『棟梁 〜技を伝え、人を育てる』の感想

思考メモ

最近読んだ本。法隆寺最後の宮大工である西岡常一さんの内弟子から鵤工舎を設立し、多くの寺社建設を手がけながら、後進を育てた小川三夫さんの本。

『棟梁 〜技を伝え、人を育てる』

痺れる本だった。職人を育てる徒弟制度や共同生活、仕事に向き合う姿勢など、すべての言葉に重みがあったし、自分たちならどうだろうか、と考えた。

・一緒に暮らして、一緒に仕事をした。それが教えやった。
・だから教える側の問題やなくて、学ぶ側がそこから何をくみ取れるかや。
・言葉で教えられないから弟子に入ってくるんや。

・修行はそうやってただただ浸りきることが大事なんだな。
・寝ても覚めても、そのことしか考えない時期を作ることや。
・職人はサラリーマンやないから、暮らしが生き方、生き方が職業やからな。

・技や感覚なんていうのは、学校や教科書では教えられんな。
・物は人が作るんやで。
・物を作る中で考え、感覚を養い、試行錯誤する。それが人や。

・真摯な、そして確実な建物を建てること。それが唯一、弟子を育てる手段
・「育てる」と「育つ」は違う
・自分で自分を「育てる」。その環境と機会を与えるのが、人育ての方法

・鵤工舎は学校じゃない。
・賃金をもらって働く会社でもない。
・自らの意思で学ぶところやからな。

・・・まだまだ書ききれないほど、共感と畏敬の念をおぼえる内容だった。kindle版がなく文庫本で買ったのだけど、ずっと持ち歩いて読み返してる。

私は、ソフトウェア開発の中心にあるのは人であり、プログラミングは職人的な手仕事によって為されるものだと考えてきた。工業や製造業にならない。

ソフトウェアを作ること、コードに至るまでの徹底的なこだわり、腕を磨き続けること、その先に仕事と趣味の境界が消えて「遊ぶように働く」に至る。

ソフトウェア開発を建築に喩えるのは好きではないが、職人としての姿勢や世界観は通じてると思った。本書からは、とても大きな勇気と示唆を頂いた。

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