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第13章 「経営とはプログラマが働きやすい“プラットフォーム”をつくること」〜多様化する組織に合わせた変化

【連載】ソニックガーデンストーリー 10年分のふりかえり

「納品のない受託開発」を掲げ、フルリモート勤務や管理しない組織など柔軟な働き方を実践するソニックガーデン。
メンバーへの取材をもとにその10年の歩みを追いました。

メンバーが増えていくソニックガーデンは、変化を繰り返していきます。社内コミュニケーションのあり方、経営のスタンスの問い直し、部活などの活動の広がり…。

そんな中、世界中を襲ったコロナ禍により、社会も大きく変化していくことに。不確実性がさらに増していくなか、ソニックガーデンは10年目を迎えようとしていました。

13-1 観察

2017年以降、毎年7人〜9人の採用を行うようになったソニックガーデン。新卒採用も当たり前となり、50人を超える人数になっていきました。その間で、組織のあり方も少しずつ変化していきました。委員会の設置、RemottyからWorldへの変更、SGTVなどの新たな社内コミュニケーションコンテンツなどは17〜19年の間に起きたできごとです。

「社長ラジオ、日記、SGTV、どれもリモートで働く我々にとっては大切なものです。人数が増えてきて、全員で一緒にお昼ごはんを食べる、なんてことはできなくなってきた。代わりにできることはないか、と実験的に始めたものが続いています。僕と誠司が実験的にはじめて、次第に定着していくという流れが多いですね。発信の場、相互理解の場をどうリモートで実現するか、は常に試行錯誤しています」(倉貫

ちなみに、社長ラジオは2015年から続いているそうで、「100本は超えている」とのこと。

人数が増え、ビジネスモデルが固まっていくなかで、藤原も人事業務により意識がいくようになっていきました。特に、若い人の増加はソニックガーデンにとっても新たな刺激でした。

「2016年ぐらいまでは、腕のある中途採用の人がほとんどでした。17年以降から、若い人の採用、新卒採用も増えてきた。そうなってくると、半年とか1年ではなく3年間ぐらいのスパンで、成長を考えていく必要があります。3年間かけて、経験値を結晶化していく。そのために、自分ができるのは徹底的に相手を観察することです。

観察して、その人がやりたいことやりたくないこと、好きなこと嫌なことなどを受け取っていくんです。観察をすることは昔から考えてはいましたが、特に強く意識しているのは17年以降かな、と思います」(藤原)

13-2 プラットフォーム

組織のあり方が変わっていく中で、“経営”スタンスの問い直しも行われていきます。倉貫、藤原の間で、経営側は何をするのが、ソニックガーデンにとっていいのか議論が深まります。管理職もいない、セルフマネジメントを重視する組織のおける経営とは。2020年をふりかえるブログのなかで、倉貫はこう言及しています。

“事業が成長するにつれて、必要な人材は多様化していきます。提供するものがソフトウェアだとしても、開発できるプログラマだけでは事業は成立しません。マーケティングやカスタマーサポートなどの仕事があります。私たちソニックガーデンでは、そうした役割をプラットフォームと位置付けました。創業当時は社長と副社長だけで、プログラミング以外の業務をすべてやっていましたが、それが今はプラットフォームとして抽象化されました。”
「コミュニティと会社の両立を目指した実験と結果 〜 多様性を受け入れて活かし合う組織」(Social Change)より

藤原はプラットフォーム型のマネジメントについて、こう語っています。

「経営陣は、プログラマが働くプラットフォームを整備し、維持していく役割なのではないかと考えています。もともと管理をしない会社ですが、その考えをより突き詰めていくと、組織構造がひっくり返ったような組織で、間にプラットフォームが存在するんです。このプラットフォームは、メンバーの動きによってどんどん広がっていく。その広がりを阻害せず、メンバーが常に働きやすい状態を保つのが経営の役割。極端な話、メンバーがお客様だという感覚もあるんです」(藤原)

一方で、プラットフォーム上でメンバーが活躍するには、セルフマネジメントスキルも必要になってきます。それらを身につけていくために、特に若手メンバーへのふりかえりを重点的に行うようになっていきます。

プラットフォーム型マネジメントの図解。既存の組織図をひっくり返したような形になる


「経験が浅かったり、入社間もないメンバーに向けた毎日の朝会、週1回のふりかえり、三ヶ月〜半年ごとのYWT。それぞれのタイムスパンでのふりかえりを行うことで、オンボーディングもできるし、セルフマネジメントスキルもついていきます。経験値がたまっていけば、徐々にふりかえりの回数を減らしたり、時間間隔を空けていく。セルフマネジメントできるプログラマが活躍できるプラットフォームが、最適な状態で維持されている。ソニックガーデンの構造は、そんな見方もできるんです」(藤原)

13-3 自分たちの役割は

ソニックガーデンが自前で作ったソフトウェア、あるいはお客様の相談を受けて作ったソフトウェアが事業化されていく。このプロセスもソニックガーデンらしい形で、実現されていきました。代表的なものとして、第8章でも触れた、ハッカソンから生まれたRemottyがあります。他にも勤怠管理サービスの「ラクロー」、年賀状サービス「エンプラス」など、新たな広がりが生まれています。

その源泉となるのが「部活」と呼ばれる活動です。部活について、採用向けの取材において石澤はこう語っています。

他に、社会福祉法人からの相談で開発がスタートし、当初は想定していなかった外販化へ繋がった介護記録システム「ケアコラボ」などの例もあります。

一方で、自社サービス、事業が増えていくことで、ソニックガーデンの役割が何なのかをもう一度考え直すようにもなっていったと藤原は語ります。

「10年目を前にして、ソニックガーデンが目指す方向として少し迷いみたいなものがあったのは事実です。倉貫さんと話していてもそれは感じました。事業も増え、本来ソニックガーデンが実現したいものからどんどん広がっていった。どこまでをソニックガーデンがやるのか。我々が目指したいのは何なのか。根本の部分を結構議論しましたね」(藤原)

10年の節目を前に、自分たちの存在意義を考え直すソニックガーデン。人数も増え、価値観は共有しつつも、多様化はさらに進んでいきます。

13-4 社会も社内も変わっていく

2020年4月7日、国内で初の緊急事態宣言が出されました。新型コロナウィルスの感染拡大を防止するための、異例の措置です。飲食店の時短営業や県をまたいだ行動の制限など、ものものしい空気が日本中を覆っていきます。

フルリモートで働いているソニックガーデンにとって、業務上では大きな影響はないものの、オフラインで集まる合宿や家族旅行などの活動は制限されることになりました。

「やっぱり、年に数回、みんなで集まって合宿をしたり旅行をしたりして、話しをする時間というのはすごく大切なんだと実感しました。私たちは、決してオフラインの場を軽視しているわけではないんです。リモートだからこそ、その数回の機会を大事にしてきた。コロナ禍によってその機会がなくなって、当たり前に行っていたことの重要性を考えさせられました」(藤原)

リモートワークが一気に普及したことで、改めてソニックガーデンの働き方が注目を浴びるようになります。倉貫をはじめ、リモートワークに関する取材や問い合わせが格段に増えていきます。

「よく、『先見の明がありますね』と言われるのですが、そんなもの全然ないんですよ。今みたいな姿を想像して逆算していったわけでは絶対にない。そのとき、そこにいる人たちにとっての最適解を常に考えてきた結果今がある。一方で、社会が変化するなか、自分たちが培った考え方、経験値が多くの人の役に立つかもしれない、という思いも以前にも増して強くなってきた気がします」(倉貫)

思いもよらぬきっかけ、思いもよらぬ速度で社会が変化していくなか、10年目を迎えるにあたって“社内”の変化も進んでいきます。自分たちの役割は何か、自分たちが大切にしているものは何か。変化の過程の1つとして、2021年には、はじめて全員参加で自分たちの「価値観」を考え、言語化するワークショップが開催されます。

加えて、倉貫自身、創業者として会社の理念をもう一度考え直していきます。そして、来る2021年7月。11期を迎えたソニックガーデンは、理念をアップデート。ソニックガーデンのアイデンティティをはじめ、事業のカンパニー化、公共活動や課外活動、文化活動の促進など新たな方針が示されました。

さて、10数年前にオフィスにポツンと残された2人からはじまったこのストーリーは、次章でいよいよ最終章です。最後は、倉貫自身の言葉を通して、改めて「ソニックガーデンとは何か」を綴ります。

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