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第14章 10年の歩みを振り返りながら考える「会社とは、仕事とは、ソニックガーデンとは」

【連載】ソニックガーデンストーリー 10年分のふりかえり

「納品のない受託開発」を掲げ、フルリモート勤務や管理しない組織など柔軟な働き方を実践するソニックガーデン。
メンバーへの取材をもとにその10年の歩みを追いました。

10年の歩みを追いながら、時計の針は現在に戻ってきました。最後は、会社の歴史を振り返りながら、アップデートされたビジョンをもとに、倉貫が「会社や仕事、ソニックガーデン」について語ります。

14-1 目的地は決めないでやってきた

今回社史のメイン企画として、ソニックガーデンの10年の足取りをストーリー形式で追ってみました。最後は、倉貫さんにアップデートされたビジョンについて話していただきながら、改めてソニックガーデンとはどんな組織なのかを探っていきたいな、と思います。
倉貫の顔倉貫
はい。しかし、こうしてストーリーとして読んでみると、自分たちが大事にしてきたこと、実際に行ってきたことなどがわかりやすくなるし、単純に面白いですよね。
こういったノンフィクション系のストーリーにおいては、「事実に語らせる」のがポイントらしいんです。要は、事実が魅力的だったら、ストーリーも魅力的になる。書き手ができることは実はそれほどなくて、みなさんの歩んだ道が魅力的で、ユニークで、芯が通っているからこそ、ストーリーも面白いものになったのだと思います。
倉貫の顔倉貫
創業からずっと、これといった目的地を決めずに歩んできました。今、50人を超えましたが、最初からこうなることは目指してはいなかった。そのとき、そのときに向き合いながら、常に変化をしてきたんです。そういう意味では、確かに、ストーリーが生まれやすい組織でもあるのかもしれませんね。
そうですね。さて、今回どういう思いがあって、ビジョンをアップデートしたのか。いろいろと話していただきながら、ここから先の視点について触れてもらえればと。
倉貫の顔倉貫
そうですね。今回、存在意義や価値観などのビジョンを改めて整理して、言語化しました。ただいきなり矛盾したことを言いますが、ソニックガーデンにはビジョンがあるようで、ないんです。ビジョンというのは、「将来的にこうありたい」ということを表現するものだと思いますが、さっき言ったようにソニックガーデンは目的地は決めません。「プログラマを一生の仕事に」も、ビジョンかと言えば、そうでもない。すでに、みんなプログラマが仕事なわけですしね。

要はソニックガーデンにとってのビジョンや理念は、「次の10年、こうしていきたいよね」というものより、「今の自分たちはこうだよね」に近い。日々、ソニックガーデンのビジョンはアップデートされていて、今回改めて「10年経った今の状態」を言語化した、という感覚が近いですね。今までも、数年先を予測した経営なんてしてこなかったですから。
予測はしすぎない、というのは倉貫さんも大事にしている考え方ですよね。
倉貫の顔倉貫
それって要は「納品のない受託開発」のビジネスモデルにも通じるんです。ソニックガーデンの象徴ともなっている納品のない受託開発について、改めて考えてみるとそのポイントは「1週間単位で作るものを決めて、進めていく」ことだと思うんです。

通常であれば、ある程度完成形を決めて、その開発に必要な日数と人数を割り出してプロジェクトマネジメントをしていきます。いきなり大きなものを作ろうとするんです。でも、半年、1年後にどうなっているかわからない。開発していく間に予測できないいろいろな要素が出てきて、開発が思った通り進まない。結果的に、納期間近で大変な思いをして開発することになる。
ソニックガーデンがずっと向き合ってきた業界の課題ですね。
倉貫の顔倉貫
最初から小さいプロジェクトにして、少しずつ進めていけば、毎週成果もあって、達成感もある。ソフトウェア開発をできるだけ小さくして進めていく、というのが納品のない受託開発の根本にある発想なんですよね。

それから、1年スパンで予測をしてしまうと、そこには「人の成長」が考慮されないんです。その時点の能力で、物事を予測してしまう。でも、本当は1年、いや半年でも人は成長するはずなんです。だから、予測しすぎてしまうと逆に成長機会を奪うことになりかねない。1週間という単位に集中して、ふりかえりを重ねていくことで、成長も促していく。過去、未来ではなく「今」に集中するから、マインドフルネス的でもある。
その考え方は、先ほどのビジョンの話とも通じますよね。
倉貫の顔倉貫
そうです。経営においても、よくある3年間の中期経営計画みたいなものは考えたことはありません。さすがに1週間単位というわけにはいきませんが、長くても半年ぐらいのスパンでどう組織のあり方を最適化していくか、をずっと考え、実行してきました。これからも、この経営スタイルを続けていく、ということがある意味ビジョンなのかもしれません。

14-2 ソニックガーデンは「人」の会社

具体的に、アップデートされた理念を見ながら話ができればと思うのですが、まず「私たちは何のために存在するのか」ですね。

倉貫の顔倉貫
これは、今も納品のない受託開発が話の中心でもあったように、ソニックガーデンの存在意義として欠かせないものですね。社会に対して、納品のない受託開発を提供していくことが、私たちの役割である。それを改めて整理して、言語化したものです。その下に3つ紐付く考え方も、納品のない受託開発によって実現していきたいことをより詳しく書いたものです。

役割のない組織は存在しません。「ソニックガーデンは、何のために存在しているのですか?」と言われたら、「納品のない受託開発を社会に提供するためです」と今は胸を張って答えることができるし、これからもそうあり続けようという意思表示ですね。
「中心となる価値観」は変わらずですね。

倉貫の顔倉貫
これは、要するに「今」に集中しようということを述べているんですよね。変化、というのはソニックガーデンにおいても重要なキーワードです。
「行動指針となる価値観」は、メンバー全員参加のワークショップで出てきた言葉から作られたそうですね。

倉貫の顔倉貫
そうです。初めての試みでしたが、実際に納品のない受託開発の現場に立ち、行動をしているメンバーが大切にしている価値観を言語化するのがよいだろうと。ここに関してはみんなで考えてもらいました。今後もアップデートしていくことになるかな、と思います。やっぱり、そこで働く「人」の考え方が常に反映されている状況でありたいですし、あまり型にこだわりすぎても、変化を阻害しますから。
この社史の企画を考える際に、「ソニックガーデンの歴史は、人の歴史」と倉貫さんが言っていたのが印象的です。
倉貫の顔倉貫
ソフトウェア開発において、重要な資源は何かといえばやっぱり「人」なんですよ。一方で、製造業であれば「工場」かもしれません。会社ってこれさえあれば潰れない、という拠り所が何かしらあるんですね。人がいなくなっても、工場さえあれば潰れないという会社もあると思います。

それが、ソニックガーデンの場合は「人」なんです。人がいなくなったら、ソニックガーデンは何もできないんです。何十台パソコンがあったって意味がない。そういうハードウェアは、私たちの資源になり得ないのです。ですから、経営におけるコストもほとんどが人件費です。その最重要の資源である「人」が最大限のパフォーマンスを発揮するにはどうすればいいか。繰り返しますが、そのためのビジネスモデルが納品のない受託開発でもあるし、経営も「人」のために行っています。
「人を大切に」というお題目は方々で聞きますが、ソニックガーデンの場合、それが経営的な合理性とも合致しているということですよね。だから、人を大切にすることで11年目を迎えることができた。
倉貫の顔倉貫
はい。「人を大切に」という言葉だけ聞けば、それを否定する人はいないと思います。そのために、他の多くの会社も福利厚生を用意するなど、いろいろな工夫をしています。

ソニックガーデンの場合は、そうした制度に加え、ふりかえりを通じて本当に一人ひとりと向き合っていますし、時には成長を促すために厳しめのフィードバックをすることもあります。「評価がない=フィードバックがない」では決してない。人の成長がソニックガーデンの成長でもあるんです。できるプログラマとそうでないプログラマでは10倍の能力の差がある、とよく言われます。つまり10人が、できるプログラマに成長していけば、それは100人を採用するのと同じぐらい組織が成長するということでもあるんです。ソニックガーデンにおいては、「人」というのはそれぐらい重要なんです。

14-3 希望となる存在であるために

最後、企業理念ですね。ここは、少し変わったというか、新しいメッセージも含まれているのかなと思います。
倉貫の顔倉貫
10年続いてきて、自分たちがやってきたことが間違っていなかったと、ある程度は証明ができたのかなと思っています。簡単ではありませんでしたが、経営の土台もある程度できてきて、少し余裕ができてきた。生きるのに精一杯だった10年をくぐり抜けて、「しっかりやっていけば生きていられるな」ぐらいの感覚が生まれてきたんです。

じゃあ、そうなったときにどうするかを考えたとき、「プログラミング」を社会にもっと浸透させたいと思うようになってきました。それも、既存の捉えられ方とは違う形で、です。
どういうことでしょう?
倉貫の顔倉貫
プログラミングは、多くの場合は「労働」のための能力という文脈で捉えられていますよね。プログラマ=労働者である、と。特に昔からのSIer業界ではその色合いが強いです。極端な話、プログラマは「人」ではなく、「道具」とみなされている。ここで、またさっきの「人」の話にも繋がってくるのですが…。
いろいろなことが繋がっているんですね。
倉貫の顔倉貫
それで、そういう考え方から離れて、プログラミングという行為そのものを捉えてみると、本来は素朴に楽しい行為であるはずなんですよ。だからこそ、私たちは一生プログラマを仕事にしたいと思っている。プログラミングって楽しいし、遊び感覚、趣味の感覚でやっていいんだよという考えを広めたいのが1つ。

もう1つが、そうした考え方を広めていくことで、プログラミングする人の裾野を広げていきたいということです。スポーツだって、プロもいればアマチュアもいるし、草野球を楽しんでいる人もいる。プログラミングも、いろいろな形で行うものとして捉えていいと思うんです。将来的にプログラミングをする人口が増えれば、その分、プロの人も増えて、ソフトウェア開発における選択肢も増えていくでしょう。それに相対化されることで、「プロとは何か」がより鮮明になってくるはずです。
面白い発想です。遊ぶ文化、いいですね。ソニックガーデンの「遊ぶように働く」も根底にはありますね。
倉貫の顔倉貫
私たち自身も、プログラミングは「遊び」であるという感覚は持っています。同時に、それを生業にしてもいる。だから、遊びでもあるし、働くことでもあるんです。仮に、「明日から仕事しなくていいよ」と言われても、プログラミングは絶対にしていると思います。今も、それに近い感覚はあるんです。仕事なんだけど、遊びでもあるから。
「仕事」とか「働く」という言葉の意味も、また違う捉え方があるのかもしれません。
倉貫の顔倉貫
確かに、「仕事は辛い」とか、「働くのは大変」という考え方を更新したいという思いもあるかもしれないですね。プログラミングで遊ぶ文化を作っていくことで、仕事の考え方も変わる可能性はあります。

その感覚をプログラミングにおいても広めていくことで、手の届く範囲でいいので、楽しく生きられる人が増えるといいな、という思いもあります。それをできるのは、この10年まさに遊ぶように働いてきた我々ソニックガーデンなのかなと。そういう思いを込めた、企業理念ですね。
実際にやってきた人の声であれば説得力はありますからね。
倉貫の顔倉貫
誰かがやっていれば、自分もできるかも、と思えるじゃないですか。ソニックガーデンはそうした、希望となる存在でもありたいと思っているんです。

そのために、これからも納品のない受託開発で、ソフトウェアの価値を最大化していき、同時に、自分たちは遊ぶように働いていくことが大切。こうしたことを実現していくための組織として、ソニックガーデンが存在する、ということです。

11年目もすでに動きはじめていますが、これからもたくさん面白いストーリーを、みんなの手で生み出していきたいですね。
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