ビジネスを取り巻く環境は、ほんの数十年前から大きく変わりました。大量生産のニーズに応えることで成長できた製造業の時代から、消費者ニーズの多様化に加え、インターネットによるビジネスモデルの変化などによって、サービスや企画で価値を生み出す時代になってきました。

かつては、労働者を集めてマニュアル化し、属人性を排除して、同じものを間違いなく大量に作ることがマネジメントでした。メソッドは多数ありましたが、どれも「正解」がある前提でした。正解に合わせたオペレーションを重視していたのです。

しかし、今や企画もマーケティングもデザインも、どれも正解などありません。試行錯誤と失敗を重ねながらも最大限に成果を出せるように取り組むことが求められます。そうすると、マネジメントの手段も変えなければなりません。

本稿では、いくつかの対比でもってマネジメントの変化について考えました。

ザッソウ管理ゼロで成果はあがる

目標管理:KGI/KPI → OKR

KPI(Key Performance Indicators)という言葉は、ビジネスシーンでよく使われます。簡単に言えば、成果を判断するための数値目標や指標といったところです。

あわせて、KGI(Key Goal Indicator)という言葉も使います。KPIよりも、より上位の経営レベルでの数値目標だと思えばいいでしょう。

これらは、数字を大きくすることがそのままビジネスの成長につながるケースにおいて有効でした。しかし、数字を指標にすることは人を短期的にコントロールする上では有効でしたが、数字だけに振り回されるようになって、その目的を忘れてしまいがちになるという欠点があります。

そこで最近になって注目されているのが「OKR(Objective and Key Result)」です。グーグルやフェイスブックで採用されたことで注目を集めました。日本でも導入している企業が増えているといいます。(グーグルの出しているガイド

OKRは、チームのモチベーションを上げるための定性的な「目標(Objective)」と、目標を達成させるための3〜5つの定量的な「ストレッチ目標(Key Result)」で構成されます。組織が部署やチームに階層化されると、その単位でOKRを設定し、下位組織が上位のストレッチ目標をもとに目標を設定します。

KPI/KGIからの違いは、どの定量目標に対しても紐付く定性的な目的が設定されることです。そうすることで、盲目的な数字だけに従うことを防ぐこと、担当するチームや人が自分ごとで考えられるようになることが肝なのではないかと思います。

プロセス:PDCA → OODA

「ビジネスで成果を出すためにはPDCAが重要だ」と言われてきました。これは、「計画(Plan)」「実行(Do)」「評価(Check)」「改善(Act)」の頭文字をまとめたもので、多くの日本企業で取り入れられています。

PDCAでは、最初に精度の高い計画を立てることが重要になります。あとは計画通りに実行してから確認し、微調整して改善するというやり方です。期間は年次や四半期をベースに計画を立てます。これも、事前に予測しやすくビジネス環境が大きく変化しない時代には有効でしたが、今では適さなくなってきています。

そこでPDCAに代わるコンセプトとして、注目されているのが「OODA」です。「観察(Observe)」「状況判断(Orient)」「決断(Decide)」「実行(Act)」の頭文字をまとめたもので、大きなゴールさえ決めてしまえばあとは現場が適宜判断することを求めます。

意思決定のプロセスとして、最初に観察から始まるところが特徴です。このOODAはループしていて、観察をするために実行を行います。そして、実行するために決断、決断するために状況判断、状況判断のために観察を行います。

PDCAと大きく違うところは、期間で計画を立てて繰り返すわけではないという点です。ビジネスを推進させていくために、常にループが回っている状態でいることを前提に置いています。区切りよりもループの回転が肝です。

前述のOKRの目標設定も、OODAのプロセスも、硬直化した強さというよりも、環境変化に対していかに柔軟でいるかといったしなやかな強さ(レジリエンス)を指向しています。

改善手法:KPT → YWT

プロジェクトや仕事の進め方を改善する際の観点も、変化を前提とするか、そうでないかで変わってきます。プロジェクトやチームで「ふりかえり」をすることが重要であることは疑いようはないですが、そのやり方もいくつかあります。

KPTは、Keep/Problem/Tryの略です。「Keep=よかったこと」「Problem=悪かったこと」「Try=次に試すこと」の項目に分けて考えるフレームワークで、様々な場面で応用できます。

KPT自体は非常にシンプルなので、うまく活用することでチームやプロジェクト推進の改善に繋がります。特に、継続的に実施することで、1.0を1.1に、1.1を1.2にしていくことで生産性を高めていくことができるでしょう。

ただし、KPTでのふりかえりだけでは、ドラスティックな成長や、大きな方向転換などを考えることは難しいのです。あくまでKPTは改善であり、改革ではないからです。

そこで「変化」に注目してふりかえるためのフレームワークがYWTです。YWTは、やったこと(Y)/わかったこと(W)/つぎにやること(T)の略です。私たちは主に、1on1の機会の中で使っています。

ふりかえるときに、まずは「やったこと」というシンプルに事実の確認を行います。そうすることで、半年前や一年前といったときからの変化や出来事について共有できます。そして、その経験から「わかったこと」を考えます。わかったことは、具体的な事実や出来事からの抽象化を行います。

過去の考察をして、その次に未来のビジョンとのギャップで「次にやること」を考えていきます。ここでは、確実にできることだけでなく、チャレンジしたいことが多く含まれます。だからこそ、日々の改善よりもジャンプアップすることができるのです。

情報共有:ホウレンソウ → ザッソウ

PDCAで計画を立てて、KPIで進捗管理をしていく組織において、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)のコミュニケーションは適したものでした。週に1度の定例ミーティングがあれば、そこで報告や連絡、相談をするだけで十分だったのです。

しかし、正解のない仕事に取り組む中では、あらゆることが手探りで進んでいきます。専門的でわからないことや、自分だけではアイデアが出ないことなど頻繁にあり、そうしたときにチームの仲間や有識者、上司への相談は欠かせません。

そうしたときに、5分相談したら解決するようなことも、次回の定例ミーティングを待つというのは馬鹿らしく、著しく生産性は低くなります。気軽にサッと相談すればいいのです。相談も、かしこまったものではなく、まだふんわりしたものでも構いません。だからこそ相談したのですから。

そこで、ザッソウのコミュニケーションが有効になります。ザッソウとは、「雑談+相談」であり、「雑な相談」でもあります。

普段から雑談のような時間を適度にもつことで、その中で仕事の相談も気軽にすることができます。相談だけの時間を取ろうとすると、どうしてもきっちりした相談と回答が必要な感じがしますが、雑談の中で相談していくことで、たとえ着地できなくても良いと思えるので、気軽に相談ができるようになります。

また、普段から雑談できるような関係性が築けていれば、雑な状態で相談することができます。たとえ相談の内容が雑であっても、怒られないし馬鹿にされないと思うと、早い段階で相談できるようになります。これは、いわゆる「心理的安全性」の高い状態だと言えます。そして、心理的安全性の高いチームは、生産性が高いということがグーグルの調査によって、わかっています。

定例ミーティングを待つことなくいつでも、状況に合わせて話し相手を変え、話す内容も決まったことを伝えるだけでなく、その場その場でディスカッションして決めながら進めていく……そんなザッソウは、正解がなく、変化が激しく、不確実な時代のビジネスに立ち向かう上で適したコミュニケーションなのです。

メソッドよりもビジネスに向き合うこと

マネジメントの領域は、古くから様々な手法が考えられてきました。最近になって新しい手法やコンセプトも登場しています。そうしたときに、これは良さそうだと思って、すぐに手を出して、そのまま自組織に適用しようとしても、きっとうまくいかないでしょう。

マネジメントの問題は、ほぼすべてが適応課題です。つまりテクニックやスキル、手法だけでは解決しないことばかりなのです。それなのに手法を当てはめてうまくいくと考えている限りは、うまくいかないのです。

こうして書いてみたものの、私たちの会社ソニックガーデンでは、OKRも、OODAも使っていません。もちろん、KPI/KGIやPDCAとも言っていません。しかし、繰り返し仮説検証していくマインドはあるし、常々マネジメントとして働く人との目的のすりあわせは行っています。それが結果としたら、OKRでありOODAになっているのかもしれません。大事なことは手法ではないのです。