です。広告型でも直接取引のフリーミアムでも可能ですが、ビジネスオーナーになりますので、あまり営業マンが必要だったりするビジネスは向いていないと思います。
例えば、37signalsはSonicGardenのベンチマークにしていますが、彼らのようなITツール提供の分野は向いてますが、Grouponのような営業マンを抱えるような分野は難しいと思います。
人を投入することでしかリニアに売上が延びないようなビジネスの場合は、リーンにやりにくいと感じます。

Yuji Akaba:
倉貫さん、ブログを何度か読み直して、ポイントは「月額定額で開発・運用を行う」ということだと理解しました。正しいでしょうか。
月額定額にしても、費用の根拠は必ず求められますし、定額ということは結局、その定額内の工数でやるわけなので、通常の受託開発とどう違ってきますでしょうか?

Yoshihito Kuranuki:
はい、「オーダーメイドをサービス利用料で月額定額」というところがポイントですね。
そして、仰る通りの疑問が産まれますが、私たちのビジネスでは作業にかかる工数をお客様に提示しない、という方針を採っています。決められたキャップの中で、要件を上から順にこなしていくだけで、結果はパフォーマンスに表れます。お客様には毎月出し続けるパフォーマンスで判断頂きます。具体的には実際に機能が出来たり画面が出来たりリリースしたり、など動くソフトウェアで判断してもらいます。
それではどれだけのパフォーマンスが出るのか?という発注時の不安があるのに対しては、1ヶ月は無料で開発します。フリーミアム的にパフォーマンスに満足頂ければ、2ヶ月目以降に課金させて頂きます。そして、パフォーマンスが出るかどうかのポイントとして「チーム固定」ということをお約束させて頂いており、最初に担当したプログラマが最後まで面倒を見ます。

Yoshihito Kuranuki:
お客様とは、私たちの方法では、Pivotal Trackerというクラウドの要件(チケット)管理ツールを使って、リアルタイムに共有しますが、その要件についてはだいたい1週間くらいの単位で実現のお約束はしますので、そこを見て行けば、この先どれくらいでどこまでいけるか、過去にどれくらいでどこまで出来たか、は、いつでも完全に見える化出来ています。

Yoshihito Kuranuki:
グッチのバッグを買うときに、必ずしもかかった作業工数でお金を払う訳ではないのと同じで、費用の根拠は工数ではなくても良いと考えます。
プログラマが努力や経験を経て生産性を上げたとしても見積もりが下がってしまい、ビジネス上の売上や利益につながらないのが、これまでの一括発注・請負の形でした。一方で派遣のように作業時間でお金を頂くとしても、時間と金額が決まっていれば生産性を上げるモチベーションにはなりません。
従来の受託開発との違いは、この方法だと生産性が向上すれば、お客様に満足頂くパフォーマンス量は変えずに、自分の時間を多く持つことができるという点です。そうして出来た時間を、他のお客様の仕事でシェアしても良いし、自社の新たなサービス開発にあてても良いという訳です。

Yuji Akaba:
そうなんですね。素晴らしいですね!

Yoshihito Kuranuki:
どこまでも本当にうまく行くかどうかはわかりませんが、今のところ、この方法に共感頂き、お仕事を頂けるお客様もいらっしゃいますし、弊社の事例としていくつか出てきました。
このビジネスモデルが成り立つには、出来る量で嘘をつかないという「信頼」が重要になってきます。そのために「属人性」は排除するのではなく、これは「人に依存するビジネスである」と割り切りました。元々、プログラマはマニュアル化することのできない仕事をするアーティストだと考えていましたので、合致してます。
ただし、その割り切りのためには、IPOして急激に大きくしない、とか人が多い意味での大企業を目指さない、などの経営方針が必要になってきます。その判断は、これまでの私の上場企業の中の社内ベンチャーという立場では採ることができません。そうしたことから今回のMBOを決意をしました。

アジャイル開発の方法論の先駆けである「エクストリームプログラミング(XP)」。そのXPの日本のユーザグループ(XPJUG)が、毎年開催しているイベントが「XP祭り」です。XP祭りは、名前にXPと冠していますが、XPに限定しないコンテンツを用意しているのが特徴です。

そのXP祭りが今年も開催されます。9月3日に開催されるXP祭りについての詳しい内容はこちらです。すでに200人の定員いっぱいになっているようですが、立ち見で良いのであれば、ぶらりと立ち寄ってもらっても良いそうです。良かったらご参加ください。


私も午前中のパネルディスカッションに参加させてもらう予定です。懸田さん、野口さん、濱さん、平鍋さん、和田さんという方々とディスカッションできるということで楽しみにしています。

パネルディスカッションに参加するにあたり、ある程度の事前アンケートを頂いていて、書いていたらしっかり考えてしまったので、このままブログにしてみることにしました。


1. プロフィール

SonicGardenというソフトウェア企業で代表をしています。日々アジャイルソフトウェア開発とリーンスタートアップを実践しています。クラウドを活用したワークスタイルの変革を目指しています。元プログラマで「心はプログラマ、仕事は経営者」をやってます。ブログは http://kuranuki.sonicgarden.jp/ です。さらに詳しいプロフィールはこちら → http://about.me/yoshihito.kuranuki

2. プロフィール画像


3. アジャイルとの関係、関わり方


アジャイルとの出会い、その後の関わり方など、倉貫さまが、アジャイルとどのように関わっていらっしゃるかが分かる情報をいただきたいです。

私にとってアジャイル(当時はXP)との最初の出会いは、平鍋さんとの出会いとも言えます。学生時代にベンチャーで働いて、ソフトウェア開発の楽しさを知り、社会人になってデスマーチに入って、ベンチャーでの頃とのギャップに疑問を感じていた自分にとって、2000年の夏に平鍋さんに出会ってXPを知ったことは、大きな転機になりました。

私は「アジャイル」という言葉を知ってからアジャイルに取り組んだ訳ではなく、自分のやりたいことを端的に表した言葉が「アジャイル」だったという感覚でいます。だからこそ、自分で実践していないと気が済まないのです。最初は自分にとって教科書だったXPも、自分で実践していくうちに離れていき、自分なりのやり方になっていきました。

今、自分の会社を経営していくにあたって、アジャイルは当社の強みであると考えて戦略を立てますが、強みというのは裏付けであって、お客様に提供する価値とは別だと考えるようになりました。大事なのはビジネスモデルです。成し遂げたいビジョンがあり、そのビジョンの実現のための戦略とビジネスモデルを考え行動します。その結果として、誰から見てもアジャイルであると言われるようにありたいと思っています。


4. コミュニティとの関係、関わり方


コミュニティとの最初の出会い、その後の関わり方、現在の関係性など倉貫さまにとってのコミュニティの位置づけが分かる情報をいただきたいです。コミュニティに感じている問題点などでも構いません。

私が最初に関わったコミュニティは、やはりXPJUG(日本XPユーザグループ)だったと思います。オブジェクト指向に関する勉強会やコミュニティはあったのですが、当時の私には敷居が高く、ただのオーディエンスでしかいられなかったように思います。一方でXPJUGは、まだ日本で誰も権威はいなかったので、参加しやすかったのでしょう。

最初はただの参加者でいた自分でしたが、色々な方の発表を聞くうちに、自分でも話してみたいと思うようになりました。特に、牛尾さんとの出会いは強烈でした。牛尾さんの発表を見て、私も誰かに伝えたいという衝動が抑えきれなくなり、自分から情報発信するようになったのでした。

一度、発表者に立つと運営側にも入りやすくなり、気付いたらXPJUGの2代目の代表を仰せつかることになりました。私自身はカリスマとは無縁の人間ですが、スタッフの皆さんと共にXPJUGを続けさせてもらうことができ、幸せでした。コミュニティは会社の常識に捕われず、外を知ることの出来るとても大切な第1歩だと思っています。コミュニティに参加したら、次は行動に移すと良いですね。


5. 10回めを迎えたXP祭りへのメッセージ


もしもメッセージがありましたら、いただけるとうれしいです。

10回目のXP祭り、本当におめでとうございます。私がXPJUGの代表をさせてもらっていた時のポリシーは、コミュニティは商業目的でないので、小さくともグダグダでも、楽しい仲間で続けることだけでも価値があると思っていました。一度消えた火を付けるのはとても大変だけど、小さな火でも燃え続けていれば、きっと誰かの灯りになるはずです。XPJUG代表の渋川さんが、私の渡したバトンをしっかりと受け継いでくれて、とても嬉しく思います。ありがとうございます。


6. 起業したきっかけ、理由を教えてください。


起業に託した想いを教えていただきたいです。

私が最初になんとかしたいと思ったのは、自分の人生でした。ベンチャーでプログラマとして楽しく働いた後、大手企業に入社して、そこでのソフトウェア開発におけるプログラマの扱いがとても残念で、プログラミングが本当に大好きな私は、プログラマとしての自分が評価され続けるためには、会社と業界を変えないといけないと思ったんです。プログラマが最下層なんて世界を覆す革命が必要だと。

そんな中で出会ったのがアジャイル(XP)で、アジャイルを通じて業界を変えれるかもしれないと思い、活動してきました。独りで実践しても駄目だったら、仲間を作り、それで駄目なら、マネージャや営業もこなし、私の目指す姿を求めてきました。その結果、わかったのはこの業界のビジネスモデルの問題だということでした。それを纏めたが「ディフェンシブな開発*1」でした。
 *1.http://d.hatena.ne.jp/kuranuki/20060116/p1

そこで示した2つの道の一つ、社内システム部門の立場に身を置くことを決めました。転職ではなく、社内での異動に近い形です。そこで、今の事業の一つに繋がる社内SNSを開発することになります。社内での評価は上々だったのですが、社内向けでいる限り、いつ会社の意向で潰されるかわからない。そこで、オープンソースにした上で、自分でビジネスをすることにしました。それがSonicGardenの誕生の経緯です。

自分には成し遂げたいビジョンがあって、それを成し遂げることをミッションとするような、自分と志を共にする仲間が必要です。そして、私のビジョンの実現には、ビジネスモデルから変える必要がありました。ビジネスモデルと企業の目指すゴールは密接に関連します。ゴールを決めることが出来るのは、その企業のトップだけです。それが出来るために起業したのです。

私が目指しているのは企業のトップになることでなく、私のビジョンの達成だからです。

あわせて読みたい:技術者からベンチャー企業経営者へ

この1〜2年、転職であったり起業であったり人の動きが激しいような気がします。私の知人も、大手企業でエリートだったのに起業したり、大手メーカーからソーシャルゲームの会社に転職したり、というケースがあります。そうした人たちを見ていて、人の働く動機には色々ある中で、いくつかパターンがあるのかなと思い、人は何のために働くのかについて考えてみました。

私なりに人が働くモチベーションとして、以下の4つのパターンがあるのではないかと考えてみました。(これは私の知り合いからの類推なので、べつに専門的で正確な話ではないです)

・「アントレプレナー」タイプ
・「クラフトマン」タイプ
・「サラリーマン」タイプ
・「サポーター」タイプ

アントレプレナータイプの方にとっての仕事に対する動機は「夢」が大きく影響しているように思います。何か成し遂げたいビジョンがあり、自分の仕事の結果によってどのような世界にしたいのか、という思いをもっています。この人たちは「どんな仕事をするか」ということについては、拘りをもっておらず、ビジョンを成し遂げられるのであれば、たとえ嫌な仕事であってもやってしまいます。経営者ですね。「どう仕事をするか」よりも「何をするか」に重きをおくので、プロダクトオーナーもこのタイプが向いているかもしれません。

クラフトマンタイプは、職人です。達人プログラマを目指すような「職」に対する動機が強いと思います。自分のスキルアップを何より重視し、業務時間外でも勉強会に参加したり、オープンソースに参加したり。その源泉は、自分のスキルアップです。この人たちにとっては「どんな仕事をするか」ということが重要です。技術者としての誇りを持っており、マネージャをするとなったらモチベーションが萎えてしまいますよね。それは、自分の目指すスキルセットと違うからでしょう。自らの腕を磨いて「俺ってすげー」感を味わうことが幸せです。

アントレプレナーとクラフトマンの共通点は、その「夢」や「職」のためであれば、業務の枠を超えて活動をするという点です。アントレプレナーとクラフトマンの違いは、アントレプレナーの人たちは、世の中にある問題に着目します。もしくは、問題そのものの定義を行うことを大事にします。一方で、クラフトマンの人たちは、用意された問題を解くことを得意とします。難題であればあるほど燃えるのが職人です。だからアントレプレナーとクラフトマンが手を組むことはスタートアップには良いコンビになるのです。アップルの創業者の二人のスティーブは、まさしくこのコンビでした。

サラリーマンタイプは、わかりやすくサラリー「金」のために働く人たちです。そういうとイメージが悪いかもしれませんが、この人たちには、仕事そのものよりも大事な価値のある「家族」や「趣味」をもっており、それを充実させるために、仕事をして糧を得ているのです。なので「どんな仕事をするか」については、多少希望はあったとしても、人事異動など基本的に会社の指示に従います。当然、モチベーションとしては出世をすることで、給与があがることは大きな動機付けになります。良い意味でプロフェッショナルですし、大きな組織で役割を遂行するためには必要な人材になります。真面目な人が向いています。

クラフトマンとサラリーマンが同居するような業種では、時に軋轢が起こります。クラフトマンを目指すエンジニアは、日々自分の時間を使って勉強をしたりするのに対し、サラリーマンはそこまでの気持ちをもっていません。お互いの価値観が違うのに、同じように評価や働き方が決まってしまうと、マイノリティの方が居心地が悪くなるのは当然です。その組織を去る理由としては十分かもしれません。

アントレプレナーとサラリーマンの共通点は、どんな仕事も厭わないという点です。モチベーションは違えど、清濁併せ飲めるのがこの人たちです。ただし、スタートアップのタイミングでは共存しない方が良いでしょう。ミッションに人生の全てをかけるアントレプレナーと、そうではないサラリーマンではうまくいくとは思えません。

最後のサポータータイプは、「誰と(誰に)仕事をするか」を重視する人たちです。ラブではなく、アガペーとしての「愛」をもって仕事にあたります。一緒に働く仲間を助けたい、提供するサービスで喜ぶお客様の笑顔が見たい、困っている誰かの役に立ちたい、といった感情が、最大の働く動機付けに繋がります。重要なのは「誰か」という点で、仕事の内容や仕事の仕方については受け入れていく度量があります。究極的には、ボランティアやNPOにいきつくのかもしれません。しかし、応援したい人がいないと頑張れません。

クラフトマンとサポーターの共通点は、期待に応えることに対するモチベーションが非常に高いことです。難しいことや困っていることがあったら、なんとしても解決したいと頑張ります。この両名はプロジェクトで一緒にいる場合、非常にうまく力をあわせてくれることが多いです。両極端ではあるのですが、だからこそ気が合うのかもしれません。

アントレプレナーとサポーターは、お互いにお互いを必要とする関係であることが多いです。スタートアップのタイミングでは、アントレプレナーだけでは霞を食って生きていかないといけなくなってしまうので、実務を担当しアントレプレナーを支えるサポーターがいることでうまくいくように思います。ソニーやホンダの創業期のそれぞれの2人はこの組み合わせにも思えます。

アントレプレナーとサポーターの行動原理は、右脳的で感情によって奮い立つことが多い一方、クラフトマンとサラリーマンは左脳的で、非常にロジカルに行動します。

「夢」「職」「金」「愛」と、それぞれのタイプのモチベーションの源泉を考えてみましたが、必ずしもどれかということはなくて、自分の中にいくつものタイプが共存しているのが人間だと思います。おそらく、子供の頃に考えていた「夢」というのは「職」であることが多く、「本屋になりたい」「ケーキ屋になりたい」というのが根源的な働くモチベーションだったんではないかと思います。そこから、色々と経験をすることによって「世界を変える」ことが重要になったり「家族との時間」が重要になったりと変わってきたんでしょう。

アントレプレナータイプの人は、それまで属していた企業がもつビジョンや理想に共感していれば、組織の中であっても一生懸命働けるかもしれませんが、その組織と自分の考えている世界観と異なってきたとき、起業という選択肢を選ぶように思います。なぜなら、このタイプはどの組織に属しても違和感を感じながら生きているからです。世界中に自分とまったく同じビジョンをもつ人はいないので、いつかは自分のビジョンのためにスタートアップすることになるのでしょう。

クラフトマンタイプの人にとっては、仕事の内容が自らが極めたいスキルと違ってきた時に、組織を離れることを考えます。マネージャをしたくないから偉くなりたくないと嘯くプログラマもいます。組織を離れるとき「どういう仕事をするか」が重要なので、自らがやりたい仕事がある場所に転職するという選をするでしょう。その方が手っ取り早いからです。クラフトマンにとって、天職と思える職業に出会い、それを一生の仕事にできるとしたら最高でしょう。

会社における評価の仕組みとビジネスモデルは強い関連性があります。もし技術者のままで評価される側に居続けるなら、既存の評価の仕組みを変えることはできないということに気付かないといけません。既存の組織にいながらにして、その組織を変えていきたいと思うならば、まず技術者であることを捨てて何にでもなるという覚悟が必要でしょう。組織を変える一番の難しさは、偉くならないと組織は変えられないけど、偉くなるためには自分自身を変えないといけない、そうするうちに組織に染まって変えられなくなる、ということに尽きるでしょう。もし、クラフトマンタイプで、組織があわずに「職」を極めたいというのであれば、早めに転職を決意した方が良いかもしれません。

転職か起業か踏みとどまるか、自分の中にある働くモチベーションの源泉を、よく見極めてから行動するのが良いと思います。

先日、とあるお客様のところで、講演をさせて頂く機会を頂きました。

普段の講演では、アジャイルやRuby、クラウドといった技術についての話のご依頼は多いのですが、今回は、異業種ということで、あまり専門的な話をしないことにしました。

ただ、ふと考えてみると、まだ私にそれほど偉そうに話せる実績はないので、自分が辿ってきたキャリアと、その中で起きた出来事や考えたことなどをお話することにしました。

「技術」について話をするのではなく、「自分」について話すのはとても緊張もしましたし、その資料を作るにあたっても、「人生の振り返り」をしないといけなくて、自分自身にとって貴重な体験になりました。

こうしてふりかえったことで、今の私にとって次に選ぶ道の指針が見えたように思います。

2010年あけました

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あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

2009年は、TIS株式会社の中でSonicGardenという社内ベンチャーを立ち上げた年でもあり怒濤のように過ぎ去った一年でした。多くの出会いがあり、色々な方々に支えて頂きながら、ほんの少しですが前に進めることができたと思います。


SonicGardenとしては、去年に引き続き、企業内SNSとしてSKIPを提供させて頂いています。SNSの本質は人と人の関係構築にあると思います。そこに情報を載せることでナレッジとなり、そこに思いを載せることでビジョンを共有でき、そこで個性を発揮することでセクショナリズムを解消することができると考えています。もはやSNSというキーワードはバズワードを通り越して、とりたてて注目する言葉ではなくなっているかもしれません。しかし、企業内におけるソーシャルネットワークとコラボレーションの重要性は、これから益々増してくると確信しています。SKIPでは、思いを同じくして下さる皆様と共に、単なるツールだけでない情熱共有基盤を提供させて頂き、皆様のお役に立てればと考えています。

また、企業内SNSで培ったノウハウと部品群を活かし、youRoomという新しいウェブサービスも始めました。youRoomでは、企業内に限らず、より多くの方に多くの場面で使って頂くために、無料のインターネットサービスとして提供しています。まだ実験的な取り組みではありますが、「あなたにとって世界(ソーシャル)は一つではない」というテーマで「ソーシャル」の次に来るものを確かめるために試行しているサービスです。お試し頂ければ幸いです。


組織として、社内ベンチャーという形はいびつであることは確かですが、だからこそ出来ることは何かを考えつつ、今年も進めていきたいと思います。

個人的には、2009年は迷ったり惑ったりすることがあり、反省することも多い一年でした。何事も自分で経験しないと痛さや辛さのわからない性格でもあり、無駄が嫌いな割に無駄なことも沢山してきました。性格はすぐには変えられないので、省みることで、次につなげていけるよう努力していきたい所存です。

どうぞよろしくお願い致します。

大学時代の思いで

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私の出身大学から、会報誌の卒業生の近況報告を伝えるコーナーに載せたいので協力してくれないか、という連絡が来ました。なんとなく、学生時代のことを思い出しながら書いてみましたが、何か会報誌だけに載るのはもったいない気がしたので、こちらにものせておきます。



 立命館大学を卒業して10年が経ちました。立命館の学部、そして大学院と、学生として過ごした6年間よりも長い時間を社会人として過ごしてきた訳ですが、今でも学生時代の頃のことはよく覚えていますし、今の私を作り上げた基礎はやはり、大学での経験だったのだろう、と改めて思います。

 今、私はTIS株式会社の中で、社内ベンチャーを立ち上げて経営者をしています。TISは、いわゆるシステムインテグレーターであり、顧客に情報システムを提供しています。私が立ち上げた社内ベンチャー「SonicGarden」は、TISがまだ取り組んでいない新規事業に取り組むための組織です。

 SonicGardenでは、主にSaaS(Software as a Service)を中心に事業を展開しています。今の主力サービスは、大企業向けの「セクショナリズムの解消」を実現する「社内SNS」である「SKIP」というソリューションです。企業風土の活性化に悩みをもった企業に対し、SaaSとコンサルティングを提供しています。

 私は、SonicGardenの中で経営者として日々、事業経営を行っています。経営の仕事、とはいえ大層なものではなく、少人数のベンチャーなので、できることは何でもやるといったスタンスです。今でこそ、経営者という立場ですが、元々は、学生時代は理系でしたし、入社後もプログラマやシステムエンジニアとして仕事をしてきました。むしろ、プログラミングは大好きで、私にとって天職とも思える仕事だったし、それができるという理由で今の会社を選んだのでした。

 では何故、そんな私が事業経営に従事することになったのか、社内ベンチャーを立ち上げようと考えたのか、その説明には、立命館での学生時代の経験まで遡ることになります。

 大学時代、私は2つのことに没頭した記憶があります。1つは、知り合いの学生が立ち上げたベンチャー企業でのアルバイト。もう1つは、研究室の仲間とともに作って公開したフリーソフトです。

 ベンチャー企業でのアルバイト経験は、私にとって、プログラミングを仕事にすることの楽しさ、クリエイティブな発想を実現する方法、そしてビジネスに対する考え方の基本を学ぶことのできる機会でした。なによりも自分より何十倍も優れた人たちに囲まれて仕事ができた経験は、なにものにも代え難いものでした。

 研究室の仲間と作り上げたフリーソフトは、当時普及の兆しが見え始めたインターネットで公開したことで、日本中のユーザに使ってもらうことができ、しかも、使ってくれた利用者から直接メールなどで反応をもらうことができ、大興奮をしたことが記憶に残っています。反響も大きく、雑誌などで取り上げられ、関連書籍も出すことができました。そこで、自分たちのアイデアでソフトウェアを作りあげること、利用者からの直接のフィードバックを得ることの楽しさを覚えました。

 そして大学院を卒業した後、現在の会社に入り、プログラミングの仕事に従事することになりました。お客様のシステムを作り上げる仕事は、とても学ぶことの多い仕事ではあったのですが、自らのアイデアを実現する仕事とは少し違っていました。そこで私は、その自分がやりたかったことを実現するために、社内で企画を作り提案を通すことで、社内ベンチャーを立ち上げました。自らが経営者の立場になることで、本当にやりたかった仕事を得ることができました。

 こうして、今の私があるのは大学での経験が礎となっています。改めて、そのような経験の場を与えてくれた立命館には感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。

SonicGardenの倉貫です。

TIS株式会社で、社内ベンチャーカンパニー「SonicGarden」を立ち上げて、カンパニー長をさせてもらっています。

SonicGardenについては、追々、このブログで紹介していこうと思います。

これまではずっと技術畑でやってきたので、「経営」だったり「営業」だったり、とても新鮮な毎日を送っています。驚くほど、学ぶことばかりの毎日です。

そんな中で学んだことを、少しずつ残していく為に、カンパニー長としてのブログを始めることにしました。

「アジャイル」というキーワードでの告知やお知らせについては、今まで使っていた、はてなダイアリで引き続き、書いていこうと思っています。

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  • 倉貫 義人
  • SonicGarden 代表取締役社長
  • ソニックガーデンの創業者で代表取締役社長。日々アジャイルソフトウェア開発とリーンスタートアップを実践しています。クラウドを活用したワークスタイルの変革を目指しています。「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットーです。
  • 詳しいプロフィール
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