私たちソニックガーデンでは、リモートワーク(在宅勤務)が出来る働きかたを実現しています。むしろ、これからはリモートワークを推奨しようと考えて、経営施策を進めているところです。先日は、ソニックガーデンでリモートワークをしているメンバーへのインタビューも行いました。

お昼寝もアリ!?成果がすべての楽しくシビアなリモートワーク

さて、私の書くこの記事では、私たちソニックガーデンの働きかたを参考に、会社やチームにおいてリモートワークを導入していくためのポイントや課題について、実践を通じた経営からの視点もあわせて書いてみました。

いつ働いても、どこで働いてもよい働きかた

私たちの会社ではソフトウェア開発を仕事にしていますが、ソフトウェア開発とは非常にクリエイティブな仕事です。決められたものを、ただ黙々と手を動かせば出来るような仕事ではありません。特に、私たちはソフトウェアの企画をするところから、プログラミングや運用まですべての工程を分業せずに行っており、様々なクリエイティビティが求められるのです。

クリエイティブな仕事の大半は頭の中でする仕事です。プログラミングという手を動かすことでさえ、頭の中で作り上げたものを表現しているにすぎないのです。たとえば小説を書いている人のことを手を動かしているとは言わないのと同じです。頭の中でする仕事に、時間も場所も関係ありません。クリエイティブな仕事は、どこでだって、いつだって出来るのです。

もしかしたら、お風呂に入っているときや、電車に乗っているときに素晴らしいアイデアが思い浮かぶかもしれません。それをそのまま思索を続けるとしたら、それは仕事をしていることになるのでしょうか。そうしたときもいちいち管理されなければいけないのでしょうか。そんなのはまったくナンセンスです。逆に言えば、いつだってサボることができるのです。

そんなクリエイティブな仕事をする人たちに高い生産性を発揮してもらうにはどうすればいいでしょう。働いている様子を管理したところで、オフィスにきて座っているからといって、どれだけのスピードで仕事が進んでいるかは外から見たってわかりません。ならばいっそ、その人の働いた結果と成果だけで把握をするのでいいのではないでしょうか。

そこで、私たちソニックガーデンでは、結果さえ出せば、いつ働いても、どこで働いても良いという働きかたを採用しています。そうした結果がすべての働きかたを、ROWE(Result-Only Work Environment)とも呼ぶそうです。

ただ離れた場所で働くことだけを目指していない

私たちソニックガーデンでは、これまで考えられていたようなマネジメントをしていません。私たちのマネジメントとは、それぞれの社員が自分自身のことを自分でマネジメントするもので、誰かに管理されるものではないと考えています。セルフマネジメントという考えかたが基本です。以前にもブログを書きました。

セルフマネジメントのレベルと欠かせないスキル 〜 自己組織化されたチームを作るためには

中途採用で入る社員は、セルフマネジメントが出来る人でなければ採用されませんし、新卒採用で入る社員の場合は、セルフマネジメントが出来るようになるまで教育されます。その新卒の修行期間はメンターによってマネジメントされるのですが、それについてはまた別の記事で紹介しましょう。少なくとも、一人前の仕事をするようになったら、指示も管理もされないセルフマネジメントが基本です。

私たちの実施しているリモートワークは、ただ場所が離れて働くというものではなく、時間にも場所にも縛られずに成果を出すという考えかたに基づいています。つまり、いつでも、どこでも働くことができることの一つの結果が、リモートワークだということです。

そうであれば、セルフマネジメントできる人材を揃えるというのは当然のことです。セルフマネジメントができる自己組織化されたチームを作り上げることで、リモートワークも可能になるのです。私たちにとって逆はありえません。多くの企業において、リモートワークの導入を妨げているものは、リモートワークそのものではなく、その背景にあるマネジメントの考えかたなのかもしれません。

もちろん、セルフマネジメントできる人を採用するためには、それなりに採用に時間とコストをかける訳ですが、結局、あとから考えると、セルフマネジメントできない人たちを採用して、日々のマネジメントにコストをかけてしまうのであれば、事前にコストをかけて採用をしっかりする方が合理的だと考えています。

ソニックガーデンがリモートワークを進める理由

このようにソニックガーデンでは、自己組織化されたチームを作る結果としてのリモートワークを実現しています。リモートワークそのものを目指していた訳でも、リモートワークありきで組織作りをしていた訳ではありません。実際、オフィスまで通勤圏内のエンジニアたちは、通勤時間はともかく、ほぼ毎日オフィスで仕事をしています。

みんな毎日だいたいオフィスに来ますが、もちろん大雪で交通機関が乱れたり、お子さんが熱を出したり、様々な理由で、日毎に在宅勤務に切り替えたりしています。それらは自主判断で行っているので、指示や確認を待つことなどはありません。そうすることで、会社側としても、マネジメントにかかるコストを抑えることができます。

また、経営から見たリモートワークの良い点は、場所に縛られずに優秀な人材を採用することが出来る、ということがあります。優秀なエンジニアの存在は、本当に貴重です。私たちの会社の理念や価値観に共感してくれた優秀なエンジニアが、場所が遠いというだけで一緒に働けないというのは非常にもったいないことです。

リモートワークをよしとすれば、そうした障壁は関係なく、どこにいても採用することができます。このことは、小さな会社が競争力を持つ上で、とても重要なポイントになるでしょう。

リモートワークを進めて学んだことのひとつは、リモートで働く人とオフィスで働く人の様子を観察してみると、リモートで働く人の方が、情報共有の意識が高いと感じます。オフィスにいると、どうしてもすぐ目の前に人がいるし、伝えなくても伝わるところもあるため、あえて情報を発信したり受け止めたりすることを疎かにしてしまいがちです。

しかし、リモートで働く人たちは、自分の存在感を出すためにも発信をするし、なるべく社内の人ともコミュニケーションを取ろうとします。それも音声よりもテキストベースで行うことが多くなります。そうすると、そのやりとりは残って、他の人とも共有されることになります。同じ場所での以心伝心よりも、リモートの方がチームとして良い効果が出てくるように思うのです。

そして、ソニックガーデンのカルチャーの一つでもあるのですが、お客さまを大事にするために社員を大事にする、社員を大事にするためにそのご家族を大事にする、という考えかたがあります。お客さまへのいいサービスのためには、社員が気持ちよく働けなければ実現できないのと同じで、その社員に気持ちよく働いてもらうためには、ご家族の協力は不可欠です。

リモートワークをよしとすることで、家のことや家族のことも協力しあえるようになるはずですし、家族との時間も増やすことができるでしょう。それは、結果として良いサービスを実現することに繋がるのではないでしょうか。

あとは、個人的にも私の家が都心から離れているので、リモートワークを前提とした方が楽なのです。

リモートを導入するためのポイント

リモートワークを企業に導入するためには、その前提として成果だけで評価をするような仕組みづくりが必要だということは、これまで書いてきた通りです。どれだけツールや、ネットワーク、ガジェットを用意したところで、成果ではなく働いている様子や時間で評価するようでは、うまくいかないでしょう。まずは、そうした会社の制度を見直さねばなりません。

その前提にあるのは、一緒に働くメンバーへの信頼です。お互いに一生懸命働くということを信頼しあうことで、離れた場所で働いてもチームワークをたもつことができるように思います。

リモートワークの人たちで信頼関係を築くにはどうすればいいか。気軽に食事や飲み会にいける訳ではありません。しかし、それでも信頼関係は築けます。私は、信頼関係とは、一緒に仕事をすることを通じて溜めていくものではないかと考えています。良い仕事をしてくれる期待があり、その期待に応えていく、その少しずつの成果を蓄積していくことが信頼です。

私たちがよくやっている実際の仕事の進めかたとしては、リモートワークの人たちともオフィスの人たちとも、仕事の単位は最大でも1日で終わる程度に分解します。そして、取りかかる前に、依頼をした側とイメージ合わせを行い、実際に作業に入ります。そして、だいたい70%くらいの完成度で出してもらって、そこからフィードバックをしつつ、改善を繰り返して仕事の完了を目指します。

リモートワークの場合にこそ、しっかり完成してから提出するのではなく、わりと大枠が出来たところから早めのフィードバックをもらえるように見せていきます。オフィスにいれば、ハマっているかどうかなど、見てすぐにわかりますが、リモートの場合はそうはいきません。そこで、早め早めに出してもらってフィードバックしていくのです。

リモートワークを導入する上で、もっとも大事なことは、リモートワークであることを特別扱いしないということでしょう。リモートワークであることのハンディキャップを持たせないようにすべきだし、社内の全員がリモートワークであると考えて仕事をするくらいで丁度いい気がしています。

たとえば、社内のちょっとしたコミュニケーションも、声をかけるのではなく、チャットで済ますなども良いかもしれません。よくチャットを多用して喋らない人がオフィスにいて困る、みたいな話や、隣にいるんだから話せよ、みたいな話もありますし、そういう面もありますが、リモートの人のことを考えると、声をかけるよりはチャットの方がむしろ良いのです。

こうしたリモートワークのための考えかたの変化のためには、会社であれば社長やリーダー自らが、実践するといいでしょう。私も、リモートワークの日数を徐々に増やしていって、リモートワークならではの良いところと、課題となる点など、身をもって体験することができましたし、だからこそ、リモートワーク推進のための障壁などもよくわかるようになりました。

リモートワークの課題:オフィスにあってリモートにないもの

私が自分自身でリモートワークを実践してみて感じた課題は、存在感と雑談についてでした。

リモートワークをしているときに、社内向けに対して何も発信をしないで、ずっと黙々とひとり仕事をしていると、その人の存在感はなくなってしまいます。オフィスにいればまだ、仕事しているなというように見えるのですが、リモートではそうはいきません。発信していなければ、存在しないのと同じなのです。なので、リモートワークをするならば、少しずつでも自分の状況を伝えるようにしなければいけません。

もう1つは、雑談の問題です。SkypeやHangoutを使うことで、打ち合わせの問題は殆ど解決します。リモートであっても、オフィスにいるのと変わらないように打ち合わせに参加できます。しかし、打ち合わせの前後で行われる雑談には、なかなか参加できません。Skypeを切った直後にちょっと話があったりして、それが大事だったりすることってよくあることです。

存在感と雑談の問題を解決するために、私たちが最初に採用したのは、Skypeをずっと立ち上げておいて、オフィスとリモートの人を常に音声で繋がるようにしたことです。打ち合わせのときだけ繋ぐのではなく、朝から晩までずっと繋いでおくのです。そうすれば、オフィスの雰囲気もわかるし、声をかければすぐに反応も返ってきます。これは、社員が6人くらいまでで、オフィスも小さい頃はうまくいっていました。

しかし、社員が全体で10名を超えて、オフィスも広くなってきたこと、また、リモートワークをする社員が増えたこともあって、うまくいかなくなってしまいました。そもそも音声が混線してしまいますし、雰囲気も伝わりにくくなりました。Skypeの音声常時接続というソリューションはそこまででした。

次に取り組んだのは、チャットです。Hipchatをはじめ様々なチャットサービスを試してみたのですが、最終的には、結局打ち合わせのときに繋ぐのだからと、Skypeのチャットに落ち着きました。普段の急がない社内のやりとりや、記録として残して共有したいようなやりとりには、youRoomというサービスを使い、急ぎのメッセージやちょっとしたことはSkypeのチャットを使うようになりました。

Skypeのチャットでしばらくはうまくいっていましたが、社内の人数が増えてきたことで、物足りなくなりました。10人以上がおなじグループでチャットをすると、話題が混線するのです。自分にはあまり関係ない話題も流れるようになります。とはいえ、チャットなので、反応してしまいますし、オフラインにしたり、グループを分けてしまうといつでも繋がる意味がありません。

また、そのように人数が多くなってくると、「ご飯にいってきます」なんてことや、気軽な自分のステータスをアップデートするのも気が引けるようになります。リモートワークであれば、存在感を出すために、自分のなんでもないことをつぶやいた方が良いのに、それが出来なくなってしまうのです。そのことは大きな問題でした。

世の中にある多くのチャットサービスは、共通の話題や、グループごとにチャットをすることが出来るものが多く、それでは私たちの「雑談」と「存在感」という問題を解決できませんでした。そこで、自分たちのニーズにあったものを、ということで、自分たち用にソフトウェアを作ることにしました。

そこに参加しているメンバーの個人ごとにチャットがありつつ、お互いのチャットを見に行けるようなものを作りたい、と考えました。それぞれのチャットは自分専用のチャットなので、気兼ねなくいくらでも好きなことが書き込めます。参加している人は、それぞれのチャットを行き来することができ、誰かのチャットに書き込むことで「声をかける」ことができます。

また、リアルタイムではなく、1分おきに自動的に撮影を行って、お互いの顔や様子をいつでも見えるようにしています。このことも普通のチャットであれば、ちょっと嫌かな、と思ってしまうかもしれませんが、オフィスにいると考えれば、そもそもいつも顔をあわせてる訳で、嫌がることではないのです。勘違いしないで欲しいのは、これは監視のための機能ではないということです。同じオフィスにいて、一緒に働く様子を実現しているのです。

このソフトウェアのおかげで、リモートの人も含めて、全員がまるでオフィスにいるかのような雰囲気で仕事ができるようになりました。そこで、私たちは、このソフトウェアを「バーチャルオフィス」であると考えました。

そうして出来たのが「リモートワークのためのバーチャルオフィス Remotty」です。Remottyで実現するのは、ほうれんそう(報告・連絡・相談)よりも、ざっそう(雑談・相談)できる環境です。

地方で働くことをハンディではなくアドバンテージにする

ソニックガーデンでは、今現在は2名のリモートワークをするメンバーがいます。兵庫県と岡山県にいて、普段はまったくオフィスにくることはありません。彼らとはきちんと正規雇用を結んでいますし、オフィスに来なくてもうまく会社として成立させることが出来ているようです。

リモートワークで働く二人とのコミュニケーションは、先ほど紹介した"Remotty"を筆頭に様々な手段やツールで、いつでも行えるようにしています。もし定例ミーティングでしか話をしないのであれば、それはもはや別の会社のようであり、ただ地方にアウトソーシングしているようなものになってしまいますが、そうではありません。

私たちは、リモートワークの社員のことを、地方の単価の安い従業員とは考えていません。給与水準は、場所に関係なく一定です。東京で働く人も地方で働く人も違いはありません。成果で契約するというのはそういうことだと考えていて、これはいずれ世界中のエンジニアと契約することになったとしても変えることはないでしょう。

このことは、私たちが広げようとしているエンジニアのアライアンスである「ソニックガーデンギルド」についても同様です。地方のパートナーをニアショア的に使う発想ではありません。オフショアでもニアショアでもなく、支店やサテライトオフィスでもない、新しいパートナーシップの形が、ソニックガーデンギルドです。

ギルドについては、より一層、日本全国、世界各地に広げていきたいと考えていて、リモートワークで働いてもらうことは必然となります。住みやすい地方に住みながら、高い報酬を得られることの両立を実現していきたいと考えています。