kintone

こんにちは。ソニックガーデンで、業務改善案件を担当している荻原です。

「経費精算のフローが煩雑で、社員が増えると経理担当者の業務量も増えてしまう」
「社内の情報が拡散していて、タイムリーに確認したい数字をまとめるのに時間がかかってしまう…」

など、業務に関する悩みを抱える方は多くいらっしゃいます。

私は、そういった悩みに対して、現状の業務プロセスや課題をお聞きして、フローの整理やシステム開発による業務の効率化をサポートしています。この仕事を、ソニックガーデンでは「業務ハック」と呼んでいます。

さて、毎日の業務にExcelを利用されている方は多いと思います。表計算ソフトのExcelには、業務に必要な計算式が一通りそろっていますし、一覧表や帳票としても使えます。しかし、業務ハックのご相談をうかがう中で「ファイルが増えたExcelの管理が難しい」の声は少なくありません。

そんなときの解決方法の1つに、ソニックガーデンではサイボウズ社の業務改善プラットフォーム「kintone(キントーン)」をご紹介しています。kintoneは、Excelでのこまったを解決できることが多いからです。

たとえば、Excelはデータベースではないので、どんどんと蓄積していくデータを管理するのは不向きです。

さらに、過去の情報を調べるのが難しく、「どこにあったっけ?」「どれが最新だっけ?」の調査だけで、時間が溶けていきます。1ヶ月分や1年分の情報のまとめを見たいと思ったとき、まとめる作業だけで1日が終わってしまうこともあるかもしれません。時間がとてももったいないですよね。こういったケースに、kintoneは適しています。

今回は、業務ハックのクライアント企業A社様(以下、敬称略)が、Excelからkintoneに乗り換えた経緯をたどりながら、kintoneの導入や設計で注意したい7つのポイントをご紹介します。

[こんな人にオススメの記事です]
・kintoneに興味がある、導入したいと考えている方
・業務改善の具体的な方法を知りたい方
・Excelによる顧客管理や請求書作成などに困っている方
ザッソウ管理ゼロで成果はあがる

課題だけではなく、業務全体のフローや情報の整理をする

木材製造業のA社は、社員数30人ほどの組織です。「事業拡大を見据え、ボトルネックとなりそうなバックオフィス業務を改善したい」とご相談をいただきました。

まずは、現在の業務内容のヒアリングから始めます(ソニックガーデンでは、オンラインミーティングが基本です)。ミーティングでは、現場担当者が実感している業務の困りごとだけでなく、業務の全体像も聞いていきます。

ある一部の業務で最適なシステムを目指してしまうと、業務全体を変更しようとしたときに、その部分だけ変更しづらい問題が起きがちです。また、ヒアリングを進める中で、相手が困っている部分と対応すべき本当の問題が異なる場合もあります。

そのため、業務の全体像を聞きながら、問題の根っこがどこにあるかを一緒に探していきます。業務の全体を効率化するシステムを検討するには、現状の業務フローや情報の整理などを、開発者も交えて丁寧に確認することがポイントです。

A社では、受注〜加工/仕入れ〜配送/納品〜請求の業務をExcelで管理していました。情報は整理されていますが、注文ごとにExcelのファイルを作成していたため、業務プロセスに次のような問題があるとわかりました。

  • ファイルがどんどん増えていく(1注文1ファイル)
  • ファイルの保存場所のルールはあるが、過去の注文が探しづらく時間がかかる
  • 誰がいつファイルを変更したかが、わからない
  • 複数の注文をまとめて請求するので、請求書に過不足や誤りの恐れがある

このように、Excelの情報が検索しづらい、特定の情報をまとめたり、複数人でファイルを操作できないなどの課題には、kintoneがうまく活用できます。

kintoneでは、情報をデータベースに入れて管理するため、検索や絞り込み、情報をまとめることが簡単になります。また、複数人で操作しても履歴が記録されますし、コメントも残せます。

改善する業務の優先順位を決め、プロトタイプ開発で小さく始める

業務の全体像と課題の整理ができたら、具体的に改善を進める業務の優先順位を決めていきます。ポイントは、解決したい問題が、それよりも前の業務によって発生しているならば、前の業務の改善を優先すること。業務のヒアリングをしていく中で、いろいろなボトルネックが見えてくると思います。

A社の場合は、社内から改善要望が高かった請求書の作成業務から始めました。請求書の作成には、受注情報が必要です。受注情報を正確に入力すれば、自動的に請求情報が作成されるkintoneのアプリを設計しました。

とはいえ、すぐにシステム開発には入りません。
kintoneに限らず、新しいサービスやシステムを導入するとき、利用者には「それって何?」「使いこなせるの?」と不安があるものです。

私たちも、「そもそもkintoneとは?」がわかる資料を用意して、お客様のkintoneへの理解を深めることから始めています。

しかし、1度の説明だけでkintoneを理解したり、今後の業務のやり方をイメージするのは難しいもの。実際に使うシステムを見て・触ってから、「本当に自分たちの業務でkintoneを使っていけるのか?」を判断したいですよね。

そんなときは、「プロトタイプ(*)」から小さく始めましょう。
A社のケースでも、kintoneを使った請求書発行アプリのプロトタイプを作ることにしました。

*プロトタイプ:ある製品の原型あるいは試作品のことです。システム開発においては、実際に近いシステムイメージを試作品として提供することで、エンドユーザーの意見や要求を明確にし、開発者とユーザー間の意思の食い違いやニーズの違いなどを解消して、製品の品質改善を図るために利用されます。

システム開発では、仕様書や要件定義などでシステムの全体像をかっちり決めてから、開発を始める場合が多いです。しかし、今ある業務の全システム化は時間もかかりますし、途中で変更が起きる可能性もあります。

さらに、いろんな機能を作り込んだシステムができあがったとしても、「業務で使えない」となっては、現場も開発者もお互いに不幸です。プロトタイプとして小さく始めると、「ちょっと違うな」「もっとこうしてほしい」などにも対応でき、開発者も手戻りを抑えられます。

私たちは、請求書発行の業務を小さく切り分け、その中からkintoneで運用する部分を決め、スピーディにプロトタイプを開発していきました。

kintoneアプリの開発に欠かせないデータベースの設計

ここで、kintoneアプリを開発するときのポイントをお話します。
アプリは、情報を整理して入れておく箱のようなものですが、必要な情報をただアプリに並べていけばいいということではありません。業務に必要な情報を分類して、箱にいれる情報を決めていきます。これを、データベースの設計と言います。

まずは、

  • いつ
  • 誰が
  • どういった内容を
  • どんな操作をするのか(入力、更新、検索)

を把握することが必要です。
業務に関わる登場人物と必要な情報を洗い出して、業務フローを書いてから、それを実現できるアプリを作っていきます。
同時に、kintoneの標準機能でできること、他のサービスを利用すればできること、プログラムを作る必要があるところも整理しておきます。

データベースの設計はプログラマの腕の見せどころでもあります。もし自分たちでこういった部分まで考えて作ることが難しい場合は、私たちソニックガーデンも含め、外部の力を頼ることも一つの手です。

「使われるシステム」開発のために、現場の業務を見る

プロトタイプを含め、システム開発にあたっては、現場の業務を見て、システムが使われる環境や実際に使う人の業務を見ることをオススメします。開発サイドが想像していた業務内容と、実際の業務やそのプロセスに齟齬がないかを確認するのです。

現場には、「どんな場所で、何人ぐらいの人がどんな仕事をしているか?」など、日頃のヒアリングだけでは見つからない発見があります。ここで得られた情報が、現場で使ってもらえるkintoneの設計につながります。

私たちも、プロトタイプの開発と並行して、A社の現場を訪問しました。ふだんミーティングなどで接する担当の方だけでなく、実際に現場でシステムを使うみなさんと話すことで、たくさんの気づきがありました。聞いていた情報をあらためて確認すると、想像と違っていたなんてことも。

現場でリアルな声を聞くことは、開発者の顔を明らかにし、お互いの理解を深めます。現場の方にとっても、「この人達がシステムを開発してるんだな」と不安を減らす機会になるのではないかと考えています。

システムのテスト時は、質問しやすい環境も用意する

プロトタイプが完成したら、テストを行います。
テストは、実際に業務を担当している方にお願いするとよいでしょう。システムの使い方も1人ひとり異なることを想定し、なるべく業務担当者全員によるテストが理想です。

テストの確認ポイントは、kintoneを使ってこれまでの業務が問題なく行えるか、困りごとが解決されているか(もしくは使うことで解決されそうか)です。

実際の業務と同じ流れで、受注情報を登録したり、必要な情報を検索したり、帳票の印刷や定期的な処理が期待したとおりに動くことを確認していただきます。そこで、「これなら使っていけそうだ」と判断ができれば、細かな部分を作り込んでいきます。フィードバックをもとに、修正や変更を進めて、プロトタイプからシステムの完成形を目指していきます。

しかし、プロトタイプのテストをしても、あまりフィードバックが出てこない場合もあります。テストがうまく進まない理由として、以下のような原因が考えられます。

  • テストといっても、具体的に何をすればよいのかわからない
  • 気軽に質問しづらい。どう調べればよいかもわからない
  • 通常の業務が忙しく、テストの時間が取れない

このようなときは、システムを利用する方とのコミュニケーションをより深めましょう

私たちソニックガーデンとお客様は、定例の開発ミーティングのほかに、掲示板でコミュニケーションを取っています。いつでもやりとりできる環境ですが、お客様によっては、気軽に文章を書けなかったり、文章の表現に迷う場合もあるかもしれないと考えました。

そこでA社とは、週に1回のペースで、一緒にkintoneを使うミーティングも行いました。このミーティングでは、A社の実務担当の方に参加いただき、実際の受注情報をkintoneに登録するところから始めています。マニュアルや言葉による説明だけでなく、一緒に手を動かすことで、より運用のイメージを掴んでいただくのです。すると、「こんなときはどうしたらいいですか?」と、気軽に相談をいただけるようにもなりました。

わからないことがあったときに気軽に相談できる環境があること、また実際に一緒に画面を見ながら使ってみることが大切だと、あらためて実感したできごとでした

みんなでシステムを使い、慣れながら改良を重ねる

プロトタイプの改修も進み、kintoneでほぼ一通りの業務ができるようになったら、システムを使う方全員や、チーム全体にシステムを展開します。

A社では、システムは完成形ではなく、使いながら改良していくことを事前に説明した上で、オンラインの全体説明会を実施しました。

説明会では、まずA社の担当の方に、「なぜ業務のやり方を変えるのか」をお話いただきました。システムを変えることは、みなさんの業務を変えることです。納得して取り組んでいただかないと、システム化の成果は出ません

続いて、「kintoneとはどんなものか」を説明し、説明会の参加者全員にkintoneを使っていただく時間を作りました。各自でkintoneにログインし、受注情報の入力や帳票の出力を試してもらいます。

この説明会は、kintoneの使い方を学ぶのではなく、kintoneを使って何をしていくのか?の理解を目的としています。あわせて、開発者である私たちのことも知っていただきたいと考えました。

説明会のあとも、kintoneの使い方に不安がなくなるまで、「5.システムのテスト時は、質問しやすい環境も用意する」で紹介した週1回のミーティングを継続して行いました。

開発者やシステムに慣れた人には当たり前のことでも、初めてkintoneを触る方にとっては、わからないことがたくさんあります。隣に座って、一緒に画面を見ながら説明したり、質問に答えることによって、「これならできそうだ」の実感が生まれます。

業務改善の担当者の方だけがkintoneを理解していればいいのではなく、みなさんが使いこなしていくために、しっかりと理解していただくことが必要です

ミーティングに出席いただくことで、A社のみなさんも業務改善を自分ごととして強く実感することにつながったのでは、と思っています。また、ミーティングで挙がった質問や要望は、次のシステム改修やプログラムの変更につなげています。

新しいシステムへの移行は、段階的に進めてリスク分散を

いよいよ、本番運用です。
運用開始日を決め、そこに向けて段取りを開始します。

システム移行時のポイントは、運用開始日にすべてを変更するのではなく、段階的に開始していくことです。A社の場合は、1ヶ月かけてシステム移行しました。

一時的に新旧の運用が重なりますが、開始段階で不具合が起きても業務が止まらないよう、リスク分散は大切です。

そして、本番運用開始後も、業務改善は続きます。
テストの時は気にならなかったけれど、本番運用で気づいたことや変更点も出てくるでしょう。そのようなところを、改善していきます。

A社では、業務の中で1番優先順位の高いプロセスからシステム化しました。現在は、その他の業務のシステム化や機能追加などに取り組んでいます。

業務改善×kintone活用は、継続してこそ効果が出る

ここまで、業務ハックのクライアントA社との取り組みをふりかえりながら、kintoneの導入や設計のポイントを7つご紹介してきました。

もし「Excelからkintoneに乗り換えたけれど、思ったほど効率的にならなかった」ときは、まず業務フローを整理して、kintoneのアプリ設計をすることをおすすめします。

そして、kintone導入時には、わからないこともすぐに質問できる環境を用意すると、システムを使うみなさんが安心できます。また、新しいシステムになかなか慣れない方がいるときは、システムを変更する理由と丁寧にサポートすることを伝えれば、前向きに取り組んでもらえるのではないでしょうか。

業務の見直しとシステムの改善は、同時に動いていきます。
A社のみなさんとも、「今の業務は本当に必要か」「フローがいびつな状態になっていないか」と、一緒に考えて、業務のやり方を改良しながらシステム化を進めています。このお客様に伴走しながら改善を続ける開発スタイルは、ソニックガーデンならではの価値の1つだと考えています。

困ってはいるけれど、システムを導入して慣れている業務プロセスを変えることに抵抗があったり、社内のメンバーだけではkintone導入を進めきれないこともあると思います。業務改善で外部からのサポートが必要なときは、ぜひソニックガーデンにもご相談ください。