中途採用におけるセルフマネジメントできる人の見分け方

中途採用におけるセルフマネジメントできる人の見分け方

採用は非常に難しい仕事だ。自分たちの会社に合う人かどうか、仕事が出来るかどうか、長く一緒にやっていけそうかどうか、様々な観点で確認していく必要がある。

私たちの会社は、管理のない会社経営に取り組んでおり、それを支えるのはセルフマネジメントで働ける人たちの存在だ。社内の誰もがセルフマネジメントが出来なければ、フラットな組織は成立しない。だから、セルフマネジメントが出来る人かどうか、採用の際に見極めなければならない。

採用に正解はないし、フィーリングも大いにあるだろうが、その中でも、今回は私が中途採用で面接をする際にセルフマネジメントが出来そうな人材かどうか、気にしているポイントについて書いた。

仕事をやめて背水の陣で挑もうとしてないか

前職を辞めて、絶対に入社するぞ、という覚悟をもって転職活動に臨まれる方がいる。そこまでの気持ちがあって素晴らしい、と考える会社もあるかもしれないが、私たちの場合はとても困惑してしまう。

私たちの会社では、毎年何人を採用すること、みたいな採用の計画を立てていない。むやみに人は増やさなくて良いし、どんなに案件の引き合いがあっても、良い人がいない限り採用しないという「ピープルファースト」という採用方針をとっている。

だから、採用に関しても焦ることなく、じっくりと時間をかけて、お互いによくわかる状態までもっていって、最終的にフィットすればジョインするという流れにしている。採用の判断には時間がかかるし、時間をかけたいと考えているのだ。

そんなところに前職を辞めて無職状態でチャレンジされると、嬉しいどころか困惑してしまう。情にほだされることなく、ダメだと思えば不採用とは言うけれど、それでも非常に心苦しい。相手にそんな気持ちにさせるのは、自分本位ではないか。

それに、ずっと無職という訳にはいかないからタイムリミットがある。採用は焦ってOKを出して良い結果になることは少ない。だとすると、焦ったらNGを出すしかない。また、付き合いが長くなればなるほど、本人の時間も奪うことになって心苦しい。ならばいっそ、早めにNGを出すしかない。

常に複数の選択肢を持ち、リスクヘッジ出来る状態を作り出しておくことがセルフマネジメントに必要な戦略眼だろう。

会社の望み通りに自分を変えようとしてないか

採用して良いかどうかは、その人のスキルや能力だけで判断は出来ない。もちろん、自社にあったスキルがあることは重要だが、それだけでなく人間性や価値観やカルチャーが合うかどうか、そういった表面や数値に現れない項目も重要となる。

いくらスキルがあっても価値観などが合わずに、残念ながら不採用となってしまう時もある。そんな時「どうすれば入れますか?」と、会社の望むような人材になれるよう努力する人もいる。本当にありがたいことだが、結果としてはNGとなることが多い。

新卒入社であれば、働く上での価値観やカルチャーをゼロから教えることも出来るが、ある程度の社会人経験がある場合、ポリシーや価値観など考え方を変えることは難しい。スキルや経験が多少は足りなくても補えるが、マインドはそうはいかない。

いずれ何らかのきっかけで考え方や価値観が大きく変わることも、人生にはあるかもしれないが、外圧でもって変えることは難しい。そもそも考え方に正解はないのだから、それを変えようなどとは烏滸がましい。

むしろ、きちんと自分のポリシーをもっていることは、セルフマネジメントで働く上でとても大事なことだ。ナレッジワークは判断の連続だ。上司の判断は仰げないのがフラットな組織だから、自分で判断できる価値観があることは大事なのだ。

だからこそ、自分の考えを持っていて、かつ、その考え方が合うことが大事で、無理に会社に合わせて変えようとしても、いずれ破綻するだろう。

言われるまま受け入れようとするかどうか

面接をしていて困るのは、こちらが話すのをじっと待っている人だ。面接だから、面接官である私が質問をして、応募者が回答をするという形を想定してるのかもしれないが、それだと一方的な判断の場になってしまうことになる。

採用とは、受け入れる会社側だけが判断する一方的なものだなんて考えていない。相思相愛が望ましい。だから、応募する人にも私たち会社のことを見極めて欲しい。そうした判断のためには、一方的な質疑応答ではなく、対話が必要だろう。

セルフマネジメントで仕事ができる人は、相手の言われたことに盲目的に従うのではなく、なぜその仕事をするのか、もっと良い方法はないか、仕事相手と対話をする。だから、あまりに受け身な姿勢でいられると、心配になってしまう。

対話といっても、何もおしゃべりが上手である必要はない。相手の意図を汲みとるために相手の立場になって考えること、その上で丁寧に自分の考えていることを話すことができれば、対話は成立する。対話とはめんどくさいものなのだ。

だから対話を成立させるためには、相手への興味や関心が必要になる。聞いてみたいことがあれば質問になるし、本当に伝えたければ丁寧に説明することになる。YES/NOだけで答えられるような情報を聞くだけの質問は対話とは言わない。

やはり、相手の判断に全て委ねるのでなく、正解のない問題であっても一緒に前を向いて議論ができる人と働きたい。

入社後にやりたいことがあるかどうか

入社してから何がしたいか?これもよく聞いている。そうすると「納品のない受託開発」がしたい、と答える人が多い。それだけだと、少しマイナスの評価になる。どういうことか、その仕事がしたくて応募しているはずなのに。

もちろん、やりたい仕事のために入社するのは一つある。しかし、それだけでは入社すると目標を失ってしまわないか、心配になるのだ。入社まで一生懸命にスキルアップをするが、入社できて満足してしまうのは、お互いによくないだろう。入社はゴールではなく、スタートでありたい。

だから、その上で何かやりたいことはないか、考えてもらっている。上司がいて適切に目標設定して評価してくれるような会社ではないので、セルフマネジメントで自分自身でビジョンをもち、自分なりに目標設定ができる人が望ましい。

私たちの会社では、ただ売上や規模を大きくすることだけに優先度を置いていない。たくさんの仕事があるし、それが出来る人を増やせば良いか、というと、そう簡単ではない。それだと、ただの労働力として雇い入れているだけで、仲間とは言えない。

せっかく入ってくれる人とは、なるべく長く一緒にやっていきたいと考えている。だから、仕事がしたいだけの人を、仕事ができるからと採用するのでなく、入社するだけの理由や必然性、ストーリーを持って仲間になってほしい。

会社は、そこで働く人たちにとってのビジョンを叶えるための場所や機会でありたい。だから、入社後にやりたいことを持っている人が良いし、一緒にできることなら一緒にやりたいし、会社をあげて応援もしたい。

いつも一桁台の社員を採用するつもりで

ここに示したものが全ての判断材料ではないし、ここから外れていた場合でも採用することもあれば、不採用になることもある。絶対のものではない。だから難しい。

だけど、ここまで慎重にしているのは、それだけ会社にとって人の採用が重要で、妥協をしてはいけないと考えているからだ。

もし、これから面接をして採用する人が、会社を作ったばかりの頃の一桁台の社員となる人だったら、と考えるとどうだろう。人の採用には、それくらいの気持ちが大事ではないか。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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