第1弾となる小説『私はロボットではありません』が発売になります。まずは自社サイトでの直接販売のみとなってます。
大きな不満もなければ、大きな喜びもない、普通の社会人3年目の青年が、不思議な男との出会いから憂鬱を溶かす物語。
今回私は執筆ではなく、裏方として参画しています。非常に多くの方々の協力があって、書籍はできるのだと実感してます。
私たちが業界の素人ゆえ、ご迷惑をおかけすることも沢山ありましたが、皆さん親切に教えてサポートしてくださいました。
本当にありがとうございました。おかげさまで、自信を持って読者の皆様にお届けできる本が出来上がったと思います。
なぜ小説を?なぜわざわざ出版事業を?といった点については、これから少しずつ皆様にお伝えできればと考えています。
まずは読んでいただきたい作品です!よろしくお願いします。
商品ページ: https://kuranuki.base.shop/items/82969163
プレスリリース:「納品のない受託開発」を行うソニックガーデンが出版事業を開始、レーベル名『倉貫書房』から3月9日発売の第1作目はシリーズ展開の小説
The post 出版事業はじめます first appeared on Social Change!.]]>できない自分を責めて、もっと頑張ってみても、まだ足りていないと感じてしまう。そして、いつか心が折れてしまうことも起きてしまうかもしれません。それは誰にとっても避けたい事態です。
本稿では、そうした状況から脱却するために、私の考えるアジャイル思考のマインドセットを個人の熟達に応用してみたいと思います。熟達に取り組む人にとって参考になれば幸いです。
「まだまだ実力が足りていないので頑張ります」
仕事だけでなく様々なことで、自分はまだまだだと感じることがあると思います。正しく自己認識し、より向上していこうと考えるのは素晴らしいことですが、ずっと足りないものを埋めていく発想でいると苦しくなってしまう人もいるでしょう。
近くに同じ職種や似た境遇なのに自分よりも圧倒的にできる人たちがいると、そう考えてしまうのはわかります。他者と比較すると、あれも足りない、これも足りないと思ってしまう。
先々のことを考えすぎて、決めたゴールや理想像から逆算して、足りないものを埋めていくようなスタンスは、まるでウォーターフォール型のプロジェクトのようです。このマインドセットのつらいところは、ゴールするまでは途中経過に過ぎなくて実績になるわけではないと考えてしまう点です。
こうしたことは若い人にありがちですが、若くなくてもあります。もうすぐ50歳になる私でさえも、優れた経営者の人たちに接したときは、自分まだまだだなと思ったりします。
ただ、まだまだと思う一方で、これまで自分が取り組んできた実績も思い返すことで、まんざらでもないな、と思えるものです。
つまり、できていないことは認めつつも、これまで取り組んでこれたことがなくなるわけではないと考えるのです。そのように今あるものや環境を受け入れつつ、その上でより良い状態を目指していくのがアジャイル思考だと、私は考えています。
もっと仕事ができるようになりたいとか、プログラミングが上達したいとか、そうした向上心はお金で買えない代え難いものです。その気持ちを失うことなく、うまく活かしていくためのアジャイル思考を応用した考え方、それが以下の3つです。
・その1)まずはできたことを確認していこう
・その2)問題でなく伸び代があると考えよう
・その3)感謝しつつ周りの人に頼っていこう
まだまだ足りてないと考えて頑張るのも一つの手ですが、ずっと果てしなく続くとしたら疲れてしまいます。そして熟達に終わりはないのです。であれば、今できていない課題を数えること以上に、少しでもできたことを確認していくと良いでしょう。
人によっては目指すビジョンや理想の姿があっても良いと思いますが、ずっと遠くばかりを見てギャップを感じながら日々を過ごすのは耐え難いでしょう。日々はビジョンや理想につながるような、だけど小さな一歩でいいから着実に進めていくのです。
アジャイル思考でいえば、未来を確約するのではなく、今できることを精一杯にベストを尽くして一つ一つ進めていくこと。そのためには、取り組む単位を小さくすること。小口化です。小さくても成功体験を積み重ねていくことが大事だからです。
できたことを誰かに褒めてもらえると嬉しいですが、いずれは誰に褒められなくても自分で実感できるようになりましょう。セルフマネジメント的には、自画自賛できる能力が重要です。その上で周囲の人を称えられるようになると最高ですね。
アジャイル思考でいえば、ベストを尽くした後は「ふりかえり」して学習をしていきます。できたことから学びを抽出していくのです。ただし「ふりかえり」をすると、どうしてもできなかったことにも目を向けることになります。
私たちソニックガーデンでは「ふりかえり」のフォーマットに「KPT」を使っています。ただし、一般的に言われている「Keep/Problem/Try」ではなくて、「Keep/Potential/Try」だと考えています。”Potential”の”P”です。
現時点で未熟なところがあることは問題ではなく、まだ成長する余地がある、すなわち伸び代があるということです。そのためには当然ですが、できていないことはできていないと認識しなければいけないので、そこに厳しさはあります。
しかし「ふりかえり」は反省会ではなく、次に繋げるための機会だと捉えるならば、厳しい現実を受け入れながらも課題を伸び代と捉えることで新たに取り組むテーマが見つかります。前向きに取り組んでいきましょう。
とはいえ、どうやっても今の自分の能力では難しいことにも出てくるでしょう。そうしたときに、どうすればいいのか。つい、できないことを謝罪してしまうかもしれませんが、それでは物事は前に進みません。謝罪して楽になるより、どうすればいいか考えましょう。
できないなら周りに頼るしかありません。視野が狭いと「自分の仕事」を「自分だけの仕事」だと勘違いしてしまいますが、価値を生み出したり、問題を解決することが仕事の本質だとすれば、自分が活躍することは必須のことではありません。
私も若い頃は、自分の成果を見せつけて、驚かせたりすることに躍起になったときもありました。しかし、直接お客様と話をするようになり、会社や事業のことを理解し、一緒に取り組む仲間や部下ができたことで、自分だけで解決することに固執しなくなりました。
周りの人たちに相談をすることで、アジャイル思考でいう「問題vs私たち」の構図をつくることができます。もし、協力してもらうことができないなら、もしかすると環境の問題かもしれません。
未熟なうちは「自分の実力」を自分だけの能力だと思ってしまうかもしれませんが、自分を取り巻く環境も自分の力のうちなのです。大企業なら大企業の良さがあるし、スタートアップならスタートアップの良さがある、その環境にいることを選んだのは自分の決断だし、選ばれたのも自分の実力なのです。
自分でできないことがあったら謝罪するのではなく、周りに頼って感謝することです。きっと、なんとかなります。
文化資本を第一に置いた経営に取り組もうと、昨年からソニックガーデン社内では伝えてきたんだけど、四半世紀も前に既に書かれた本があったとは驚きだった。
何のために企業は存在し、経済を追求するのか。社会・文化への分配を先に考える経営。文化と経済を非分離に関連付けること。
自他非分離の知、暗黙知のまま活かす、経営とアートの結合、生命的な合理性、コーポレート・ガバナンスの本質。
文化で解釈した経営のパラダイムシフトだ。近代で良しとされてきた経営とは一線を画した考え方に思うけど、自分としてはこの方向で良かったんだなーと思えた。
人を機械的に働かせて経済活動とするのではなく、知性と感性を活かした文化活動とするというのは、これまでずっとやってきたセルフマネジメントで働く自律的な組織を言語化するとそうだったのか、と。
リモートワークはじめフレキシブルな働き方も、何も働きやすさや生産性のためだけでなく、文化につながる個性を発揮するため、と捉えると、そうだったな、とも。
自分では合理的だと思っていたけど、周りからは不思議に思われてた施策も、文化を軸に据えたら合理的と言えた気がしました。
改めて、文化資本について理解を深め、より考えるためのインスピレーションをもらえた。自分的には2024年の一冊目に相応しい本でした。
それでは今年もよろしくお願いします。
The post 「文化資本の経営」を読んで first appeared on Social Change!.]]>私の経営する株式会社ソニックガーデンは6月期なので、2023年7月から13期目に入りました。12年周期で考えると、13期目は2周目ということになりますが、経営体制の再構築やコーポレートアイデンティティの見直しなど、確かに第2創業に近い感覚でいます。
12期の最後となる2023年6月には、社員一同がリアルに集まり、お客様も招待してのソニックガーデンミートアップというイベントを開催しました。普段はリモートワークで過ごしており、ここ数年はコロナもあって全社員が集まる機会がなかったのですが、思い切って開催することにしました。
ずっとリモートワークですと、組織が大きくなっていっても実感が伴わないこともあり、社員同士のコミュニケーションや振る舞いが良い意味でも悪い意味でも変わらなすぎるのですが、こうして実際に集まる機会があったことで認識のアップデートができたように思います。
ご来場いただいたお客様、企画運営を実施してくれたスタッフ、ご協力いただいたイベント会社さん、多くの協力を得て実施できたこと感謝いたします。ありがとうございました。→開催レポート
2022年4月からプログラマの若手採用と育成を始めています。業界未経験の方もチャレンジできる採用枠を用意し、優れたプログラマを目指す人たちを支援しています。2023年も継続しており、2期生となる若者たちを採用しました。
セルフマネジメントを前提とする中途採用と違い、経験も浅く技術力やマネジメント能力を身につけていない状態からのスタートになるため、ベテランのプログラマがマネージャとして担当します。ソニックガーデンでは、プログラマのマネージャのことを親方と呼んでいます。
親方は、自分自身が現役のプログラマとして自らもコードを書きながら、若手の育成も行います。育成といっても手取り足取り教えるのではなく、適切に仕事を振ってフィードバックしていきます。今年また弟子たちの数が増えたことに応じて、今年から親方4名の体制になりました。
弟子たちは自分の親方が住む地域に移り住んで、親方とリアルで会って仕事をするようにしています。岡山に続いて、川崎と広島にも拠点が増えました。この親方を通じた人材育成は、私にとっても新しいチャレンジの機会になっており、付き合ってくれる親方たちには感謝しています。
若手の採用を続けていくにあたり、一般的な採用や広報をするのではなく、私たちソニックガーデンらしい形を模索した結果、ソニックガーデンキャンプやソニックガーデンジムといったプログラマの方々の成長機会を提供しています。これらは2023年も続けており、キャンプは来年初頭から第5回が開催されます。
他にも、プログラマたちの技術書展への出展を支援したり、SGTechというスキルアップ勉強会やツクアソ(作って遊ぶ)ハッカソンを開催しています。ソニックガーデン採用サイトのリニューアルも行いました。改めて私たちの考えや文化を明文化しなおした形にアップデートしました。それに合わせて継続的に記事の公開も続けてくれています。
私は、こうしたプログラミングを中心とした文化を耕し、残していく活動をカルチャーコミュニケーションと呼んでいます。社外だけでなく、社内で行われている合宿などの取り組みも、そうした文化に投資する活動の一環です。これまで私がブログや書籍、講演などで行ってきたのもカルチャーコミュニケーションといえます。
2023年からは私だけでなく、ソニックガーデンという会社の活動に広がった年でした。本活動に取り組んでくれた社長室メンバーの皆さん、サイト刷新をお手伝い頂いたデザイナーさんたちにプログラマたち、ありがとうございました。
私たちの主な事業である「納品のない受託開発」は、どのお客様とのお付き合いも続けさせて頂きつつ、じっくり新しいお客様とのお付き合いも始まり、順調に事業成長しています。また、お客様の事業が順調に拡大されるケースもあり、私たちのサービスもアップデートしながらスケールに対応させて頂きました。
私たちが「納品のない受託開発」で提供したいのは、お客様の事業の成長に合わせて付き合い続けるパートナーであり、ソフトウェアを活かす事業の意思決定の支援をすることです。単なる開発リソースの提供ではありません。私たちはお客様と一つのチームとして一緒に事業に取り組んでいきたいと考えています。
事業には様々なステージがあります。MVPを作る段階からスケールに対応する段階まで、どの段階においてもパートナーであり続けられるようにサービスのアップデートに取り組んでいます。また、扱う技術要素やインフラについても、Rails/AWSに加えてFirebase/GCPなどにも広がっています。
そうした「納品のない受託開発」の事業自体の推進と進化については、紆余曲折を経て4名体制となった執行役員プログラマたちが中心となって進めていってくれる体制にシフトしつつあります。「納品のない受託開発」に取り組む顧問プログラマを担う皆さん、事業をリードする執行役員の皆さん、この事業を支えてくれるバックオフィスの皆さんには感謝しています。
創業から12年が経ち、組織も50人を超えて、若い社員たちも増えて、いくつもの事業が立ち上がったことは、どれも喜ばしいことではあります。しかし組織が多種多様になる中で、社内外の人たち(特に若い人)にとってソニックガーデンがどういった会社で、どうあろうとしているのかは示していく必要があると考えました。
そこで取り組んだのがコーポレートアイデンティティの見直しです。会社法人としては複数の事業を扱っていますが、私たちソニックガーデンのアイデンティティとしては「納品のない受託開発」に取り組むプログラマの集団であるのだと考えました。
まだ途中なのでミッション・ビジョン・バリューといった形には収まっていないですが、「一緒に悩んで、いいものつくる」をお客様への約束(スローガン)、「プログラマで、生きていく」を私たちの理念(マニフェスト)という言葉として導き出せました。
この活動は、私にとっては非常に取り組みがいのあるもので、自分たちのことを言語化し直すことを通じて、より理解や解釈、思想や哲学が深まったように思います。このリブランディングにお付き合いいただいているコピーライターさんたちには感謝しています。
2018年から参画した株式会社クラシコムでの社外取締役も続けさせて頂いています。社外取締役かつ監査等委員なので、経営の監査・監督という立場での関わりと同時に、自社システムを内製しているテクノロジーグループにアドバイザー的な立場でも関わっています。
2023年は初めての株主総会にも出席しました。私自身、前職では上場企業に新卒入社したのち、社内ベンチャーを作ったあとMBOで上場企業から独立をしたのですが、そのあと社外取締役として参画した会社で、上場から株主総会まで経験するとは思ってみませんでした。貴重な経験させてもらいました。
昨年に上場を果たしたクラシコムですが、倉庫の拡張など事業の成長に耐えうるシステムを作り続けることに取り組みました。不確実性の高いソフトウェア開発のプロジェクトを、経営サイドからみてどう取り扱っていくのか模索してきました。
その学びをクラシコム主催のテックトークのイベントで、マネージャの方と共に話をさせてもらいました。これまで、あまりクラシコムの立場で外に出ることはなかったので光栄でした。クラシコムの経営陣・マネージャ、社員の皆さん、ありがとうございました。
そのクラシコムで取り組んできた経営とソフトウェア開発の良い関係づくりについて、経営者の方に知ってもらえる形でまとめたのが「人が増えても速くならない」という本でした。2023年6月に、私のビジネス書の単著としては5冊目になる本として上梓しました。
経営者の方に向けて書いたつもりでしたが、予想通りというか、多くのエンジニアの方にも読んでいただけたようです。エンジニアの方々からも「こうやって説明すれば良いのか」「上司とお客様に読んでもらいます」と言った言葉を頂けて、ありがたかったです。
出版をすると登壇や取材などお話する機会を頂けます。今回も、Biz/Zineさんでの青木さんと小野さんとの対談、手放すラボでのトークライブ、PIVOTさんのポッドキャスト、倉重弁護士との対談など、私にとっても話をさせてもらうことで新たなインスピレーションを頂けた良い機会でした。
先日の福岡BacklogWorldの基調講演のほか、今年は地方でのイベントにも多数呼んでいただき、登壇してきました。久しぶりに様々な場所に行けて、これまた旅好きの私としてはありがたいことでした。出版に関わった編集者さん、呼んでくださった皆さん、ありがとうございました。
これまでは出版社さんからお声かけ頂いて、編集の方と二人三脚で企画を練って、自分自身で執筆するという著者という活動をしてきましたが、今度は自分自身が版元となって書籍の出版をしてみようと考えました。構想自体は以前からあったのですが、2023年になって準備が進んで、いよいよ形が見えてきました。
著者としての活動はやりがいもあるので続けていくつもりですが、著者である限りは、どこかで出版社に納品しないといけないわけです。その後、販売計画やマーケティングについては出版社に一任されることになります。もちろん著者として販促活動をしますが、コントロールできる範囲は限られています。そこで作品を作るところから届けるところまで全部やってみたいと思うようになったのです。
取次を使わず直販から始めるので自費出版といえばそうですが、イメージとしてはインディーズバンドの出版バージョンみたいな感じで、手作り感ありつつも、ちゃんとした物理の本を印刷・製本を経て販売していきます。この出版事業では、著者の方にチームに入ってもらい、私は執筆しないプロデューサー的な立場で関わっています。
いま一冊目を鋭意製作中ですが、物理の本を作るには印刷会社さん校正・組版の会社さんに装丁家さん、イラストレーターさんなど、多数の関係者の方々の協力があって成り立っているのを実感しています。何より出版事業を始められたのは、出版チームメンバーの皆さんと、そして出版に関する指導をしてくださったdZero松戸さんのおかげです。ありがとうございます。
がくちょこと仲山さんと一緒に取り組んでいるザッソウラジオも、2年目に入りました。『僕たちの知り合いをゲストにお呼びして、雑な相談のザッソウをしながら、ゆるくおしゃべりしていくポッドキャストです。』と言いつつ、すでに共通の友人は枯渇して、いずれかの友人に来てもらうのも試しました。
ゲストであるはずのおっさんラジオ(&はてな社長)の栗栖さんにパーソナリティ役をお願いしてみたり、がくちょと二人で以前にザッソウラジオのゲストできてくれた環境大善の窪之内さんに会いに北海道まで行ったり、ついでに、がくちょの実家に寄って現地収録してみたり、色々と遊べた年でした。
また、がくちょがログミーさんのアンバサダーに就任されたということで、なんとザッソウラジオがログミーさんで何回か書き起こしてもらえています。
・現代人を苦しめる「思い通りにいかない」現実と理想のギャップ ビジネスの世界でのヒントになる「流れに身を任せる」老荘思想とは
・雑草というと、海外では「悪い草」日本では「なんでもアリ」 植物学×ビジネス視点で考える「雑」という言葉の懐の深さ
ザッソウラジオが続けられてるのは、ディレクターさん、ジングル&音声編集の大島さん、がくちょのおかげです。ありがとうございます。ゆるく楽しく続けていきましょう。
徐々にリアルなイベントも復活してくれたおかげで様々な地方へ講演などに出かけられた他、ソニックガーデンでも合宿を何度か実施したし、そうしたイベントなどに合わせて地方で働きながら過ごすワーケーションもよくできた1年でした。
軽井沢には、ソニックガーデンの合宿所として借りた場所ができたので数回は行っていて、なんとなく馴染みができてきました。糸魚川での交流も楽しかったし、高知ではワーケーションで川で座禅やサウナなども体験できた。北見は2回も訪問して、カーリング体験のほかにバスツアーも用意してもらって楽しめました。
毎日を同じリズムでストイックに過ごすのも嫌いではないですが、見知らぬ土地に行くことや移動することそのものが結構好きなんだな、と自覚しました。色々なところに呼んでくださったり、遊んでくださった皆さん、ありがとうございました。
ちなみに一人旅と一人飯も好きで、知らない土地を歩いて自分で飲食店を探す「孤独のグルメ」の真似事をしたりするのですが、2023年はあまり一人行動は少なかったので、それは2024年には増やしたいところです。
今年も、それなりの数の本を読んできました。どの本も面白く読ませてもらったのですが、中でもソニックガーデンの経営に影響を与えてくれたな、と思う3冊をピックアップしました。経営者も人間なので、様々なインプットをもとに考えるのですが、そのうちの一つが書籍です。この辺りを読んでもらうと、私が取り組んでいる背景を知ってもらえるかもしれません。
これまで事業や組織にこだわりを持つことがあったけれど、それを「ソース」という言葉で表現されたことで、これまで考えてきた経営者であることの責任の果たし方とは違う感覚を持つことができるようになりました。自分はソニックガーデンというクリエイティブフィールドのソースであることは間違いないけれど、その全てを自ら執行しなくてもよくて、むしろ周りの人に頼っていこうと考えるようになったのです。→詳しい感想
プログラマという再現性の低いクリエイティブな仕事において、どのように人を育てれば良いのかを考えていたときに出会った一冊。コーポレイトディレクションの小川さんに教えて頂いた。職人を育てる徒弟制度や共同生活、仕事に向き合う姿勢など、多くのことを学んだ。ソニックガーデンでの徒弟制度に「親方」という表現をつけたのは、まさしくこの本の影響と言えます。→詳しい感想
こちらも育成に関する学びを得た本。人のアドバイスには矛盾することがあるが、それは、その相手によってステージが違うからである、というくだりがあって、我が意を得たりと思ったものです。ソニックガーデンで育成を考えた時も、フラットでティールな組織にまだ熟達していない人たちを混ぜてしまうと、双方にとって居心地の悪い環境になってしまうと考え、環境を分けて徒弟制度を作ったのでした。
2023年は、こうして思い返すと様々なことに取り組んでこれました。どの活動も自分一人ではできなかったことばかりで、本当に周りの人に助けてもらい、支えてもらったのだなと思います。本当に感謝しかないです。物足りない気もしたけど、自分としては最大限のスピードで1年を進めることができたのだと、こうしてふりかえった今なら思えそうです。
まもなく50歳になるという年齢的なものもあるのか、メンタル的に不安定になることもあったり、体調や心身に不調が続く時もあったりしました。組織が大きくなることで、人間関係の大変さにも直面しました。そして企業が成長して経営者としてのあり方や仕事の仕方を変えるべきなのに、それに対応できずに苦心したこともありました。
そうしたときも、周りに助けられてきたので、そのときの感謝を忘れずにいれば、なんとかなりそうだと思えます。
自分のことを過信せず、だけど卑屈にならず、できることに取り組むこと。時には、焦らずに待つこと。時間をかけることで、少しずつでも進めばよい。自分のキャパを超えるときは相談して頼る。自分が一番の賢者でなくてよい。知恵を借りること、一緒に悩んでもらっても良い。恐れよりも、希望でもって選択すること。
そんなふうに考えるようになった2023年でした。
The post 2023年のふりかえり first appeared on Social Change!.]]>そのときの様子は、backlogブログで記事にして頂いてます。
プロジェクトマネジメントにまつわるテーマということで、不確実さが増す社会において、今こそ「アジャイルソフトウェア開発」のエッセンスを、ソフトウェア開発以外のマネジメントにも適応していくと良いのではないか、ということを話してきました。
本稿では、そのときの講演タイトル「不確実な世界で成果をあげる〜変化を抱擁するアジャイル思考」について、少し補足をして言語化してみます。
最近は「アジャイル」という言葉だけを使われることがありますが、本来は「アジャイルソフトウェア開発宣言(アジャイルマニフェスト)」にある通り、ソフトウェア開発の文脈で語られる言葉です。
私自身、ソフトウェア開発者としてキャリアをスタートしたので、ソフトウェア開発におけるアジャイルの有用性は理解しているつもりです。それを抽象化した上で、経営や組織運営に適用するとしたら、その肝は何か考えねばなりません。
そのために、まず「アジャイルソフトウェア開発」の本質から考えるのですが、これについては以前に書きました。
そこで書いたのは、「アジャイル開発では当初に想定した機能を”全部”つくらない」ことが、掛け声のような精神論でもなく、ただのベストプラクティス集でもない、アジャイルソフトウェア開発の本質ではないか、ということです。もちろん私見ですが。
では、これをソフトウェア開発とは違う分野に適用するとしたら、どうなるのでしょうか。仮に、それをアジャイルマネジメントと呼ぶとしたら、その本質は「未来の結果を確約しない」ということではないかと考えました。
ソフトウェア開発プロジェクトに限らずとも不確実性が高い状況において、勝ち筋やアプローチが見通せないほど先のことについて事前に確定させることは非常に困難です。
もし仮に経営サイドが確定させて、絶対に実現させるというスタンスをとったとしても、それはウォーターフォール的で不確実さを飲み込む現場サイドの苦労は計り知れません。
経営サイドにしても、結果を事前に確定させてしまうことで時間経過によって得られたかもしれない経験や、想定できていない様々な機会を逸してしまう可能性があります。
では、どうすればよいのか。確実に進められる部分にフォーカスし、出てきた結果を積み上げていくのです。結果を積み上げていく過程で、方針転換をすることもできるし、優先順位を変えることもできます。
見通せる範囲までを確定させて進めていき、時間とともに進捗したら、そこからはまた見通せる範囲を確定させていくことが、アジャイル的な不確実な状況におけるプロジェクトマネジメントや経営になるのではないでしょうか。
結果を確約しないと言うと、果たして大丈夫なのか心配になると思いますが、結果を確約しない代わりに、今を精一杯に取り組むことにフォーカスします。
マーケティングやプロダクト開発など様々な不確実さの多い仕事や、アイデアや創造性が求められる再現性の低い仕事において、やれば絶対に結果がでるわけではありません。できることはベストを尽くすことだけです。
コントロールできる範囲に小さくして取り組んで、そこで得た学びや経験をふりかえって取り込んで、また次の小さな範囲に取り組むことで、少しずつ上達したり、成功確率をあげていくことができます。
どうも刹那的で行き当たりばったりに見えるかもしれませんが、むしろ逆で、大きな目的やビジョンのようなものを据えて、期限をきらないだけで、一つ一つ進めていくことでいつか実現することを目指します。
こうした考え方を「適応型マインドセット」として、以前にまとめています。私は、これこそがアジャイル思考と呼ぶべきもので、不確実さの中でも成果をあげていくことのできる思考法ではないかと考えています。
アジャイル思考は、弓道の世界で言われる「正射必中」の考えに近いものです。的に当てることではなく、正しく射ることに集中することを指した言葉です。正しいフォームで射ることで、結果として的に当たる。そのためには自分たちのフォームを知っていないといけません。
そうしたフォームは例えばアジャイルソフトウェア開発では、スクラムとして体系化されたりしていますが、経営やマネジメントをアジャイルにすすめる知識の体系化はまだなされていません。
今後いずれアジャイル思考を実践していくための体系化、アジャイルマネジメントを実践するための整理に取り組んでみたいものです。
私の講演資料はこちら。
The post 不確実な世界で成果をあげる〜変化を抱擁するアジャイル思考 first appeared on Social Change!.]]>クラシコムは、ECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営する会社で、商品コンテンツだけでなくドラマや映画、ポッドキャストを通じて世界観を発信しています。そうした様々な活動を支えるためにも、エンジニアチームを抱えてシステムを内製しています。
今回のイベントテーマは「社内受託にならないエンジニアチームのつくり方」で、私も含めクラシコムのテクノロジーグループが取り組んできた経験を話してきたので、本稿では私の話したことに加えて補足をいれながら言語化してみます。
まず一般的な話ですが、事業会社におけるエンジニアチームの立ち位置は、場合によっては、同じ社内にもかかわらず一括請負の受託開発のように、決めたものを作るだけの役割に陥ってしまうことがあります。
そうなってしまうと、ビジネス側は事業の状況にあわせた柔軟な仕様変更が難しくなるし、開発しているエンジニア側も言われたものを作るだけで楽しくありません。せっかく内製だからこそ得られるはずの良さが消えてしまうのです。
そうなるのには様々な要因があります。たとえば、依頼するビジネス側がソフトウェア開発のことを知らなすぎるが故に、建物や工場を建てるように「一回で決めて作って終わり」と考えてしまうことです。また、コンピュータのことは難しいからと作ることを丸投げしてしまうことも原因になります。
そんな社内なのに受託みたいな状況にならないようにするために、ソフトウェア開発の本質的なところを、エンジニアではないビジネス側の人にも知ってもらいたいと思って書いたのが「人が増えても速くならない」という本でした。
本書は、私がクラシコムに関わって内製のエンジニアチームがシステムを作っていく中で、経営サイドとエンジニアサイドの間を繋ぐように理解のすりあわせをしてきた経験をもとに書いたものです。今のクラシコムのエンジニアチームは社内受託にならず、経営や現場と一体となったソフトウェア開発ができていると感じています。
当日イベントではクラシコムのエンジニア2名が、どういったプロセスやスタンスで取り組んでいるかプレゼンしてくれましたが、私がとても良いなと感じたポイントを紹介します。
システムを利用する関係部署に展開する際に、システム側の理想を絶対に正しいものとして押し付けない。ありたい姿に共感してもらうところから始めて、どう近づけていくのかを一緒に模索するというスタンスでいることで、一方通行ではない信頼関係を築くことができる。
エンジニアである前に、クラシコムの社員であるというスタンス。システムを作って終わりではなく、会社や事業が健全に成長し続けることを考えるなら、知識をシステムだけに閉じず、業務について勉強したり、現場に行って見学したり、メンバーの一員としての歩み寄りをすること。
システムの品質には、業務の品質も関わってくる。技術的負債を気にしすぎて、業務を複雑にしてしまうと、それも一種の業務的負債となってしまう。また、どんな業務も「お客様体験」に繋がっているので、そちらを優先してシステムの複雑さを受け入れることも大事。
このように、システム開発をしているチーム自体が境界を作らず、全体が良い状態になるために飛び越えていくスタンスでいることは、社内受託にしないためのエンジニア側の努力です。また、クラシコムでは新しいシステムや機能を導入することに、現場も非常に協力的です。そこには、同じカルチャーや価値観があり、互いに目線を揃えようとしているからではないかと思います。
では、そうしたエンジニアチームを作って、経営サイドとしてうまく付き合っていくためにマネジメントの目線から取り組んだことを紹介します。大きく3点あります。
1.同じものを見て話す
2.スケジュールを固定しない
3.考えられるサイズにスコープを絞る
もしかすると、一般的なマネジメントの常識とは異なるように感じるかもしれませんが、ソフトウェアという目に見えないもの、変化し続けるものをマネジメントするには重要なことばかりです。それぞれについて詳しく記述します。
ソフトウェア開発のプロジェクトでよく起きるのが、経営サイドから見て何が起きているかわからなくなってしまい、エンジニアの話す言葉を信じるか・信じないか、みたいな状況です。信じれているうちはよくても、度重なるトラブルや進捗の悪さによって信頼関係が失われた時、プロジェクトは崩壊します。
そうならないために、現場サイドと経営サイドで言葉だけで状況を共有するのではなく、プロジェクトの状況を見える化したもの、すなわちロードマップを作って共有するようにしています。横軸に時間軸、縦に進行中のプロジェクトを並べています。これによって、詳細はさておき全体像を把握することができます。特に経営サイドで重要なのは全体像です。
ロードマップは1度作って終わりではありません。定期的にロードマップの見直しもします。経営と現場のリーダークラスが集まって確認する定例ミーティングでも更新していきます。経営サイドとしては、進捗に遅れがあるのは仕方ないとしても、どういった状況なのか把握をしたいものです。それがロードマップの差分という形で見えるのは安心です。
また、その定例ミーティングを「ロードマップミーティング」と呼んでいますが、そこでは現場からも経営からも相談事項が持ち込まれます。難しい意思決定は、現場だけもしくは経営だけ、とせずに互いを巻き込みます。ただし、意思決定と責任を相手側に委ねるのでなく、あくまで相談の形をとることが重要です。それにより同じ問題に向き合う協力体制が作れます。
現場では難しいと思っていたことも、経営からみたら前提を変えることができるので、容易になる可能性もありますし、逆もまた然りで、経営サイドから見たら超難問でも、現場サイドでは簡単に実装できてしまうこともあります。だからこそ「現場vs経営」の対立ではなく「問題vs私たち」でありたい。そのためにも、ロードマップという眼に見えるものを作り、そこに目を向けるスタンスが重要になります。
そのロードマップは、前述の通り継続的に更新をしていきます。よって、いわゆる計画表とは異なります。これが計画だとすると、その計画通りに進んでいるかどうかの進捗確認と、間に合わない場合はリスケを行うことになりますが、それは計画が正しいもので固定している前提に立っています。
しかし、ソフトウェア開発のように不確実性が高い場合だと、何度もリスケすることになりかねません。リスケはネガティヴな印象ですが、もともとロードマップでは更新することを前提に進めるのでポジティブです。その更新頻度は、定例ミーティングのたびに行っても構いません。進捗状況や不明だった部分が明瞭になるに合わせて更新していくのです。
ロードマップの作り方は、今後に必要となる大きめの機能や構想を枠として分解し、優先順位をつけることから始めます。そして、時間軸で近いプロジェクトやタスクについては精緻に見積もりをし、時間的に遠いものは概算でよいので見通しを立てます。もっとも近いものは1週間先で、それ位ならほぼ間違いのない状態まで見積もります。
ロードマップでは納期やスケジュールは固定しません。しかし優先順位に沿って並ぶため、いつか開発されることがわかっていることは経営にとって安心材料です。また、どれくらい先になってしまいそうかわかっていれば、それを前提に事業プランの見直しもするし、優先順位や機能のリッチさなど調整もできます。固定しない方が事業も対応しやすいのです。
ロードマップを現場サイドと経営サイドで一緒に見直していくことで、経営が一方的に納期を守らせる関係でなく、逆に、経営がエンジニアの言いなりになる関係でもなく、共通の限られたリソースを活用して、どうやったら最大限の成果を出せるかを一緒に考える関係を作ることができます。
ロードマップに並べるプロジェクトやタスクの大きさは、うまくマネジメントしていく上で重要なパラメータになります。特に大きいまま扱おうとすると、優先順位はつけられないし、見積もりも不透明になり、進捗状況も把握できなくなってしまいます。
ソフトウェア開発のような不確実性の高いプロジェクトにおいては、機能を増やしたりして大きな塊で一括で作ろうとするのは、かえって効率性や柔軟性を落としてしまい、結果としてコストがかかりすぎてしまうことが多くあります。
全体をリプレースするような場合を除いて、すでに稼働中のソフトウェアを改修していくことになるので、可能な限り小さな単位にしていく方が望ましい。なんだったら、たとえリプレースであっても、開発途中は内部的には小さく作って拡張していく形をとってから、リリースする方がよいでしょう。
大きいものは進捗状況をパーセントで報告するようになりますが、そうなると中身は不透明になり、経営サイドからは手を出せなくなり、完成するまで待つだけの一括請負の受発注のような関係ができあがってしまいます。一つ一つをできるだけ小さくすれば、進捗状況は「終わったか」「終わってないか」だけのシンプルにわかるようになり、経営サイドとも認識が揃います。
このように大きなものを小さくしていく「小口化」は、他にも複雑性が増した時に有効です。組織やチームも、全員がすべての業務やシステム全体を把握するのが難しくなったり、人数が増えてきたときは、把握してグリップできる範囲に小さく分けることもマネジメントの一環です。
社内受託にならないことは、すなわちソフトウェア開発を取り巻く体制の経営も利用する現場もまじえて、一緒に考える体制をどう作るのか、ということです。
経営者や利用者がITリテラシーを高めるのはあるとしても、プログラミングまでできる必要はありません。しかし、ソフトウェアの本質は理解してもらえれば、詳細はわからないなりに一緒に考えるスタンスを作ることができます。
すぐに自社のエンジニアのことを「うちのエンジニア天才」と言ってしまう経営者もいますが、本当にそうかもしれませんが、往々にして、自分がわからないことをわかっている人がいて、その人に任せきりにしたいが故に、そう思ってしまっていることが多くあります。
そもそもソフトウェア開発には、正解がありません。確実に必要な機能、確実に動く作り方、確実なコードなど最初から見通せないし、進むにつれて変わっていくものです。つまり、どんなエンジニアでさえ確実な正解などわかるはずもないのです。どれほど優れたエンジニアだとしても、丸投げしてうまくいく保証などありません。
経営者もエンジニアも、不確実なものだという前提にたって一緒に向き合っていくこと、一定の不確実さを受け入れながら、確実にできることから積み上げていくこと。ロードマップを更新しながら、認識のすりあわせを続けていくこと、学びの機会を得て軌道修正していくこと。そうした状態をアジャイルと呼ぶのだと、私は考えています。
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The post 社内受託にならないエンジニアチームのつくり方 first appeared on Social Change!.]]>エンジニアの〜と題してるけれど、これからの時代の様々な仕事においても参考になると思います。
そのキモは、本質を捉えることで、効率的に無駄なことをするようなことがなくなる。不確実性を受け入れていくことで、より良い状態を作れる。この辺りは拙著「人が増えても速くならない」に通じてて嬉しい。
あと嬉しかったのは、私の話も出してくれたこと。一緒に仕事してもらったときの話が2章に。
そして本書の最後の章、最後のセクション「自分の人生は自分でコントロールする」では、30代後半の牛尾さんに影響を与えた存在だと書いてくれてた。価値観を一変させた、と。
それが私にとって本当に嬉しく思ったのは、そんな私の価値観を一変してくれたのも、それより若い頃の牛尾さんとの出会いがあったから。
私が20代で社会人2〜3年目の頃だと思うけど、まだ日本で紹介されたばかりのアジャイル開発を会社で実践しようとしていた。だけど私がいたのは大きな会社だったこともあり中々うまくいかなくて挫けそうになってた。
そんなとき、アジャイルのイベントで牛尾さんが登壇されているのを見た。
当時の牛尾さんは、私の所属する会社よりずっと大きな会社にいて、それなのにアジャイル開発を実践されていて、しかもプレゼンも強烈にかっこよかった。
それを見て、年齢も変わらないし私にもできるかもしれないと思ってしまった。私の脳のブレーキが壊れた瞬間だった。環境の難しさを嘆くより、立ち向かう人でありたいと、価値観が変わった。
そこから、自分の周りから小さくトライを続けて、実践をブログにしたり、味方や仲間を増やして、講演や寄稿の機会を頂き、ビジネスにも取り組んで、紆余曲折を経た結果、理想とするアジャイル開発を当たり前にできる会社ソニックガーデンを作ることができた。
だから、私自身のターニングポイントとなったのは、25年近く前の牛尾さんとの出会いだった。それがあって10数年たって創業したソニックガーデンという存在が、今から10数年前の牛尾さんの価値観を一変させたという話に、本当に不思議な縁を感じたのでした。
The post 「世界一流エンジニアの思考法」を読んで first appeared on Social Change!.]]><前編ポイント>
・人を増やしても納期が短くなるとは限らない?
・一度にたくさん作っても生産性は上がらない?
・新しいアイデアを早く出すには?
システム開発は、人が増えても早くならない(前編)(倉重公太朗)
<後編ポイント>
・やみくもに数をこなしても仕事は上達しない
・市場で求められるエンジニアになるために必要なこと
・新人の視座を上げるために有効なことは?
システム開発は、人が増えても早くならない(後編)(倉重公太朗)
以下に、私の話した部分を抜粋します。
エンジニアの人たちの接し方にもなりますが、「これを作ると決めた。画面も機能もこのような感じで頼む」と言われるのは非常に作りにくいのです。例えば「Facebookのようなものを作ってください」と言われたとします。Facebookはどれだけお金をかけて作っているのでしょうか。それと同じことは簡単にはできません。
経営者が欲しいのはFacebookかと言うと、そうではないことが多々あります。「本当に行いたいことは何か? どのようにしたら実現できるのか」というwhyからhowの部分を一緒に考えるのがエンジニアの仕事です。実装というプログラムを組むことは、そのおまけのようなものです。
まず経営者のしたいことを聞いて「こういう方法であれば実現できる」と提案するほうがやりやすいのです。
作りたいものはたくさん出てきてしまうので、「一遍に頼むから少し割安にできませんか」と言われることがあります。紙の本を出版するときには、1,000部よりも2,000部刷るほうが割安になるという発想があります。
けれどもシステム開発の場合は全然割安になりません。なぜかというと紙や物は物理的に同じものがたくさんあるので、大量に作ると割安感が出ます。しかしソフトウエアの場合は一つひとつ違うものを作っています。家電に例えるなら、それぞれ違う規格のテレビを作っているのと同じことです。毎回全部違うものを作っているので、量が多いだけでは何の割安感も出ません。
当たり前のことだと思いますけれども、作っているものは今まで話したとおり単純労働のルーティンワークではありません。クリエーティブな仕事で、新しいアイデアを早く出すにはどうすれば良いでしょうか。強いプレッシャーをかけられたらアイデアは早く出せますか?
本当は速く走れる人がゆっくり走っていたら、プレッシャーをかければもう少し頑張ってくれるかもしれません。ですが、良いプログラマーはキーボードを打つよりじっと考えている時間のほうが長いのです。カメラマンで言えばシャッターを押すことが仕事ではなく、良い構図、色合い、ポージングを切り取ることが仕事です。考えることが仕事の人に「速くやれ」と言っても速くできません。
ソフトウェア関連の生産性は、自分自身がより上達していくことで上げていくしかありません。よく高校球児が上達のためにバットをめちゃくちゃ振らされる場面が漫画やドラマではありますが、それで本当に上手になるのでしょうか? もし下手な素振りを1,000回しても絶対に上手になりません。途中で「今のフォームでよかったのか?」というふりかえりをしなければ改善しないのです。
ふりかえりの中で大事なことは自分を省みることです。
チームや師匠が付いてフィードバックを与えることで、より改善し、生産性が上がります。生産性を上げていくにはプレッシャーをかけるより時間をかけてふりかえりをしながら人を育てるしかありません。
人を育てるのもチームを作るのも時間がかかります。逆に言うと時間さえかければ良いチームが出来上がるのです。
計画を立てる時に「1週間でいけると思うけれども3週間にしておこう」とバッファーを積んでおくと、大体3週間で仕事が終わります。
世の中大体無駄なバッファーで仕事が埋まっているのです。ですから大体で良いから見積もりをもらって、「もし期間内にできなかったとしても絶対に責めません」と伝えます。見積もり通りできたらハッピーですが、できなくても納期を延ばしていけばよいだけです。正確な見積もりを求め、かつコミットメントを取るという方法では無駄が生まれるのです。
まず見積もりではなくロードマップを作ります。大きなものを全部一斉にそろえるのは無理ですが、1個ずつ機能を増やすことはできます。一番優先順位が高いのは何か考えて、作る順番を決めていきます。
近くのものは正確に見積もり、遠くのものはぼんやりと順番だけ決めます。ロードマップは状況に応じて毎月更新すればよいのです。常に未来を少しずつ更新していきます。近くのものは精緻に、遠くのものは解像度を粗くしてずっと更新し続けていけば、機能がどんどん積み上がっていきます。
ソフトウエア開発は不確実なものであり再現性がない仕事だと思っています。他の業界や業種でも同様に答えや正解がない仕事が増えているのではないでしょうか。
昔は大勢の人たちが工場で働いていましたが、不確実性があまりなく、皆が同じ労働を時間内にすれば給料がもらえました。ですが今や単純労働はコンピューターやロボットに置き換えられていて、人間は複雑なことばかりするようになってきました。
意思決定や複雑な判断、コミュニケーションなど、正解がない問題ばかりになってきています。不確実なことを絶対に上手に行うことなど不可能です。うまくいかないことを前提として、うまくいく方法を考えましょうというのが本のサブタイトルに書いてあることです。
経営は複雑なものであり、答えのないものだということは分かっていますが、ソフトウエアも同じものだと思っていただきたいのです。「経営をソフトウエアと一体化すること」がDXだと私は思っています。経営者がいろいろな意思決定をしながら経営するのと合わせて、ソフトウエアも変化していかなければなりません。経営サイドとソフトウエアを作っていく側が対等に会話をしていくことにより、本当のDXが出来上がっていきます。
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The post Yahooニュース対談「倉重公太朗のこれからの『働く』を考えよう」に出ました first appeared on Social Change!.]]>「アジャイルソフトウェア開発」ではなく、そこからエッセンスを抽出し、他領域に応用できる「アジャイル」の思想、いわば「アジャイル思考」について。
アジャイルの本質とは、将来のこと確定しないでいる姿勢です。未来を約束する契約はアジャイルの対局にあります。変化を抱擁することがアジャイルです。
今より先のことは変化し続ける前提にたてば、良いことも悪いことも起きうるし、それは避けられません。不確実であるからこそ今の姿勢が重要になります。
その姿勢とは・・・
・変化を受け入れても、自分たちの理想や自由を維持していけるだけの強さを身につけようとすること。
・先々のことを決めつけず、今の状態を肯定した上で、少しでも今より良い状態になるよう務めること。
・結果にコミットするのではなく、理想のプロセスやフォームに注目し、今できるベストを尽くすこと。
そのための実践とは・・・
・ものごとを小さくして取り組んでいく「小口化」。コントロールできる範囲に小さくする。
・実践や実態をもとに見直していく「ふりかえり」。大きな改革ではなく改善を重ねていく。
・他者とは争わずに協調していく「問題vs私たち」。奪い合うのではなく共に解決していく。
「人が増えても速くならない」に書いたことを、もう一段、抽象化することで、不確実さに立ち向かうためのアジャイル思考についての本が書けるかもしれない。
The post アジャイルの本質とは何か first appeared on Social Change!.]]>私たちの人材育成
・育成は教育や研修ではない、自律で育つまでの支援(ケア)
・技術向上と仕事を通じて、人格まで含めた人材育成
・ただ技術力だけでなく、文化や価値観も身につける
・再現性のない仕事は、職人の徒弟制度で真似て育つ