読書の最近のブログ記事

テレビ東京のワールドビジネスサテライトで取り上げられるなど、このところ話題になることの多い「リーンスタートアップ」について、提唱者であるエリック・リース自身によって書かれた本の翻訳版が出版されました。

リーンスタートアップとは、起業家であるエリック・リースの失敗と成功の経験をもとに、製造業におけるリーン生産方式の概念を応用して説明した、これまでにない新しい「スタートアップの手法」のことです。

リーンスタートアップそのものについては、以前に私もブログで紹介しましたので、そちらも参照ください。




リーンスタートアップとは

世の中のスタートアップの殆どが失敗しているけれど、実は成功の確率を高めるにはやり方があって、そのやり方としてまとめたものが「リーンスタートアップ」だと本書では言っています。

そのやり方は、必要最小限の機能だけでリリースをすることや、サイクルタイムを極端に短くしていくこと、ユーザや顧客の反応を実験してフィードバックをうけ、意思決定を科学的に判断するというようなことが特徴的です。


この方法は、新規事業を成功させるためには、事前に綿密な事業計画を立てて、大きな投資や予算を獲得し、優秀な人を集めて、素晴らしい製品を作り上げるべきだ、と考えている人からすると、ありえないと思えるかもしれません。

しかし、ありえないことを起こすことがイノベーションであるならば、従来の方法では生みだすことは出来ません。これまでにないやり方が必要なのです。


だからといって「Just do it!」の精神で、あたかもギャンブルのようにスタートアップに取り組めば良いかというと、それではうまくいきません。

そのスタートアップにかける情熱やエネルギーを無駄遣いすることなく、成功させるためには従来とは違うマネジメントの方法が必要になります。それがリーンスタートアップです。


以下のリーンスタートアップの5つの原則を本書を読むことで身につけることができます。

1.アントレプレナーはあらゆるところにいる
2.起業とはマネジメントである
3.検証による学び
4.構築ー計測ー学習
5.革新会計(イノベーションアカウンティング)


わたしのリーンスタートアップの起源

私も自分で起業してスタートアップを立ち上げている一人なので、リーンスタートアップに書かれていることはとてもしっくりきました。私もエリックと同じでアジャイル開発に取り組んだ後、そこでの経験を元に起業したという経歴をもっているので、彼が経験した成功と失敗について、とても共感しました。

私が大企業に所属していた頃に社内ベンチャーを立ち上げたことが、今の「株式会社ソニックガーデン」の前身になっています。社内ベンチャーを立ち上げたきっかけも、新規事業をしたいという情熱が最初でした。


当時をふりかえってみると、大企業の中で新規事業をしようとすると、最初に事業計画書をつくる必要があります。そこまでは会社として当然ですが、そこから予算をとったり、事業をすること自体の承認を得たりと、様々な関係部署や役員などとの調整が入ります。

多くの関係者のアドバイスやおせっかいの結果として、当初考えているよりも大きな成果を求める計画が出来上がり、短期間でそれを実現するために、最初から大きく賭けないといけなくなってしまいます。当然リスクを排除した中身もつまらないものになります。


しかし新規事業は未開拓の領域に進むことなのに、最初から計画を決めきって大きく進めていくようなやり方は向いてなかったのです。そこで、社内ベンチャー2年目以降は与えられた予算を殆ど使うことなく、小さく少しずつ検証しながら進めていくやり方に切り替えました。

その結果として、大きな予算を使って進めようとするよりも、小さく検証を繰り返しながら進めていく方が、事業としては成功することが出来、会社として独立することができるようになりました。


無駄をなくして、検証から学ぶことのできるチームを作ることができれば、大きな組織では出来なかったことを実現することが出来るのです。


「リーンスタートアップ」という本の価値

この本を読んで、当たり前のことが書いてあると思った人もいるかもしれません。私もそれに近くて、リーンスタートアップそのものを知る前からやっていたことを、リーンスタートアップを知る人に説明したら「それはリーンスタートアップですね」と言ってもらえたからです。

そういう人にとっては当たり前のことしか書いてないかもしれないけれど、スタートアップに関して、こうした経験を元に分析された上で総合的にまとまって理論として書かれた本は他にあまり知りません。


この本が広まって、多くの人に読まれることで、読者同士の共通言語が出来ることが大事なんだろうと思います。


特にエンジニアは、経営(マネジメント)に関することにあまり興味をもっていない人が多い。にも関わらず、このリーンスタートアップというビジネス書は、エンジニアも興味をもっている人が多いです。

アジャイル界隈でのキーワードである「リーン」という言葉を入れてきたエリックリースのうまさはありますが、これまで読むことも意識することもなかったであろうエンジニア層にリーチできたのは素晴らしいことです。


このビジネス書を読んだ同士であれば、経営者でもマーケッターでもエンジニアでも、共通言語をもつことができて、同じ言葉で議論をすることが出来ます。それってすごいことだし、そうして議論できるチームというだけで、スタートアップとして成功する確率が高そうに思えます。


ちょっと読んで知った風に振る舞うのではなく、一度、謙虚にじっくり読んでみると良いと思います。(たしかにちょっと文章は冗長だと思いますけどね。)


読書メモ

ここでは本書を読んで気になった部分をメモしておきます。


p69.「リーンな考え方における価値とは顧客にとってのメリットを提供するものを指し、それ以外はすべて無駄だと考える。」

顧客とってのメリットとなること以外は無駄だと言ってます。とてもシンプルで、かつ明確な判断基準になります。どれだけアジャイルだなんだと言って沢山つくったとして、それが最終的に顧客にとってのメリットにならなければ、すべて無駄なことなのです。


p79.「問うべきなのは「この製品は作るべきか」であり「このような製品やサービスを中心に持続可能な事業が構築できるか」である。」

スタートアップは実験だと考えるべきで、できるかどうかではなく、すべきかどうかを先に考えなければいけないし、それが正しく答えられるためには実験をする必要があるのです。実験を行って「検証からの学び」ができるチームでなければいけません。


p148.「作るのにどれだけの時間がかかったかなど、顧客は気にしない。顧客が気にするのは、自分にとっていいか悪いかである。」

これも開発者だと勘違いしてしまうところです。作るのに時間をかけたものは価値があると思いたくなる気持ちもわかりますが、時間は価値にならないのです。そうであれば、最小限の時間で最大限の効果を出せるように無駄をなくす意識をもつべきですね。


p.150.(MVPを作るときのシンプルなルール)「求める学びに直接貢献しない機能やプロセス、労力はすべて取り除く」

MVPは思っているよりも小さくていいし、立派でなくても良いんです。人が動いても良いし、あるものを使っても良いんです。大事なことは顧客に提供して「検証からの学び」を受け取れるかどうか、なのです。


このように、作るべきモノの開発よりも、顧客そのものを中心に考えることがリーンスタートアップの基本にあります。その辺りはアントレプレナーの教科書という本に出てくる「顧客開発」の考えかたに近いです。

それもそのはず、アントレプレナーの教科書を書いたスティーブブランクは、リーンスタートアップの著者であるエリックリースのメンターだったからですね。


目次

  • はじめに
  • 第1部 ビジョン
  • 第1章 スタート
  • 第2章 定義
  • 第3章 学び
  • 第4章 実験
  • 第2部 舵取り
  • 第5章 始動
  • 第6章 構築・検証
  • 第7章 計測
  • 第8章 方向転換(あるいは辛抱)
  • 第3部 スピードアップ
  • 第9章 バッチサイズ
  • 第10章 成長
  • 第11章 順応
  • 第12章 イノベーション
  • 第13章 エピローグー無駄にするな
  • 第14章 活動に参加しよう


今回紹介するこの本は、実は私が自分で選んだのではなく、ソニックガーデンの副社長である藤原から「きっと気に入りますよ」という太鼓判とともにオススメされた本です。

本書を読み終えた今、とても共感するところがたくさんあり、確かに私の「お気に入りの一冊」になりました。この本には、私がこれまで考えて実践してきたことに近いことが言語化されて書かれていました。

そして、私もこんな本を書きたかったんだ、と少しの嫉妬と悔しさも残りました。



この本を読むことで、会社を大きくしなければいけないがために、自分のライフスタイルを犠牲にするようなワークスタイルをすることは本当に幸せなことなのか、見直すきっかけになるかもしれません。

私もよく講演でも話している「小さな会社で、楽しく働き、豊かに暮らす」という思想について、本書では色々な事例を紹介しながら説明しています。それを実現するには色々な要素があると思いますが、本書は「ブランディング戦略」という切り口で説明しています。


「ブランド」は大きな会社だけがするものではなく、小さな会社こそが「ブランド」を持つことで、ライフスタイルとワークスタイルを充実させることが出来るようになる、と著者は言います。

私たちの会社であるソニックガーデンも、社員数が10人にも満たない小さな会社ですが、多くの皆様に知ってもらうことで、理想に近い働きかたが出来ています。意識してなかったですが、それは「ブランド」だったのかもしれません。


読書メモ:ソニックガーデンの場合

ここでは本書を読んで気になった部分を、私たちの会社であるソニックガーデンでのケースで考えながら紹介します。


p036.「会社自体にファンをつけていく」「会社自体に価値をつける」

「お客様」である前に「ファン」になって頂く、という発想。これは「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」で学んだことと同じですね。大事なことだし、そういう会社が生き残ると思います。

ソニックガーデンは小さい会社なので、マーケティング予算はそれほど潤沢にある訳ではありません。そこで、自分たちの仕事の進め方や、ソフトウェア開発で学んだことなどをブログや寄稿などを通じて業界に還元しつつ、そのことで多くの方に知ってもらうということをしています。


p041.小さな会社のブランド戦略は「大好きなお客さまとだけ付き合うための戦略」

ブランディングを実践していくことで、どんなお客様と仕事がしたいか、ということが実現できるという話です。私たちもこのことの重要性は実感しています。ソニックガーデンではソフトウェア開発の受託もしますが、よくある人月商売も技術者派遣もしていません。それをすると経営者としては安易に稼ぐことのできることはわかりますが、それをしてしまうと起業した意味すらなくなります。

だから、ソニックガーデンでは受託をする際に人月も派遣も一切しないのですが、そうである姿勢を前面に打ち出したブランディングをしています。だからこそ、ソニックガーデンに相談に来て頂くお客様は、その時点でずっと絞られますが、間違いなくソニックガーデンのスタイルに共感を憶えたお客様だけに来て頂くことができています。


p106.ファンをつくるためには、「まずは自分たちが最高に楽しく仕事をすること」

楽しそうに仕事をしていることが、ファンになってもらうために大事なこと、というのは当たり前のことだけど忘れがちです。自分たちの会社や上司の愚痴をいったりする人の会社にファンはつかないですよね。

ソニックガーデンでは、受託開発をする際に心がけているのは「お客様にもソフトウェア開発の楽しさを知ってもらうこと」です。私はソフトウェア開発は元来クリエイティブで楽しいものだと信じていて、それを実現するためにアジャイルなどに取り組みましたが、今や自分たちが楽しむだけでなく、お客様ともその楽しさを共有したいと思っています。


p112.ミッションづくりに、とことん時間とエネルギーを

本書では会社におけるミッションこそが、揺らぐことのないブランドの基盤であると繰り返し伝えています。確かに、使命感よりも儲けることが先にくる会社にブランドはないのかもしれません。

ソニックガーデンでは、会社を設立したタイミングでミッションやビジョンが確立していましたが、これは社内ベンチャー時代から入れて3年目でようやく出来上がったと言っても良いくらいに時間をかけました。今思えば、社内ベンチャーという苦しく不安定な立場でいた時間が、自分たち自身の存在理由を深く考え直す良い時間だったのかもしれません。

そして、ソニックガーデンでは半年に1度、ビジョン合宿と呼んでいる一泊二日の合宿にいっています。そこで全員でミッションとビジョンの見直しをするのです。前回おこなった2011年12月の合宿の様子はこちらでブログにしています。


p116.いつも頭にポジショニングを

小さな会社に適したポジションは「激戦区から、ちょっとズレたところ」、小さな会社の基本戦略は「戦わないこと」と著者は言います。そのためにポジショニングを意識する必要があります。

「激戦区からちょっとズレたところ」というのは、すごく実感としてあります。ソニックガーデンの商品である社内SNS:SKIPなどは、大手企業も参入している激戦区になりつつありますが、私たちは5年以上、そのマーケットでビジネスをしてきた実績があり、競合他社と違って提供する価値を「会社を元気にすること」と位置づけることで、欧米でつくられた製品ではできないヒューマンケアを含めることで、競合との差別化を図っています。そして、ニッチであっても、その価値を求めるお客様の数は、小さな会社をやっていくなら十分なほどにいらっしゃいます。


成功の定義

本書では、小さな会社で成功することについて書かれています。そして、本書によると成功とは「幸せになること」「思い描いた理想のライフスタイルを完成させること」ということです。

私は起業したときによく言われたことが「そのビジネスモデルで成功することを期待してます」とか「ぜひ成功してください」とか言われました。ありがたいお言葉なんですが、でもずっと違和感があったんですよね。

今現在のソニックガーデンでは、赤字もなく利益がちゃんとある状態で、社員のみんなも家族との時間を持つことができて、今この瞬間が大金持ちってことではないけど、豊かに楽しく暮らせているので、私としては成功なんだけど、他の人からは成功と見えないのかな、と。

それは、成功の定義が人によって違うからなんですね。大企業になったり、上場して大金持ちになったら成功だと思う人もいれば、そうじゃない人もいます。私たちの価値観は、小さな会社でも、信頼出来る仲間と、喜んで頂けるお客様と、楽しく働き豊かに暮らすということなので、気にする必要はなかったのかもしれません。


社長の仕事

この本には社長の仕事は「3年後に生き残ってる理由を、今日考える」ということが書いてます。私も同感です。小さな会社の場合、社長自身がプレイングマネージャをしていることが多いので、社長としての仕事を持てないことになり、結果として会社がちゃんと儲かることに繋がらないという悪循環がありますね。

ソニックガーデンでは、ありがたいことに社長が「社長の仕事」をする時間をかなりもらっています。だからこそ、新しいビジネスモデルを産み出せたり、ブランディングや人事にも力を入れることが出来ています。

ソニックガーデンは2代表制を採用しており、副社長も代表取締役なので、普段の業務の遂行はCOOとして副社長だけでまわせるようになっています。また、チーム全体が自立的でスタッフそれぞれがビジネスの判断もできるようになっていることも強いです。そんな仲間と一緒に起業できて、本当に幸せなことです。


先日「ユーザエクスペリエンスのためのストーリーテリング」という本を献本頂きました。ありがとうございます。本書はユーザエクスペリエンスとストーリーテリングについて学ぶことのできる本です。前半は、ユーザエクスペリエンスそのものについての重要性の理解から、表現としてのストーリーテリングの必要性について説明し、そして、本書の後半では具体的なテクニックも交えて手法について解説しています。



具体的なテクニックや内容は本書を読んで頂くのが良いと思いますので、以降では私が本書を読んで感じたことや、考えたことを記しておきます。書評というよりコラムになってしまいました。


ユーザエクスペリエンスの難しさ

そもそもユーザエクスペリエンスとはなにか。ソフトウェア開発で言えば、ディスプレイに表示される画面のインターフェースのことではありません。それは単なるユーザインタフェースに過ぎないのです。ユーザエクスペリエンスとは、利用者がそのソフトウェアと対峙をした際に感じる気持ちや感覚、結果として受ける印象や思考の流れのことまでを含んだもののことです。

ユーザエクスペリエンスの設計は、単に出来ることを満たせば良いかどうかという機能の話だけではなく、どんな色や絵を配置するかといった見た目の話だけでもなく、ユーザ自身の体験を設計しなければいけないので非常に難しいことです。しかも、設計者が設計したものを「伝える」方法はさらに難しいのです。「ユーザの体験」を伝えるって一体どうすれば良いのでしょうか。

そこで「ストーリー」を使います。ストーリーとして表現すること、伝えることで、「ユーザの体験」を考えることが出来るし、共有することができます。ストーリーテラーとして書き出すことで、利用者の心理状況を具体的に考えることができるし、オーディエンスはストーリーを読むことで利用者の気持ちを追体験することができます。


ユーザエクスペリエンス設計は誰が身につけるべきか

製品のユーザエクスペリエンスは、誰が設計するべきでしょうか。もしくは、ユーザエクスペリエンスの善し悪しを誰が判断すべきでしょうか。単にUX専任のデザイナーがいれば済む話ではありません。ユーザエクスペリエンスとは製品そのものを表すと言ってよくて、だからこそ、製品やサービスの責任者自身が、ユーザエクスペリエンスの設計に携わるべきです。専門家にアウトソーシングして済む問題ではないのです。

製品やサービスの責任者であれば、ユーザエクスペリエンスを考えるべきだし、他に作り手がいるのであれば、それを伝えなければいけません。ユーザインタフェースの設計に画一的な答えはありません。使うユーザやシチュエーション、そのサービスで実現したいビジョンによって、ユーザインタフェースは変わってきます。そのユーザインタフェース設計の前提となるのがユーザエクスペリエンスについての共有です。

ユーザエクスペリエンスがちゃんと伝わっていなければ、ユーザインタフェースや機能についての本当に細かい点まで伝えないと思い通りにならないと嘆くことになるでしょう。しかし、ユーザエクスペリエンスが共有できていれば、そんなことにはならないはずです。製品やサービスの責任者であれば誰でも、ユーザエクスペリエンスについて学び、伝え方としてストーリーテリングを学び、実践すべきです。その学びのきっかけとして本書を読むと良いでしょう。


アジャイルとユーザエクスペリエンス

ソフトウェア開発においてはアジャイル開発というのは、ユーザエクスペリエンスを高める最良の方法だと、考えています。ソフトウェアの場合は、実際に動かすまで本当にどんなユーザ体験が起きるのかわかりにくいという問題があります。動くソフトウェアなしでユーザエクスペリエンスを高めることはとても難しいのです。よって、アジャイル開発を通じて動くソフトウェアで確認していくことは効果的なんです。

ではストーリーは不要でしょうか。そんなことはありません。大河ドラマほどになるような膨大なストーリーを最初から最後まで用意しておくようなことは必要ありませんが、プログラミングをしていくにあたり、やはり何かしらのよりどころがなければ、ユーザインタフェースの設計に一貫性を欠くことになってしまいます。

アジャイルの場合は、一気にすべてのストーリーを書き上げるのではなく、少しずつ書いていき、それにあわせて少しずつ動くソフトウェアを完成させていき、その動くソフトウェアからのフィードバックをうけてまた、ストーリーを書き直したり書き足したりしていくというやり方になります。アジャイル開発では昔から、作るべき仕様を「機能」や「要求」と言わずに「ユーザストーリー」と呼んでいたのです。


アジャイルジャパン東京サテライトでも、ユーザエクスペリエンスに関するセッションがありますので、ユーザエクスペリエンスに興味をもったなら、ぜひご参加ください。


目次 こちらより引用

  • 1章:なぜストーリーなのか?
  • 2章:UXストーリーの効果
  • 3章:ストーリーは聞くこと、そして観察することから始まる
  • 4章:ストーリーの倫理
  • 5章:UXプロセスにおけるストーリー
  • 6章:ストーリーを集める
  • 7章:ストーリーを選択する
  • 8章:アイデアを生むストーリーの使い方
  • 9章:ストーリーで評価する
  • 10章:ストーリーを共有する
  • 11章:ストーリーをクラフトする
  • 12章:オーディエンスに配慮する
  • 13章:ストーリーの構成要素を組み合わせる
  • 14章:構造とプロットを作る
  • 15章:ストーリーの伝え方
  • 16章:新しいことに挑戦する


本書は、シカゴを拠点におき、全世界向けにプロジェクト管理ツールなどのオンラインツールを提供する企業である「37signals」の成功までに至った独自の経営哲学を書いた本です。37signalsは、プログラマだったら誰でも知ってる「Ruby on Rails」の作者であるDHHが所属することでも有名です。

本書は以前に発行された同名の書籍の完全版ということで、イラストなどが入っていますが、内容は基本的に同じです。私自身、以前に発行された本を持っており、既に読んではいたのですが、改めて読み直すきっかけにも良いと思い、今回の完全版を購入しました。数年たって改めて読んで感じたことは、時代が彼らの働きかたに少し追いついてきたように思いました。



37signalsは、私たちSonicGardenにとってベンチマークにしている会社のひとつです。だからこそ、本書「小さなチーム、大きな仕事」と、Webでも公開されている「Getting Real」は、バイブルのようなものとして全員で読み込んでいます。今回、完全版が出たのを機に、改めて社員のみんなに読んでもらおうと思っています。もはや「本書に共感できること」をSonicGardenの募集要項にいれたいくらいだし、もし本書を読んで気に入ったと言ってる人とは、すぐに仲良くなれるような気がします。

37signalsの哲学は帯に書かれていますが「会社は小さく。」「失敗から学ぶな。」「五時には帰宅。」「けんかを売れ。」など、一見すると突拍子も無いことのように思ってしまいます。しかし、本書を読み進めていくと、それらは単なる思いつきによる奇抜さではなく、徹底的なロジカルでシンプルな思考に裏付けられたものだと気付かされます。

チャレンジをする人は少なからず常識から外れたことをしなければいけない場面が出てきます。そうした人にとって、本書は世間一般の常識とは違ったとしても十分に成功することが可能だと勇気をくれる筈です。

この本の良いところ、私の気に入っているところは、評論家による後付けの理屈や理論ではなく、彼ら自身が実践していることを、自分たちの生の言葉で書かれているところです。本書を読んでいくと「自分だったらどうする」「どうすれば彼らのように出来るか」「彼らの間違いは何か」といった形で、脳を非常に刺激してくれます。

ここで得た「ひらめき」があり「情熱」が湧いたなら、今すぐ動き出しましょう。思うだけでは何も変わらないのです。彼らの言葉を使うと「Get Real(形にしてみよう!)」なんです。


以降は、私が読んでポイントだと思ったところです。

見直す

この章では、様々なビジネスで常識だと思われていたことを見直すきっかけを与えてくれます。なぜ計画をしなければいけないのか。なぜ会社は大きくしなければいけないのか。なぜたくさん働かなければいけないのか。当たり前だと思われている、これらのことに答えを持っている人は多くはいないでしょう。

これはきっかけです。見直す第一歩は疑問に思うことです。今までの慣習に疑問を持つことから始めてみましょう。

P.22 計画ではなく実状にあわせて予想と呼んだらどうだろう。(中略)予想を計画に変えたとたん、危険な領域に入り込むことになる。計画は、過去に未来の操縦をさせる。目隠しをするのと同じだ。
P.26 小さなビジネスを目指すことに不安を抱かなくていい。持続的で、利益の出るビジネスを行っていれば、それが大きかろうと小さかろうと誇るべきことなのだ。


先に進む

この章では、新しくビジネスを始めることを決意したときに、先に進めるために必要なものと必要でないものについて教えてくれます。必要なことは、何か重要なことをする意思、自分たちに必要なものを作ること、アイデアだけでなく作り始めること、少しずつの時間を見つけること、自分だけの信念を持つこと。

本当に大事なことは、資金でも時間でもなく人でもなく、現実のビジネスを実際に進めていくことから始まります。

P.35 これは人生の仕事なのだ。どこにでもあるような製品をもう一つ作りたいのか、それとも革命を起こしたいのか。(中略)自分の見たかった変化を他の誰かが起こすのをまっていてはいけない。
P.60 ビジネスに対して「利益を上げる方法は将来みつける」なんて態度をとる人は話にならない。(中略)利益にいたる方針のないものはビジネスとは言わない。それは趣味だ。

進展

大量の資金や人、時間や人脈などが無ければ成功しないという思い込みをなくし、今あるカードの中でどう進めれば良いか、何をやって、何をやめれば良いのかの指針をこの章では学ぶことができます。全体像を捉えるところから始め、すべてを詳細に考え作り上げようとせず、何をしないかの決断を繰り返す。

本質を掴むことは、流行りのテクニックやツールを使うことよりも大事なことであり、自分自身の本質は何かを考えるべきです。

P.74 芯の部分を見つけるには、「もしこれを手放しても、自分が売るものはまだ残っているか?」と自身に問いかけることだ。
p.79 できるだけ「これについて考えよう」ではなく「これについて決断を下そう」と思うことだ。決断する姿勢を持つことだ。完璧な解決を待たず、決断して前進するのだ。

生産性

この章では、生産性を上げるための方法、生産性を下げないための方法、そして何よりも、生産性とは一体何かを見直すきっかけを与えてくれます。やみくもに沢山のことをしたからといってそれは生産性が高いとはいえないのです。しなくていいのは何か、どの程度で良しとするのか、考える必要があります。

生産性をあげるポイントは、少しずつ見える範囲の目標の中で、一時的に頑張るのではなく、こつこつと進めることなんでしょう。

p.106 思い切って行動に踏み切る前にあなたが行おうとしていることの本当の価値を定めよう。(中略)すでに多くの労力を費やしていたとしても取り組んでいることを中止にするのが正しいこともある。
p.134 優先順位付けについてアドバイス。数字やラベルで優先順位を付けてはいけない。(中略)視覚的に優先順位を付ける。最も重要なことを一番上に配置する。次に重要なことはその下。こうすれば、最も重要なことは一度に一つだけだ。

競合相手

ビジネスである以上、競合相手は必ず存在します。競合との差別化をどうするか、競合を真似ることの無意味さ、競合にけんかを売ることで立場をはっきりさせること、などを学べます。しかし、本当の見直しは、競合との戦いを気にする必要がない、ということです。大事なことは自分たちのビジネスがどう成立するか、なのです。

p.153 あなたが他の人たちとただ同じようになるのであれば、なぜあなたは別にやる必要があるだろう?(中略)単に他を真似るのではなく、あなたが信じていることで戦うほうが良いのだ。

進化

この章では、製品やサービスを進化させるにあたって、顧客の声か自分の考えか、どちらを優先すべきかを学ぶことができます。常識的に考えれば、顧客の声を聞かないことはありえないですが、まずは否定することを考えます。それは自分自身のアイデアにさえ否定するのです。まずは否定することから、何を実現すべきかが見えてくるのです。

p.157 あなたのゴールは製品があなたにとって正しいものであり続けることだ。誰よりもあなたがそれを信じなくてはいけない。

プロモーション

制約の中でプロモーションを行い、自分たちと製品を知ってもらうにはどうすれば良いか、学ぶことができます。資金がなくても、自分たちが学んだことや舞台裏を見せていくことで、自分たち自身の魅力を知ってもらうという方法です。

自分たちのビジネスにとって、誰にどのように知られることが大事かを理解していなければ、大手メディアに載るにはどうすれば良いかなんてことに苦心してしまうし、きっとそれは無駄なことでしょう。

p.193 マーケティングは、会社の皆が行うものである。三六五日、二四時間いつでも。(中略)マーケティングは独立した出来事ではなく、日々やっているすべてのことの集まりなのだ。

人を雇う

組織を小さいままにする37signalsの真骨頂は、人の雇用についての哲学にあります。人が足りなそうだからといってすぐに雇うのではなく、まずは自分たち自身でやってみる。やってみることで学びがあり、人をどう雇えば良いかわかるようになるのです。

急激な人の増加をよしとせず、採用するにあたっても履歴書や経験年数、学歴などをみるのではなく、自ら仕事を見つけて働けるような人材を、必要であれば世界中で採用しようとしています。

ダメージ・コントロール

ビジネスを進めると問題の一つや二つ出てきます。そうしたときにどう対処すべきかを知ることができます。ここでも一般的な大企業がやるべきと思われていることを、本当に小さなチームがすべきなのか、見直しをしています。

p.238 顧客と社員の間に人が多いほど、顧客の声は歪んだり失われたりしていく。チーム全員が顧客とかかわりをもたなければならない。(中略)製品を作る者を顧客のフィードバックからかばってはいけない。直接の批判はみんなで受け取ろう。

文化

チームの文化とはそもそも、作り上げるものではなく、自然と出来るものであるという見直しが出来ます。文化は、そのチームが選んできた選択やルールなどから生まれてきます。37signalsがどうやってその文化を産み出してきたのか、この章では知ることができます。

p.249 人を子供扱いすれば、子供のような仕事しかしない。これが多くの会社、多くの管理職の人の扱い方だ。(中略)何にでも許可を必要とする環境は「何も自分で考えない文化」をつくる。

目次 こちらから引用

  • まず最初に
  • 見直す
  • 先に進む
  • 進展
  • 生産性
  • 競合相手
  • 進化
  • プロモーション
  • 人を雇う
  • ダメージ・コントロール
  • 文化
  • 最後に
  • 37シグナルズについて

本書は、日本ではあまり有名でないグレイトフル・デッドという1960年代にアメリカ西海岸でうまれ、ビートルズやストーンズよりも大きな市場を作ったというバンドの活動を通じて、最新のマーケティングを学ぼうというビジネス書です。

TwitterやFacebookで話題になっていたので興味は持っていたのですが、またイロモノなのかなぁと敬遠してましたが、違ってました。割と硬派な内容で、無理矢理こじつけた訳でなく、ちゃんとしたマーケティングの本でした。

しかも、フリーミアムやバイラルなどといった最近のウェブ界隈で行われている最先端のマーケティングをインターネットの無い時代にやっていたという話で、グレイトフル・デッドの活動を紹介すると共に、事例としてDropboxや、Yコンビネーター、Google、MySQL、Mashable、Amazonなどの話が出てきます。ここに並んでいる名前を見ているだけで読みたくなりますよね。



本書で紹介されているマーケティングは、実際はこうだったら良いのになぁと思ってしまうようなマーケティングを実際にやってみた様子が紹介されています。これまでのマーケティングの常識に従っていたら出来ないことをやってのける彼らにしびれます。

本書には共感出来るところが沢山ありましたが、中でも私がぐっときたところから、学んだことを幾つか残しておきます。


1章 ユニークなビジネスモデルをつくろう

p.62「グレイトフル・デッドは、ビジネスモデルの革新が、製品の革新と同じかそれ以上に重要であることを教えてくれる。」

彼らは、業界の常識だったアルバム販売による売上を目指すのではなく、ライブから収入を得ることに全力を注ぐというビジネスモデルの転換をしたそうです。それによって、新たな「ファン体験」を生み出すことができ、ライバルとの差別化だけでなく、バンドとファンの両方が連鎖的に恩恵をうけることが出来るようになった、と。

ここから学べることは、業界の常識に闇雲に従うのではなく、自社と顧客にとって本当の利益は何かを考え、それを実行に移すということだと思います。


4章 ありのままの自分でいよう

p.92「ファンは、グレイトフル・デッドの"偽りのない本物らしさ"に親しみを覚えた」

勘違いしがちだけど、企業としての活動は「ちゃんと」してないといけないと思い込んでるところがある。プレスリリースや広報などは特に。しかし、ちゃんとすればするほど個性がなくなってしまうのも確かで、そうでなくて自分たち自身の個性を出して良いんだということを教えてくれました。


5章 「実験」を繰り返す

p.104「グレイトフル・デッドは、リスクを取り、新しいことに挑み、失敗と成功から学び、全身し続けることを教えてくれる。」

失敗は悪いことではなく、そこから学びとって次に活かせば、それは実験なんだと言うことができる。挑戦を繰り返して、失敗から学んでいかなければ、成功は産まれないという主張は、とても共感できます。見直しのサイクルを短くして、何度も実験をしてみることが大事です。


8章 変わり者でいいじゃないか

p.133「私たちは、ある意味ではみんな変わり者なのだ。賢い会社は、変わり者を理解し、そこから市場を作り出す。」

当たり前だけど、すべての人が同じ嗜好を持つ訳ではなく好き嫌いがあって、全員に好かれるものは作り出せない。変わり者の集まりが市場になることを改めて再確認させてくれます。しかも、このインターネットの時代に本当に変わり者だけを集めたとしても、それなりの市場になるはずです。


12章 中間業者を排除しよう

p.182「グレイトフル・デッドは、自分と顧客との間にある何層もの中間業者を取り去り、顧客を直接取り込むことを教えてくれる。」

直販の方式は、本当に顧客を大事にするのならば、とても重要で、中間業者による付加価値のないマージンを搾取することを防ぐことができます。本当にその中間業者が必要かどうか考え直すべきで、今やインターネットによって様々な中間業者をなくすことが出来る時代になっています。


19章 自分が本当に好きなことをやろう

p.253「グレイトフル・デッドは、自分たちがやっていたことが本当に好きだったのでそれをやり通した。そしてもちろん、結果的に成功した。」

好きなこと、情熱を持てることを仕事にすることが、人生にとって非常に意味のあることだと思わせてくれます。そして、情熱を持って仕事をすることの方が成功する可能性が高くなることを示してくれています。

グレイトフル・デッドほどの成功までいかなくとも、好きなことを仕事にしている方が、きっとうまくいく確率は高くなるだろうし、何よりも、そうして過ごした人生の方がなんと楽しいことだろうか。


目次 こちらから引用



  • 序章 「グレイトフル・デッドのライブほど素晴らしいものはない」

  • PART ONE THE BAND バンド

  • 1章 ユニークなビジネスモデルをつくろう

  • 2章 忘れられない名前をつけよう

  • 3章 バラエティに富んだチームを作ろう

  • 4章 ありのままの自分でいよう

  • 5章 「実験」を繰り返す

  • 6章 新しい技術を取り入れよう

  • 7章 新しいカテゴリーを作ってしまおう

  • PART TWO THE FANS  ファン

  • 8章 変わり者でいいじゃないか

  • 9章 ファンを「冒険の旅」に連れ出そう

  • 10章 最前列の席はファンにあげよう

  • 11章 ファンを増やそう

  • PART THREE THE BUSINESS  ビジネス

  • 12章 中間業者を排除しよう

  • 13章 コンテンツを無料で提供しよう

  • 14章 広まりやすくしよう

  • 15章 フリーから有料のプレミアムへアップグレードしてもらおう

  • 16章 ブランドの管理をゆるくしよう

  • 17章 個人事業者と手を組もう

  • 18章 社会に恩返しをしよう

  • 19章 自分が本当に好きなことをやろう


本書を知ったのはまさしくソーシャルメディアの力でした。Facebook上で、Twitter上で、私の友人たちが続けて購読しているのを横で見ているうちに、読みたくなって買ってしまいました。本の最初の推薦文では、モチベーション3.0のダニエル・ピンクや、FacebookのCOOシェリル・サンドバーグ、先日書評を書いた「新しい働きかたが出来る人の時代」のセス・ゴーディン、ジェフリー・ムーアなど、著名な方々による言葉があり、読む前から期待させてくれます。


ソーシャルメディアをツールでなく人で解説した本

本書は、ソーシャルメディアを題材にしていますが、テクノロジーの本ではありません。ましてや、巷にあふれるFacebook/Twitterの操作本でもありません。本書では、ソーシャルメディアを活用する「人」とその人が起こしたムーブメントにフォーカスを当てた本です。そして、ソーシャルメディアにおける本当の主役はツールではなく、それを使う人々であるため、とてもまっとうなソーシャルメディアの解説本と言えます。

本書のタイトルになっている「ドラゴンフライ エフェクト」とは、「焦点(Focus)」「注目(Grab Attention)」「魅了(Engage)」「行動(Take Action)」の4つのスキルを上手に活用することで、成し遂げたい目標のためにソーシャルメディアの力を活かすことのできる手法のことです。それらの原則とスキルはあたかも、蜻蛉(ドラゴンフライ)の4つの羽に喩えられ、うまく調和させることで、ソーシャルメディアにおける自分の意思を大きな波紋にすることが出来ると主張しています。本書では、そのソーシャルメディアで起こった波及効果について、様々な事例を交えて説明しています。


ソーシャルメディア活用をデザイン思考で解説

また本書の特徴は、デザイン思考を活用して手法の解説をしています。前述の4つのスキルには原則という形でまとめられています。原則の名前だけ抜粋して紹介します。

・焦点(Focus):焦点を絞るためのデザイン原則
 1)人間的(Humanistic)
 2)実行可能(Actionable)
 3)検証可能(Testable)
 4)明確(Clarity)
 5)幸福(Happiness)

・注目(Grab Attention):注意を引くためのデザイン原則
 1)私的に
 2)驚きのあることを言う
 3)メッセージを視覚化する
 4)感覚に訴える

・魅了(Engage):魅了するためのデザイン原則
 1)ストーリー(物語)を語る
 2)共感する
 3)信頼を得る
 4)メディアを組み合わせる

・行動(Take Action):行動を起こさせるためのデザイン原則
 1)簡単にする
 2)楽しくする
 3)相手に合わせる
 4)オープンにする

キーワードだけですが、ソーシャルメディアを活用するにあたって重要であると感じられるものが並んでいるのがわかります。ソーシャルメディアならではのマーケティング術を身につけることができると思います。ソーシャルメディアのなかった時代のマーケティングから、ソーシャルメディアを活用するマーケティングに時代が移るとして、本書を読むことで、ソーシャルメディアを活用する上で重要なことは、ひとりの人間の人間性や意思の力だと再認識させてくれます。これまでよりも、よりコンテンツを発信している「人」の顔を前面に出すことで、興味・関心・共感を得ていくことが出来ます。


ストーリーの力

私が特に勉強になったと思うのは、「魅了」の原則1の「ストーリーを語る」でした。ユーザへの情報提供は、きれいに整理された情報や、きれいにライティングされた文章があることの方が大事だと思っていたところがありましたが、それも大事かもしれませんが、それよりも物語として相手に伝えることの方が記憶に残りやすいし、興味をもってもらいやすい。確かに、営業マンがパンフレットを持って説明に来るより、創業者が何故その事業を始めたのかを知れた方が、購買につながりそうに思えます。

本書を通じて、ソーシャルメディアの活用方法を学ぶことが出来ますが、そこに書かれたストーリーとしての事例を読んでいくことで、世界を良くしようと働きかけた人たちの思いに触れることで、幸せとは何かを考え直すきっかけも得ることが出来るでしょう。自分の死に直面しながら、世界を良くするために動き、そこにソーシャルメディアがあったことで、何倍にも大きな波を起こした人たちのストーリーは、読んでいて胸にこみ上げるものがありました。


世界をよりよくする

ソーシャルメディアで世界が良くなる訳ではないけれど、人の意思が思いのほか速く広まるようになったのは事実。ソーシャルメディアのプラットフォームは今後変わるかもしれないけど、それを活用できるように人は進化していくのでしょうね。世界はフラットにシンプルになりつつあり、権威や財産を持たなくても人々の協力を得られるようになってきている息吹を感じることができました。

本書を読んだあとは、自分でも何か行動したいと思うようになると思います。そこで必要なのは目標、それも「意義ある目標」です。なにかを為そうとするときに、これまでよりも早く大きく波及効果をもたらすことができるようになったとはいえ、為すべきことがなければ始まりません。実はそれを見つけることが一番難しいのかもしれませんが、それも実はソーシャルメディアで誰かの活動や思想を見てヒントを得られるかもしれません。

私の会社であるSonicGardenもFacebookにファンページがあります。SonicGardenのビジョンは、ウェブサイトに掲載していますが、私たちの思いに賛同してくれファンページでLikeを押してくれた皆さんとは、メンバーのページに並べて表示するようにしました。まずは行動ということで、ぜひ「Like!」をお願いします!


Facebookで友人が読んだ本ということで知った本。読んでみたところ、とても面白い本でした。こういう自分では見つけられない本に出会うことができるのがソーシャルメディアの良いところですね。


とても面白いと書いたけれど、この本を読んで面白いと感じるのは、時代の変化に気付いている人に違いない。そして、そういう人たちは既に本書で書かれている「アーティスト」として活動をしている人たちなのだろうと思う。こういう本の難しいところは、すでに理解しつつある人にとっては当たり前のことを明文化してくれただけとも言えるし、まだ気付いてない人にとっては新しすぎて理解しきれない、というジレンマがありますが、本書はどちらの人にとっても役に立つ本になっているように思います。

本書では、世界の市場やビジネスに変化が起きつつあり、それに伴って人々は働きかたを変えていかねばならず、そこで成功するにはこれまでとは異なる「アーティストのように、才能を全開にして働くこと」が出来る人にならなければならない、ということを語っています。

農業社会から工業社会に変わった際に、市場からは大量生産が求められ、人は独創性や自主性よりも従順な労働力を提供することが求められてきました。しかし、一部の国や市場では、工業社会から次の知識社会に産業革命が起きつつあります。人は大量に作られたものではなく、自分の感性に響くものを買うようになり、個人と個人がTwitterやFacebookを通じて知り合うことで「人を中心としたビジネス」の可能性が大きく広がりつつあります。そこで働くには、従順なだけでは生き残れません。そんな新しい時代をどうサバイブしていくかを本書で知ることができます。

目次からいくつか抜粋。


  • 「モノが中心の時代」の終焉、そして「第三の世代」へ・・・(第1章)

  • あなたの価値は「どれだけ個性ある能力を発揮したか」で決まる(p.35)

  • 「替えの利かない人間」になれる人・なれない人の分かれ道(p.40)

  • 「知識に頼る人」が危機的な状況に(p.76)

  • 人の心に「感動を呼ぶ」仕事が最大の評価を得る(3章)

  • 「何かを与えられる人」だけが生き残る時代(5章)

  • トップダウンではもはや変化は起こせない(p.204)

ここからは私の意見ですが、工業社会が誕生したからといって農業がなくなった訳ではなく、従事する人たちの数が変わっただけで共存しています。同様に、知識社会が到来したからといって、工業がなくなることはないでしょう。工場は必要だし、そこで働く人たちも必要です。工業社会での働きかたは変わらないでしょう。しかし、知識産業が広まってきた際に、それまでと同じように働くというのは、ナレッジワーカーにとって窮屈になってくるのは間違いありません。

ナレッジワーカーにとって働くとは一体何か、本当に価値を産む仕事は何かを、企業は考えなければ生き残ってはいけないでしょう。ナレッジワーカーにとって会社にいる時間だけが仕事なのでしょうか。そうではないはずです。アイデアは考えるものではなく閃くものです。いつでも仕事だし、いつでも仕事ではないのです。そして、働く場所も同様です。ノマドと呼ばれる働きかたが広まりつつあるのは、ナレッジワーカーにとって場所は制約以上の何者でもないからでしょう。

私はナレッジワーカーが働く企業に、大企業は不要だと思っています。本書の中でも語られていますが、ダンバー数と呼ばれる組織として人間の認識できる人数の限界である150名を超えるような大規模な企業は必要ないのです。大企業は、たくさんの労働者を雇います。労働者の仕事を取り替えの利く仕事だと考えているならば、たくさんの人数を抱えていることは意味があるでしょう。しかし、ナレッジワーカーに換えは利かないのです。属人性は排除するものでなく、属人性こそが大事なのです。そうであれば、たくさんの人数は不要です。

ブルーカラー、ホワイトカラーと働きかたを分ける表現があります。ナレッジワーカーは、ただの事務仕事ではありません。デスクワークをしていればナレッジワーカーという訳ではありません。ナレッジワーカーは、新しい価値を生み出し、その人でしか出来ないことを、自分の才能と人とのつながりで実現していく人のことです。マニュアル化することができないのがナレッジワーカーの仕事です。私に言わせれば、プログラマは立派なナレッジワーカーです。プログラマのことを、ナレッジワーカーとして扱えない企業はなくなってもらいたい。

本書には、ナレッジワーカーとして働くにはどうすれば良いか、そして、ナレッジワーカーを企業側はどう扱えば良いのか、が書かれています。自分がどちらの立場であるかによって、読んだときの印象は変わるでしょう。今、企業の中で働いているけれども、時間や場所に縛られることに窮屈に感じている人、ソーシャルメディアでのつながりがビジネスになりそうなのに踏み出せない人などは、本書を読むことで、自分たちが間違っていないという実感を持つことが出来るはずです。

あわせて読みたい:『国境なきプログラマ』を目指す~ノマドワークの究極のかたち


リーンスタートアップを知ってから出会う人たちに勧められた本の一冊。リーンスタートアップの原点ともいうべき本、ということで読みました。

本書で説明するのは「顧客開発モデル」という名前の事業プロセスです。これからの時代、新規事業を立ち上げたり、スタートアップしたりしようとするアントレプレナーにとって、従来の企業の中でやっているような「製品開発モデル」を参考にした「正しく製品を作る」ことを前提にした事業プロセスに従うことは失敗への道であり、「正しい顧客と市場を見つける」ことを目的とした「顧客開発モデル」である、という考え方です。

どうしても起業や事業創造というと、アイデアとモノ作りに重点を置いて考えてしまいがちです。特に技術者が立ち上げる場合「良いものを作れば売れる」と考えがちです。しかし、本当に重要なのは「誰に」「どうやって」「いくらで」売れるのか、ということです。その顧客と市場の方を中心に据えた「顧客開発モデル」のプロセスであるべきだ、というのが本書の主張です。

本書では、その「顧客開発モデル」がなぜスタートアップにとって大事であるかを述べた後、そのプロセスである「顧客発見」「顧客実証」「顧客開拓」「組織構築」の4段階について、各章に分けて詳しく説明している。筆者の経験談を交えての説明は納得感が高く、リアリティのあるものになっています。

p36より引用

市場と顧客を発見するという作業の性質からして、あなたが何度か失敗することは間違いない。そのため、製品開発モデルと異なり、顧客開発モデルでは4つのステップそれぞれで正しく完了するまでに何度か繰り返しがあることを想定している。この点についてはしばらくの間、その意義をよく考えてみるだけの価値がある。なぜなら、「そのことから学ぼうと考えているなら失敗してもかまわない」というこの哲学が、本書の提示する手法の根幹をなしているからだ。

この引用には100%同意できます。新しい事業をするということは、計画通りにものごとを進めて正解というのではなく、仮説検証を繰り返しながら徐々に正解を探っていくようなものになります。そうであるならば、一発勝負でなく、失敗の許容を前提としたプロセスにすべきです。「顧客開発モデル」では、繰り返しを重視しています。

ここからは私の意見ですが、大企業の決裁文化において新規事業が産まれにくいのは、決裁を通すため計画の時点で叩きまくってリスクをなくそうとする割に、計画が承認されたらその後は計画通りかどうかしかチェックしないからだと思っています。少人数のスタートアップであれば、決裁などチームの合意でしかないので非常にスピーディで、かつ、途中変更などいつでも可能なのです。

エンジニアが陥るのは「良いもの作ったら売れる」幻想だし、大企業が陥るのは「良い計画したらその通りになる」幻想なんですね。

本書の原書は出版されてから相当時間がたっていることもあり、ソーシャルメディア活用に関する言及が薄いのは仕方がないですが残念なところです。おそらく、今執筆するとするならば、ソーシャルメディアによるマーケティングが変わってきていることはふれることになるでしょうし、「顧客開発モデル」とソーシャルメディアの関わりについては考えてみたいところです。

また、この本が執筆された当初に比べて、私が感じるのは、おそらくもっとスタートアップはリーンに(無駄なく)いけるような感覚があります。本書のプロセスが参考になるのは間違いないですが、人も時間もまだかけすぎているのでは、と感じました。

本書の邦題は「アントレプレナーの教科書」ですが、間違いなく言えるのは、教科書通りにやったって、スタートアップがうまくいくわけがないということです。必要なのは、その場その場で自分の頭で考えて進むしかないということです。ただ、もう一つ言えることは、教科書を読んだことがある人かそうでない人がいるとしたら、読んだことがある方が圧倒的に有利だといことには違いありません。もし今「良いものを作ったら売れる」と考えているスタートアップの方がいるならば、読んで損はないと思います。とはいえ、経験してないと納得できないこともあると思うので、実は経験者が読んだ方が納得感は大きいかもしれませんね。

あわせて読みたい:リーンスタートアップで小さく始めよう


翻訳者の渋川さんから献本頂きました。ありがとうございます。

最近は、FacebookやTwitterのおかげもあって、企業の枠を超えた勉強会やコミュニティが沢山産まれています。コミュニティに参加するには、特に難しいことはありません。一方で、コミュニティを作り出し、運営していくことは、そう簡単ではありません。

私も、アジャイルに関するコミュニティの運営に携わったりしましたが、そこには明文化こそされていませんが、どうすれば良いかノウハウがあったように思います。この本では、そうした暗黙知として伝えられてきたコミュニティの運営に関する知見が書かれています。

この本で書かれているコミュニティ運営の根底に流れる考えに、「信用貯金」(social capital)というものがあり、コミュニティに人を引きつける原動力は一体感であり、その一体感が「信用貯金」によって回る信用経済の物差しになる、というものです。(余談ですが「social capital」を「信用貯金」と訳してくれてるのはアジャイル界隈の人にとっては嬉しいですね)

そこには、貨幣経済とは別のモチベーションで活動する人たちがいて、それこそが人間の本質ではないか、次の社会を形成するものではないか、と感じさせてくれます。ダニエル・ピンクのモチベーション3.0にも通じるし、昨今のソーシャルネットワークが起こしつつある革命にも通じるように思います。次の時代の働き方の息吹を感じることが出来ます。

この本の著者による、コミュニティを運営する「コミュニティマネージャ」の仕事とは、「世の中に変化をもたらそうとする協力しあう世界中のボランティアたちに対して、それを達成することを『可能にする』のが仕事です」ということです。もし、コミュニティマネージャを目指すのであれば、読むと多くの知見を得られるでしょう。


システム開発の世界には「デスマーチ」というなんとも恐ろしい言葉があります。プロジェクトに火が付き、終わりが見えない過酷な状態をそう呼びます。多くの場合、デスマーチを引き起こしているのは、タスクが目に見えていないために、やみくもに人を投入し、限界まで出来るだけのことをやろうとしてしまうこと、だと思います。そう「やるべきこと」を明らかにしないことが原因です。

チケット駆動開発は、見えないタスクの問題を解決する糸口になります。

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  • 倉貫 義人
  • SonicGarden 代表取締役社長
  • ソニックガーデンの創業者で代表取締役社長。日々アジャイルソフトウェア開発とリーンスタートアップを実践しています。クラウドを活用したワークスタイルの変革を目指しています。「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットーです。
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