「受託脳から提案脳へ」という記事で書いた通り、問題解決の仕事をしたいなら、ただ相手の言う通りに仕事をするようではいけない。顧客の顧客を見るような目線が必要だ。

受託脳の人と提案脳の人、それぞれと仕事をすると、その会話の切り返しがだいぶ違っていることに気付く。そこで、この記事では「受託脳」の人が陥りがちな対話のパターンと、そこから「問題 vs 私たち」の構図にするための「提案脳」で切り返すテクニックについて書いた。

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「受託脳」で陥りがちな「あなた と 私」の構図

「受託脳」が陥りがちなのは、「相手と自分」で仕事を考えてしまうパターンだ。優れた「受託脳」の人ほど、その相手に対して忠実に仕事をしようとしてしまうが、それでは手を動かす段階の仕事なら良いが、問題そのものの解決は難しい。

「受託脳」とは、内容が決まっているような仕事をするのが得意な人のことだ。しっかりとした指示を与えてくれるクライアントや上司がいた場合、とても力を発揮することが出来る。その仕事に対して疑問を持つことは少ない。そうすることが正しいとされる組織や社会、家庭で育ったのかもしれない。

もちろん、「受託脳」属性の人の中にも、仕事の出来る人もいれば、そうでない人もいる。指示されたことを、着実に、迅速に、高い品質で処理することが出来るならば、それはそれで非常に重宝される場面もあり活躍できるだろう。

しかし、相手の相談役をするコンサルティングのような仕事であったり、アイデアが必要なマーケティングや事業企画のような仕事では、「受託脳」のままでは活躍できない。こうした場面で求められるのは、正解のない問題に立ち向かう能力だからだ。

「提案脳」で目指す対話の姿は「問題 vs 私たち」

「ここにボタンがあったら便利そうじゃないかな(わからないけど)」
「わかりました」

・・・この調子で欲しいと言ったものをただただ作っていくと、おそらく使い勝手の悪いものが出来上がってしまうだろう。

なんでも「わかりました」と言う人が相手だと、怖くて気軽に相談できない。そうなると、しっかりと検討をした上でないと話が出来なくなる。その検討するための話し相手が欲しいのにも関わらず、だ。その相談相手になるのが「提案脳」だ。

問題を抱えている人が必ずしも正解を知っている訳ではない。解決したいのは「問題」なのだから、問題を抱えている人と一緒に解決策を考えなければいけない。だから、「これで良いですか?」「どうすれば良いですか?」「次は何をすれば良いですか?」こうした質問では、一緒に問題を解決することは出来ない。

大事なことは「問題 vs 私たち」で考えることだろう。

実現したい機能ではなく、実現したい理由を確認する

言われたことをそのまま鵜呑みにしないためには、何を確認すれば良いのだろうか。詳細な仕様を聞けば聞くほど、それは「受託脳」としての深みにハマっていくことになる。そうして出来上がったものは、機能としては満たしているけれども、問題は解決していないものが出来上がることが多い。

たとえば、「ユーザ一覧が見たい」なんて話があって機能を実装したとしても、やりたかったことが入金チェックだったら「未入金の一覧で絞り込む」が出来ないと実質は使いものにならない。言葉だけ捉えれば、機能は実現しているけれど、問題は解決していない。ダメな「受託脳」の例だ。

優秀な「受託脳」だったら、事前にしっかりと詳細まで詰めて、手戻りがないようにして着手するだろう。優等生にありがちな取り組みだ。これは先ほどに比べて全然マシだが、双方にとってコストがかかるし、本質的にそれで解決するとは思えない。

「提案脳」ならば、その機能はなぜ必要なのか、そもそも何が困っているのか、何が出来れば良いのか、その理由を最初に確認すべきだろう。ゴールと同時に、スタート地点も確認するのだ。それで、もっと良い解決案が考えられるかもしれない。スマートな代替案が出せるのが、優秀な「提案脳」なのだ。

YES/NOで聞くのではなく、複数の案と意見を出す

「受託脳」でありがちなのは、問題を解決するための議論をする時に、YES/NOでしか回答できない聞き方をすることだ。「これで大丈夫ですか?」「これでいかがでしょうか?」・・・これでは議論はできない。これにすぐに回答できるなら、相談相手は要らないだろう。

OKかNGか、その2択の場合、NGを出したら一体どうなるかわからないことが問題だ。その聞き方は、まるで一択しかないようなもので、どちらを選んだとしても、本当に納得がいくかどうかは疑問が残る。一緒に問題に向かっているようには感じない。

やはり複数の選択肢があって、その中から検討して選ぶという体験が、問題に対して一緒に考えている構図にさせる。「提案脳」であれば、選択肢は複数用意した上で、自分の意見を出すと良い。選択肢がある上で、意見をぶつけあうのだ。

最終的に落ち着く選択肢は同じだったとしても、そこに至るまでのプロセスの中で、しっかりと議論がされたかどうかで、納得を持って進められるかどうか変わってくる。これは、クライアント側だけの話ではなく、仕事をする側にとっても重要なことだ。誰もが、納得のいく仕事をしたいはずだろう。

YES/NOから消極的に選ぶよりも、複数の選択肢から積極的に選んだ方が後悔は少ない。

正解だけを答えようとせず、「たとえば」で切り出す

「問題 vs 私たち」で考えていない場合、誰かが正解を持ち合わせていることになる。そうなると、不用意な意見が言えなくなってしまう。特に「受託脳」の場合は、絶対に正解だと思うことしか意見を言わなかったりする。打ち合わせで一言も発しない人は、それが理由ではないか。

正解のない問題に立ち向かうには、様々な角度からのアイデアがあった方が良い。議論をしている時点では正解があるわけではないのだから、あってるかどうかはさておくのだ。ただし、間違っていても良いとは言え、なかなか意見は出しにくいこともあるだろう。

そういうときは、「たとえば」という言葉で切り出すといい。別に何かを例えていなくても良い。くだらない意見でも言うためのハードルを下げる魔法の言葉だ。もし本当にくだらない意見だったとしても、それがトリガーとなって良いアイデアが出たりする。それをマクドナルド理論というらしい。

もちろん、優れたアイデアをたくさん出せる方が良いが、そうでなくても十分に価値があるのだ。そうして議論をすることで、自分たちの考えに自信を持つことができる。選択肢から選んだ際のロジックが強化されていくのだ。必ずしも正解を言うことだけがコンサルタントの仕事ではない。

自分の頭で考える癖が「問題 vs 私たち」を作る

正解のない問題があり、それを解決することが仕事ならば、ある程度のリスクを負うことが求められる。発言することも、意見を言うことも、リスクを伴う。しかし、そうして一緒にリスクを負うという姿勢こそが「問題 vs 私たち」を作り上げるのだ。

自分自身が納得して仕事をするにも、相手に全てを委ねるのではなく、自分の頭で考えた方が良い。自分の頭で考えて、自分の意見を持ち、自分の提案を発言していく。ともすれば、従順には見えないけれど、正解のない問題に取り組むチームの一員には、それが求められるのだ。

そうして、参加している誰もが、自分の頭で考えて、議論を交し合える関係になってこそ、正解のない難しい問題にも立ち向かえるチームになれるのではないだろうか。

*注意。従順な兵隊を求めている上司や、イエスマンを求めているクライアントに対しては、このやり方は通用しない。

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