先日の法政大学での社会人向けワークショップで使った資料です。以前からのアップデートは、育成に関する知見です。(改めて言語化して文章にしたい)
私たちの人材育成
・育成は教育や研修ではない、自律で育つまでの支援(ケア)
・技術向上と仕事を通じて、人格まで含めた人材育成
・ただ技術力だけでなく、文化や価値観も身につける
・再現性のない仕事は、職人の徒弟制度で真似て育つ
先日の法政大学での社会人向けワークショップで使った資料です。以前からのアップデートは、育成に関する知見です。(改めて言語化して文章にしたい)
私たちの人材育成
・育成は教育や研修ではない、自律で育つまでの支援(ケア)
・技術向上と仕事を通じて、人格まで含めた人材育成
・ただ技術力だけでなく、文化や価値観も身につける
・再現性のない仕事は、職人の徒弟制度で真似て育つ
出版事業を始めるにあたり、色々と準備を重ねていて、今日は印刷会社さんへのご挨拶と、製本所と印刷工場などの見学に行かせてもらった。
勉強してたから頭でわかってたけど、実際の現場と働いてらっしゃる方々を見させてもらって、本を作ることへの解像度がとても上がったな。
本を作るには、コンテンツを作る側面と、物理的な本として製造する側面がある。著者として書くことだけをしてた時、後者は見えなかった。
大量の印刷から製本作業、それらの品質管理はまさしく製造業だった。改めて、ソフトウェアの開発とは違う世界なのだな、と学びがあった。
また、本が製造されるまでに様々な工程で分業し、非常に多くの関係者や会社が関わっているのが知れて、一人の著者としては感謝しかない。
紙の種類も沢山あり、製本の形も自由度が高く、作り手のこだわりが詰まってるんだな、と。本を読む時、今までとは違った見方ができそう。
機械を使うけれど、職人的な仕事も多いというのも好みな現場だった。私たちソフトウェアと業界は違えど、職人の世界はカッコいいと思う。
製造業における職人仕事は、気温や紙質や状況などの変化があっても一定の品質を出すことであり、そこにもクリエイティビティがあるんだ。
いやー色々と刺激になった。書き尽くせないので、出版業界の素人が学びながら版元を始めるまでの道のりを、何かの形で残していきたいな。
クレディセゾン取締役CDO兼CTOの小野さんとの対談記事が出ました。ありがとうございました。記事になって改めて読み直しても、とても学びがあります。
大企業とスタートアップ、ウォーターフォールとアジャイルみたいな対立構造ではなく、それぞれの良さを知って統合していくこと。そのヒントが満載だと思います。
個人的には、「ソフトウェア産業が未成熟」と言われがちな点について、成熟してないのではなく、そもそもマネジメントの方向性が違うという点について議論して共感してもらえたことが嬉しかったところ。
また、不確実性を受容しながら経営指標をどう捉えるのかという点には「先行指標をKPIとする」ことで、「結果にコミットしないで、やることにコミットする」スタイルが大企業でも実現できているのが素晴らしい。
前後編で読み応えありますが、小野さんの説明が軽妙なので、わかりやすく読めると思います。
前編:クレディセゾンCTOと語る、エンジニア組織との向き合い方──DXでミスリードを避け、出島にしない理由
・スタートアップ経営と老舗のシステム会社を経てクレディセゾンのDXに取り組む
・大企業とスタートアップの両方を経験して知る、二者択一の危険性
・DXのミスリードは「結果にコミットしないで、やることにコミットする」ことで避ける
・エンジニアのマネジメントで一番大切なこと
・DXのための出島を作ってもスタートアップの劣化版しかできない
後編:小野CTOがディベートで学んだ、二項対立の乗り越え方──BS思考のリスキリング、プロダクト思考とは?
・ディベートで培った、相手の合理性を全力で理解する姿勢
・DXとはソフトウェアビジネスに適した企業への変革であり、プロダクト発想への転換である
・「リリースしてからが勝負」をビジネスの文脈で説明する
・リスキリングはBS発想で行い、クリエイティブに再現性を求めない
・エンジニアと経営者やマネージャーのギャップを埋める共通言語が必須
取材して頂いた記事が出ました。TechTeamJournalさんで2本目です。
「不確実なものをうまく取り扱う」7ルール|ソニックガーデン 倉貫義人
https://ttj.paiza.jp/archives/2023/07/07/8646/
7ルールの記事なので、「不確実なものをうまく取り扱う」テーマで考えてみました。少し抜粋しつつ紹介します。
この7つはソニックガーデンで仕事に取り組む際の考え方の指針や価値観だなと思います。
世の中には「やってみないとわからないから、とりあえずやってみましょう!」と勧めている人がいますよね。でも僕は、やってみることではなくて、ふりかえってそこから学ぶことが大事だと思っています。
不確実なものの場合、やることリストを全部クリアしたからといって、絶対に成功するかはわからないんです。愚直に全部やるのは、不確実なものと向き合うときには、よくない取り組み方といえます。
大きくするほうがスケールメリットはあるといわれるかもしれませんが、それは確実性のあるものだけの話です。不確実なものでは、小さく進めたほうがいいと思います。
進捗を確認しても、新規事業やソフトウェアは不確実なので機能しません。進捗ではなくて成果の確認をすれば、いつでもふりかえって学んで方針転換できます。計画通り進めるよりも変化に対応できるんです。
問題に一緒に向き合えばいいんです。「相手VSわたし」ではなく「問題VSわたしたち」というスタンスにするだけで、いろいろなものが解決します。
感情や人の問題にフォーカスしがちですけど、人間は不確実なものなのでなかなか変わりません。人よりも構造を変えたほうが、不確実なものに対処していけると考えています。
このように不確実なものと向き合うときは、一気に大きく変えるのではなく、少しずつ小さく変えていったほうがいいと思います。「改革」ではなく「改善」が大事です。
全文はこちら↓から。
「不確実なものをうまく取り扱う」7ルール|ソニックガーデン 倉貫義人
https://ttj.paiza.jp/archives/2023/07/07/8646/
こちら今の自分にとって、とても共感したし勇気づけられる記事だった。
最近、改めて自分たちソニックガーデンのことを職人を育て、職人が活きる場だと思うようになっていたので「職人」キーワードに興味を惹かれて読んだけど良かった。
今ちょうど経営として取り組んでいたのが、文化や世界観を伝える広報の立ち上げ、理念の言語化とリブランディング、未経験からの採用と職人の育成だったのでぴったり。
真剣に仕事に向き合って、職を極めようとする人たちに強く尊さを感じる。我々も、職人のすごさを伝えたり、組織をまとめたり、育てたりできるようにしていきたい。
「正式な呼称というわけではないのですが、コーポレート部門に所属する人であれば『ものづくりを支える人』、店舗のスタッフやクリエイティブチームの人であれば『ものづくりを伝える人』と社内で呼ばれています。私たちの軸となる『ものづくり』との関係が理解しやすい表現が自然に使われています」
【東京・長野】町工房、下請けから直販への転換で起死回生
https://newspicks.com/news/7259548/body
「私はこの会社に入って10年目ですが、共通の言葉があることで、入社して1年目のメンバーとも『これが土屋鞄らしいよね』と通じ合えるものがあります。何をするにしても『何のためにこれをやるのか』が理解できるようになり、みんながひとつになれる機会が増えたと感じています」
【東京・長野】500人に急拡大。理念を明文化、社員が変わった
https://newspicks.com/news/7274772/body/
「今は職人として働いているので、技術を磨くことを一番大事にしています。でも、人と人をつなぐこと、子どもの成長への願いを形にすることは、どの部署にいてもできることだと思うので、挑戦できることがあればどんどんやってみたいです」
【東京・長野】積極採用で200人。未経験から職人を育てる
https://newspicks.com/news/7276519/body/
取材して頂いた記事が公開されました。
なぜ、人が増えても速くならない?多くの方が勘違いしていること
目次:
引用:
『プログラムを書くことは、コンピュータへの指示をしているわけです。非エンジニアの多くの方は、プログラミングが製造作業だと思っていますが、じつはその前の「考える」ところがエンジニアの仕事になります。』
『ソフトウェアについては「つくり続けるし、直し続けるし、使い続ける」という世界観に変えることが大事だと思っています。』
『従来の製造業でおこなわれるようなマネジメントと、ソフトウェア開発のマネジメントは大きく違います。でもじつは、そのことに気づいていない非エンジニアの経営者の方や、マネジャーの方もいるのではないかと思いました。』
『これまでの経験を本にすることで、すれ違いが起きなくなればと思いました。本書は非エンジニアの方も理解しやすいように、たとえ話を入れて技術用語をほぼ使わずに書きました。』
今月からソニックガーデンは13期目になります。12年続けてこれたことで干支一周して、今期から改めて本業の「納品のない受託開発」に力を注ぎます。
5人で始めたソニックガーデンですが、その5人は今もいてくれて、彼らと共に最初に目指したのは、「プログラマを一生の仕事にする」ビジョンでした。
それが12年経ち、創業当時からいてくれたメンバーたちは今もなおプログラマとして活躍し、組織マネジメントや育成にまで仕事を広げてくれています。
ビジョンに共感した仲間も増え、サポートしてくださるパートナーやスタッフも増えました。そうした人たちとも改めて思いを再確認して進めていきたい。
2年前から始めた新卒・第2新卒の未経験からの採用と、入社後の育成も少しずつ成果が出てきており、プログラマとして腕を磨く環境を作っていきたい。
私たちにとってのプログラマは、ソフトウェアを必要とする人と対話して、圧倒的なプログラミングの技術力と提案力で問題解決し、価値を生み出す仕事。
そうした仕事を通して、プログラマとしての成長を目指す人たち、価値のある職を極めようとする職人たち、結果として仕事を楽しむことのできる人たち。
事業成長にソフトウェアを必要とするお客さまにとって、安心して相談してもらえるパートナーであるために、私たちは今まで以上に技術に向き合います。
原点回帰。それも12年の積み重ねで、螺旋のようにアップデートをして、次のステージに進んでいきたいと思います。引き続き、よろしくお願いします。
読書会やイベントでの質問や相談の多くが「どうすれば相手を説得できますか?」だった気がする。アジャイル、リモートワーク、自律型の組織など。
お客さまや経営者、上司や部下や同僚に対して、自分とは考えの違う人とのコミュニケーションをどうすれば良いのかという悩み。私も悩むことある。
立場や状況が違う誰もが感じているのだから、普遍的な悩みなんだなぁ。交渉のテクニックは多々あれど、それだけでは本質的に解決しない気がする。
相手を説得したい気持ちの根底にあるのは、自分の主張を通したいという願いではないか。だが、それは果たして相手の願いを叶えることになるかな。
課題と解決があるとして、自分が思う良い解決案や好みの解決案があると、それを通すために説得しようとしても、ただ受け入れられないことが多い。
その案で解決したかったのは何だったのか、そもそもの課題や実現したい理想について理解し合うことが先じゃないかな。そこが違ったら話できない。
課題や理想を揃えることが出来たら、解決案や手段は一人で考えるより良い案が出るかもしれないし、うまくいかなくても一緒に改善していけるかも。
何か一緒に取り組むとき、チームになるときには、理想を共有することは、とても大事で、最初にやっとくことだし、何度も再確認することなんだな。
それより根本的には理想があるなら、表現や発信していくことで、近しい理想を持って共感する人を集める方が説得や摩擦がなくて平和的ではあるね。
・・・なんてことは、誰もがわかっていても、そう簡単にはいかないから、人と人が分かりあうことは難しいんだけども。
「人が増えても速くならない」本の発売が近づいてまして、そこに向けて対談記事の取材でしたが、とても面白かった。経営や編集の仕事にも通じる話になるのは、この本が誰にとっても自分ごとに思ってもらえそうで嬉しい。
本書では、ソフトウェア開発での具体的な事例をもって、人海戦術が有効ではない理由や、工程を分離し過ぎる方が効率が落ちること、一度に大きく作ろうとするより小さく作った方が結局は無駄がないことなどを書いてます。
しかし、そうした取り組み方や考え方は、なにもソフトウェア開発に限ったものではなく、新規事業の立ち上げや、マーケティング企画、書籍や記事の企画から作成など、様々な領域にも通じる話なのだなぁ、と感じています。
さらに言えば経営という仕事にも当てはまる。つまり、再現性のない仕事のことを、クリエイティブな仕事だと私はよく言ってますが、そうした仕事は全て、人を増やしたとしても解決はしないし、むしろ妨げになってしまう。
クリエイティブな仕事での不確実性の高い状況に対して、いかに全体を事前に詳細まで把握して、計画を精緻化し、確実に進められるようにする、という考え方が一般的かもしれないけれど、本書では真逆の考えを示してます。
不確実性という変化に対し、あるがままに受け入れつつ、少しずつ着実に成果を出していく考え方。大きいまま捉えるのでなく小さくして扱うこと、難しい問題はシンプルに解けるよう問題自体を見直すこと。変化を抱擁する。
そうした考え方は、クリエイティブな仕事が増えていって、変化の激しい時代になっていくほどに、求められていくのではないかな、と。個人的には、誤解を恐れずに言うなら、これこそ「アジャイル」の思想だと思ってます。
自分の中で、何周目かのアジャイルと向き合いたい気持ちになってきているし、表面的なメソッドとしてではなく、いよいよ本質的な思想であり、ビジネスとしての価値に繋がることの言語化まで出来そうな気配がしています。
今回の対談記事は、Biz/Zine(ビズジン)さんで数回に渡り連載として公開される予定です!お楽しみにお待ちください(第一回のお相手はクラシコムの青木さん)
先日とある経営者向けの勉強会で講演してきたので、資料を公開します。
月額定額の顧問型サービス「納品のない受託開発」を生み出すまでの過程を通じて、当たり前を問い直す思考法を見つける。
・脳のブレーキを壊す体験
・ビジネスモデルの構造的な欠陥
・社内ベンチャーと新規事業の失敗
・パラダイムシフトで大逆転
・小さな会社だからこそビジョン
・「納品のない受託開発」の誕生
クラシコム青木さんとのソニックガーデンを言語化してみる試みの対話から。倉貫による理解と補足を入れたメモ。
希望とは、実現が困難だけど、実現可能性があり、実現すると善い未来のこと。哲学者トマス・アクィナスの言葉。
理念の言葉も、時間軸でメンテナンスしていく必要がある。難易度を調整していくことで、希望であり続けられる。
難易度が下がると希望ではなく目標になる。目標に共感する人はいない。人は希望に共感する。それがスローガン。
仕事をしていく上で大事なのは、社員かパートナーかではなく信頼関係。信頼できれば、管理コストが不要になる。
信頼されるには先にギブすること。ギブできるだけの強みと仕組みがあること。それとサステナブルな環境が前提。
「いい人だから」で信頼されるのではなく、仕組みの上で善良なことができる。その両輪が揃っていることが大事。
どれだけ優秀でも相手が強欲そうだと警戒せざるを得ない。信頼関係を築きにくい。そうならない仕組みをつくる。
売上ノルマが個人に紐づけば、強欲になるインセンティブが働いてしまう。個人が得する仕組みにしない方が良い。
洗練した構造の上で働く人は素朴になっていく。足場がぐらつく場所で働く人は、個として洗練さが高まっていく。
優秀な人が、成果だけにまっすぐに向き合える素朴さがあれば、それがもっとも成果を出せる。洗練さよりも成果。
優秀なまま素朴でいるためには、人事の制度や、仲間の作り方に工夫がいる。カルチャーによっても変わってくる。
居心地の良い関係とは、ゆるいのとは違う。興奮や熱狂とも違う。互いに敬意を持つ人と働くことは心地よい関係。
自立している人となら友達になれる。甘えたり、依存したり、守る関係とは違う。対等に対価と敬意を払えること。
以下はChatGPT(4.0)による文章化。
希望とは、何かと言うと、実現が困難でも、実現可能性があって、実現すると善い未来のことを指します。これは哲学者トマス・アクィナスの言葉であります。理念の言葉も、時間とともにメンテナンスしていく必要があるのです。そのためには、難易度を調整していくことで、常に希望であることが維持できます。
もし難易度が下がりすぎると、それはもはや希望ではなく目標になってしまいます。しかし、目標に共感する人は少ないのです。人々は希望に共感することが多いのです。その思考がまさにスローガンの原点と言えます。
仕事をしていく上で重要なのは、社員かパートナーかということよりも、信頼関係の存在です。信頼関係が築ければ、管理コストは不要になるのです。その信頼を得るためには、まずは自らが先に与える、すなわち「ギブ」することが重要なのです。
そして、その「ギブ」ができるだけの強みと仕組みがあること、さらにそれが持続可能な環境であることが前提となります。「いい人だから」という理由で信頼されるのではなく、仕組みの上で良いことを行うことが大切なのです。
どんなに優秀な人でも、相手が強欲そうだと感じたら警戒せざるを得ません。それは信頼関係を築くのに障害となります。そうならないためには、強欲さを引き起こさない仕組みを作ることが必要です。
売上ノルマが個人に紐付けられていると、強欲になるインセンティブが働いてしまうのです。個人が得する仕組みは避けるべきです。洗練した構造の中で働く人は素朴さを保つことができます。一方、不安定な環境で働く人は、個人としての洗練さを高めることになります。
優秀な人が成果だけにまっすぐに向き合う素朴さを持つと、それが最も成果を出すことができます。優秀さを保ちつつ素朴さを持つためには、人事の制度や、仲間の作り方に工夫が必要です。それは組織のカルチャーによっても変わってくるのです。
心地良い関係とは、ゆるい関係とは異なります。興奮や熱狂とも違います。互いに敬意を持つ人と働くこと、それが心地良い関係です。自立している人となら友達になることができます。依存関係や保護される関係ではなく、対等に対価と敬意を払える関係、それが良好な関係なのです。
1年ほどかけて書き上げた新著が、いよいよ発売になります!
今回は、DXや新規事業をはじめとするソフトウェアを内包したビジネスでマネジメントに取り組む人たちに向けて執筆しました。
「生産性を上げたいなら人を増やせば良い」「一度に作ってしまった方が早くできる」はずなのに、うまくいかないのはなぜか。
そんな不思議で難しそうなソフトウェアのことを、わかりやすく簡潔に、一般の人にわかる言葉で解説することに挑戦しました。
ビジネスサイドの人とエンジニアが共通認識を持って、わかりあえれば、もっと世の中よくなるのでは、そんな思いで書きました。
本書の執筆のきっかけは、「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムでの社外取締役の経験と、青木さんとの対話でした。
ECが事業の中心でありながらソフトウェアも内製しているマネジメントからは沢山の示唆を得ました。ありがとうございました。
私の個人的な思いとしては、エンジニアで12年、起業してから12年経ち、それぞれ干支1周したので、その集大成の気持ちです。
サブタイトルは私の人生を変えたXP本のオマージュです。約四半世紀も前の言葉ですが、今の時代にこそ必要だと感じています。
それはさておき、内容については読者の皆さまにとって有益で楽しい時間になるように書いたつもりです。是非ご期待ください。
6月10日に、紙と電子書籍で同時発売になります。よろしくお願いします!
昨日で、今期のセレクションの社長面談全員おわり。一人ずつ1時間半くらいかけて、じっくりすり合わせた。
セレクションという名前は、サッカークラブ(というか、漫画アオアシ)を参考にして名付けた採用の仕組み。
セレクションと言いつつ、スタンスは会社だけが選抜するというよりも、応募者からも会社を選ぶ形を目指す。
そのために、応募者には自分のことも会社のことも深く理解してもらって判断して欲しいので機会を提供する。
セレクションの最初に自分の考えを深めてもらうために、副社長による内省を促すワークショップをしている。
私との面談では、応募者の半生をふりかえり、どうするのが当人にとってベストな選択なのかを一緒に考える。
採用の面接よりも人生相談みたいな感じ。その上で、応募者と会社で互いに譲れないものは何かを確認しあう。
ぶつかる部分を見つけて、すり合わせして、摩擦が起きる。相当にハードになるけど、わかりあう時間になる。
一人ひとり真剣勝負で疲れたけれど、良い時間になったと思う。応募者の皆にとっても、同じであれば嬉しい。
若手プログラマの採用と育成の機会を作る意思決定して、やっと去年くらいから少しずつ会社のフェーズが変わってきた感。
ソニックガーデンキャンプという業務経験はなくても、プログラマとして働きたい方に向けた入口となる企画を始めたこと。
そのキャンプの参加者から、ソニックガーデンへの就職希望者が出てきてくれて、セレクションという仕組みを作ったこと。
セレクションから実際に入社してくれた人たちがいて、半年間のトレーニング期間を経たあとに岡山に移住してくれたこと。
さらに半年が経ち業務未経験だった若者たちが成長し、今はプログラマとして開発業務に従事して、自信をつけていること。
ベテラン勢にとって、採用と育成に向き合うことは大変だけれど、そこから得られる経験は他では得難いものになると思う。
また今年もキャンプを実施でき、去年より参加者が増え、セレクションに応募してくれる人も増え、今まさに実施している。
採用を考えることは、自分たちの会社は何を目指していて、どうありたいのかを改めて言語化する良い機会にもなっている。
採用判断は難しいし、まだ数年しないと、うまくいったかどうかもわからないけれど、改善しながら続けていきたいところ。
最近読んだ本。法隆寺最後の宮大工である西岡常一さんの内弟子から鵤工舎を設立し、多くの寺社建設を手がけながら、後進を育てた小川三夫さんの本。
『棟梁 〜技を伝え、人を育てる』
痺れる本だった。職人を育てる徒弟制度や共同生活、仕事に向き合う姿勢など、すべての言葉に重みがあったし、自分たちならどうだろうか、と考えた。
・一緒に暮らして、一緒に仕事をした。それが教えやった。
・だから教える側の問題やなくて、学ぶ側がそこから何をくみ取れるかや。
・言葉で教えられないから弟子に入ってくるんや。
・修行はそうやってただただ浸りきることが大事なんだな。
・寝ても覚めても、そのことしか考えない時期を作ることや。
・職人はサラリーマンやないから、暮らしが生き方、生き方が職業やからな。
・技や感覚なんていうのは、学校や教科書では教えられんな。
・物は人が作るんやで。
・物を作る中で考え、感覚を養い、試行錯誤する。それが人や。
・真摯な、そして確実な建物を建てること。それが唯一、弟子を育てる手段
・「育てる」と「育つ」は違う
・自分で自分を「育てる」。その環境と機会を与えるのが、人育ての方法
・鵤工舎は学校じゃない。
・賃金をもらって働く会社でもない。
・自らの意思で学ぶところやからな。
・・・まだまだ書ききれないほど、共感と畏敬の念をおぼえる内容だった。kindle版がなく文庫本で買ったのだけど、ずっと持ち歩いて読み返してる。
私は、ソフトウェア開発の中心にあるのは人であり、プログラミングは職人的な手仕事によって為されるものだと考えてきた。工業や製造業にならない。
ソフトウェアを作ること、コードに至るまでの徹底的なこだわり、腕を磨き続けること、その先に仕事と趣味の境界が消えて「遊ぶように働く」に至る。
ソフトウェア開発を建築に喩えるのは好きではないが、職人としての姿勢や世界観は通じてると思った。本書からは、とても大きな勇気と示唆を頂いた。
リモートワークを長く続けていると日常的な仕事に困ることはないけれど、組織が大きくなっていくにつれてズレを感じるようになったこと。
たとえば、組織の人数。創業して数年は10人前後でリモートせずにオフィスに集まってた頃は、少しずつ増えていく人の数を認識できてた。
それがリモートになれば、オフィスにいる人が増えて物理的なキャパがなくなり引越しもすることもないから、人数が増えた感覚を持てない。
完全リモートにしてから2倍くらいに社員数が増えてると思うけど、リモートで働いてる社員にしてみると、そんなに増えた実感はないはず。
あと社員の年齢を実感することも薄れがち。新卒で入った社員が数年して、すごく頼りになる感じになってても、いつまでも新卒扱いしがち。
リモートだと、一緒に仕事する人たちのことは認識できても、関わりがないと一切の情報が入ってこないので認識のアップデートがされない。
物理的な存在による自動的な認識のアップデートがなくなるのが、リモートワークの弱点と言える。あえて機会を作っていかないといけない。
そのためにも、リアルな合宿や飲み会をするのは良いな。全員が集まれると、組織の大きさもアップデートできるから良いけど、中々難しい。
なんとか今年は久しぶりに全社員が揃う機会を作りたい。お金や時間を使うことになるけど、コストと捉えず関係資本への投資だと考えよう。
ビジョンやミッションの共有も大事だと思うけど、コミュニティ型の組織の場合は、一緒に働く人たちを感じる機会を作ることが大事かなと。
ゆっくり読んでたソース原理の本、やっと読み終えた。面白かった。会社の創業者として、とても納得感があり、これまでのことが色々と言語化された感じで良かった。ソニックガーデンでやってきたことが、このコンセプトで説明できるかもしれない。
ソースであることと、組織における役割は別。これまで一般的な社長の仕事をしてる感じではなかったから、少し引け目を感じることがあったけれど、ソニックガーデンのソースであることは自信を持っていえる。もはや肩書きなど社長じゃなくて良い。
会社というよりもクリエイティブフィールド。ソフトウェア開発の作品みたいに会社を作ってきたけど、その感覚と合ってた。論理社員みたいな物理的な契約に縛られない関係を作ってきたし、明確なミッションがないことにも、悩む必要がなくなった。
ティール組織で取り上げられたときも、フラットなのにリーダーとして存在することにも居心地の悪さを感じていた。実際のところ権限がある訳ではないけれどソースとしてのオーソリティはあったのは、クリエイティブヒエラルキーで説明がつきそう。
管理ゼロのマネジメントも、セルフマネジメントできる人たちで構成されているからと説明してきたけれど、それだけではフリーランス集団と誤解されがちだった。それに加えて、全員がサブソースだったことが大きな要因だったと今なら説明できそう。
そして、全員が業務従事者でなくサブソースであるために、入社のプロセスをソースである私自身が関わって、半年から数年も時間をかけたのはビジョンや価値観に共鳴してもらって、サブソースとなってもらうために必要なプロセスだったのだと思う。
最近だと、若い人たちを採用しているのは、まずは業務従事者として入ってもらい、プログラミングやセルフマネジメントを身につけてもらいながら、いずれサブソースになってもらえることを期待して、価値観や哲学など時間をかけて伝えていってる。
ただ会社を大きくすることよりも、アジャイルやソフトウェアの文化を守り伝えていくことの方が私たちにとって大事なことだと考えていたけれど、それは経営者としてどうなのかと思っていたけれど、やっぱそのスタンスで良いのかもしれんと思えた。
私がソニックガーデンという活動のソースであることは、原作者って感じがする。原作者だけでは表現しきれない部分を、サブソースの仲間たちと、業務従事者の皆さんの力を借りて、一緒に創作活動をしている感じ。なんとなく自分なりに整理できた。
会社の枠を越えた活動のソースであり原作者であるなら、会社の経営ばかりに時間を使い過ぎずに、こうして考えを言語化したりして、発信したり残したりすることをもっとしていきたいな。
すべては1人から始まる――ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力
先日PIVOTさんの取材を受けまして、今の自分を形作る原点となった本を〜ということで「エクストリーム・プログラミング入門」の初版本を引っ張り出してきた。
2000年の初版の第1刷で、当時は何度も何度も読み返したからボロボロ。だけど思い返しても、この本には本当に勇気付けられたなぁ。
当時は新卒で大手SIerに入り、周りは実装工程は外注することが正義みたいな空気の中で、自分だけがプログラミングとプログラマの働き方の重要性を訴えて孤独を感じてた。
そんなときに、この本に出会って肯定された気持ちになれたんだった。これで自分は救われたし、この考えを広めることで自分と似た人たちを救いたいと思ったのだった。
エンジニアから経営者となったキャリアを振り返って話をさせてもらったけれど、ずっと一貫して、これをやりたかったんだ、やってきたんだなぁ、と思い出せた。
このソフトウェア開発のやり方・考え方を、日本に広めていくことが、今風に言えば自分のパーパスだったし、立場が変わった今も、その思いの本質は変わってないなぁ。
ソフトウェア開発は、作りたい人にとっても、作る人にとっても、クリエイティブで苦しくも楽しい作品づくりで、素晴らしい仕事なんだと知ってもらいたいし、そう思って働く人が増えてほしい。
そして、やはりソフトウェア開発では、コードを書くプログラマこそが主役だし、そうあってもらいたいし、そういう気概で取り組んで欲しい。そうやって働ける良い職業なんだよな。
改めて、この序文の最初のフレーズだけで痺れる。
“エクストリームプログラミングはコーディングをソフトウェアプロジェクトのキーアクティビティ、つまり「中心となる活動」として選んでいる。”
2023年の年始ひとつ目に、この取材を受けれて、とても良かった。