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第二回 変化球を打ちにいく組織

プログラマのキャリアを考えたとき、経験を重ねた先は管理職、もしくは独立してフリーランスといった選択肢がほとんどです。

しかし、どちらもプログラマとして腕を磨き続けることが難しい環境です。 そんな状況だからこそ、会社に所属しながら、ずっとプログラマを続けられる「第三の道」を選んだ方々に、プログラマを一生の仕事にした先に見える景色を語っていただきました。

今回の対談相手は、2012年に入社した伊藤淳一さんです。

Amazonレビュー100件を超える「プロを目指す人のためのRuby入門」(2017年)を上梓、フィヨルドブートキャンプのメンターを務めるなど、プログラマとしての社外活動にも積極的な伊藤さん。ソニックガーデンでのこれまでを振り返りながら、プログラマとして生きていく魅力を語りました。


ソニックガーデンに入社し、生まれ変わったような気持ちで「納品のない受託開発」に取り組んできた伊藤さん。そのプロセスは、ベテランプログラマであっても、苦しいチャレンジの連続でした。そんな伊藤さんを支えたのは、家族の存在です。「家では妻が上司」と冗談めかしてしまうくらいの夫婦仲は、ソニックガーデンNo.1と言っていいほど⁉

そして、ソニックガーデンが本格的にリモートワークに取り組んだきっかけは、伊藤さんの入社でした。社長対談第2回は、初めてのリモートワーク社員を迎えた当時の社内エピソードや、伊藤さんが関わってきた案件について語ります。

創業メンバー6人 vs 伊藤さんの奥さん

倉貫の顔倉貫
あらためて、伊藤さんが入社したときのことを話そうか。ソニックガーデンの創業メンバーは、私を含めて6人なんだけど、伊藤さんは初めての社員として入社しました。

その頃は渋谷にオフィスがあって、前田さん(創業メンバーの1人・前田直樹)がアイルランドからのリモートワークに挑戦してたんです。良い感じだったので、「リモートワーク可」の求人を出したら、すぐに伊藤さんからお問い合わせが来たんですよ。でも社内は、「マジ⁉ ホントに?」って騒然だった。
伊藤の顔伊藤
騒然(笑)。まさか、連絡が来るとは思ってなかったとか?
倉貫の顔倉貫
そう、それ。心の準備はしてたけど、こんなに早く応募が来るとは思ってなかったので、ビックリしたんです。面接から受け入れの環境作りまで、手探りでやりました。
伊藤の顔伊藤
わざわざみんなで、兵庫にも来てくれましたね。
倉貫の顔倉貫
面接も、ずっとオンラインだったから。「やっぱり1度は顔を合わせたいよね」と、6人全員で神戸に行きました。そのとき、伊藤さんの奥さんも一緒にランチをしたんだけど、「ソニックガーデンって何をしてる会社なんですか?」って、次から次に質問が飛んできたのを覚えてる。伊藤さんの奥さんによる、私たちへの最終面接が始まったみたいな。
伊藤の顔伊藤
逆面接(笑)。今だから言えますけど、前職が大企業だったぶん、妻はベンチャー企業への転職に「大丈夫?」と心配はしてました。不安はあったと思います。でも、みんなとワイワイ本音で話したこともあって、「ちゃんとした会社だね。大丈夫じゃないかな」と。
倉貫の顔倉貫
奥さんは、家庭での伊藤さんの上司だからね。しっかり、お墨付きをいただいたと。

伊藤の顔伊藤
転職って、チャンスだけどリスクにもなる可能性はあって。それでも僕は、「納品のない受託開発」に関心があって、やりたかったんです。リモートで働けるし、Rubyができるなどの理由もあったけど、1番はそれ。その熱意に、家族も「そこまで言うなら」という感じでした。
倉貫の顔倉貫
うん、うん。ありがとうね。家族の理解や支えは仕事をする上で大事だし、応援してほしいよね。大事なのは、一方通行の応援にしないこと。ソニックガーデンでは、社員が家族のことに時間を割きたいとき、相談ベースでサポートしてます。例えば、一時的に就業時間を調整することも可能です。

「伊藤さん」と呼ばれたiPad

倉貫の顔倉貫
それで話は戻るけど、伊藤さんには、3ヶ月ほどオリエンテーリングをかねて単身赴任をお願いしました。その後は、Skypeを繋ぎっぱなしでコミュニケーションしてたね。ZoomやSlackなどが一般的でない時代だったから。
伊藤の顔伊藤
今のソニックガーデンは、Remotty(自社開発から生まれた仮想オフィスツール)を使ってるけど、当時はiPad越しに話してましたね。
倉貫の顔倉貫
そうそう。東京のオフィスに用意したiPadを、みんなが「伊藤さん」と呼ぶようになった(笑)。「伊藤さん打ち合わせだよ」って、iPadを会議室に持って行くのが日常となり、オフィスでの飲み会もiPadを介して参加してたなぁ。
伊藤の顔伊藤
最初はみんな、iPadに話かけてくれるんだけど、酔いだすと忘れるから、そっとログアウトしたり・・・。お客さんの誕生日には、iPadの中からギター弾いてお祝いもしました。自由にやってますね。
倉貫の顔倉貫
ここ1年2年で、テレワークやリモートワークが一般化してきたけど、導入が難しいとか、コロナが落ち着いたら通勤に戻そうなどの話も出てるじゃない?私たちがリモートワークを始めた頃は、まったく前例がないときだったけど、楽しんでやってたよね。

伊藤さんがオフィスにいないという事実を、マイナスに捉えない。伊藤さんの誕生日のときは、伊藤さん不在のオフィスにケーキを用意して、iPadに話しかけながらみんなで食べるとか。
伊藤の顔伊藤
はは、イジられてますねぇ。今より人数が少なかったから、ちょっと余裕があったかも。とはいえ、はじめに話した通り、入社当初はRubyやソニックガーデンのスタイルに慣れる、生産性を追求することのほうがずっとハードでした。リモートワークは、大変さランキング外。
倉貫の顔倉貫
初めてのことかつ物理的な距離がある中では、いくらベテランプログラマでも大変です。むしろ、経験があるからこその壁もあったでしょう?伊藤さんは、耐え抜いたというか、よくがんばれたよね。
伊藤の顔伊藤
「しんどいな」って危ない時期はありました。でも、そういうときの家族の存在は、大きいすよ。もし家族がいなかったら、「僕にはまだ早かったです。失礼します、出直してきます」となっていたかもしれないし。
倉貫の顔倉貫
うんうん、奥さんにも「ありがとうございます」だね。伊藤さんは、ソニックガーデンにリモートワークを定着してくれた立役者です。

これまでの10年を振り返ると、面白いことに「予想外のできごと」がソニックガーデンを進化させてる感じがあるね。たとえば、表だって募集をしていないのに、新卒やノンプログラマの人から「ソニックガーデンで働きたいんです」と連絡が来るときがあるじゃない?
伊藤の顔伊藤
ありますね。お断りすることはできるけど、「どうする?」ってまず考えてみるのが、うちらしい。
倉貫の顔倉貫
そうそう。結果的に、コンフォートゾーンを出るきっかけになることが多いんだよね。ちょうど良く新卒を受け入れる体力がついてきたときだったり、ノンプログラマの人が活躍できるプロジェクトが立ち上がったりと、タイミングも重なり、戦力になってもらってる。

変化球が投げ込まれたときに、ソニックガーデンは成長してます。そのはじまりが、伊藤さんが来たことだったな。

コードを捨てるって、悲しいこと?

倉貫の顔倉貫
ここからは、伊藤さんがソニックガーデンで関わってきた開発案件について聞いていきましょう。

まず私が挙げたいのは、伊藤さんが長年担当している、とあるお客さんのこと。3回くらい事業をピボットしていて、ときには「業界ごと変えます」のような、「もはやピボットじゃなくない?」レベルの変化もあるお客さんです。
伊藤の顔伊藤
いろんな意味で、ベンチャーの本質を感じさせるお客さんですね。

倉貫の顔倉貫
新規事業を立ち上げて軌道に乗せる中で、ピボットはよくある選択肢です。でもプログラマとしては、作った物を捨ててまたゼロからやり直すってこと。ノウハウは多少生きるけどね。一般的な受託開発会社として関わる場合は、絶対に受けられないケースです。
伊藤の顔伊藤
納品して、お金をいただかないといけないですからね。開発してるのに「プロジェクトやめます」は、場合によって裁判沙汰な話。
倉貫の顔倉貫
でもソニックガーデンは、納品のない受託開発だからできる。プロジェクトが変わったとしても、メンバーは変わらないし、やり方も変えない。でも、ピボットのたびに「伊藤さんは悲しむかもな」と思ってはいました。実際のところ、どうだった?
伊藤の顔伊藤
びっくりはしましたけど、お客さんからピボットの経緯を聞くと、「なるほど、そうですね。じゃあ、新しいビジネスでいきましょう!」と、すぐ切り替えてました。落ち込むこともなかったかなぁ。
倉貫の顔倉貫
そうだったんだ、意外な反応。コードを捨てることも、抵抗はなかった?伊藤さんのこのケースとは少し異なるけれど、遠藤さんは「ソースコードは資産ではなく負債」と考えていて、捨てることにまったく躊躇しないと話していたけれど。
伊藤の顔伊藤
リリースの手前だったので、まだこのタイミングなら・・・という感覚でした。結果的にそのお客さんは、3回目にピボットしたビジネスが大きく成長しましたし、納品のない受託開発だったからできたと実感してます。

「納品のない受託開発」の実力を引き出すプログラマ

倉貫の顔倉貫
そして伊藤さんは、公共系サービスの基幹システムをRubyで開発しました。システム規模としてかなりのものですよ。
伊藤の顔伊藤
ひさびさに、1億件超えるデータを扱いましたね。もちろん僕1人の力ではなくて、担当者の方がシステムに詳しく、ディレクションが良かった。仕様もしょっちゅう変わりましたけど、良いお客さんと良いプログラマが協力しあった相乗効果がかなりありました。
倉貫の顔倉貫
私はよく「ソニックガーデンは大規模開発できるの?」と聞かれることがあって。みなさん「できないでしょ?」と思ってるんだよね。そんなことはないんだけど、この伊藤さんの実績がより強い証明になるんです。「できますよ、人数じゃないですよ」と、ファクトを持って言える。

ソニックガーデンにとっても記念碑となるプロジェクトだし、Ruby業界の大きな実績にもなったと自信を持ってます。大手のシステム会社さんが、「プログラマひとりで作ったんですか?」と、こぞって驚いてるらしいよ。
伊藤の顔伊藤
そうなんですね。あらためて振り返ってみると、確かに「大規模だったな、ようやったわ」と思うんです。その反面、毎週毎週、納品のない受託開発を実行していただけだから、不思議な感覚があります。めっちゃすごい仕様書作って、3年がかりで作るぞ!やったぞ!みたいな感覚はなくて、コンスタントに積み上げていった結果のアウトプットです。
倉貫の顔倉貫
登山と一緒。山に登る前は「すげえ高い山だな」と思うんだけど、足元を見て、一歩一歩進んでいると、頂上に着く。システム開発において、この考え方は大事なんじゃないかな。毎週ごとに、全力出して進めていくのはしんどいけど、楽しい。
伊藤の顔伊藤
それに、お客さんとダイレクトに話せることもいいですね。もし、間に他の人がいて伝言ゲームになっていたら、やりにくいしお客さんの反応もわからない。それは、僕にとってモチベーションがあがらないことだな。やっぱり、プログラマが直接話せる環境がないと。

お客さんが、ある日とつぜん同僚に!

倉貫の顔倉貫
その他に、思い入れのある案件はどんなこと?
伊藤の顔伊藤
岩崎さん(ソニックガーデン関連会社・株式会社ラクロー代表・岩崎 奈緒己氏)が入社したことかな。もともと岩崎さんは、ソニックガーデンのお客さんで、僕が担当していました。聞くところによると、僕たちと一緒に仕事がしたいと思って依頼してくれたそうなんですよね。つまり、ソニックガーデンのファンだった。

そして、そのプロジェクトがひと区切りついて、岩崎さんが次のキャリアを考えたとき、「ソニックガーデンで仕事したい」となったパターンで。「そんなことがあるんやな」と、嬉しかったです。
倉貫の顔倉貫
伊藤さん、「あの岩崎さんが?」ってびっくりしてたよね。たしかに驚きはあるんだけど、そもそもお客さんと私たちは、受発注の関係ではなく、パートナーシップを組んでいる。だから、岩崎さんが入社したときも違和感はなくて、これまでの関係性がより強くなった感覚があった。

納品のない受託開発のプログラマは、お客さん側のCTOのようなポジションに立ち、両社の目線を持っています。お客さんの目線で提案や開発をするから、壁がない。そんなスタンスで仕事をしているうちに生まれたのが、岩崎さんのケースでした。
伊藤の顔伊藤
お客さんと壁を作るより、仲間になってチームで仕事をするほうが楽しいし、モチベーションもあがる。このあたりの、受発注の関係ではない、壁を作らないの価値観は、ソニックガーデンの初回無料相談時に、お客さんとすり合わせをしているところ。良し悪しじゃなくて、価値観がズレていたらお互いに幸せになれないですからね。「お客さんのために」を、徹底しているなと思います。
倉貫の顔倉貫
岩崎さんもね、ソニックガーデン社内から生まれたラクロー(打刻レス勤怠管理サービス)の事業責任者から、法人化して、その代表を務めるというキャリアを歩んでます。7月にはMBOで独立され、「BtoBビジネスをやりたい」というミッションにチャレンジしています。

そんなふうに、やりたいことがあったら「社内でやってみようよ」と言えちゃうのが、ソニックガーデンの面白さでもある。なので、これから5年後10年後の伊藤さんが、どんなことをやっていきたいのか、すごく興味がありますよ。

伊藤さんの入社を皮切りに、ソニックガーデンにはリモートワークの社員が増えていきました。今では、北海道から沖縄まで、全国各地からメンバーが集まるほどです。さらに、伊藤さんのブログをきっかけにソニックガーデンを知り、「働きたくなった」と影響を受けた人も多数います。

では伊藤さんは、これからどんなビジョンを描いているのでしょうか? 聞くと、「昨今のプログラマを取り巻く環境に思うところがある」そうで・・・・・・。

(第3回に続きます)

次回は8月25日に公開予定です。

文=マチコマキ

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