理想の働き方改革より現場の業務改善を 〜 現実的で効果的な「業務ハック」のはじめ方

理想の働き方改革より現場の業務改善を 〜 現実的で効果的な「業務ハック」のはじめ方

先日、サイボウズデイズという大きなイベントで登壇させて頂く機会があり、私たちがサイボウズ社のkintoneというクラウドサービスを活用して行なっている「業務ハック」という手法について紹介をしてきました。

大掛かりな経営改革や業務改善ではなく、今どきのクラウドサービスを活用することで、身近な出来ることから改善を始め、繰り返し型で業務改善していくための手法やノウハウをまとめて「業務ハック」と呼んでいます。

その際に使った資料を公開しています。そして、補足を兼ねて記事にしました。

業務改善がもたらした「定時は15時」「休み上限なし」

「働き方改革」、2017年のバズワードの一つと言っても良いだろう。しかし、それがうまくいった話はあまり聞かない。人材不足の問題を解決するために「働き方改革」を掲げたとしても、現場の業務量や生産性が変わらない限り、働き方など変わることなどありえないからだ。

どれだけ経営者が声高に「働き方改革」を叫んだところで、現場の人たちに出来ることは少ない。そもそも具体的に何から始めれば良いかわからないし、どうなれば働き方が変わったと言えるかもわからない。そんなところではないだろうか。

そんな中、地方の印刷会社でありながら「定時は15時」「休み上限なし」を実現した会社がある。これらの記事に詳しい。

働き方改革をしようと始めた訳ではない。業務改善のためのシステム化が最初のきっかけだった。そして、システム化さえする前に「アナログで解決できない課題はシステムでも解決できない」ということで、まずは業務の見える化をして、一番の課題を見つけ、そこからシステム化を行った。

そうして始まった業務改善を繰り返して続けていった結果として、「働き方改革」と呼ばれるような豊かな働き方を実現することができたのだ。つまり、「働き方改革」は、たゆまぬ業務改善の結果であって、取り組むアクションではないのだ。

実現しない理想の「働き方改革」をいつまで追うのか?

私たちソニックガーデンも、全社員リモートワークをしていることもあって、新しい働き方だと講演などをする機会も多いが、「働き方だけ」を真似したところでうまくいく訳ではない。会社ごとにビジネスモデルも違えば、働いている人たちの属性も違うし、お客様も違う。何もかも違う。

共通しているのは何か。それは業務をしているということだ。業務そのものは現実のものであり、今も目の前で起きているものだ。だから、改善することが出来る。目に見えない理想の働き方を追いかけていても、現実が変わっていくことはない。

業務改善こそが、現実的で、効果的で、現場でできる取り組みなのだ。

まずは業務改善をして、無駄を無くし、生産性を上げる。そこで出来た余裕を使い、さらに業務改善をしていくことが出来るし、そうして短い時間で成果が出せた時に初めて、経営として制度を変えることが効いてくる。せっかく短い時間で成果を出したのに、結局そこに仕事を詰め込むなら、現場のモチベーションは下がってしまう。

たとえば私たちの場合は、短い時間で成果を出して残った時間は、自分の勉強や研究、好きな仕事に打ち込んで良いとしている。だから生産性を上げるモチベーションが湧いてくる。

業務改善をして生産性を上げる、そして、制度変革をして動機付けをする。そうして、やっと働き方改革が実現できるのだろう。

完璧を目指すより、 まず終わらせろ!

では、「業務改善」はどこから始めるのか、どうやって実現するのか。やったことがなければ、始めることも簡単では無さそうに思えるだろう。業務改善のコンサルタントに頼むのも良いが、システム化までやれる人は少ない。かと言って、システム会社に頼めば大げさなものを作ろうとしてしまう。

業務改善を、どこかのタイミングで大きく切り替わるようなものだと考えていれば、その1度のチャンスでやりきろうとしてしまう。しかし、それでは結局、始めることすら出来なくなってしまう。こんな時、ハッカーだったらどうするのか。

Done is better than perfect.(完璧を目指すより、 まず終わらせろ!)

これは、おそらく最も有名なハッカー、マークザッカーバーグの言葉と言われている(真偽はともかく)。業務改善も同じではないだろうか。業務改善のキモは、ビックバンで業務を変えてしまうことではない。クリティカルなところから、少しずつ変えていけば良い。まさしく改善なのだから。

改善を進めていくことで、さらに改善の余地が見えることがある。改善した結果、ボトルネックが移動することもある。そうした将来の変化を見越した計画など立てることは難しい。それよりも小さく始めて、繰り返し改善していく方が良い。

「社内SE」よりも「業務ハッカー」と呼ばれたい

繰り返し改善をしていく時にネックになるのが、システム化する部分だ。システム化だけ別の業者に発注をして、納品されているようでは改善のサイクルが遅くなってしまう。ベストは、自分たち自身で業務改善とシステム化をしてしまうことだ。

私たちは、そうした業務改善とシステム化を一緒にやってしまえる人のことを「業務ハッカー」と呼んでいる。そして、業務ハッカーたちの仕事こそ「業務ハック」という訳だ。「業務ハック」が、今までの業務改善と違う点、大事にしているポイントは以下の3点になる。

  • 小さく始めて繰り返す(大げさにしない)
  • クラウドを使いこなす(むやみに作らない)
  • 現地現物ありきの改善(人に無理させない)

立派な業務改善を1度きりで終わらせるよりも、小さな業務改善を繰り返し行う方が実践的だし、現実的だろう。

業務改善といえばどうしてもシステム化することを考えてしまうし、開発会社に相談したら、すぐに作ろうと言ってくるかもしれない。しかし、今はもう21世紀、クラウドの時代だ。なんでもかんでも作る必要はない。世の中にはたくさんの便利なツールやシステムがある。それを組み合わせて活用するだけで圧倒的な業務改善を実現することが出来たりする。

3点目こそ重要な視点で、経営からのトップダウンでの業務改革となると、どうしても現場が疲弊してしまうことが多い。それは仕方がない。あるべき業務プロセスから設計したら、今の状態とのギャップが大きくなってしまう。だが、働く人を楽に、楽しくしない業務改革は、絵に描いた餅になりがちだ。あくまで現場の視点、現在の状態からの改善を考えたい。

業務改善のノウハウを共有していけるコミュニティを

「業務ハック」は、現場に入って業務の見える化を行い、ボトルネックを見つけ、IT化まで行い業務改善を実現する仕事だ。そして、そこには、ある程度のメソッドがあり、繰り返しできるプロセスがあり、それぞれの現場で取り組んでいるノウハウがあるのではないだろうか。

これまで、業務改善という文脈でノウハウは共有されてこなかったように思う。IT業界では、今や当たり前のように会社を超えたコミュニティがあり、自分たちの持っている知見を共有して、さらに自分たちの成長に繋げている。それと同じようなことを、業務改善の世界でも出来れば、とても有益ではないか。

そこで実験的な取り組みではあるが、業務改善の勉強会をやってみることにした。業務ハッカーたちの会社を超えた交流と情報共有の場になれば幸いだ。

業務ハック勉強会@東京 〜 働き方改革にも効く!事例で学ぶ業務改善のノウハウ

  • 日時:2017年12月15日(金)19:00〜21:00
  • 場所:東京都日本橋 サイボウズ東京本社
  • 参加費:無料

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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