[インタビュー]インタビューで培った取材力を土台に、企業の思想を「小説」で伝える。『新米マネージャー、最悪な未来を変える』著者・長瀬光弘さんの話。(2)

[インタビュー]インタビューで培った取材力を土台に、企業の思想を「小説」で伝える。『新米マネージャー、最悪な未来を変える』著者・長瀬光弘さんの話。(2)

2026-02-20

「本」そのものの可能性とおもしろさに、あらためてじっくりと向き合いたい。そんな思いをもとに、本づくりに関わった人たちへのインタビューをお届けしています。前回に引き続き、長瀬光弘さんのお話です。(1)はこちらからお読みいただけます。

共同制作のプロセス

――『私はロボットではありません』も『新米マネージャー、最悪な未来を変える』も、倉貫さんのブログやソニックガーデンの経営哲学がもとになっていますが、長瀬さんの執筆と、倉貫さんとのやりとりは、どんなふうに進めていったんですか?

長瀬
倉貫さんには、書きはじめる前の構成づくりとか、プロットを考える段階でいろいろアイデアや意見をもらいました。作中に登場する「タスクばらし」とか「ザッソウ」という具体的な仕事のやり方は、もともと倉貫さんが持っていたメソッドで、こういう説明の仕方にするほうが伝わりやすいとか、もっとこういう例を入れるほうがいいとか、そういうことを教えてもらってましたね。それこそ取材に近い感覚で。

そうやって要素を集めながら、学びとして入れる部分は整理しつつ、ストーリーとしてのプロットと入れたい要素を組み合わせながらつくり上げていった感じです。

――お話を伺いながらだんだん見えてきたのですが、長瀬さんがこれまでインタビューライターとして培ってきた取材の技術と、今回取り組んできたストーリーづくりが合わさったところに、このシリーズが生まれているということなんですね。

長瀬
それはあると思います。取材がベースになっていることもそうですし、組織づくりやマネジメントという領域も、もともと僕がやってきたテーマで興味もあるので、強みがちょうど重なっているとは思いますね。

シリーズとして展開していくなかで

――1冊目から2冊目を出すにあたって、難しかったことはありましたか?

長瀬
このシリーズ、飲料メーカーのマーケティング部で働く主人公の話なんですが、この会社の設定をあまり深く考えずになんとなくで飲料メーカーにしちゃったんです。プログラマーの開発会社を舞台にしたら、フィクションにする意味があまりないので、せっかく本を出すのであれば、エンジニアじゃない方がいい、という話はしてたんですが・・・。

1冊目はセルフマネジメントが主題なので、資料づくりやブレインストーミングの進め方など、個人の仕事の範囲ですし、そこまで業界の話は出てこないのですが、いざ2冊目になると、チームマネジメントの話なので、新商品をつくるというプロジェクトが進行していて、付け焼き刃の知識じゃ、かけない(笑)。

だから実際に飲料メーカーの方に取材して、原稿を読んでいただきました。商品開発の流れが、実態と違ってしまっていた部分をフィードバックを受けて修正しながらほぼ書き直しをして・・・というふうにつくっていきました。

もともと「リッキー」はいなかった

長瀬
2冊目もですが、実は1冊目も書き上げてからほぼ全部を書き直してるんです。

――そうなんですか??

長瀬
実は最初はリッキーが登場していなかったんです。主人公の健太に仕事の気づきを与えるのは、コーチングをしている女性、という設定でした。

ある程度原稿を完成させて、ベテランの編集者の方に見ていただいたら、教科書みたいだし全然おもしろくないって言われて・・・。たしかにコーチ役の人が教科書みたいなしゃべり方で、ある種指導していて。

――そうだったんですか。

長瀬
教える側の役を変えたほうがいいということになって、生まれたのがリッキーです。そこから対話シーンを中心にほとんどを書き直しました。だから、フィードバックをいただけてなかったらリッキーは誕生していなかったので、ものづくりっておもしろいですよね(笑)。

この時代に、会社で働く人に向けて

――今月いよいよ『新米マネージャー、最悪な未来を変える』が発売になりましたが、どんな気持ちですか?

長瀬
もともと僕の中では、1冊目と2冊目がセットのようなものだったので。ようやく世に出たなっていう。2冊並んでいる姿を見るのが、やっぱりすごく嬉しかったです。しかも装丁は鈴木成一デザイン室、装画は大桃洋祐さんに手がけていただき、とても素敵な本になりました。タイトルや帯も、今回はミシマ社に入ってもらったので、手に取りやすい仕上がりになったのを肌で感じましたね。

ライターとして、文章を生業にする人間からすると、一冊の本を、しかも小説で書くという機会は、望んでもなかなか得られないと思うんです。そういう仕事に、いろんな巡り合わせがあって携わらせてもらえて、かついろんな方に助けてもらいながらこうして本を出せたというのは、素朴にこの仕事をしていてよかったなって思いました。

もしこの機会がなかったら、ずっとインタビューライター一本でやっていたかもしれないんですけど、ちょっと自信がついた部分もあって、小説を書く仕事がインタビューと別のもう一つの軸になっているので、全く予想していなかったことですけど、本当にありがたいことに思っています。環境を用意してくれた倉貫さんへの感謝もすごくありますし、なにより一緒におもしろがってやってくれるので。それはうれしいですね。

――最後に、読者の方に向けてメッセージをお願いします。

長瀬
今、世の中がだいぶ変わってきていて、ソニックガーデンのような働き方が数年前に比べるとだいぶ受け入れられやすい時代になってきてると思うんですよね。10年前だったら、まだピンとこない人も多かったかもしれない。今はマネジメントのあり方もいろいろ変わってきている部分がありますし、働く人と会社との関係性も、変わってきているのかなあと。

そういう時代状況の中で、会社側も急に「人を大事に」ということを言い出したり、人的資本経営の流れで、マネジメントのやり方を見直す、ということをやりはじめているところもありますけど、一人ひとり、現場で働いている人からすると、目の前には仕事があるし、打ち合わせがあるし、つくらなきゃいけない資料があるし、請求書があるし・・・という中で、急に大きな流れに対応したり、向き合うのは難しいと思うんです。

だからこそ、この時代に管理職やプレイングマネージャーになるのはすごく大変なことで、いろんなところに駆り出されて忙しいうえに、コンプライアンス、多様性だとか、なんだかんだどんどんいろんなことが出てくる。その中で、自分の気持ちもあるし、周りの人の感情があるし、それらと向き合いながら、でも仕事はしなきゃいけないですよね。会社で働くってめちゃめちゃ大変だと思います。

この本は、この時代に、いい感じに働きたい人に向けて、希望を通じて伝えようとしていることが詰まっている本なので、読者の日常につながるヒントやとっかかりは得られるんじゃないかと思っています。なにかひとつでも、一行でもいいので、日常を一歩前に踏み出すきっかけとして、この本の内容を思い出してもらえるといいなあと思っています。


『新米マネージャー、最悪な未来を変える』

▶︎本の購入・試し読み:https://kuranuki.sonicgarden.jp/books/2/stories
▶︎書店向け仕入れサイト:https://1satsu.jp/item/31425/


長瀬光弘(ながせ・みつひろ)
ライター/株式会社想像プロダクション代表取締役 1987年岐阜県生まれ。印刷会社、制作会社勤務を経て、2018年よりフリーライターとして活動。2023年に株式会社想像プロダクションを設立。「美しい言葉から、楽しい想像を」をテーマに、メディア運営やコンテンツ制作、コピーライティングなどを手掛ける。株式会社ソニックガーデンの顧問ライターを務め、倉貫書房の立ち上げに参画。組織づくり、チームマネジメントなどのジャンルを得意とし、他に組織づくりメディア『DIO』の企画・制作責任者も務める。

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