セルフマネジメントで自由に働くまでの5段階ロードマップ 〜 自己管理だけではない

ここ数年でリモートワークと同時に、よく聞くようになったキーワードが「セルフマネジメント」です。10年以上も前からリモートワークに取り組んできた私たちソニックガーデンでも、セルフマネジメントを重視しています。

しかし、セルフマネジメントという言葉は便利な一方で、人によっては解釈が異なるものです。たとえば、自己管理と捉えたりもしますが、私はそれだけではないと考えています。

マネジメントとは「良い感じにすること」というのが私の考えなので、管理は手段のひとつです。よってセルフマネジメントは、自分自身を良い感じにすることであり、自立と自律の両方を含み、周囲との関係も含めた概念です。

本稿では、私たちソニックガーデンが考えるセルフマネジメントについて、解像度を高めて定義してみました。それが以下の図です。私たち社内での指針とするものなので、必ずしも一般的とは言えないと思いますが、参考になれば幸いです。

セルフマネジメントの5段階ロードマップ

このロードマップには仕事・対人・自分・視座の4つの観点があります。仕事は、スキルや進め方の習得や実践です。対人は、周囲の人たちへの振る舞いや影響です。自分は、自己管理から始まります。視座は、見える範囲を示しています。

そして、わかりやすくするため5段階に分解しました。最初は、新卒社員で身につける段階、次に仕事を任される段階、そしてプロジェクト型で自律的に動ける段階、多くの面で自立できる段階、最終的に自由に働ける段階になります。

私たちソニックガーデンでは、段階的に身につけていく際の指針として使います。最終的に、自分らしく自由に働ける状態を目指すにしても、物事には順番があります。若い人が焦らずに身につけられるように段階で示すことにしました。

私たちの考えるセルフマネジメントでは、どれか一つの観点で突出していれば良いというわけではなく、どの観点も満たしていくことが大事です。仕事だけできても、対人関係が未熟であれば、セルフマネジメントとは言えません。

また、これはロードマップであり、どれが出来る出来ないで、その人の人間的な尊厳が失われるものではありませんし、偉い・偉くないを分けるものでもありません。セルフマネジメントを身につけていくための地図なのです。

第1段階:新卒で身につけること

第1段階で身につけておくのは、新卒社員のうちにできるようになっていないと困る仕事の基本なので、セルフマネジメントとは言えないようなものですが、このあとの段階に移るためには欠かせないものになります。

仕事面では、定型的な業務であったり、上司や先輩に指示されたことを実行するために、適切に進捗管理できること。全体で、どれだけの量があり、今どれくらい出来ているのか、把握しながら仕事に取り組みます。

対人面では、いわゆる報告・連絡・相談(ホウレンソウ)であり、仕事を依頼した上司や先輩と適切にコミュニケーションをとれること。今は、SlackなどのチャットやZoomなどテレビ会議を適切に使いこなすことも含まれます。

自分に対しては、毎朝ちゃんと出社する、休息をとる、ストレスを溜め込まない、心身の健康を維持するなどといった自己管理ができること。在宅勤務の場合は、着替えや身だしなみ、働く環境を整えることも含まれます。

この段階での視座は、まだ自分のことで精一杯です。見える範囲も自分のことになりますが、まずは自分のことだけでもしっかりと良い感じにしていきましょう。この段階を飛ばしてセルフマネジメントに進むことはできません。

この段階の仕事の進め方に関して、以下の記事が参考になります。

「仕事」と「作業」の違いは何か
アドリブ力を上げる4つの要素
「時間対効果」を高める働き方

第2段階:仕事を任せられる段階

第2段階で身につけるのは、セルフマネジメントの基本です。この段階を身につけることで、誰かに言われたことをする作業から、目的を達成するための仕事に変わります。仕事を任してもらえるようになると、俄然楽しくなります。

仕事を任されたとき、その仕事の目的を確認し、その目的を達成できるように自分で把握・見積もりできる単位まで分解することを「タスクばらし」と呼んでいます。タスクばらしをするには、それぞれの職業における経験値が必要です。

この段階になるとホウレンソウだけでは足りません。「ザッソウ」の雑談と相談を兼ねたコミュニケーションで創造的なアイデアを出したり、雑に相談することで対立構造を作らずに「問題vs私たち」となって周囲と協働していきます。

「ふりかえり」を身につけることで、体験したことを内省して抽象化することで、様々な場面で応用が効くようになります。何でも改善することで、少しずつ自分を変化させていくことでもあり、自分のことを客観視できることを目指します。

仕事を任されるには、上司や同僚といった半径5メートルは見渡せる視座がないといけません。一人で働くわけではないので、目に映る人たちが、どういう考えを持っているのか想像できることも大事なポイントです。

この段階は非常に重要なので、さらに深掘りした考察や手法は、以下の記事に書いています。また、拙著「管理ゼロで成果はあがる」の第1部でも詳しく書いています。

セルフマネジメントの必須スキル「タスクばらし」
ホウレンソウからザッソウ(雑談・相談)へ
ふりかえりメソッド「KPT」の基本とはじめ方

第3段階:自律的に動ける人材へ

第3段階となると、会社であれば数字に責任を持つ立場になります。顧客にとっての価値を考えて、プロジェクトのように複数の人が関わる案件を遂行します。この段階になると、上司はいても相談相手になり自律的に成果を出せるのです。

プロジェクトの企画から計画、実行までを遂行し成果を出すことが、期待される仕事になります。自身の持つリソースを適切に配分し、プロジェクトが満足する品質を出し、スケジュール進行も滞りなく進めていかなければなりません。

また、たった一人で仕事をする訳ではなく、少なくとも顧客がいて、他に協力会社やメンバーがいる体制で、チームビルディングを行なうことで成果に繋がります。ファシリテーションのスキルを身につけて活かすと良いでしょう。

自身のビジョンを持ち、現実とのギャップを埋める努力を続けていく姿勢を「自己マスタリー」と呼びます。ピーター・センゲの「学習する組織」で提唱された言葉です。上司などいなくとも、自分で自分を成長させていくのです。

この段階は、顧客やチームまで見える視座が求められます。また、この段階になると、内発的動機付けで動くようになります。所属する組織と自分のビジョンをすりあわせて、互いに価値や意義があるように振る舞います。

この段階での参考記事や文献は以下になります。

身につけておきたい「イシュー」のマネジメント
YWTを使った戦略の立てかたとは
1on1面談の仕方「すりあわせ」

第4段階:心技体すべてに自立する

第3段階まで到達すれば、自分を中心として仕事をするセルフマネジメントは達成できます。第4段階からは、自分以外の人たちにも影響を与えていくようになります。会社なら部下や社員を持って、自分の組織に責任をもつ立場です。

この段階では、ビジネスモデルが確立した事業を、組織で取り組んで成果をあげることを期待されます。自分だけでなく、組織で働く人や資源をマネジメントして成果を出すようにしていくのは、立場はともかく経営の仕事と言えます。

対人関係でも、組織で働く人たちに適切に成長してもらうことで、組織の維持・発展ができます。人事育成については、ティーチングおよびコーチングをうまく使いこなして取り組みます。自分自身にコーチをつけることも良いでしょう。

この段階になると、自己認識が進み自分の価値観が確立し、他人からの評価や賞賛に依存しない自立マインドを持っています。足るを知る、その上で理想に向けて一つずつ積み上げていける、人生に対して安定して向き合える状態です。

所属する組織全体と、取り巻く業界まで見る視座を持っています。視点も、ビジネスモデルから財務に関する経営の数字まで見えること。時間や場所からは自由であり、どんな仕事も自分ごとで取り組むので、心も自由になっていきます。

組織や人をマネジメントする際の参考記事は以下です。

「管理」と「マネジメント」の違い
マネージャの資質とマネジメントの本質
クリエイティブな仕事のマネジメント7つの観点

第5段階:社会/組織どこでも自由に働く

この先にもっとあるのかもしれませんが、今の私たちが考えられるセルフマネジメントの最終段階です。ここまでの段階を経たことで、仕事の進め方も、対人関係も、自分のことさえも、相当に成熟した仕上がった状態と言えます。

組織を超えて社会から見ても、その人でしか出せない価値、たとえば著名な経営者やプロデューサーなど、代替の効かない属人的な部分にこそ価値があります。そこまででなくても、オンリーワンの価値が出せれば、自由度は増します。

組織にいる人たちだけでなく、社会に対して影響力を持つことも、この段階でしょう。個人でも社会的な使命感を持っていたり、起業家なら自身の会社のミッションやパーパスに反映したりして、良い社会にしていくことに貢献します。

そして「自己中心的利他」になっていること。これは『組織にいながら、自由に働く。』で紹介された考え方で、自分がやりたい仕事をする、それが得意なことでもあり、周りの人も喜んでくれる状態のこと。みんなが幸せになれます。

社会全体を見るような視座を持ち、自身も含めた世界全体が良い感じになるようにマネジメントしていきます。それが結局、自分自身も幸せになるのですから、これぞ究極のセルフマネジメントと言えます。

この道のりは一体どれ位かかるのか?

セルフマネジメントは、どの段階も一朝一夕に身につくものではありません。時間をかけて経験を積んでいくものです。つい若いうちは焦ってしまいますが、それぞれの段階をじっくりと取り組んだ方が、結局は遠回りにならないように思います。

私が、前職の社内ベンチャーをMBOして独立して株式会社ソニックガーデンを始めたのが37歳でした。やっとセルフマネジメントの4段階目に入れた感じです。それまで社会に出て10年以上かかっていますが、必要な期間だったと今は思います。

また、段階が上がっていくほどに、習熟・成長・成熟にかかる期間が長くなっていきます。第1段階は、習得すれば良いので2〜3年で十分でしょう。しかし、第2段階は、多様な業務経験が必要になるため、もっと長い期間が必要です。

もちろん、職種による違いもあるでしょうし、人によっても違います。なので、一概に期間がかかる訳ではなく、すごい勢いで成長できる人もいれば、マイペースな人もいます。大事なことは、段階を経ていけば辿り着けるということです。

こうしてみると段階があがるたびに大変そうだな、と思うかもしれませんが、むしろ楽しさは増していきます。できることが増え、責任はあれど世の中への貢献は増えて、喜ばれることも増えます。そして、なにより自由になるのです。

セルフマネジメントと自由の関係

ただただ自由でいたいというならば、セルフマネジメントなど必要はありません。その結果、どうなっても自由だからです。しかし、より良い人生を送りたいと考えるならば、セルフマネジメントを身につけた方が確率的には良いでしょう。

私たちソニックガーデンでは、これまでセルフマネジメントできる人材のみで構成することで、管理ゼロの組織を作ってきました。このロードマップで言えば、第3段階が身についた人たちです。採用時の判断基準でもありました。

一方、昨今は新卒や若い方からの応募が増えてきました。採用基準に満たないと判断するのは簡単ですが、創業から10年が経ち、若い人たちの育成に投資をしていくことも、私たちの社会的な使命ではないかと考えるようになりました。

既に何名か入社してくれてますが、セルフマネジメントの段階を踏んで成長をしてもらうことを期待した環境を作っています。つまり、段階に応じて人によって入社しても管理ゼロの自由な環境ではなく、むしろ管理されることもあります。

しかし、私たちの環境は、ずっと管理し続けたいわけではなく、セルフマネジメントを身につけてもらうことを目指しています。簡単な道ではないと思いますが、私たちの考える自由を目指したいなら、全力でサポートします。ご応募ください。

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倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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