ワーク+バケーション=ワーケーションの実験 〜 八丈島を満喫しながら仕事をやってみた

ワーク+バケーション=ワーケーションの実験 〜 八丈島を満喫しながら仕事をやってみた

私は今、この原稿を八丈島で書いています。八丈島は、東京から飛行機で45分ほどで行ける島で、離れてはいますが東京都の一部です。といっても温泉やマリンスポーツで有名なリゾートです。

そんなリゾートを訪れながらも仕事をするようなスタイルを最近は「ワーケーション」と呼ぶそうです。この記事では、試しにワーケーションを実践してみてわかったことについて書きました。

ワーケーションという新しいワークスタイルの登場

ワーケーションはまだ新しい概念、新しい言葉です。これは「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語で、リゾートなどにバケーションにいきながらも、そこで仕事をするという新しいワークスタイルのことです。

アメリカのビジネスパーソンから始まったワーケーションは、たとえ休暇中であっても結局は仕事のことが気になってメールチェックなどをしてしまうなら、いっそ割り切ってバケーション中に仕事をしてしまおうという発想から始まりました。

ウォールストリートジャーナルの記事『あなたもいかが?米で増える「ワーケーション」』や、沖縄に住む方の考察記事『ワーケーションを本気で考えてみる。見えてきた4つの可能性』などに詳しいです。

ワーケーションのメリットは、働くとはいってもリゾート地にいるため、仕事の時間以外はすぐに旅先でのバケーションを楽しむことができることです。普通だったらリゾートへの移動時間がかかってしまうので、それがないのが嬉しいところです。

これまでの休暇といえば、まとめて休暇をとって限られた時間の中でどれだけ詰め込んで遊ぶか、という発想だったかもしれません。それは休暇中に仕事ができない前提だからです。旅先でも仕事ができるならば、ちょっと長めに滞在して、そこで仕事と遊びを両立させることは悪くないアイデアではないでしょうか。

八丈島で4日間のワーケーションをやってみた感想

今回はマイルの期限があったので、もともと休暇を頂いて八丈島を訪れる予定でしたし、実際にダイビングにサイクリング、登山に温泉、そして島ならではの食事など、十分に堪能してきました。

そういったバケーションを楽しみつつも、普段と同じように連絡への返信、ブログや原稿の執筆、仕様の確認などの仕事もしていました。仕事をしていたとはいえ、いつもの平日での仕事時間の4分の1程度しか実質は働いていませんでした。

昼間の時間帯は予定通りのお休みの時間としてレジャーを楽しんだので、早朝と夜の時間を使って仕事の時間にあてました。あとは、スマートフォンを使ってちょっとした確認や返信などを、レジャーの合間にしていました。

そういった時間の使いかたをしたので、昼間の打ち合わせの予定などは入れていませんでしたし、チャットなどでのリアルタイムな応答はできませんでした。コミュニケーションはすべて時間差で過ごしました。

だから今回は、仕事をするためにバケーションに行ったというよりも、休みの間にやっぱり仕事をしていた、という感覚です。とはいえ前提はお休みなので、そこまで仕事をしなければいけない訳ではないので気持ちは楽です。

そんなことで、ちゃんと休みとしてリフレッシュになったのかというと、それは十分にリフレッシュになりました。4年ぶりのダイビングなど、普段の休日でも出来ないことができたので、とても良いバケーションになりました。

一方、やはり仕事がついてまわるのが嫌だという人もいると思いますが、私の場合は普段の週末も似たようなものだし、仕事をすることが好きなので、むしろ、ワーケーションという言い訳で仕事ができて良かったのです。

むしろバケーションの最中に仕事をすると、限られた時間を有効活用しようと普段よりも高いパフォーマンスが出たような気がします。平日も仕事の合間には休憩を入れてメリハリをつけるので、それが逆転した感じです。

今回のようなワーケーションの実験を実現できたのは、こうした働き方を許容できる環境と仲間の存在のおかげです。ありがとうございました。

ワーケーションを実現するための越えるべき壁

今回はたまたまワーケーションを試してみることができましたが、実現するためには幾つかのハードルを越えないといけません。

まずはリモートワークができることです。私たちの会社では普段から在宅勤務のメンバーも多くいて、私自身も週の半分はオフィスに行かずに家で仕事をしています。

客先や現地を訪れなくても良いビジネスモデルと、どこで働くかは気にしなくて良いカルチャーと、どこでも働けるようなツールと環境が、すでに整っていました。

だから、働く場所が家からリゾートに変わったところで、インターネットにつながりさえすれば働くことができたのです。ワーケーションはリモートワークの究極のカタチだと言えます。

ワーケーションの前にリモートワークの実現が大きな壁になります。特にチームでのリモートワークをする場合は、全員がセルフマネジメントできる自律的なチームであることが望ましいのですが、それは簡単なことではありません。

もう一つの大きな壁は、やはり家族の理解です。ひとりでバケーションに行くなら良いですが、家族と一緒だと仕事をする時間を確保することは難しくなるでしょうね。

そう考えるとワーケーションについては、その是非を語る前に、そもそも多くの人にとっては今はまだ現実的ではないといったところかもしれません。

ワーケーションで人生と仕事のどちらも犠牲にしない

今回、私は八丈島での休暇が先にあった上でのワーケーションだったので、時間としてはレジャーの時間をちゃんと確保して、それ以外の時間に仕事をするようにしていました。つまり比率としてはレジャーの方を多めにしたワーケーションでした。

別のケースでは、出張にあわせたワーケーションもあります。これまで日帰り出張をしていたところを、出張先でもリモートワークができれば慌てて帰る必要はありません。週末の出張なら、そのまま一泊追加して旅行にいったりすることも出来ます。

他にも私たちの会社には、年末年始などの際には、日本中が混み合う時期をずらしてピークよりも早めに実家に移動し、休暇のあとはピークが過ぎてから東京に戻るという働きかたをするメンバーもいます。これも一種のワーケーションかもしれません。

また、ワーケーションのような形で1年間ものあいだアイルランドを拠点にしてヨーロッパ中を旅しながらも、日本と仕事をしていたメンバーもいます。

時差の関係もあって、アイルランド側は早朝から午前中いっぱいを仕事とすることで日本とのワークタイムを揃えていましたが、それによって午前で仕事は終わって、午後からは自分の時間としてヨーロッパの旅をすることができたのです。

在宅勤務のメンバーだと、平日の昼間から地元の友人たちとスカッシュやカラオケを楽しみながらリモートワークをしているメンバーもいます。

エクストリーム出社」という早朝に観光やアクティビティをしてからオフィスに出社するスタイルがありますが、その出社をリモートワークに置き換えてしまえば、それもワーケーションと言えなくもないでしょう。

ワーケーションという言葉に捉われず、自由な発想で新しい働きかたを受け入れていくことで、人生と仕事のどちらかを犠牲にするのではなく、どちらも楽しむことができるようになるのではないでしょうか。

ワーケーションはアリかナシか。もたらすのは新しい価値観

普段やっている仕事も、ずっと働きっぱなしという訳にはいきません。食事の時間だけでなく適度に休憩をとってリフレッシュしながら、仕事をしていると思います。休息やリフレッシュは良い仕事をするためにも、とても大事なことです。

その休憩の時間がいつもより長めで、リフレッシュの場所がリゾートだというくらいに考えれば、ワーケーションはそんなに特殊なことではない気もしてきます。

定年退職まで一気に働き通しで、定年後に一気に遊ぶ、というよりも、若いうちから仕事と遊びを混ぜていった方が良いですよね。それをさらに推し進めた形かもしれません。

そこまで働きたくないよ、という人も、もちろんいるでしょう。だから、ワーケーションは人も職業も選ぶものだと思います。やりたい人がやれば良いだけで、押し付ける必要もないし広める必要もありません。

逆に、これまでは休暇中に仕事をするなんて馬鹿げてる、という風潮の中で、仕事が好きで天職だと思っているような人が、むしろ堂々と仕事をしたい人はしても良いんだという新しい価値観が出たことで救われる人も出てくるように思います。

休暇がとれないから仕方なくバケーション先で仕事をする、というようなネガティブな発想で考えるワーケーションではなく、好きで楽しい仕事ならバケーション先で仕事をしても良いじゃないか、という発想の転換です。

ワーケーションは新しいワークスタイルというよりも、新しい価値観を表現したものになるのかもしれません。今度はもっと長い期間、旅しながら仕事をしてみるワーケーションに挑戦してみたいと思いました。

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倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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