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第8章 遊ぶように働くカルチャーの育み方とそれぞれの“プログラミングの楽しさ”

【連載】ソニックガーデンストーリー 10年分のふりかえり

「納品のない受託開発」を掲げ、フルリモート勤務や管理しない組織など柔軟な働き方を実践するソニックガーデン。
メンバーへの取材をもとにその10年の歩みを追いました。

ソニックガーデンが大切にしている“遊ぶように働く”という考え方は、どのように育まれていったのでしょうか。象徴的なエピソードである倉貫、野上による「Remotty」の開発秘話。そして、ソニックガーデンのプログラマが語る、一人ひとり違った“プログラミング”の楽しさなどから紐解きます。

8-1 遊び?から始まったRemotty

野上が入社した2014年1月、後に事業化されるRemottyの開発がスタートしました。しかし、その発端は実は“遊び”感覚の開発からでした。

「入社が決まって、岡山県から渋谷のオフィスにソニックガーデンのメンバーと顔合わせに行ったんです。そのときに、せっかくだからハッカソンでもしましょうよって提案しました。みんなも乗り気で、『伊藤さんと野上さんで、リモートワークする人が2人になるから、リモートに関するツールを開発してみよう』とテーマも決まった。当日は全員参加して、すごく楽しかったですね」(野上)

開発されたリモートツールを、岡山に帰った野上はさっそく使ってみることに。ただ、ハッカソンで作られたものなので、機能も乏しく使い心地もよくはありません。倉貫も試しに使ってみたところ、「もっとこうしたほうがいいのでは」というアイデアがどんどん出てくる。プログラマ魂に火が着いた2人は、夜な夜なSkypeで話をしながらリモートツールの開発を進めていくことになります。

「ほぼ毎日、倉貫さんと話しながら、こうしたいよねってところを作っていきました。結果、Remottyにつながるんですけど、そのときは『事業化するためのサービスを作ろう』なんて毛頭にも考えてないですよ。ただただ、いいものを作ることや、倉貫さんとのブレストが楽しくてやっていただけです。仕事とも思ってなかったかな」(野上)

遊びから始まったツールの開発が、ゆくゆく事業化されていく。自分たちで使うツールは自分たちで作って、いろいろ触ってみる。こうしたプロセスや考え方も、ソニックガーデンらしさと言えます。

ハッカソンからはじまったRemottyは今や販売されている(説明動画より)

8-2 遊びの達人

ソニックガーデンが大切にしている「遊ぶように働く」というカルチャー。Remotty開発からもわかるように、野上はこの考えを体現している1人です。毎月のハッカソンも、野上が入社後から定着していきました。さらに、「あだ名文化」も野上がつくっていったものだといいます。

「あだ名呼びは、僕が意図して広めたかな。そのほうが、フランクにコミュニケーションできるし。オンラインゲームが大好きで、あだ名でコミュニケーションを取ることが自然だと思っていたところもあります。でも最初は、『まーくん(西見)って呼んでいい?』って1人ずつ確認して決めていきましたよ(笑)」(野上)

さらに、コロナ禍以降のリモートワーク普及で注目を浴びるようになった「雑相」というワードも野上が発信でした。

「ほうれんそうって言葉があまり好きではなかったんです。自分自身、ソニックガーデンに入ってリモートワークをするようになって、大事なのは雑談みたいに話す時間だなと思っていましたから。それで、何の気なしに、Tweetで『ざっそうがいいな』みたいなことをつぶやいたら、倉貫さんがリツイートして。社内でも広まっていったんです」(野上)

野上が雑相について初めてつぶやいたTweet


組織のカルチャーは、そこにいる人が作っていく。遊びの達人でもあった野上は、持ち前の発想力と柔軟性で、遊びの要素をソニックガーデンに注入していきます。

「僕が入る前と後で、カルチャーは変わったと思います。でも、それは何も僕だけの話じゃなくて、人が入って、カルチャーが作られていくという感覚はありますね。特に人数が少なかった頃はそうでしたが、人数が増えても、そこにいる人がカルチャーを作っていくというのは変わらないんじゃないかな」(野上)

8-3 プログラミングは楽しい

「プログラミングは楽しい」。ソニックガーデンのメンバーは口を揃えてこう言います。しかし、どこに楽しさを見出すかは人それぞれ。このストーリーのために取材したなかでも、いろいろな種類の「プログラミングの楽しさ」が出てきました。

「何かができあがっていく感覚がすごく面白いんですよ。自分で、自分のためのツールを作るのもすごく好きです。自分しか必要ないだろうっていうような、アプリとかソフトウェアを作って、自分で使ってみる。この一連の流れがすごく楽しい。仕事のためのプログラミングとは、また全然違う感覚です。仕事はいつか引退したとしても、コードはずっと書き続けるでしょうね」(前田

「僕は、Rubyが好きなんですよね。書いていて気持ちがいいんですよ。かゆいところに手が届くというか。だから、他のメンバーとは違って他の言語にはあまり興味がないんです。いろんな新しい技術を使う楽しさもあると思いますけど、僕の場合はただただRubyを書く気持ちよさが、プログラミングの楽しさに繋がっている。Rubyはずっと書き続けていきたいかな。あとは、パズルを解くような感覚も面白いですよね。お客様と話すなかで出てきたお題を、どう解いていくか。結果、お客様も喜んでくれる。こんな楽しい仕事はないですよね」(伊藤

「単純にモノを作る面白さがプログラミングにはありますよね。納品のない受託開発をしていて、お客様から相談を受けたときに『よし、いいお題をもらえた』と思うときもあるんです。もちろん、しっかり価値を提供するという前提はありますが、そのプロセスはコードを使ってものを作っていくという、ある種原始的な楽しさがあるんだと思います」(西見)

「作って公開してドヤる。これがとにかく楽しいですね。作ることを楽しむって人間だったら、誰もが持っている感覚だと思うんです。プログラミングの場合、作ったものがすぐに動くから、すぐに楽しさを実感できる。あとは何よりも、自分で作ったアプリを、プラットフォームに公開して、いい評価を受けるのも楽しい。僕がワークライフ問わずコードを書き続けているのも、このサイクルが楽しいからなんだと思います」(野上)

8-4 スポーツとしてのプログラミング

倉貫は、プログラミングのことを「スポーツに近い」と考えていると言います。その背景には、プログラミングスキルは決して座学だけではなく、“実践”を通してこそ伸ばせるという考えがありました。

「最近、プログラミングスクールが増えてきていますが、それだけを受けていても“いいプログラマ”にはなれないだろうとも思うんです。最低限の知識は必要ですが、何よりもプログラミングスキルは、“実践”を経験してこそ伸びていくものです。そういう意味で、僕はプログラミングはスポーツに近いと思っています。日々の練習を重ね、実践で結果を出していく。ハッカソンや部活動を通じて、ソニックガーデンのプログラマは常に練習をしていると言ってもいい。まぁ、本人たちは『ただ楽しいからやっているだけ』かもしれませんけどね」(倉貫)

ソニックガーデンのコードレビューでは、時に本人にとっては「厳しい」とも思えるフィードバックがされるときもあります。しかし、スポーツチームが、試合中にお互い檄を飛ばし合うのと同じように、よりよいものを作っていくために必要なコミュニケーションでもあります。こうした雰囲気を、倉貫は「ソニックガーデンは体育会系なところがある」と見ていました。

「いろいろ誤解を生みそうなので、あまり言ってませんが、ソニックガーデンは体育会系な組織だと思います。でも、決してそれは上下関係が厳しいとか、管理で統制を取っているということではない。プログラミングというスポーツでいい結果を出すために、本質をついたフィードバックを相互にして、日々の練習も欠かさず行っていく。この雰囲気が体育会系だな、と思うんですよ。スポーツチームのような感じですよね。

でも、面白いことに、結果を出すスポーツチームってそうしたストイックさを持ちつつも、本番の試合では『楽しむ』ことを大切にしているんです。本番でいかにリラックスして、高いパフォーマンスを発揮するか。力んでいてはいいプレイもできませんからね。『遊ぶように働く』という言葉はぱっと聞くと『ただ、楽をする』とも受け取られがちなんですけど、全然違う。遊びながら働くためには、プロスポーツ選手のように、高い技術力や精神力、そして日々の練習が必要なんです」(倉貫)

2017年 和歌山ハッカソンでの1枚
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