読書: 2012年1月アーカイブ

本書は、シカゴを拠点におき、全世界向けにプロジェクト管理ツールなどのオンラインツールを提供する企業である「37signals」の成功までに至った独自の経営哲学を書いた本です。37signalsは、プログラマだったら誰でも知ってる「Ruby on Rails」の作者であるDHHが所属することでも有名です。

本書は以前に発行された同名の書籍の完全版ということで、イラストなどが入っていますが、内容は基本的に同じです。私自身、以前に発行された本を持っており、既に読んではいたのですが、改めて読み直すきっかけにも良いと思い、今回の完全版を購入しました。数年たって改めて読んで感じたことは、時代が彼らの働きかたに少し追いついてきたように思いました。



37signalsは、私たちSonicGardenにとってベンチマークにしている会社のひとつです。だからこそ、本書「小さなチーム、大きな仕事」と、Webでも公開されている「Getting Real」は、バイブルのようなものとして全員で読み込んでいます。今回、完全版が出たのを機に、改めて社員のみんなに読んでもらおうと思っています。もはや「本書に共感できること」をSonicGardenの募集要項にいれたいくらいだし、もし本書を読んで気に入ったと言ってる人とは、すぐに仲良くなれるような気がします。

37signalsの哲学は帯に書かれていますが「会社は小さく。」「失敗から学ぶな。」「五時には帰宅。」「けんかを売れ。」など、一見すると突拍子も無いことのように思ってしまいます。しかし、本書を読み進めていくと、それらは単なる思いつきによる奇抜さではなく、徹底的なロジカルでシンプルな思考に裏付けられたものだと気付かされます。

チャレンジをする人は少なからず常識から外れたことをしなければいけない場面が出てきます。そうした人にとって、本書は世間一般の常識とは違ったとしても十分に成功することが可能だと勇気をくれる筈です。

この本の良いところ、私の気に入っているところは、評論家による後付けの理屈や理論ではなく、彼ら自身が実践していることを、自分たちの生の言葉で書かれているところです。本書を読んでいくと「自分だったらどうする」「どうすれば彼らのように出来るか」「彼らの間違いは何か」といった形で、脳を非常に刺激してくれます。

ここで得た「ひらめき」があり「情熱」が湧いたなら、今すぐ動き出しましょう。思うだけでは何も変わらないのです。彼らの言葉を使うと「Get Real(形にしてみよう!)」なんです。


以降は、私が読んでポイントだと思ったところです。

見直す

この章では、様々なビジネスで常識だと思われていたことを見直すきっかけを与えてくれます。なぜ計画をしなければいけないのか。なぜ会社は大きくしなければいけないのか。なぜたくさん働かなければいけないのか。当たり前だと思われている、これらのことに答えを持っている人は多くはいないでしょう。

これはきっかけです。見直す第一歩は疑問に思うことです。今までの慣習に疑問を持つことから始めてみましょう。

P.22 計画ではなく実状にあわせて予想と呼んだらどうだろう。(中略)予想を計画に変えたとたん、危険な領域に入り込むことになる。計画は、過去に未来の操縦をさせる。目隠しをするのと同じだ。
P.26 小さなビジネスを目指すことに不安を抱かなくていい。持続的で、利益の出るビジネスを行っていれば、それが大きかろうと小さかろうと誇るべきことなのだ。


先に進む

この章では、新しくビジネスを始めることを決意したときに、先に進めるために必要なものと必要でないものについて教えてくれます。必要なことは、何か重要なことをする意思、自分たちに必要なものを作ること、アイデアだけでなく作り始めること、少しずつの時間を見つけること、自分だけの信念を持つこと。

本当に大事なことは、資金でも時間でもなく人でもなく、現実のビジネスを実際に進めていくことから始まります。

P.35 これは人生の仕事なのだ。どこにでもあるような製品をもう一つ作りたいのか、それとも革命を起こしたいのか。(中略)自分の見たかった変化を他の誰かが起こすのをまっていてはいけない。
P.60 ビジネスに対して「利益を上げる方法は将来みつける」なんて態度をとる人は話にならない。(中略)利益にいたる方針のないものはビジネスとは言わない。それは趣味だ。

進展

大量の資金や人、時間や人脈などが無ければ成功しないという思い込みをなくし、今あるカードの中でどう進めれば良いか、何をやって、何をやめれば良いのかの指針をこの章では学ぶことができます。全体像を捉えるところから始め、すべてを詳細に考え作り上げようとせず、何をしないかの決断を繰り返す。

本質を掴むことは、流行りのテクニックやツールを使うことよりも大事なことであり、自分自身の本質は何かを考えるべきです。

P.74 芯の部分を見つけるには、「もしこれを手放しても、自分が売るものはまだ残っているか?」と自身に問いかけることだ。
p.79 できるだけ「これについて考えよう」ではなく「これについて決断を下そう」と思うことだ。決断する姿勢を持つことだ。完璧な解決を待たず、決断して前進するのだ。

生産性

この章では、生産性を上げるための方法、生産性を下げないための方法、そして何よりも、生産性とは一体何かを見直すきっかけを与えてくれます。やみくもに沢山のことをしたからといってそれは生産性が高いとはいえないのです。しなくていいのは何か、どの程度で良しとするのか、考える必要があります。

生産性をあげるポイントは、少しずつ見える範囲の目標の中で、一時的に頑張るのではなく、こつこつと進めることなんでしょう。

p.106 思い切って行動に踏み切る前にあなたが行おうとしていることの本当の価値を定めよう。(中略)すでに多くの労力を費やしていたとしても取り組んでいることを中止にするのが正しいこともある。
p.134 優先順位付けについてアドバイス。数字やラベルで優先順位を付けてはいけない。(中略)視覚的に優先順位を付ける。最も重要なことを一番上に配置する。次に重要なことはその下。こうすれば、最も重要なことは一度に一つだけだ。

競合相手

ビジネスである以上、競合相手は必ず存在します。競合との差別化をどうするか、競合を真似ることの無意味さ、競合にけんかを売ることで立場をはっきりさせること、などを学べます。しかし、本当の見直しは、競合との戦いを気にする必要がない、ということです。大事なことは自分たちのビジネスがどう成立するか、なのです。

p.153 あなたが他の人たちとただ同じようになるのであれば、なぜあなたは別にやる必要があるだろう?(中略)単に他を真似るのではなく、あなたが信じていることで戦うほうが良いのだ。

進化

この章では、製品やサービスを進化させるにあたって、顧客の声か自分の考えか、どちらを優先すべきかを学ぶことができます。常識的に考えれば、顧客の声を聞かないことはありえないですが、まずは否定することを考えます。それは自分自身のアイデアにさえ否定するのです。まずは否定することから、何を実現すべきかが見えてくるのです。

p.157 あなたのゴールは製品があなたにとって正しいものであり続けることだ。誰よりもあなたがそれを信じなくてはいけない。

プロモーション

制約の中でプロモーションを行い、自分たちと製品を知ってもらうにはどうすれば良いか、学ぶことができます。資金がなくても、自分たちが学んだことや舞台裏を見せていくことで、自分たち自身の魅力を知ってもらうという方法です。

自分たちのビジネスにとって、誰にどのように知られることが大事かを理解していなければ、大手メディアに載るにはどうすれば良いかなんてことに苦心してしまうし、きっとそれは無駄なことでしょう。

p.193 マーケティングは、会社の皆が行うものである。三六五日、二四時間いつでも。(中略)マーケティングは独立した出来事ではなく、日々やっているすべてのことの集まりなのだ。

人を雇う

組織を小さいままにする37signalsの真骨頂は、人の雇用についての哲学にあります。人が足りなそうだからといってすぐに雇うのではなく、まずは自分たち自身でやってみる。やってみることで学びがあり、人をどう雇えば良いかわかるようになるのです。

急激な人の増加をよしとせず、採用するにあたっても履歴書や経験年数、学歴などをみるのではなく、自ら仕事を見つけて働けるような人材を、必要であれば世界中で採用しようとしています。

ダメージ・コントロール

ビジネスを進めると問題の一つや二つ出てきます。そうしたときにどう対処すべきかを知ることができます。ここでも一般的な大企業がやるべきと思われていることを、本当に小さなチームがすべきなのか、見直しをしています。

p.238 顧客と社員の間に人が多いほど、顧客の声は歪んだり失われたりしていく。チーム全員が顧客とかかわりをもたなければならない。(中略)製品を作る者を顧客のフィードバックからかばってはいけない。直接の批判はみんなで受け取ろう。

文化

チームの文化とはそもそも、作り上げるものではなく、自然と出来るものであるという見直しが出来ます。文化は、そのチームが選んできた選択やルールなどから生まれてきます。37signalsがどうやってその文化を産み出してきたのか、この章では知ることができます。

p.249 人を子供扱いすれば、子供のような仕事しかしない。これが多くの会社、多くの管理職の人の扱い方だ。(中略)何にでも許可を必要とする環境は「何も自分で考えない文化」をつくる。

目次 こちらから引用

  • まず最初に
  • 見直す
  • 先に進む
  • 進展
  • 生産性
  • 競合相手
  • 進化
  • プロモーション
  • 人を雇う
  • ダメージ・コントロール
  • 文化
  • 最後に
  • 37シグナルズについて

本書は、日本ではあまり有名でないグレイトフル・デッドという1960年代にアメリカ西海岸でうまれ、ビートルズやストーンズよりも大きな市場を作ったというバンドの活動を通じて、最新のマーケティングを学ぼうというビジネス書です。

TwitterやFacebookで話題になっていたので興味は持っていたのですが、またイロモノなのかなぁと敬遠してましたが、違ってました。割と硬派な内容で、無理矢理こじつけた訳でなく、ちゃんとしたマーケティングの本でした。

しかも、フリーミアムやバイラルなどといった最近のウェブ界隈で行われている最先端のマーケティングをインターネットの無い時代にやっていたという話で、グレイトフル・デッドの活動を紹介すると共に、事例としてDropboxや、Yコンビネーター、Google、MySQL、Mashable、Amazonなどの話が出てきます。ここに並んでいる名前を見ているだけで読みたくなりますよね。



本書で紹介されているマーケティングは、実際はこうだったら良いのになぁと思ってしまうようなマーケティングを実際にやってみた様子が紹介されています。これまでのマーケティングの常識に従っていたら出来ないことをやってのける彼らにしびれます。

本書には共感出来るところが沢山ありましたが、中でも私がぐっときたところから、学んだことを幾つか残しておきます。


1章 ユニークなビジネスモデルをつくろう

p.62「グレイトフル・デッドは、ビジネスモデルの革新が、製品の革新と同じかそれ以上に重要であることを教えてくれる。」

彼らは、業界の常識だったアルバム販売による売上を目指すのではなく、ライブから収入を得ることに全力を注ぐというビジネスモデルの転換をしたそうです。それによって、新たな「ファン体験」を生み出すことができ、ライバルとの差別化だけでなく、バンドとファンの両方が連鎖的に恩恵をうけることが出来るようになった、と。

ここから学べることは、業界の常識に闇雲に従うのではなく、自社と顧客にとって本当の利益は何かを考え、それを実行に移すということだと思います。


4章 ありのままの自分でいよう

p.92「ファンは、グレイトフル・デッドの"偽りのない本物らしさ"に親しみを覚えた」

勘違いしがちだけど、企業としての活動は「ちゃんと」してないといけないと思い込んでるところがある。プレスリリースや広報などは特に。しかし、ちゃんとすればするほど個性がなくなってしまうのも確かで、そうでなくて自分たち自身の個性を出して良いんだということを教えてくれました。


5章 「実験」を繰り返す

p.104「グレイトフル・デッドは、リスクを取り、新しいことに挑み、失敗と成功から学び、全身し続けることを教えてくれる。」

失敗は悪いことではなく、そこから学びとって次に活かせば、それは実験なんだと言うことができる。挑戦を繰り返して、失敗から学んでいかなければ、成功は産まれないという主張は、とても共感できます。見直しのサイクルを短くして、何度も実験をしてみることが大事です。


8章 変わり者でいいじゃないか

p.133「私たちは、ある意味ではみんな変わり者なのだ。賢い会社は、変わり者を理解し、そこから市場を作り出す。」

当たり前だけど、すべての人が同じ嗜好を持つ訳ではなく好き嫌いがあって、全員に好かれるものは作り出せない。変わり者の集まりが市場になることを改めて再確認させてくれます。しかも、このインターネットの時代に本当に変わり者だけを集めたとしても、それなりの市場になるはずです。


12章 中間業者を排除しよう

p.182「グレイトフル・デッドは、自分と顧客との間にある何層もの中間業者を取り去り、顧客を直接取り込むことを教えてくれる。」

直販の方式は、本当に顧客を大事にするのならば、とても重要で、中間業者による付加価値のないマージンを搾取することを防ぐことができます。本当にその中間業者が必要かどうか考え直すべきで、今やインターネットによって様々な中間業者をなくすことが出来る時代になっています。


19章 自分が本当に好きなことをやろう

p.253「グレイトフル・デッドは、自分たちがやっていたことが本当に好きだったのでそれをやり通した。そしてもちろん、結果的に成功した。」

好きなこと、情熱を持てることを仕事にすることが、人生にとって非常に意味のあることだと思わせてくれます。そして、情熱を持って仕事をすることの方が成功する可能性が高くなることを示してくれています。

グレイトフル・デッドほどの成功までいかなくとも、好きなことを仕事にしている方が、きっとうまくいく確率は高くなるだろうし、何よりも、そうして過ごした人生の方がなんと楽しいことだろうか。


目次 こちらから引用



  • 序章 「グレイトフル・デッドのライブほど素晴らしいものはない」

  • PART ONE THE BAND バンド

  • 1章 ユニークなビジネスモデルをつくろう

  • 2章 忘れられない名前をつけよう

  • 3章 バラエティに富んだチームを作ろう

  • 4章 ありのままの自分でいよう

  • 5章 「実験」を繰り返す

  • 6章 新しい技術を取り入れよう

  • 7章 新しいカテゴリーを作ってしまおう

  • PART TWO THE FANS  ファン

  • 8章 変わり者でいいじゃないか

  • 9章 ファンを「冒険の旅」に連れ出そう

  • 10章 最前列の席はファンにあげよう

  • 11章 ファンを増やそう

  • PART THREE THE BUSINESS  ビジネス

  • 12章 中間業者を排除しよう

  • 13章 コンテンツを無料で提供しよう

  • 14章 広まりやすくしよう

  • 15章 フリーから有料のプレミアムへアップグレードしてもらおう

  • 16章 ブランドの管理をゆるくしよう

  • 17章 個人事業者と手を組もう

  • 18章 社会に恩返しをしよう

  • 19章 自分が本当に好きなことをやろう


photo
  • 倉貫 義人
  • SonicGarden 代表取締役社長
  • ソニックガーデンの創業者で代表取締役社長。日々アジャイルソフトウェア開発とリーンスタートアップを実践しています。クラウドを活用したワークスタイルの変革を目指しています。「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットーです。
  • 詳しいプロフィール
Share |

RSSリーダーに登録

Bloglinesで閲読登録
ADD TO Hatena::RSS
Subscribe with livedoor Reader
Add to Google
Subscribe with Fastladder
エキサイトリーダーに登録

このアーカイブについて

このページには、2012年1月以降に書かれたブログ記事のうち読書カテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブは読書: 2011年11月です。

次のアーカイブは読書: 2012年2月です。