強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」
ジェイソン・フリード デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン
早川書房
売り上げランキング: 1,261

本書は、"Basecamp"や"Ruby on Rails"で有名な「37signals(現在はBasecampに改名)」というソフトウェア企業によるリモートワークに関する指南書です。

ちょうど、私たちもリモートワークを実践していて、その記事を書いたところです。

こちらの本は、以前にも紹介した、「小さなチーム、大きな仕事ー37シグナルズ成功の法則 」という書籍の続編ともいえる内容になっています。こちらの本の紹介をした際にも書いたのですが、この37signalsという会社の哲学は、私たちソニックガーデンと非常に似ているというか、私たちも参考にしているところが沢山あります。

その彼らの考えかたの根底にあるのは、シンプルであり合理的であるところです。そして、その点において、私たちはとても共感するのです。

働きかたを合理的に考えて、古い慣習に従うよりもシンプルな解決方法を選ぶことで、企業としての競争力を身につけることができ、なおかつ社員も幸せに働くことができるとしたら、悪いことはなにもありません。

本書は、そうした考えかたをもつ彼らが実践している「リモートワーク」について紹介している本です。リモートワークを実現するための技術や環境は揃いつつあります。インターネットもあるし、その上で使えるアプリも沢山あります。

それなのに、毎日きまった時間に通勤をして、昔ながらの生産性の低い働きかたを続けているのは、古い慣習に縛られた人の考えかたの方に原因があると考え、その考えをアップデートするためにこの本は書かれたそうです。

本書「強いチームはオフィスを捨てる」は、リモートワークを実践している私たちにとって頷けることも多く、以降では主に私が共感したポイントを中心に紹介します。

リモートワークの時代がやってきた

p32 これからは働きながら好きなことをやる時代だ。
歳をとるまで待つ必要はない。好きなことをやれる環境で、仕事と趣味を両立すればいい。何十年も先のことを待ちつづける人生に、何の意味がある?

場所にとらわれることなく働けるようになれば、ただ在宅勤務ができるというだけでなく、どこにいても仕事ができるということになります。それは、生き方の可能性を大きく広げてくれることになります。

私たちソニックガーデンのメンバーも、在宅勤務を続けることで、高い生産性を発揮しつつ、家族との時間をゆっくりと持つという働きかたを実現しているメンバーもいます。

リモートワークの誤解を解く

p65 人は、刺激を求める生き物だ。やりがいのある刺激的な仕事なら、いわれなくてもやりたいと思う。そういうものだ。
もちろん、仕事にやりがいも刺激も感じられないなら、やる気をだすのは難しい。そんなときはリモートワークを見直すよりも、まず転職を考えてみよう。

リモートワークを特別視するから難しいことのように思える、ということです。法務、税務、広報などのアウトソースしてきた仕事は、本章で書かれている通りで、会社にとっては必須の機能でありながら、リモートで働いてもらっても有効に機能できてきたのです。たしかに役割分担を機能として、しっかり切り出せるならアウトソースできるし、アウトソースできるならリモートでも良さそうです。

しかし、そうやって機能として切り出せない仕事もありますし、それこそが社員として実施する部分だとすれば、その部分を、どううまく連携して働くのか、ということについて、次章で書かれています。

リモートのコラボレーション術

8時間ぶっつづけで働いていたら、効率は逆に落ちていく。人には休憩が必要なのだ。そんなとき、チームの仲間と雑談ができれば、いい息抜きになる。そこで僕らが取り入れたのは、バーチャルに雑談ができるしくみだ。

この点はとても重要です。リモートワークの社員との協調において、オフィスにあってリモートになかったのは「雑談」だったのです。打ち合わせの前後や、会社に出社したタイミングでの雑談は、実は非常に重要な情報共有の「潤滑油」の役割を果たしていました。

そのため、私たちソニックガーデンでは、バーチャルに雑談できるしくみとして、Remottyをつくって活用しています。Remottyの有効な使い方としては、打ち合わせのタイミングだけ繋ぐのではなく、ずっと起動しっぱなしで、仕事をする際はブラウザのタブで開きっぱなしにしておくことです。そうすると、そのタブを開いたときが仕事開始で、タブを閉じるときが仕事終了になり、それはまるでオフィスに来て仕事しているかのような感覚を持つことができます。ぜひ一度、まる一日つないでみることを試してみてください。

リモートワークの落とし穴

1人や2人を島流ししても、リモートワークを試したことにはならない。ちゃんと試してみるなら、チーム全体でとりくむ必要がある。プロジェクトマネジャーも関係者も含めて、全員だ。それに、期間も長めにとったほうがいい。

こちらも、その通り。リモートワークをマイノリティのままにしておくと、やはり特別扱いになるし、リモートワークで困ったことを解決しようという力も働きかけにくくなります。そして、これはリモートワークに限らず、組織やチームで新しいことを試すときは、同じことが言えます。

私たちソニックガーデンで、新しい取り組みを始めるのは私が言い出すことが多いのですが、そうしたときも、ちょっと試すというだけだと大体うまくいきません。本気で導入しようとして、初めて有効なフィードバックを得ることができます。そこには強力なリーダーシップが必要です。リーダーが必要なのではなく、リーダーシップなので、誰もがそうしたリーダーシップを持つことが理想です。

リモート時代の人材採用

リモートワークでは、オフィスで働く以上に、人のつながりが重要になってくる。距離を克服するためには、良質なコミュニケーションが不可欠だからだ。

リモートワークの人に欠かせないのが、コミュニケーション能力です。オフィスにいれば自然と耳に入ることも、存在感をだすことも出来ますが、リモートでは自主的に動かなければ、どちらも得られません。遠慮せずに聞いたり、自分の状態を適切に発信したりする能力は、オフィスで働く人よりも求められます。しかし、このスキルは、オフィスにいる人も持っていた方がいいものなので、採用時に分け隔てなく、どちらで働いても同じように力を発揮できそうな人を選ぶべきです。

私たちソニックガーデンでは、リモートワークのメンバーをアウトソース先と考えるのではなく、名実共に一緒に働くメンバーと考えているので、技術力だけで判断するのではなく、パーソナリティも重要な採用基準に置いています。

リモート時代のマネジメント

うまい解決法としては、上層部の人間にリモートで働いてもらう手がある。変化を起こせる立場の人に、身をもって格差を体験してもらうのだ。自分が当事者になれば、なんとかしなくてはという危機感が生まれてくる。

これは切実に共感します。私たちソニックガーデンもずっとリモートワークを実践してきていましたが、本格的に全社でオフィスとリモートと分け隔てなくやっていくために、ツールをつくったり施策を変えたりしたのは、去年の年末あたりからです。きっかけは、2人目のリモートワークの社員が入社したことです。

それまではリモートワークは1人だったので、そこまで気にもとめていなかったし、リモートワークの社員自身で困ったことは解決してもらうスタンスではいたのですが、そうはいっても、リモート側の要望でオフィス側も、それほど本気で対応もできていなかったのと、リモート側も甘んじて受け入れているところもありました。

そこで、去年あたりから私自身もなるべくリモートワークをすることにしました。社長である私が、自分自身でリモートワークを当たり前に実践してみてわかることが沢山ありました。やってみると、こうした方がいいああした方がいい、というアイデアが出てきて、実際にRemottyをつくる等の取り組みを行うことになりました。

リモートワーカーの仕事スタイル

p253 そもそも、職場で存在感をだすには、2つの方法がある。ひとつは、騒々しくすること。もうひとつは、仕事でぶっちぎりの成果を上げることだ。リモートワーカーにとっては、仕事の成果こそが存在感の鍵になる。

結局は、リモートワークをうまくいかすためには、離れていても成果を出すということが基本となります。時間や場所に縛られなくても、自分の給与以上の価値を成果としてだせて初めてリモートワークは成立するのです。まだ成果を出し切れない段階があるとすれば、その段階の社員にはリモートワークはまだ早いというものです。

私たちソニックガーデンでも新卒社員が入って、弟子として修行中ではあるのですが、その彼はまだリモートワークは出来ません。しっかり決まった労働時間があり、その時間はオフィスに出社することで、その価値を認められます。まだマネジメントが必要だということですね。セルフマネジメントができるようになり、時間にとらわれることなく成果をだすことができ、そうした状態でもモチベーションを保てるような精神的な成長を果たしてから、リモートワークが認められるようになるのです。

考えたこと

あらためて、社員とは何か、を考えるきっかけになりました。私たちはリモートワークで働く社員がいて、そこは完全に一緒に働く仲間として分け隔てなく仕事を進めています。ツールも通信環境も揃った現代において、経営としてうまく制度を用意することができれば、ハンディキャップもなく働くことができます。同じオフィスに行くことが、同じ会社の社員の証明という訳ではないのです。

私たちソニックガーデンにおけるパラダイムはすでに、社員とはオフィスもリモートも関係ないものだというところに移っています。そして、私たちはギルドという仕組みを進めていて、そこのメンバーも所属会社は別だとしても、同じ仲間として扱っています。彼らもリモートもいればオフィスもいます。では、そこに社員との境界線はあるのでしょうか。実は、そんな境界はないのではないかと思っています。

事業体としての小さな会社があり、それとは別に、一緒に切磋琢磨していく仲間としてのギルドがあり、助け合いつつプロジェクトを進めていくというスタイルでやっていくというのが、私たちの目指すチームと組織の新しい形なのかもしれません。

会社の形、雇用の形、働きかたの形、この点については、引き続き考えていきたいところです。いずれ、私たちの取り組みの経過はブログで書いていきたいと思います。

強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」
ジェイソン・フリード デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン
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