まずは話を聞きたい
採用サイト
社員を知る

第一回 入社からずっと全力疾走

プログラマのキャリアを考えたとき、経験を重ねた先は管理職、もしくは独立してフリーランスといった選択肢がほとんどです。

しかし、どちらもプログラマとして腕を磨き続けることが難しい環境です。 そんな状況だからこそ、会社に所属しながら、ずっとプログラマを続けられる「第三の道」を選んだ方々に、プログラマを一生の仕事にした先に見える景色を語っていただきました。

今回の対談相手は、2012年に入社した伊藤淳一さんです。

Amazonレビュー100件を超える「プロを目指す人のためのRuby入門」(2017年)を上梓、フィヨルドブートキャンプのメンターを務めるなど、プログラマとしての社外活動にも積極的な伊藤さん。ソニックガーデンでのこれまでを振り返りながら、プログラマとして生きていく魅力を語りました。


伊藤さん、ソニックガーデンで生まれ変わる

倉貫の顔倉貫
伊藤さんって、実はソニックガーデンへ入社して初めてRubyを触ったんですよね。今やRuby界の大御所となり、プログラマみんなが1度は伊藤さんのブログにお世話になってるんじゃないかと思うんですが。
伊藤の顔伊藤
そうですねぇ。初心者からベテランまで、うん、お世話になってるんじゃないかなぁ。そのつもりでは、書いてきてますよ。
倉貫の顔倉貫
否定はしない(笑)、本当のことだからね。他にも、書籍を出版したり、セミナーの登壇や勉強会に参加したりと、社外活動に積極的な伊藤さんですが、ソニックガーデンに来たときはいくつだったっけ?
伊藤の顔伊藤
今43歳だから・・・、30代のはじめかな? そのとき、すでにプログラマのキャリアは10年近くありましたけど、ソニックガーデンで生まれ変わったような感じです。
倉貫の顔倉貫
生まれ変わるか。伊藤さんのキャリアはすべてブログに書いてあるんだけど、前職では外資系メーカーの社内エンジニアだったよね。
伊藤の顔伊藤
そうです。もともと僕は、プログラマになりたいと思ってたわけじゃなくて。大学卒業して就職するときに、「そういえばパソコン好きだったな」くらいの感覚で、一般的な受託開発会社で働き始めました。その次が、外資系メーカー。
倉貫の顔倉貫
ソニックガーデンには、「小さい頃からゲームが好きで、プログラミング始めました!」タイプが多いから、ちょっと珍しい。
伊藤の顔伊藤
世界中に社員が15,000人くらいいる規模のメーカーで、給与も良かったし、ブラックな環境でもなかったです。「アジャイルを取り入れてみよう、伊藤さんやってみて」みたいな自由さもありましたね。
倉貫の顔倉貫
そうだったんだ。初めて聞くエピソードだな。朝会やったり?
伊藤の顔伊藤
うん。アジャイルやスクラム開発に関する本を読んで、見よう見まねでやってました。でも、イメージ通りにうまく回らないんですよ。結局は、社内で受発注の関係になり、納期と仕様を重ねるみたいなことになってしまって。

「あれー?おかしいな・・・」と思ってるところに、倉貫さんのブログで納品のない受託開発を知ったんです。「大発明じゃない?」と思って、ソニックガーデンへ入社しました。

矛盾だらけだった「教科書通りのアジャイル」

倉貫の顔倉貫
伊藤さんにも、そんな過去があったんだなぁ。あんまり、伊藤さんからアジャイルの言葉を聞いたことないからさ。
伊藤の顔伊藤
かぶれてましたね、アジャイルに。僕がソニックガーデンに入社した頃は、会社のホームページにも「アジャイル開発します」と書いてあったじゃないですか。

だから、「スクラムとかXP(エクストリームプログラミング)とかやってんのかな」と予備知識を持って入社したんですけど、ぜんぜん違いました。納品のない受託開発は、完全にオリジナルですね。
倉貫の顔倉貫
今は、あえて「アジャイル開発」という言葉を使ってないです。ソニックガーデンのアジャイルは、一般的な「アジャイル開発」とは、まったく違うからね。
伊藤の顔伊藤
まさに、「ソニックガーデンのアジャイル」に出会った感じ。倉貫さんをはじめとして、創業メンバーがめちゃくちゃ考えて、理屈をとことん研ぎ澄まして、最適解の進め方を出しているなと思いました。前職でのアジャイルって、教科書に書いてあることを実践するだけで終わってたんですよ。
倉貫の顔倉貫
「教科書通りにやってるのに、うまくいかないね」みたいな?
伊藤の顔伊藤
そうそう。倉貫さんたちは、教科書を読むだけじゃなくて、さらに自分で考えて最適解を見つけようとしていた。ここが、大きな違いだと思いますね。
倉貫の顔倉貫
私もTISにいたときは、アジャイルかぶれだったから。それを経て今があるけど、まったく本質にたどり着いてないのに、表面だけでアジャイルが盛り上がってる状況は感じてますね。むしろ、アジャイルのエバンジェリストとして私が頑張ってたせいがあるかもしれない(笑)
伊藤の顔伊藤
当時、どうやって納品のない受託開発にたどり着いたんですか。
倉貫の顔倉貫
伊藤さんみたいに、私もアジャイルの本読んで、やってみて、なんか違うなって、試行錯誤を繰り返してました。そのうちに、「一括請負をやってるから無理なんだ」と気づいて。「結局は納品するのに、イテレーションで繰り返しても意味ないじゃん」みたいに。それで、逆から攻めようと考え直して、ビジネスモデルから「納品しない」スタイルに変えたの。
伊藤の顔伊藤
その逆転の発想がね、凡人には沸いてこないっすよね。どうしても、「仕様と納期は決まってる中、どうやってアジャイル回そうか?」で、どんずまりになるから。

で、知識を入れてたスクラムもXPも関係なくて、「太刀打ちできね〜」ともがいてたのが、僕のソニックガーデン入社当時の苦い思い出です。

「そもそも〜」の問いが「問題vs私たち」の構図を作る

倉貫の顔倉貫
そこから伊藤さんは、どうやって納品のない受託開発を身につけていったの?
伊藤の顔伊藤
倉貫さんの言葉とか、まっつん(ソニックガーデン取締役執行役員・松村章弘)のふりかえりから、考え方を身につけていました。

まっつんは僕より年下なのに、「そういう発想になる?」「その結論は予想してなかった」と毎回思うくらい、感心することばっかりで。本当にしっかりしてたなぁ。もうね、前職での僕は割と優秀なほうだったので(笑)毎週のふりかえりで天狗だった鼻をバキバキに折られてました。
倉貫の顔倉貫
今も覚えている、衝撃だったことってある?
伊藤の顔伊藤
倉貫さんに「まっつん、作るの早いですよね」と話をしたときのことですかね。

「まっつんは、技術的にも早いけど、それ以上に作らないようにしてるから。できる限り作らずに、お客さんの問題を解決することに全力を注いでるよ」と返されて、「は!? 作らない?何それ」って、膝から崩れ落ちた感覚がありました。その発想は、まったくなかった。
倉貫の顔倉貫
ああ〜、言いそう。その会話は覚えてないけど、私は言ってると思う。
伊藤の顔伊藤
でも、「言われてみりゃそうだよな」って。Railsに詳しいとか手が早いことはもちろんですが、作らないに越したことはない。「それで解決するなら一番じゃん」と、考えが切り替わりました。
倉貫の顔倉貫
逆説的なんだけど、作らないほうがコストパフォーマンスも良いし、コード量が少ないほうがバグは減るんです。
私らにとって作らないことは当たり前だけど、おそらく世の中のプログラマ、エンジニアの多くは、まったく発想がないかもしれない。そこを追求しようって人は、いないと思う。

伊藤の顔伊藤
あんまり聞かないですね。

もう1つのカルチャーショックは、みんながお客さんに対して「そもそも、その機能いりますか?」って聞くこと。お客さんから、「このシステムや追加機能が欲しい」と言われたら、「そっか、作んなきゃ」「時間はこのくらいです」と答えて終わりですからね、普通は。
倉貫の顔倉貫
みんな、すぐ「そもそも〜」って聞くからね。「そもそも」のキーワードは、「問題vs私たち」の構図で取り組む上で、欠かせないんです。

「あなたvs私」では受発注者の関係となり、キャッチボールに終始しちゃうけど、「そもそも何をやりたかったんだっけ?」と確認すると、ボールを遠くに投げることができる。飛距離が伸びるし、ボールが着地する範囲も広がる。問題を解決するアイディアが増えるんです。
伊藤の顔伊藤
余談ですけど、「そもそも」の考え方って、システム開発以外でも応用が利きますね。そもそもの問題を確認して「それだったらこんな解決方法があるよ」と考えることは、生活の中でもよくある。
倉貫の顔倉貫
ソニックガーデンへ入社すると、人生にも役立つと(笑)

プログラミングのスキルと仕事の楽しさは比例する

倉貫の顔倉貫
では、そもそもの話として、なんとなくプログラマになった伊藤さんが、プログラマを一生の仕事にするぞと思ったきっかけは、どんなことなの?
伊藤の顔伊藤
純粋に、プログラミングってパズルみたいで面白いなとは感じてました。そこから、オブジェクト指向に出会って目覚めましたね。ぽちぽち解いてたパズルが、スイッチを押せばばーっと変化するのを見て、「マジックじゃん!」と衝撃的で楽しかった。
倉貫の顔倉貫
レベル上がるとね、仕事って楽しくなるよね。
伊藤の顔伊藤
それと、新卒で入った会社に、バリバリにオブジェクト指向が得意な先輩がいて。
「コレわかんないんです」と質問したら、「ちょっと待ってね」と英語のドキュメント確認して「このメソッド使ったらどう?」と教えてくれたり。「すげえな、英語読んでるよこの人。かっこいい」と思って、こうなりたいなとイメージしてました。
倉貫の顔倉貫
その先輩がロールモデルとか、理想の姿だった?
伊藤の顔伊藤
それもなくはないですが、いろんな技術を知ってると、もっと楽しくて知的な仕事ができるんだと感じたほうが強いかも。どうせ働くなら、楽しみながら仕事がしたいし、それを模索するなら技術力あげなきゃって考えてました。
倉貫の顔倉貫
始めたばっかりって、みんな下手くそじゃん。だんだんうまくなる、レベルアップしてくると楽しくなる。
そうすると面白くなるから、もっとうまくなりたいと思うでしょ。スポーツやギターとかの楽器もそうじゃない?そこに気づいてほしいよね、プログラミングもうまくなったほうが楽しいよって。
伊藤の顔伊藤
そこに気づかない、感化されない人はいますね。アンテナ立ってないというか。
倉貫の顔倉貫
環境が大きいのかもね。開発界隈では、「自分を一番下手な場所におこう」と言うけれど、ソニックガーデンに入社したばかりの伊藤さんは、まさにそうだった。それが可能なのは、みんながプログラム好きだからなんだよね。

それこそ伊藤さんみたいにベテランになっても、うちのプログラマはさらに良いコードを書こうって追求を続けるじゃない?社内の若手プログラマは、たまに絶望するらしいよ。
伊藤の顔伊藤
絶望?
倉貫の顔倉貫
普通の会社だったら、先輩は管理職になって現場から離れるじゃん。すると後輩達はスキルが追いつくんだけど、ソニックガーデンはみんながずっと全力疾走してる。走っても走っても、追いつける気がしないって。
伊藤の顔伊藤
なるほど。いやぁ〜、大変だけど良い環境ですよ、そっちのほうが。プログラマを一生の仕事にする上では。
倉貫の顔倉貫
プログラミングの腕を磨き続けたい人達が集まってるからね。私は「サラリーマンの前にプログラマだ」と思ってるし、報酬の良さや働きやすさだけじゃ、成長し続ける環境は作れないでしょう。なので、採用もお互いを知るために半年くらい時間をかけてますね。

今でこそ、採用プロセスも整っているけれど・・・、伊藤さんが入社したときは手探りだった。ソニックガーデンにとって初めての社員だったし。
伊藤の顔伊藤
いろいろありましたね。みんなに兵庫まで来てもらったの、懐かしいな。
倉貫の顔倉貫
創業メンバー6人で、ご家族へ挨拶に行ったね。それで、奥さんから私たちが逆面接を受けたんだよ。

「堅いシステムを作るなら彼」と、倉貫が全幅の信頼を寄せる伊藤さん。プログラミングが大好きなメンバーが集まり、スキルを磨き続けるソニックガーデンの環境には、おのずと刺激が生まれ、ベテランプログラマも、さらに成長が拡大していく仕組みがありました。

そして伊藤さんは、ソニックガーデンにリモートワークを定着させたキーパーソンでもあります。当時、東京と兵庫を繋いでいたのは、iPadとSkype。しだいにiPadは「伊藤さん」と呼ばれ、ギターを弾いたり、飲み会にも参加をし始めます⁉

(第2回に続きます)

文=マチコマキ

前の記事
第四回 死ぬまでプログラマでいたい
次の記事
第二回 変化球を打ちにいく組織
一覧へもどる
まずは話を聞きたい