書籍『ザッソウ 結果を出すチームの習慣』の「はじめに」を全文公開

書籍『ザッソウ 結果を出すチームの習慣』の「はじめに」を全文公開

今週末(2019年8月31日)には、最新刊『ザッソウ 結果を出すチームの習慣』が発売になります。同時発売で10%オフのkindle版も予約できるようになっています。

『ホウレンソウに代わる「雑談+相談」』ということで、心理的安全性を高めてチームビルディング成功に導くザッソウ(雑談と相談)について書きました。

今回は本書の「はじめに」を全文公開します。購入の参考にしてください。

はじめに

「お話があります。お時間をください」

マネージャを経験したことのある方なら、ドキッとする言葉です。だいたいこんな深刻な感じで相談されるときは、「辞めます」といった嫌な話題だからです。

そうなってしまってはもう手遅れ。どれだけ引き止めようとしても、気持ちが離れてしまっている人をつなぎとめておくことなどできません。マネージャとしては大打撃です。

「なぜもっと早く相談してくれなかったんだ!」「悩んでいるときに相談してくれたら……」などと後悔ばかりが募りますが、それも後の祭り。思い返せば、気軽に相談してもらう機会なんてつくっていなかったのではないでしょうか。

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昨今の働き方の見直しに対する風潮は、とかく働く時間を短くしようとするものです。働く時間を減らしつつも、どれだけ生産性を向上させるか――それが喫緊の課題です。働き方改革関連法が2019年4月から施行されたことで、この流れは加速していくことでしょう。

長時間労働の削減や生産性の向上に取り組むことは非常に意義のあることです。無駄な会議や作業を削減したり、業務の流れを見直したりと、みなさんの職場でも取り組んでいると思います。

しかし、効率化を追求しすぎたことで、こうした問題が起こっていませんか?

・会話する時間もなくて、チームがギスギスしてきた
・仕事の進め方を見直す機会や改善の気づきが減った
・成果ばかり気になって、助け合いができなくなった
・時間に余裕がないため、部下の相談に乗れていない
・アイデアが出なくなり、新しいことに挑戦していない
・人間関係が希薄になり、チームから活気がなくなった
・お客様からクレームがくるまで問題に気づけない

生産性を追い求めるのは悪いことではありません。ですが行きすぎた効率化によって、会社や職場から大切なものが失われてしまうことがあります。その結果、生産性が下がってしまうことすらあるのです。その因果関係は単純な数字で表すことができないから厄介です。

効率化の旗印のもと、ちょっとした雑談さえも禁止してしまって、黙々と手を動かすだけになってしまうとチームワークは崩壊します。上司と部下だけでなく、同僚同士でも気持ちが通じ合わなくなり、気づいたときには手遅れになる、といった問題が起きてしまうのです。では、一体どうすればいいのでしょうか。

効率化によって崩壊しかけたチームを救った雑談と相談

私は、効率化だけを求めてチームを崩壊させかけた経験があります。

これまで多くの現場にマネージャやコンサルタントとして参加してきましたが、もともとプログラマ出身の私は、とにかく無駄なことが嫌いで効率ばかりを追求しがちでした。そのために、自分がチームを率いてマネジメントする場面でも、つい効率だけを追い求め、失敗することがあったのです。

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かつて大手システム会社の社員だった私は、なんとか自分で事業を立ち上げたいと考えていました。その念願が叶って、社内ベンチャーですが起業するチャンスを会社から与えられたことがあります。

新規事業を立ち上げるミッションを掲げてチームを運営し始めた当時の私は、いかに効率的に成果を出すかを追求し、一切の無駄を許さないマイクロマネジメントをしていました。仕事中に雑談をするなんてもってのほかです。

それで成功すれば良かったのですが、新規事業を生み出すことは簡単でなく、効率化を求めるだけではうまくいきませんでした。

少しずつ仕事中の雑談が減り、職場の雰囲気も悪くなっていきました。メンバーからの相談もなくなり、悪い報告を致命的な状態になってから知るようになってしまいました。社内ベンチャー存続の危機です。

そんな悪循環から抜け出すきっかけになったのは、「何をしてもうまくいかないなら」と独りよがりで考えるのをやめて、思い切ってメンバーに相談してみたことでした。

「お客さんが求めてるのって、この製品そのものじゃないんですよね」
「担当の方が、導入後に社内に広めていくのが大変だって言っていました」
「製品を売り込むんじゃなくて、社内展開をサポートすればいいかも」

思いもよらなかったアイデアの数々が、現場で働くメンバーから出てきたのです。そのアイデアをもとに始めた導入サポートがうまくいったおかげで、大口顧客を獲得することができ、なんと新規事業の立ち上げに成功することができました。

そこで気づいたのが、雑談と相談の大事さです。もっと早くメンバーに相談していれば、みんなに苦労をかけることもなく、数字の損失も浅くて済んだはずでした。雑談どころか相談さえできなくしていたのは、他ならぬマネージャの私だったのです。これには大いに反省しました。

それ以来、作業の効率化だけを求めることをやめ、雑談を含めたメンバー同士の会話や相談を推奨するようになりました。そうするとチームに活気が戻り、さらに新しいことにも挑戦する空気が生まれてきたのです。その結果、私たちのチームに何が起きたと思いますか?

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当初の事業計画よりも大幅に早く新規事業を軌道に乗せることができただけでなく、社内ベンチャーをマネジメントバイアウト(経営者による買収)という形で、自分たちの会社として独立を果たすまでに至りました。そうして創業したのが株式会社ソニックガーデンです。

このときの経験から、アイデアを生み出し、成果を上げて結果を出すために必要なのは、効率化だけを追求するのではなく、気軽に雑談と相談ができるチームでいることこそが重要なのだと考えるようになりました。

結果を出すチームの習慣 雑談+相談=「ザッソウ」

結果を出すことのできるマネジメントには、生産性を高めるために効率化を追求することに加え、そこで生まれる余裕をうまく活用して、雑談と相談のあふれるチームにしていくことが求められると私は考えています。

「相談はともかく、なぜ雑談まで必要なのか?」

そう不思議に思うかもしれませんが、相談しながら雑談することもあれば、雑談しているうちに相談になってアイデアが生まれることも多くあります。相談と雑談のあいだに明確な境界線を引くことは難しいのです。

それに、普段から雑談さえしていない関係で、急に相談するとなると心理的なハードルがとても高くなります。雑談できる関係性があるからこそ、いつでも相談できるようになるわけです。

そこで私たちは、雑談と相談を分けて考えずに、「ザッソウ」と呼ぶことにしました。

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ザッソウとは、職場で行われる気軽な相談であり、はたから見ると雑談のようにも見える「対話」です。

ザッソウには会議のようなアジェンダは必要ありません。話す時間を決めなくてもいいし、結論だって出さなくていいのです。もちろん、それらを禁止しているわけではありませんが、気軽さを忘れないようにすることが大切です。

「雑談なんて無駄なもの」──そんな思い込みを捨ててしまいましょう。チームに雑談があるから人間関係が円滑になります。気軽に相談して助け合うことで、チーム全体のパフォーマンスが高まります。

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また、ザッソウには「雑に相談する」という意味もあります。自分なりに結論が出てから相談するのではなく、まだ考えている途中、状況をつかみきれていない状態であっても相談していいのです。

結論が出てからの相談は、実際のところ相談ではなくて報告だったりして対話にならないことがあります。それでは相談される側も身構えてしまいます。それが最初からザッソウだとわかっていれば、相談する側もされる側も安心して気軽に話をすることができます。

雑な段階で相談をすると、たとえば何かをつくり出す仕事ならば、早めに完成イメージを確認できて手戻りが減ります。悩みに悩んで時間を浪費するよりも、雑でもいいので相談すれば解決の糸口が見つかるかもしれません。何より雑談は気分転換になります。

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とはいえ、いくら雑談が大事だとわかったとしても、なかなか「雑談いいですか?」とは言いにくいものです。一方「相談いいですか?」となると、本題以外は話せない感じになって話しかけづらくなりますよね。

だから、雑談と相談を合わせたザッソウという言葉を使うのです。

「ちょっとザッソウしない?」
「今ザッソウいいですか?」

そんな風に話しかけることができたら、お互いに気軽でいいと思いませんか?

「ザッソウ」の文化を広げて働きやすい社会をつくる

ザッソウを取り入れることで、職場やチームがこんな風に変わります。

・お互いに助け合える信頼関係が構築される
・共通の価値観やカルチャーが醸成される
・メンバーのキャリアや将来への不安に対応できる
・素早いフィードバックで仕事の質と速度が向上する
・マニュアル化されにくい現場の暗黙知が共有される
・新しいアイデアが出てきて、挑戦に前向きになる
・自分たちで判断して、仕事を進められる社員が育つ

「たかが雑談や相談に、そんな効果があるわけがない……」と思われるかもしれません。

しかし、ザッソウというコンセプトがチームに浸透して習慣化すれば、確実に人間関係は変わります。そして、メンバー同士が気兼ねなくなんでも言い合えるようになれば、そのチームは結果を出すことができる、そう私は信じています。

だから雑談と相談は、マネージャだけが取り入れてもうまくいきません。チーム全体で認識をそろえていくことが肝心なのです。

「ホウレンソウ」という言葉によって、報告・連絡・相談が大事だという共通認識を持つことができました。そのように、ザッソウという言葉にすることで、雑談と相談に対する共通認識を持つことができるのです。

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本書では「ザッソウ」という新しいコンセプトを提案しています。ザッソウを軸に、チームにまつわる様々な観点を取り上げました。構成は次の通りです。

第1部では、従来からある「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」が現代の仕事にフィットしなくなってきていること。だから今こそ「ザッソウ(雑談・相談)」が重要であることを問題提起します。

第2部では、ザッソウが求められる背景、ザッソウを仕事の中に取り入れる方法、チームに導入することで得られる効果、目指すべき働きがいと働きやすさの両方が高いチームについて述べています。

第3部では、ザッソウしやすい職場づくりとして、良い雑談の定義から、ザッソウを生み出すハード・ソフト両面での工夫、心理的安全性を高めるためのマネジメントやリーダーの姿勢を紹介します。

第4部は、ザッソウの応用編です。組織開発や人材育成、採用活動に業務改善といった長期的な視点に対して、どのようにザッソウが影響を及ぼすのかを解説します。最後には、ザッソウで実現したいチームの本質について考えていきます。

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なお、本書は「楽しい雑談の話題」や「おもしろい話し方」を書いた本ではありません。雑談と相談がもたらす効果と、チームで取り組むための方法についてまとめた本です。

・仲間と助け合って、いつも笑顔の絶えないチーム
・率直に意見を言い合って、大きな結果を出せるチーム
・クリエイティブなアイデアであふれる活気のあるチーム
・働きがいと働きやすさを両立した最高のチーム

もし「こんなチームで働きたい」「自分のチームを変えていきたい」と考えているならば、ぜひ最後までお読みいただければと思います。

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本書では、私たちソニックガーデンがザッソウあふれるチームになるまでの試行錯誤を繰り返してきた経験からの学びをもとに執筆しました。また、「北欧、暮らしの道具店」を運営する株式会社クラシコム、クラフトビール「よなよなエール」の株式会社ヤッホーブルーイングなど、雑談と相談をうまく活用しているチームや会社の実践的な知見もふんだんに取り上げています。

チームを率いるマネージャや管理職、経営者の方はもちろん、ザッソウあふれる素敵なチームで働きたいと考えているメンバーの方にとっても役に立つ本になっています。そう、本書はチームのための本なので、ぜひチームの仲間とともに読んでもらえると、より効果的だと思います。

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これからますます社会の変化が激しくなる中で、結果を出すためには創造性が求められる時代になっていきます。そんな創造性を発揮する鍵はチームワークであり、チームを支えるのがザッソウなのです。

私は、ザッソウの文化が広まれば、効率重視に寄りすぎて少し窮屈になってきている今の日本社会を変える可能性があると信じています。まずは本書が、あなたのチームでザッソウを広めていくうえでの一助になれば幸いです。

目次

はじめに
第1部 「ホウレンソウ」よりも「ザッソウ」
1.ひたすら効率化だけを求めたチームの末路
2.結果を出すチームには「心理的安全性」が必要だ
3.「ホウレンソウ」に足りないコミュニケーション
4.雑談+相談=「ザッソウ」でいこう!
第2部 「ザッソウ」でチームの成果は上がる
1.なぜ、今「ザッソウ」が求められているのか
2.成果を上げる「ザッソウ」の使い方
3.「ザッソウ」がチームに及ぼす6つの効果
4.働きがいと働きやすさの両方を高める「ザッソウ」
第3部 「ザッソウ」しやすい職場のつくり方
1.「ザッソウ」できる職場へのプロセス
2.「ザッソウ」が生まれやすい環境のつくり方
3.「ザッソウ」しやすい心理的安全性の高め方
4.「ザッソウ」できる職場をつくるリーダーの姿勢
5.「ザッソウ」で考えるコミュニケーション術
第4部 チームと人を変えていく「ザッソウ」
1.「ザッソウ」がチームに果たす役割と本質
2.「ザッソウ」できる職場にはゆとりがある
3.チームの境界を越えていく「ザッソウ」
4.「ザッソウ」で組織は変わり、人を変えていく
5.「ザッソウ」あふれるチームで働く人を幸せに
おわりに
参考文献

倉貫 義人
倉貫 義人
ソニックガーデン 創業者
クラシコム 取締役CTO

「納品のない受託開発」の実践者。著書多数。心はプログラマ、仕事は経営者。

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