「管理ゼロで成果はあがる」は、私にとって経営者になってから単著で3冊目の本となります。今回の本は、アクティブ・ブック・ダイアローグ(ABD)というスタイルの読書会にむけて原稿ゲラを提供していることもあって、全国で読書会を開催してもらえています。私もいくつか参加させてもらいました。

そこで気付くのは、多くの人が「管理」と「マネジメント」を混同して使っているということです。そもそも、管理とマネジメントは違うものなのです。その違いをはっきりさせておくことで、より多くの人がマネジメントをうまく出来るようになるはずです。

本稿では、管理とマネジメントの違いについて。マネジメントの本質を掴むための方法を書きました。

誤解されがちな「管理ゼロ」の言葉

まず私の本ですが、表紙タイトルが非常に過激で「上司なし・決裁なし」「経費は承認なく使える」「休暇は取り放題」「給与は一律、賞与は山分け、評価制度なし」「売上目標やノルマはなし」「働く時間も場所も縛りなし」「副業OK」と目立つ色で列挙されるキーワードと、「管理ゼロで成果はあがる」というタイトル。

この表紙とタイトルで「管理ゼロ(の状態)について書かれた本だ」「管理ゼロの会社を紹介している」という一定の誤解を生んでしまっている事実があります。

これは大きな誤解です。本書のタイトルに「管理ゼロ」と付いていますが、実は本文中には一言も出てこないのです。だから、管理ゼロでやっているソニックガーデンのことを紹介しているだけの本でもないですし、ましてや「管理ゼロにしましょう」ということは言っていません。

管理ゼロというのは、私たちの事例で結果として出来上がった状態に過ぎず、「管理せずに成果をあげていくにはどうすればいいのか?」という疑問に対して、ステップを踏んで、それぞれの現場で取り組むことのできるマネジメントのプラクティスを紹介しているのが本書なのです。

管理ゼロが入るタイトルですが、本書はマネジメントについて書いた本なのです。

マネジメントはIT企業/業界に特化した話ではない

これは私の立場がIT企業を経営する立場であるし、これまでプログラミングやアジャイルに関する情報発信をしてきたイメージから仕方ないことですが、IT企業やエンジニアに関する本だと思われてしまうこともありました。

しかし、今回は「アジャイル」という言葉も使っておらず、専門用語も極力つかわないようにして、どの業界でも共通する「マネジメント」の部分にフォーカスした内容にしています。

第2部などは、多くの組織で起きている構造的な問題について取り上げています。目標管理と評価の意味はなにか、なんのために部署や階層はあるのか、管理をすることの本質はなにか、そういった組織マネジメントで起きる難しさを扱っているのです。

人が集まると組織になり、事業を成長させるためには組織をマネジメントしなければいけない。それをするのがマネージャの役割であり責任でもある。しかし、従来の管理では成果を出すことが難しくなってきたと感じる人は業界を問わず多くいるはずです。

そうしたマネージャにとって、管理しなくても成果をあげていくマネジメントを考えるきっかけ作りになってほしいと書いたものです。

マネジメント=管理ではない

そもそも「管理」と「マネジメント」は違うというのが本書の大前提にあるスタンスです。日本語にすると混同してしまいがちですが、そもそもマネジメントとは「成果をあげること」が目的で、そのために「なんとかすること」「やりくりすること」の意味です。一方で、管理は手段に過ぎません。

古代からの労働集約で単純労働のマネジメントをするには、その手段として管理することが適していたというだけで、マネジメント=管理と思われてきましたが、時代が変わり仕事の種類が変わってきた今、その管理という手段が適さなくなってきたということです。

管理はゼロですが、マネジメントはゼロではありません。マネジメントというコンセプトは、むしろ現代の仕事においては、より重要なものになってきていると感じています。同時に、より難しいものにもなってきているとも。

現代の仕事の多くは「再現性が少ない仕事」ばかりになってきています。正確に繰り返し再現できる仕事は、コンピュータや機械に任せる方が向いています。今や、人工知能によって多少の誤差のある仕事も任せられるようになってきました。

人間がするべき仕事は、日々違うことを考えて、ひとりひとり違うことを考えることになります。そうした仕事を「クリエイティブな仕事」と呼んでいます。クリエイティブな仕事をマネジメントするのに、従前通りの管理という手法は適していません。では、管理以外の方法は一体なにがあるのか、ということを本書では述べています。

大事なことは「成果はあがる」マネジメント

本書のタイトルで、本当に重要なのは後半部分の「成果はあがる」という部分になります。自由に働くことも良いでしょう、新しい組織マネジメントも理想的かもしれません、好きなことを仕事にするなんて素敵なことです。ただし、成果さえあげることができるならば。

成果をあげることが出来なければ、どんな理想の組織も働き方も片手落ちになります。私たちソニックガーデンは、これまで理想の組織を目指してきたわけではなく、ただただ「楽に成果をあげる」ことを追求してきたに過ぎません。

ポイントは「楽に」の部分です。ただひたすらに成果の量を増やすのではなく、最小の労力で最大の効果を得るコストパフォーマンスを大事にしてきました。そのために、本当に必要なものだけにフォーカスをして、余計なものをなくしてきました。そのうちの一つが「管理」だったというわけです。

とはいえ、第2部「自律的に働く」だけを読むと、確かに難しいと感じるだろうな、と思って、第1部「生産的に働く」を用意することにしました。第1部だけでも、それなりのハードルがあるし、そこが出来てない状態で第2部が難しいというのは当たり前です。

今回の反省点としては、時間軸として考えれば、第1部だけでも取り組むのに時間がかかるのに、3つのステップを1冊の本にまとめてしまったことです。密度は濃いものになりましたが、第1部が刺さる読者と、第2部が刺さる読者で分散されてしまったことです。機会があれば、第1部だけを詳細にした上で改めて書籍として書いてみたいと考えています。(オファーお待ちしています)

「管理ゼロ」という極端さを示すことの意義

私たちソニックガーデンの事例は、非常に極端なものです。極端だからこそ「絶対に無理だ」「一体どうやっているのか」と、諦めや謎解きがしたくなるのもわかります。しかし、置かれた状況は全て異なるのですから、まったく同じようにはいきません。それぞれの状況と目的に応じて、皆さん自身で考えるしかないのです。

では一体、私の書いた「管理ゼロ」にどんな意味があるのでしょうか。私は、極端な事例を見せることで、それまで考えてもみなかった方向に目線を向かせることができる効果があると思っています。

これは、ウォーターフォール全盛で重量級のマネジメントの時代に、エクストリームプログラミングという非常に極端な手法を発表したことで、軽量的な手法もあるのだと多くの人の目を向けさせることが出来たことからヒントを得てのことです。

また、もう1つの意義は、自分たちが取り組んでいる組織の常識を改めて見つめ直して、その本質を問う機会になるということです。

とある会社でマネージャを集めて、私の本をもとに評価や管理についてなくせないか議論をしたそうです。侃侃諤諤の議論の結果、評価や管理はなくせないという結論になったのだけれど、マネージャたちにとって、そもそもなんのために評価しているのか管理しているのか、改めて考える機会になったというのです。その会社にとって、評価や管理の本質を捉え直した上で、改めてマネジメントに向き合うようになったという話です。

本書を使わずに、いきなり「マネジメントの本質を見直しましょう」と社内で言っても、共感や納得が得られないかもしれません。しかし、こうして本として存在し、極端な事例があることで、そうした本質を話し合う機会を作ることはできるのではないでしょうか。

そんな風に使ってもらえたら著者冥利に尽きるというものです。ぜひ、ご活用ください。