プロローグ
── とある日の健太の日記:「復習」
かすかなライトに照らされた、公園のベンチでの不思議な男との会話は、今も深く胸に刻まれている。
あの頃の僕は会社に入って三年が経ち、鬱々とした日々を送っていた。そして〝例の動画〟を見た日に、ある不思議な男と不思議な出会いをする。その後の数回にわたる、彼との公園での交流で僕は多くのことを学んでいった。
仕事を楽しみながら、成果を出すために必要なスキル。タスクばらし、ザッソウに、ふりかえり。復習がてら、それぞれのスキルがどういうものか書き出してみよう。
「タスクばらし」は、仕事のタスクを分解し、どのように進めるか、どのくらい時間がかかるか見通しをつけるスキル。ポイントは目的を確認し、見失わないことだ。これができていなかった僕は、仕事ではなくただの作業を続け、意欲も失い、求められていた成果を出せていなかった。
「ザッソウ」は、雑談と相談を組み合わせた言葉。チームのメンバーや上司に雑談をするように相談する。似ているけど「雑に相談する」という、もうひとつの意味もある。これができていなかった僕は、一人で仕事を抱え込み、ついにはチームメンバーに対して敵対心を抱くようになってしまっていた。
「ふりかえり」は、日々の仕事の中から学びを得るためのスキル。内省とも言って、自分がした経験から得た気づきを、つぎの仕事に活かすために必要になってくる。マニュアルが存在せず、毎回仕事の内容が違ってくるクリエイティブな仕事で成果を出すためには、このふりかえりが重要になってくる。これを知らなかった僕は、仕事には必ず正解があると思い込んで、マニュアルを探したり、上司に答えを求めていたりした。その上、自分の経験から学びを得ることをせず、貴重な日々を無駄にしてしまっていたんだ。
こうしたスキルを身につけていくにつれて、僕は視座がどんどん上がっていった。あの時は必死だったから気づかなかったけど、今はよくわかる。鬱々としていた僕は、視座が〝自分〟だけの高さにあった。それが、あの不思議な男との会話を重ねていくことで、次第に〝上司・同僚〟へと視座が上がっていったのだ。
こうした成長によって、どんな変化が起きたのか、日記で書くのは骨が折れるからやめておく。一ページでは収まらない、たくさんの物語があるからだ。
今日はいい復習ができた。最後に、不思議な男が口癖のように言っていた言葉を書き記しておく。
「手に入れた知恵は、実践しないと意味がない」