書評:企画は、ひと言。〜アイデアを生み出し、実現するたったひとつのコツ

書評:企画は、ひと言。〜アイデアを生み出し、実現するたったひとつのコツ

私はよく「ナレッジワーカー」について話をします。マニュアル通りにする仕事は、新興国やコンピュータにとって代わられて、これから生き残る仕事は「ゼロからイチを作る仕事」や「誰かの難しい問題を解決する仕事」になると考えています。それがナレッジワーカーの仕事です。

ナレッジワーカーの時代になったとき、働く人たちは皆、常に新しいことを考えなければいけなくなります。アイデアを出して、実現することが仕事になります。そうしたときに必要になるのが企画力です。

そんな「企画」という仕事を考える時に、たまたま見つけたのが本書です。とても読みやすく、スッと読むことができました。

企画は、ひと言。

アイデアを生み出し、実現するたったひとつのコツ

本書は、25年以上のキャリアを持つテレビ番組の放送作家の方が書かれた本です。本書で書かれているポイントは、「アイデアを生み出し、実現するたったひとつのコツ」で、それは「企画は、ひと言。」ということだということです。「ひと言」で見える企画をつくることが、良い企画をつくるためのコツだと言うのです。

「地球にやさしいエコカー」「会いに行けるアイドル」「無料で仲間とつながることができるアプリ」「子どもが遊びながら学べる職業体験テーマパーク」「世界の歴史や文化をテーマにしたクイズ番組」「あらゆるジャンルの日本一を決める番組」「とにかく、フジテレビらしい朝から元気な番組」・・・この本で紹介されている「ひと言」です。

企画を「ひと言」で言えると、イメージがつきやすく共感も得やすく、クチコミでも広がりやすいと言います。企画とは実行する前に立てるもので、その企画によって実現するかどうか変わってきます。そうした時に人を動かすことができるのは、わかりやすくひと言で言える企画なのです。

ひと言にはセンスはいらない、原則はある

ひと言は、キャッチコピーではないので、センスはいりません。「見えるひと言」が人を動かし、サービスを作り、キャッチコピーも作るのです。最初にあるのが企画のひと言なので、わかりやすく「ベタ」なものが良いそうです。良いひと言には「Short」「Simple」「Sharp」「See」「Share」という5つの特徴があります。

Short:言葉は短ければ短いほど強い言葉になって印象に残ります。
Simple:この企画の売りはコレだ!と言えるシンプルな軸が大事です。
Sharp:相手の心に刺さるひと言を。刺さるとはインパクトがあること。
See:良いアイデアも見えなければ価値はありません。
Share:人を巻き込むことができる「ひと言」を。

そして、ウケるアイデアには5つの原則があります。

原則1:”トンガリ幻想”は捨てよ。新しすぎるアイデアは実現しないので、半歩先くらいを目指すのが良い。
原則2:「ベタ(定番)」の力を利用せよ。「今まであったもの」にたとえることこそ究極のベタ。
原則3:「ベタ」に「新しさ」をプラスαせよ。「クリエイティビティとは組み合わせに過ぎない」
原則4:「ベタ」と「新しさ」の理想のバランスを目指せ。実現可能性が高く、新しいものを。
原則5:ヒットの「カタチ」をつかめ。「これまでにあったもの」に時代に合わせた「新しさ」や「付加価値」を加えたもの。

他にも、様々な実際にアイデアを企画として「ひと言」にまとめる技術が記されていて、どれも参考になります。この先は書籍をご覧ください。

企画にもっとも大事な「なんのために」

本書でもっとも共感したのは、179ページからの企画の主旨・目的を問う「なんのために」の部分です。

企画とは「世界を進化させるもの」です。(略)「そもそもなんのために?」という企画の目的を強く意識していないと、創りだした「ひと言」は独りよがりなものになってしまいます。それでは、人の心を動かせない。(略)「なんとなく面白いと思って・・・」だけでは企画として成立しないのです。(略)企画は「なんのために」から考えたほうが説得力をもつ、筋の通ったものになります。(略)そんな想いのこもった企画は必ず多くの人の共感を呼びます。

私は仕事柄、多くの事業企画に触れる機会があります。「納品のない受託開発」では、お客さまの事業に必要なソフトウェアを作り続けるために、まず最初にお客さまの事業について理解する必要があるからです。事業企画を拝見するときに、もっとも気をつけて確認していることの一つが、この「なんのために」です。

「なんのために」がしっかりしていない事業企画は、だいたいうまくいきません。特に私たちが一緒に行うのは新規事業です。新規事業で順風満帆で計画通りなんてありえません。様々な困難が起きるからこそ新しくおこなう価値がある訳です。そうした新規事業を進めるにあたって、「なんのために」が軸として存在しない場合、やっぱり途中で挫けてしまうのです。

新規事業はうまくいくまで続けるしかありません。どれだけ方向転換もピボットもしても、続けなければ成功はありえないのです。つらいことがあったときに、思いつきで始めたものは続かないけれど、「なんのために」がはっきりしていると、頑張ることが出来るのです。なので、事業企画を確認するときには、その目的「なんのために」を重視するのです。

新規事業や事業企画など、アイデアを実現しなければいけないけれど、どうすればいいか悩んでる方にオススメです。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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