リモートワークは「何年働けばできる」のか?〜約束をせず、最善を尽くす

「親方のもとで何年働けば、リモートワークできますか?」

これは応募される方や取材などで、よく聞かれる質問のひとつです。

徒弟制度を導入している私たちソニックガーデンでは、新卒や経験の浅いうちは師匠となる親方のもとで一緒に働くようにしています。業務を通じてセルフマネジメントを身につけてから、晴れてリモートワークができるようになります。

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ただし、どれくらいの期間がかかるのか、明確な年数やルールは設けていません。制度として「1年経てばOK」「2年で自立」といった基準を作っていないのです。

画一的なルールは作らない

その理由はシンプルで、人はそれぞれ違うからです。

セルフマネジメントの成熟度も、成長スピードも、信頼関係を築く時間も、人によって異なります。仮にルールを設けたとしても、それは誰かにとっては早すぎたり、また別の誰かにとっては遅すぎたりするかもしれません。

ルールを作れば、いちいち判断する必要がなくなって生産性は向上するかもしれませんが、一方で「考えなくていい状態」を生んでしまうことにも繋がります。しかし、人に関しては考え続けた方が良いとしています。

コストはかかりますが、ルールに当てはめるよりも、一人ひとりに合わせて取り組むことで、のびのびとした状態を作ることができて、それが結局は組織の成長や生産性に寄与することになると考えています。

親方が“見極める”

では、誰がどうやって判断するのか?

弟子の場合、それは親方です。弟子とともに日々を過ごし、仕事をし、信頼関係を築いた上で、親方が「この人なら」と判断したときに、リモートワークが始まります。ある種、セルフマネジメントを身につけるための機会とも捉えています。

そこに期間の目安はありませんが、事例としては1年ほどで移行したケースもありますし、段階的に「週の何日かだけ自宅で働く」といった形から始めることもあります。

中には、一時的ではありますが海外に滞在しながら働いた実例もあります。とはいえ、それはあくまで“その人と親方との関係性”のなかで最善の判断が下された結果に過ぎません。つまり、他の誰かに当てはめるべきものではないということです。

ちなみに、親方が見極めの責任は負っていますが、一人きりで決める訳ではありません。会社として、経営陣や人事担当も関わり、他の親方たちとも相談して判断します。そうしたガバナンスの体制も作られています。

未来を約束しない、でも最善を尽くす

どれだけ働けばリモートワークできるのかは約束はできませんが、それを望むのであれば、前向きに取り組んでいれば、叶う可能性は大いにあるのです。

とても不安なことかもしれませんが、未来のことを決めてしまうことで安心しようとしても、その安心は絶対のものではありません。なぜなら、未来は変わるからです。会社の状況も変わるし、本人の状況だって変わります。

これは、キャリアについても言えます。「何年で一人前になれますか?」と聞かれても、答えることはできません。やはり、人それぞれ違うからです。それも、事前に約束することは難しいと言わざるを得ません。

ただし、どんな状況であれ「その時点での最善の判断を一緒に考える」ということだけは、私たちは約束します。

画一的なルールもないし、事前に決めておくこともないけれど、その時々の個人の希望や状況に応じて、常に柔軟に、一緒にベストな選択を探していきたいと思っているのです。

信頼関係を築くことから始まる

リモートワークに関しても、それに至る期間は約束はできないけれど、もし何かどうしてもリモートワークをせざるを得ない状況になった場合は、なんとかうまく実現する方法を模索することになるでしょう。

そこまで逼迫した状況でなくとも、リモートワークしたい希望があるのであれば、そのことを親方に相談してみることから始めると良いでしょう。そこから、親方と弟子が一緒になって、どうすれば実現できるか「問題vs私たち」で考えていくことになります。

ただし、働き始めたばかりの数週間や数ヶ月で、いきなりリモートワークの相談をしても叶うことは難しいでしょう。そこには、まだ親方との信頼関係が築かれていないからです。信頼してもらえる状態を作ることが先です。

つまり大事なのは、日々の仕事を通じて信頼を積み重ねていくこと。そして、その関係性の中で、自然と「次の働き方」が見えてくる。そうなってから親方に相談することで、「試してみてもいいんじゃないか」と一緒に考えられるはずです。

「未来の約束」はできませんが、「その時々の最善を尽くす」という考え方は、ソニックガーデンを経営する中で大事にしていることです。リモートワークを含めた働き方の選択肢も、その延長線上にあるのです。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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