システム開発は「内製」から「持続する組織」へ 〜 ソフトウェアと組織を共に育てる

前回のブログで、私が取締役CTOを務める株式会社クラシコムの青木さんとの対談動画を公開しました。そこで「ネオ内製」という言葉が出てきましたが、システム開発の内製について、改めて考えてみます。内製していきたいと考える経営者の方に届けば幸いです。

ここ数年はDXの流行と共に、システム開発の内製化についても注目されてきた印象です。内製の利点や注意点に失敗談などは多くの記事があるので承知の上だとして、果たして内製で本当に実現したかったことは何だったのでしょうか。

それは「持続する組織」ではないかと、私は考えています。

ソフトウェアは育て続けるもの

本テーマで扱うのは「システム開発」ですが、クラウドで稼働することを踏まえると、インフラでさえ、すべてがソフトウェアで動かすことになるため、システム開発=ソフトウェア開発として考えます。

そして大前提として、私はソフトウェアは一度つくったら、あとは使うだけということはありえないと考えています。ハードウェアと違ってソフトウェアは、物理的な制約がないため使いながら持続的に改善ができること、扱う部品の多くはオープンソースで構成されるために継続的なアップデートが欠かせないことが特徴です。

「開発→リリース→運用保守」というのが一般的なソフトウェア開発の流れであり「開発」の部分が重要でコストをかけるべきだと認識されているかもしれませんが、動き始めてからの運用と保守には開発と同等かそれ以上にコストをかけることで、迅速かつ高品質にユーザの要望や業務の改善に応えていくことができます。

つまり、ソフトウェアを開発することも大事だけれど、それを保守し続ける組織も合わせてマネジメントしていくことが肝要であると言えます。むしろ経営の観点から言えば、ソフトウェアに合わせて組織を維持していけるようにコスト/リソースを配分することで、競争力や成長の支えとなります。

ソフトウェアは組織と共に育てるもの

エンジニアを社内に雇用する内製であれば、持続する組織が作りやすいのは確かです。逆に考えれば、内製であっても一度きりの開発だけに目を向けて、プロセスと組織を分断してしまうと、受発注のような関係性になってしまったりして、結果としてソフトウェアがもたらす価値を毀損することになります。

では、ソフトウェアを持続して保守できる組織が作れるのであれば、必ずしも雇用している必要性はないのではないか、と考えます。雇用したからといって必ずしも永続的な関係でもないので、フリーランスの方と組むのでも良いし、手前味噌ですがソニックガーデンの「納品のない受託開発」でも良いのではないでしょうか。

事業の成長に合わせて、ソフトウェアも成長させる。そして、ソフトウェアの成長に合わせて、エンジニア組織も成長させていくのです。

必ずしも同じ人間がずっと担当するというよりは、ナレッジを蓄積した組織(チーム)が維持されている状態をつくっていくイメージです。むしろ、事業およびソフトウェアのフェーズによっては、必要とされる能力が異なってくるのであれば、少しずつ人が変わっていくこともあって良いでしょう。

クラシコムで取り組んできた持続する組織

私が取締役として参画している「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムですが、事業としてはECに分類されますが、様々なチャネルでコンテンツを通じて、多くの利用者さんと繋がっていることが特徴です。先日、アプリのダウンロード数も400万を超えました。

その事業を支えるソフトウェアですが、iOS/Androidのアプリだけでなく、実は社内業務に関するシステムも、ほぼすべてスクラッチで作っています。いくつかの偶然が重なった結果ですが、すべて自社製で作ってきたことで、業務にフィットしたソフトウェアになっており、クラシコムならではの高い生産性の実現に寄与しています。

そうしたソフトウェアを、10人にも満たない社内のエンジニアチームが中心になって開発・運用してきました。ただ、すべてを社内だけで作るのではなく、外部のパートナーさんたちの力を借りています。アプリだったら、開発当初から継続して今も株式会社Sun Asteriskさんの協力を得ています。他にも、多くのパートナーさんと共に協働しています。

どれも一時的な関係でなく、持続する関係を築くことを前提としています。そうすることで、実験的な取り組みから学習もできるし、ナレッジの分断がありません。社内の人間が細部まで、すべてを掌握した状態ではありませんが、信頼関係をもって任せることができています。

こうなると、もはや内製という言葉にこだわる必要はないように思えます。本当に重要なのは内製の形態ではなく、ソフトウェアと共にナレッジと関係性を持続させる組織であり、そうなるような経営としての投資です。それが、事業成長を支える鍵となると考えています。

エンジニア募集のご案内

クラシコムではエンジニア募集しています

ソフトウェアと共に組織を育てる発想で経営しているクラシコムのテクノロジーグループですが、このたび一緒に働いてくれる方を募集しています。(今回は2024/12/10締切)

この組織では、内製かどうかにこだわっていないからこそ、様々な経歴を持った方に応募してもらいたいし、入社いただけるなら、その方の強みや特性を活かした仕事を見つけたいと考えています。クラシコムは職種に限らず、誰にとっても働きやすい環境です。エンジニア職ですが、オープンポジションに近い募集です。

「北欧、暮らしの道具店」の世界観が好きで大事にしたい方なら、大歓迎です。

https://hokuohkurashi.com/note/339805

ソニックガーデンもプログラマ募集しています

ちなみに、持続する組織の形で価値提供しているのがソニックガーデンの「納品のない受託開発」です。ソニックガーデンもエンジニア(プログラマ)募集しています。

様々なクライアントと関わりながら、徒弟制度のような厳しくも成長できる環境で、コードを書くことにこだわりを持ち、問題解決と価値創造していくエンジニアリング(プログラミング)に特化して極めたいという方は向いてます。

「いいコードと、生きていく」そんな世界観で働きたい方を歓迎します。

https://www.sonicgarden.jp/join_us

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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