リモートワークについて講演をすると必ず出てくるのが「社員がオフィスに来てないと管理できない」「オフィスにいないとサボってないか心配」という話。これは果たして本当にそうなのだろうか。

実はこれはリモートワークに限った話ではない。現代の仕事の多くは頭を使う仕事であり、オフィスにいても見ていたからといって仕事しているかどうかはわからない。それもコンピュータで成果物を作るとなると尚更。

頭を使ったクリエイティブな仕事のマネジメントを成功させるためには、これまでとは観点を変えなければいけない。本稿では、クリエイティブな仕事やリモートワークでのマネジメントの観点について考える。

ザッソウ管理ゼロで成果はあがる

「人」ではなく「タスク」をマネジメントせよ

「社員がオフィスにいないと管理できない」と言うマネージャは、オフィスにいて一体何を管理しているのだろうか。出社しているかどうか?着席しているかどうか?お喋りばかりしてないかどうか?そんなことを管理しても成果などあがる訳がない。

社員がオフィスで働いていればマネージャとして安心はできるかもしれないが、それだけに過ぎない。仕事が進捗しているかどうかは、結局は本人からの報告を受けるしかない。それも外から見えない頭の中でする仕事の進捗は、本人の弁を信じるしかない。

全社員リモートワークをする私たちの会社では、全員が「タスクばらし」することを習慣にしている。大きな仕事を大きなまま取り組むと進捗率でしか進捗状況を伝えられなくなってしまう。「30%進んでいます」と言われて納得いくだろうか。進捗"率"というのは、状況を伝えるのに適していない。

だから仕事を短い時間で終わる単位にバラすと良い。どんな仕事も数時間で終わるようにバラすことができれば、仕事が進んでいるかどうかは進捗率でなく、実際に終わったタスクの量で把握することができる。仕事は終わらせるまでは、仕事をしたとは言えない。バラすことで、仕事の単位を小さくして順に終わらせることができる。

リモートワークの場合、人が着席してるかどうかを見るよりも「タスクばらし」を浸透して、タスクが消化されていってるかどうかを見ることで、仕事が進んでいるかどうかはわかる。仕事が進捗していれば、オフィスにいなくても良いはずだ。

「やる気」ではなく「やること」をマネジメントせよ

頭を使う仕事は、肉体労働に比べて本人の「やる気」が生産性や品質に大きな影響を与える。クリエイティブな仕事は、心を無にして取り組むことができないからだ。

だから、どうやってやる気を出してもらうのかと多くのマネージャは悩むのだが、人のやる気やモチベーションは他人が外から与えることは難しい。本人の心の持ちようは、本人にしか変えることができない。では、どうしたら良いのか。

「やる気」は変えられないが、「やること」ならば変えることができる。内発的動機づけを最大限に発揮してもらうには、本人がやりたいと思っていることを仕事にするのだ。人は、興味関心のあることなら誰かに管理されなくとも取り組む。

私たちソニックガーデンでは「YWT」を使った「すりあわせ」をすることで、なるべく本人の興味関心のある仕事に取り組んでもらえるようにしている。そこで使うYWTは強力なフォーマットで「やったこと」「わかったこと」「次にやること」の略だが、最後の「次にやること」を考えるのは自分なのだ。

普通の会社だと、会社がやってほしいことがあって本人に指示命令をするのかもしれないが、YWTの場合、まずは自分のやりたいことを表明してもらうことから始まる。その上で会社として期待することを伝えていくことでチューニングをする。少なくとも出発点が自分であるほうがやる気は高まる。

「評価」ではなく「結果」をマネジメントせよ

「リモートワークだと評価が難しい」という話もよくきく。これもリモートワークだから評価が難しいのではなく、そもそも、頭を使ってする仕事や再現性の低い(=クリエイティブな)仕事の評価は難しいものなのだ。

ルーチンワークならば、その成果は数字でわかりやすく出すことができるし、何人かのメンバーがいても横並びで比較することができる。しかし、現代の多くの仕事はルーチンワークではなくなりつつある。全員が日々違うことをしているのに公平に評価するというのは難しくて当然だろう。

そもそも評価とは何のためにあるのか。モチベーションを高めるため?高い評価された瞬間は嬉しいが長続きするものではない。低い評価されたら、やる気が出るかというと逆効果だろう。大事なことは、評価そのものよりも結果が出ているかどうかだ。

私たちソニックガーデンでは「ベストエフォート経営」という考え方を取り入れている。固定的な目標や高すぎる目標を設定せずに、日々精一杯働いて、その結果どうだったかという実績を確認することだけをする。確認は、「ふりかえり」や「すりあわせ」の中で確認をしていく。

そうした機会の中で、もし良い結果が出ていなければ、改善できるようにフィードバックをする。結果が出ていても、より良くするにはどうすればいいかを一緒に考えるのだ。日々、より良い状態にすることを続けていけば、自ずと結果は出るようになるだろう。

「育成」ではなく「成長」をマネジメントせよ

新卒社員からリモートワークをしているという話をすると驚かれる。「育成はどうするんですか?」と聞かれるが、もちろんリモートワークだからといって放置しているわけではなく、メンターがついてサポートしている。しかし、育てているという感じではない。

メンターの主な仕事は「ふりかえり」でフィードバックをすること。私たちのやっている「ふりかえり」は、チームや数人でやることもあるが、主には一人で行う。ふりかえりは「KPT」というフォーマットを使って行う。

KPTは、Keep(やって良かったこと)Problem(まずかったこと)Try(試してみること)の略だ。日々の仕事を通じて、この観点でふりかえっていくことで、少しずつでも改善を続けていくことができる。向上心のある人なら「もっとこうすれば良かった」と思うことがあるだろう。それを仕組み化している。

メンターは、新人がふりかえりをしている結果を受けて、もっとうまくやるための助言をしたり、出来ていないことは出来ていないと事実を伝えたり、チームの価値観にそぐわない行動をしていたとしたら指摘をする。あくまで、人がみずから育つためのサポートにすぎない。

「育成」というと外部が主体で相手を育てようという感じだが、本当に育つときは、自分自身で考えて取り組んで経験を積んで、そこから学び取って、また次の経験に活かすときだ。育てるのではなく、育つ機会をつくること。個人が成長することをマネジメントするのだ。

「採用」ではなく「応募」をマネジメントせよ

「全社員リモートワークができるなんて優秀な社員ばかりだからでしょう」と言われたりもする。そう言われると否定のしようもないが、そもそもリモートワークだから優秀な社員が必要なのではなくて、どんな会社でも優秀な社員が必要なはずではないか。

優秀な人材を必要とする多くの会社が取り組むのが、採用だ。いい会社を作るためには、採用が本当に重要だということに異論のある人はいないだろう。だから多くの会社が、採用プロセスに工夫をしている。

私たちソニックガーデンでも、「TIPS」という採用の基準を設けたり、セルフマネジメントができるかどうかを見極めたりと、様々な採用の工夫をしてきた。

しかし、改めて考えると本当に大事なことは、どういった人に応募してもらうかという観点だったと思う。もちろん採用プロセスも大事だが、それだと会社側が選抜するというスタンスは拭いきれない。的外れな応募があると、結局は採用コストばかり上がってしまうという問題もある。

それよりも自分たちに合った人に応募してきてもらう方が良い。一体どうすれば良いのか。魅力的な会社であることを知ってもらうだけでなく、こだわりや譲れないことなど、好き嫌いがハッキリするようなことも出していくことだ。誰でもウェルカムな態度では、誰からも選ばれないだろう。

「会議」ではなく「対話」をマネジメントせよ

リモートワークでの会議と言えば、Zoomなどを使ったテレビ会議をすることになる。「テレビ会議だと会議がうまくいかなくて…」と言う人もいるが、それは果たして本当にテレビ会議の問題だろうか?

私たちのテレビ会議は、会議室のような場所に集まって遠隔の人につなぐというスタイルではなく、一人ずつ自分のコンピュータからテレビ会議に参加するようにしている。全員がテレビ会議に参加することで、環境が揃うことで話しやすくなる。他にも環境面の様々なノウハウがある。

そうした環境を揃えても、活発な意見が出なかったり、特定の人だけが話したり、良い会議ができないのだとしたら、それはテレビ会議の問題ではなく、会議のあり方に問題があるのだ。せっかく関係者を集めて会議を行うのなら、実りある対話ができるようにするべきだろう。

一方的な報告や連絡などは事前にツールを使って共有しておけば良い。対話を盛り上げるために、事前に議題も共有しておくと良いだろう。私たちの会社では、さらにツール上で議論を深めた上で会議を行っている。そうすることで、会議の時間は本質的な対話だけに集中できる。

さらに言えば、会議そのものが大事なのではなく、メンバー同士が気兼ねなく対話したり相談しあったりする環境や関係づくりをしておくことの方が重要だ。そうした場ができていたら、会議にするかどうかは些細なことになる。そうした環境づくりに役立つのが雑談+相談の「ザッソウ」だ。

「数字」ではなく「人」をマネジメントせよ

組織活動をうまくやっていくためには、究極的には人がどのように力を発揮するのか、ということに尽きる。マネジメントの目的は「いい感じにすること」だとしたら、組織マネジメントの観点で言えば、働く人の全員が最高のパフォーマンスを発揮している状態をつくることだ。

ベテランやルーキーなど立場や経験によって、発揮できる生産性や品質は違っていても、少なくとも誰もが精一杯働けている状態を作り出すことをしたい。状況のせいで自分の力が発揮できていない人がいることが最も惜しい。

そうしたときに、経営者やマネージャが数字だけを見ていては手遅れになる。数字は事業や組織の状態を見るための一つの尺度に過ぎず、数字に落とし込めた時点で現実世界から少しタイムラグがある。現場で働く生きている人を見る方がリアルだ。

それに数字だけを見てても生産性は上がらない。それぞれの人には、それぞれの人の事情や考えがある。そうした個人個人のことを見ないで、型にはめて働かせようとしても、クリエイティブな仕事では成果は出せないだろう。

私たちの経営ミーティングは、いつも人のことばかりが話題になる。調子の悪そうな人、パフォーマンスが出てない人、次のステージに挑戦した方がいい人、どうしたら一人ひとりが力を発揮できるかばかりを話し合っている。

そのために現場の観察が欠かせない。監視ではなく観察だ。「オフィスに出社いしなくて、リモートワークでどうやって観察するのか?」そう、私たちの経営において、働いている人たちの様子を知れることは重要だ。だから「仮想オフィス」で働くというスタイルを選択している。その辺りは以下の記事に詳しい。

オフィスはいらない。管理もしない。「軽さ」を選んだアジャイル経営論