長く働けるスタイルを大事にするために〜急成長を目指さない「ベストエフォート経営」

長く働けるスタイルを大事にするために〜急成長を目指さない「ベストエフォート経営」

こちらの記事を読みました。

逃げろ、そして生き延びろ – インターネットの備忘録
http://d.hatena.ne.jp/hase0831/20121002

頓智ドットを退職した|@suniのブログ「ニートですが?」
http://sunikang.blogspot.jp/2012/10/blog-post.html

読んでるだけで自分も苦しくなるような内容でした。

たしかにベンチャー企業の経営者は、ハードワークであることを奨励する人が多い気がします。世界を変えるとか、上場を目指すとか、短期間で何かを成し遂げようとするならば、残業も厭わずに働き続けないといけない、という訳です。そうなのかもしれません。

しかし、私はそんな考えかたが好きではないです。一生懸命に働くことは大事ですし、頑張ることは大前提だと思いますが、長時間働くことを求めるのは違うのではないかと考えています。そもそも自分がそんなこと出来ません。

この記事では、長時間ハードワークするのではなく、長い期間を自然なペースで働けるスタイルを大事にするために、私たちが考えている「ベストエフォート経営」という考えかたについて書きました。

The old coupleThe old couple / moedermens

残業しない会社〜ライフスタイルカンパニーであること

私たちソニックガーデンは殆ど残業をしません。残業をしないというと、印象を悪く持つ人もいるかもしれません。深夜や休日まで働く会社の方が、お客様からすると良い会社だと思う人もいるかもしれませんが、私たちはそうは考えていません。

上場もバイアウトも目指していない私たちは仕事は一生のものだと考えています。自分たちが好きだと思う仕事をずっとやっていきたいし、それはマラソンのようなもので、短距離走ではありません。なので、一時的に休むこと無く働いたとしても、そんなことが続けられる訳がないと思っているのです。

私たちの提供する「納品のない受託開発」「社内SNS:SKIP」のようなクラウドのサービスも、パートナーシップ型でお客様に提供していく姿勢でいます。お客様にずっと高い価値を感じて頂いて、長くお付き合いさせて頂くためにも、無理をしないことは大事なことだと考えています。無理な働き方をして、体を壊して急にいなくなったとしたら、その方がご迷惑をおかけすることになってしまいます。

そう言う意味でソニックガーデンは、投資を集めて急成長を目指す意味でのベンチャー企業ではありません。社内ベンチャーの形から始まって独立したので、「ベンチャー」という言葉がついてまわりますが、そう言われるのは、どうもこそばゆいです。

数年間がむしゃらに働いて、株式公開をするか大企業へバイアウトするというゴールを目指すというのがベンチャーらしさだとすれば、私たちはその真逆です。そもそも上場企業からMBOした私たちは、また上場を目指すという気持ちはないんです。

私たちも、沢山の人たちに使ってもらえて、そして使ってくれる人たちの習慣を変えられるようなサービスを作ることをミッションの一つにしています。それが私たちの考える世界を変えるということです。それに向けて頑張っています。しかし、そのために全てを捨てるようなことは考えていません。

ソニックガーデンは、家庭を持っている人たちが多いです。奥さんも子供もいる中で、短期決戦を目指して、家族との時間を犠牲にするという選択肢は選べませんし、選びたくない。社員には家族との時間を大切にしてほしいと思っています。

私は今の仲間たちと一緒に働き続けたいし、一緒に働けることを幸せだと思うので、それをずっと続けられることを目指し、社員と社員の家族もひとつの共同体とするような「ライフスタイルカンパニー」であることを目指しています。

そのためには、残業しすぎるようなハードワークのスタイルは続かない。ライフスタイルカンパニーを目指すためには「持続的であること(sustainable)」ということが大事だと考えます。そこで肝要なのは「急成長を目指さない」ということです。

急成長を目指さない「ベストエフォート経営」

ソニックガーデンには売上目標や個人の達成目標などの、数字の指標がありません。それが出来るのは小さな会社だからだろう、と言われるかもしれませんが、まったくその通りです。数字の目標で一生懸命に働くことを強いるのではなく、一生懸命に働くことを信頼して、その結果を共有しようと考えているため、小さな会社でいるのです。

売上目標がなくて会社として大丈夫なのか?という心配があるかもしれません。しかし、目標というのは、いったい誰のためのものでしょう?目標を立てて、達成するというのは誰のために頑張るのでしょうか?社長のため?社長なら誰のため?

ソニックガーデンの株主としてのオーナーは、社長の私と副社長の2人ということになります。私も副社長も現場の近くにいるし、お客様とも直接に話ができるので、会社のことはよくわかっています。その会社がどれだけ頑張るかという目標を、第3者の誰かに報告する必要がないのです。

急激に会社を大きくしたいとか、株式公開をしたいとか考えるなら、目標はあった方がいいかもしれません。会社の人数が多くなって、目標がないとそれぞれが頑張っているかどうかわからなってくると数字の目標は必要かもしれません。

しかし、私も副社長も、そういう感じで誰かに目標を設定されて、それをクリアしなければいけない、という状況があまり好きではないんです。まぁ学生時代から試験とか嫌いだったんです。だからといって怠けたいというのではなく、むしろマジメに頑張ってしまうので、達成出来なかった時に、心が苦しいんですね。自分たちが嫌いなことを強要したくないんです。

マジメで責任感がある人からすると、ストレッチで厳しめの目標設定はしんどいんです。全力でやって達成できないと落ち込んでしまう位ならば、目標設定なんて無い方がいいと考えました。

誰もが一生懸命に働くという前提で、誰かが誰かの成果に乗っかろうなんてつもりがない組織にできれば、目標なんてなくてもいいんです。そして、正しい仕事であれば、人は基本的に一生懸命に働くことが好きなんだと思っています。少なくとも、そんな人を採用しています。

経営をしていく上で、数字はどうするのか、という疑問もあるかもしれませんが、小さな会社で、私たちのようなストック型のビジネスモデルを採用している場合、キャッシュフローの方が重要になります。過去3ヶ月分を見れば、この先3ヶ月はわかりますし、1年やれば、1年先くらいは見えるようになります。

ソニックガーデンに、数字の目標はないですが、ミッションとビジョンはあります。どこを目指すのかという方向性は共有するようにしています。そして、ビジネスモデルを共有して、何をすることが利益になるのか理解しています。価値観を話し合って、何が大事なのかよく考えます。

残業なんかしないで、限られた時間の中で、精一杯にマジメに一生懸命に働くこと。目標はなくても、ベストエフォートで働くことを信頼すること。そうすることで、お客様に高い価値を、ずっと長い間提供し続ける。そうした結果として、利益が出たら社員全員で共有する。そういう会社であり続けたいと思っています。

少なくとも自分たちを幸せに出来ない人が、本当に世界を変えられるのでしょうか?

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倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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