以前に、KPTを使った「ふりかえり」の方法についての記事を書きました。

自律的に現場を改善できるチームをつくるための「ふりかえり」の進め方 〜 KPTと進め方のノウハウ

ふりかえりを続けることで、現場も個人も改善されていくので、とても良いのですが、それだけでは望むビジョンやゴールに到達できないことがあります。少しずつ改善する努力は大切ですが、あくまでオペレーションの範囲に留まります。それは戦術の話です。

それに対し、戦略を持つということは、ビジョンに到達するための道筋を持つということです。戦略を持つことで、高い目標や大きなビジョンを達成することができるのです。この記事では、私たちソニックガーデンで実践している個人でも出来る戦略の立てかたについて紹介します。

個人にオススメなYWTを使った戦略の立てかた

私たちの会社ソニックガーデンでは、だいたい半年に一度のペースで合宿や旅行に行ってるのですが、そこでの恒例行事として「YWT」というのをやっています。

上の写真は、先日の社員旅行の際に行われた「YWT」の様子です。

YWTというのは、やったことのY、わかったことのW、次にやることのT、を繋げた言葉です。なんと日本語の頭文字です。私たちは、このYWTというフォーマットを使って、個人の戦略の立案と見直しをしています。

このYWTは、私の前職時代に会社で行われていた習慣だったのですが、いい習慣だったので今も続けています。なので、YWTの正確な定義ややり方は知りませんが、私たちソニックガーデン流のYWTということで紹介しています。

以前に紹介したKPTでふりかえるのが1〜2週間程度だとしたら、YWTでは半年単位くらいでふりかえりと戦略について考えます。

このYWTを考えるためには、将来に自分がどうありたいかといった漠然とでもビジョンがなければ難しいでしょう。YWTを考える機会は、自分の未来のことを考えるきっかけでもあるのです。

そして、こうした未来のことを考えるためには、普段の現場で働いている視点とは違う、大きな視点が必要になります。それもあって、私たちは合宿などの日常の場所から離れた場所でやっています。

合宿で行うYWTでは、各自がその日までに自分のYWTを考えてきたものを、ひとりずつ発表しあいます。ひとりひとりが考えている戦略を全員の前で発表し、共有することで、お互いに目指すことがわかり、助け合うことができるようになります。

YWTを出すためのポイント

YWTでは最初に、その期間にやってきたことを思い返し、立てた仮説がどうだったか考えます(Y)。そして次に、そこから学ぶことが出来たの気付きは何かを考えます(W)。そうして、次の期間に取り組むための仮説を考えるのです(T)。

YWTはそれぞれ、箇条書きで最大3〜4つほど出せば十分です。むしろ多すぎるとよくありません。

やったこと(Y)を出すときも、すべて列挙するのではなく、わかったこと(W)につながるものを出せば十分です。学びのなかったことは、やったことに入りませんし、「やったことより」も大事なことは、何を学んだかという「わかったこと」です。

未来に向けたビジョンがあって、過去に「やってきたこと(Y)」からの「わかったこと(W)」という学びがあれば、おのずと「次にやること(T)」が見えてきます。

YWTのTこそが、過去と未来をつなぐ「戦略」というわけです。戦略であるTを考えるために、WがありYがあります。

KPTのTでは、確実に出来ることを具体的に考えますが、YWTのTでは、出来る出来ないは置いておいて、自分が「どうなっていたいか」を考えます。それは仮説でかまいません。戦略とは仮説に過ぎないからです。

仮説となる戦略がなければ、どれだけ日々の努力を積み重ねても、それが正しいことかどうかわかりません。ひとまずこっちに行ってみよう、ということを決めて進めば、その方向が正しかったかどうかは見直しをすればわかります。

仮説の見直しをしていくことで自分の成長を確認できます。自分の戦略を持たないでいると、常に他人と比べることでしか成長を感じられなくなってしまいます。それは生きていくにも仕事をするにも辛いことです。

会社の事業戦略もYWTで考えることができる

このYWTというフォーマットは、よくある企業の経営会議でも使われる事業戦略と構造的には同じものです。

私も大企業に務めていたときは、自分が持っている組織の事業戦略を4半期に一度は報告することをしていましたが、そのときの報告書の大きな目次としては、以下のようなものでした。

  • 前半期における実績
  • 事業活動からの気付き
  • 次半期における事業方針

これって、上からYWTを話してるのと同じです。視野の広さが違うだけで、視点の角度は同じなんです。

前職での社内ベンチャー時代にも、このフォーマットで4半期ごとに事業の見直しを行っていました。当初にたてた事業戦略を絶対のものとしないで、実行したことからの気付きを得て、見直すきっかけとなったおかげで、いくつかの方針転換をしながら、うまくいくことが出来ました。

自分自身の戦略を考える訓練を続けることで、より大きなチームや組織の戦略を考えることができるようになります。逆に、自分の戦略すら立てられない人にチームの戦略をたてることなど出来ません。まずは、自分の戦略からです。

戦略を持てばチャンスを活かせる

戦略を持たずに日々過ごしてしまうと、チャンスを逃すことがあります。どうなっていたいか、そのためにどうすればいいかを常に意識して行動していくうちに、目の前に転がってきたチャンスを逃さずに行動できます。

普段の生活をしていると、ついつい日常を優先してしまいます。新しいことに挑戦するよりも、現在やっていることを続けて改善する方が楽だからです。しかし、思い切った挑戦をしなければ、思った以上の成長ができません。

戦略を持っていれば、目の前の果実を捨てて大きな未来を選ぶことができるでしょう。努力は大事ですし、ふりかえりからの改善も大事ですが、自分の目指すところと、そこへの道筋を考えておくことは、さらに大事なことです。

戦略という言葉を聞くと、それは会社経営についての話で自分とは関係ないだろうと考えてしまう人がいるかもしれないですが、そうではありません。

会社をどうしていくかを考えるのは、経営者が行いますが、自分の人生をどうしていきたいかを考えるのは自分です。

自分の人生の経営者は自分であり、自分の人生で叶えたいビジョンがあるならば、自分の戦略を考えてみてもいいのではないでしょうか。YWTを考えることがその第1歩になるかもしれません。