一般的なテレワークのイメージと、リモートチームの6つの違い

一般的なテレワークのイメージと、リモートチームの6つの違い

働き方に注目される時勢のおかげで、私たちが昔からやっていたリモートワーク、それも、チームワークを重視するリモートワークである「リモートチーム」について話をする機会が非常に増えた。とてもありがたいことだ。

ただ私たちの場合は、働き方だけに注目して取り組んできた訳ではなくて、生産性を高めることや無駄なことをなくすことを追求した結果として、今のスタイルになっている。だから、一般の人のイメージするようなテレワークとは大きく違っている。

一般的なテレワークに対するイメージと、私たちが取り組んでいるリモートチームの実態について、その違いを明確にしておかないと、いくら伝えても伝わらないと感じることがあったので、改めてまとめてみたのが以下の図だ。

申請は不要、誰でもいつでも在宅勤務

一般的なテレワークや在宅勤務の話を聞くと、在宅勤務をしたい場合は事前に申請をして、会社や上司の許可を得てから実施するらしい。それも何か明確な理由が必要だったりするので、誰でも全員がという訳にはいかない。

そもそも許可がいるって発想なのは、やってはいけないものだと考えているのではないか。在宅勤務できる会社ですって言っても、人はいくら権利として認められていても、誰かの許可が必要になることは、面倒だから積極的にはしないだろう。

私たちの会社では、限られた社員のための制度ではなく、誰でもが当たり前に、好きな場所で働くことができる。特別な理由なんていらない。もちろん、申請をするようなことも必要ない。(申請されても決裁する上司や管理職もいないのだが)

働き方の選択肢を用意することの本質

一方で、東京付近に住んでいたり、独身の社員たちにとって働きやすい場所を提供するために、自由が丘に大きめのマンションを借り上げて、ワークプレイスとして提供している。オフィスではないので、出社の義務はない。社員なら無料で使えるコワーキングスペースみたいなものだ。

リモートワークしか出来ない、という訳ではなく、働く人にとって複数の選択肢があって、自分にあったスタイルを選べることが大事だ。例えば、ずっとワークプレイスに通っていた社員も、お子さんが産まれてから在宅勤務をするようになった。

大事なことは、ワークプレイスに行こうが在宅勤務だろうが、関係なく仕事が出来るような環境を作っておくこと。それが無ければ、在宅勤務をすることがハンディキャップになってしまう。それでは選択肢を用意しているとは言えない。

例えば私たちの場合は、Remottyというバーチャルオフィスを使っていて、全員が仕事中はそこにアクセスしておくということをしている。ネット上のツールこそが必須のオフィスになって、そこにさえいれば、物理的な制約はなくなる。

そして、リモートワークしても良いというならば、申請や許可など無くしてしまうことだ。オフィスに出社するのに許可は要らないのだから、選択肢として用意するなら、同じにするべきだろう。

在宅勤務を多数派に、全員が離れて働く

限られた社員だけが在宅勤務をすると、そちらが圧倒的な少数派になってしまう。大多数の人がオフィスに出社している中で、特別扱いされて在宅勤務をするというのは、心理的にも恐縮してしまうし、それ以上の権利の主張は遠慮してしまう。

組織の制度や権利も、どうしても多数派を中心に設計することになる。多数派を重視すること自体は間違ったことではないからこそ、さらに在宅勤務をする人の肩身が狭くなる。

私たちは、すでに2016年の時点で本社オフィスを無くすという大きな決断をした。それ以来、社員全員がリモートワークをするようになった。もちろん、前述のワークプレイスがあるので、自宅の外で働きたい人は通えば良い。それでも前提は、全員が離れて働くということだ。

全員が離れて働くのだから、互いに遠慮はないし、制度作りの前提も変わってくる。

静かに集中できることよりも、ワイワイと

リモートワークやテレワークをやってみてどうでしたか?というアンケートで、静かな環境だったのがよかった、会議に出なくて済むので仕事が捗った、なんて答えが返ってくることがあるが、それは別にリモートワークのメリットではない。

リモートワークは一人で静かに仕事する環境のためではない。もし、そういう仕事に集中できる環境を望むのならば、それはリモートかどうかに関係なく実現した方が良いし、オフィスにいても実現できることだろう。働く場所の問題ではない。

私たちがあえて「リモートチーム」と呼んでいるのは、離れて働くのだけど、オフィスにいるよりも、むしろ密なコミュニケーションを実現できているからだ。離れていることはデメリットではなく、むしろツールを活用できる良い機会なのだ。

毎日、同じ時間帯に働いて、顔を合わせて仕事をして、相談したいことがあれば声をかける。休憩時間には雑談をしたり、席で仕事をしているか見えて、声をかけたらすぐに口頭でのミーティングもできる。それら全てフェイストゥフェイスだ。

これが私たちの働き方だが、オフィスと何か違うだろうか。何も違わない。ただ間にインターネットとデバイスを介しているというだけなのだ。オフィスの方が活発なやりとりが出来るというのは思考停止ではないか。

定性的な仕事も、協調が必要な仕事も出来る

また一般的には、テレワークや在宅勤務をする人の仕事は、定量的に成果を測ることのできる仕事でないと実現できないと思い込んでいる人も多い。確かに、オフィスと違って座っているかどうか、勤怠管理をしっかりすることは難しいからだろう。

だから、きっちりと仕様やゴールが決められて、あまり途中で議論する余地がないもの、インプットとアウトプットがはっきりしているものにしようとする。それはそれで仕事の進め方として大事だが、会社の仕事には、そうして割り切れないものも多い。

そもそものインプットとゴールを決めるのも仕事としてあるし、進めていく中で議論をすることで形が変わっていくものものある。目的もなく話している中で、新しいアイデアがひらめくこともあるだろうし、話し合うことそのものが仕事ということもある。

そうした定性的な仕事や、コラボレーションが必要な仕事は、リモートワークでは出来ないのだろうか。いや、決してそんなことはない。なんだったら、もっとも定性的な「経営」という仕事でさえ、私たちの会社はリモートワークでやっているのだから。

離れて働くことが、いつもの日常になる

まだまだ、多くの人にとってテレワークのイメージは、例外的な処理であり、特別な社員にとっての非日常な出来事だというものだ。オフィスで働くことに比べて、何かを損なったり、デメリットがあるもので、仕方なく取り組もうとしている。しかし、そうしたモチベーションでは、テレワークの取り組みはうまくいかないだろう。

私たちにとっては、もはやリモートワークや在宅勤務は当たり前の光景になっている。それが前提となって、その中で、さらに生産性をあげるにはどうすれば良いのか、もっとコミュニケーションをとるにはどうすれば良いのか、そうしたことを考えている。リモートワークをするかしないか、という議論をしている段階ではない。

リモートチームにしたからといって、テキストコミュニケーションだけではないし、顔を突き合わせた対話がなくなる訳ではない。リモートでうまく働けないと思い込んでいる誤解は、その辺りにあるのではないか。

物理的に同じ空間にいないだけで、顔を合わせて、口頭での対話は、日常茶飯事でやっている。むしろ、オフィスにいる時よりも、もっと気軽にやれている。しかも、人数が増えたら、普通ならオフィスで物理的に距離が離れることで、対話が減ってしまうところが、そんな制約がなくなる。

その上で、テキストコミュニケーションやツール上での存在感などを通じて、より多くの情報を交換することが出来る。チャネルが、オフィスにいる時よりも増えている。コミュニケーションの量は、明らかに増えている。

リアル or リモートではなく、リモート and 少しのリアル

果たして、本当に「物理的な同じ空間にいなければ伝わらない」ことばかりなのか。そこをよく考えた方が良いのではないか。もちろん、物理的に同じ空間にいて、一緒の空気を吸うことで、何か通じあうことも、もしかしたらあるのかもしれないが、あらゆるコミュニケーションを、全て同じ空間でする必要など本当にあるのか。

普段はリモートワークで仕事が出来るようにした上で、たまに物理的に会うような機会を作る位で十分ではないか。つまり、そうなると離れて働くことの方が日常で、物理的に会って一緒に過ごすということの方が非日常になる。

音楽を聞きたいと思ったときに、今はいつでも誰でもスマホで聞ける。だけど、はるか昔は生演奏でしか聞くことが出来ない時代があり、とてもコストのかかることだから限られた一部の人だけのものだった。

それが、レコードが発明され、デジタルで保存できるようになり、デバイスも小さくなって、今やオンラインでイヤホンだけで聞ける時代になった。誰もが、いつでも音楽を聞くことが出来る。そんな時代でも、もちろん生演奏の方が良いだろう。ただ、だからと言って、生演奏だけしか聞きたくないというのは、ナンセンスだと思わないか。

テクノロジーで解決出来ることがあるのなら、それも有意義に使えば、それまで以上に豊かに過ごすことが出来る。そういうことではないだろうか。

リモートチームでうまくいく
倉貫 義人
日本実業出版社

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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