kintone活用の「納品のない受託開発」事例から考える「ファストSI」そして「オルタナティヴSI」の本当の価値

kintone活用の「納品のない受託開発」事例から考える「ファストSI」そして「オルタナティヴSI」の本当の価値

先月は「Cloud Days」というイベントにサイボウズさんから機会を頂いて、札幌・名古屋・博多と回って講演をしてきました。というのも「納品のない受託開発」でサイボウズさんの「kintone」を活用しているからです。

また各地で併せて「kintone Café」という勉強会で「納品のない受託開発」とコラボしたイベントも開催して頂きました。各地の皆様ありがとうございました。この記事では「納品のない受託開発」でのkintone活用について書きました。

なぜ「kintone」を採用したのか?

「納品のない受託開発」はこのブログでも何度か紹介していますが、月額定額で顧問スタイルでお客様のパートナーとして相談から実装、運用までを終わりなくサービス提供する、新しい形の受託開発のビジネスモデルです。

本来であればエンジニアを採用して内製したいけれども人材を集めるのが難しいようなケースに、顧問税理士や顧問弁護士のような形で、お客様のビジネスのサポートを行います。いわばコンサルタントとプログラマの合体です。

「納品のない受託開発」で提供するのは、お客さまの事業の成長支援であって、システムを作って納品する訳ではありません。だから、どんなプラットフォームで作って動かすのかは、私たちに任せていただいています。

また「納品のない受託開発」は月額定額で、かつ、時間で働く訳ではないため、工数をかけて沢山作ることよりも、なるべく手作りせずに効率良く作ることの方が、開発側もお客さま側も嬉しいのです。そこで「kintone」です。

これまで私たちは「Ruby」を使ってソフトウェア開発を行ってきましたが、新しい選択肢として「kintone」も活用することにしています。「kintone」を活用することで、これまで以上に早く効率的に作れるケースもあるからです。

「kintone」とは、サイボウズ社の提供する開発プラットフォームで、データベースと業務プロセス、それにコミュニケーション機能を備えたウェブアプリを簡単に作成することができます。詳しくは公式サイトをご覧ください。

どんなシステムも「kintone」でいける訳ではありません。ただし活用する場面を限定すれば、スマホ対応やログ管理など当たり前に求められる機能が最初からほぼ備わっているため、非常に素早く価値を実現することができます。

データ管理が中心の簡易な要件には「kintone」で対応し、ユーザビリティや特殊なデータ構造を求められる新規事業には、これまで通り「Ruby」でフルスクラッチで開発するという使い分けでやっています。

「納品のないkintone開発」の事例

そしてタイミングよく、そのkintoneを活用した「納品のない受託開発」の事例を発表することが出来ました。お客さまは「日本ブラインドサッカー協会」さまで、研修事業で求められたシステム化をkintoneを活用して実現しました。

視覚障がい者と健常者がサッカーを通じて混ざりあう社会を実現する
「こんなことまで聞く?」顧客も驚く開発者がビジョンまで聞く理由

今回、日本ブラインドサッカー協会さまで実現したのは、研修事業で使われるアンケートの入力と結果管理、そして紐付く顧客情報の管理です。事務局側で必要な機能は完全に「kintone」で実現できる範疇でした。

アンケート入力の部分だけは大量のユーザからの入力を受け付ける必要があるため、その部分だけを独自に画面を開発しました。ただ事例を読むとわかりますが、お客さまは何を使って作られているか気にされていません。

「納品のない受託開発」の場合、求められるポイントは個々の技術要素ではないからです。「納品のない受託開発」でお客さまに感じていただいているポイントは以下の4つだと私たちは考えています。

  • 要件定義をしなくてもよい
  • 仕様変更はいつでも出来る
  • 直接エンジニアに相談できる
  • 作らない提案をしてもらえる

それぞれのポイントについて、日本ブラインドサッカー協会さまの事例をもとに「kintone Café」でソニックガーデン副社長がプレゼンしてきた資料が以下です。

「ファストSI」の対極にある「納品のない受託開発」

ここ最近のシステム開発業界では「オルタナティヴSI」という言葉が注目されています。これまでの従来型のシステムインテグレーションのビジネスに変わって「新しいSI」を指向する企業が台頭してきていると言われています。

私たちが提唱する「納品のない受託開発」もその一つとして挙げていただくことも多いです。また「kintone」を活用したSIをされる企業も同時に「オルタナティヴSI」として登場されています。新しい流れがきています。

「kintone」でよく言われているキーワードは「ファストSI」という言葉です。これまで以上に良い品質のものを安く早く提供する「ファストファッション」のシステムインテグレーション版という位置付けです。

「ファストSI」に近い領域として「ハイスピードSI」や「超高速開発」などのムーブメントがあります。どれも「速さ」を価値にしています。「納品のない受託開発」もそこに並べてもらうことも多いですが、実は立ち位置が大きく違います。

「納品のない受託開発」で最も大事にしているのは、お客さまのパートナーとしてビジョンを実現するためにずっと寄り添っていくことです。本当に必要なものを一緒に考えて、作ったものを直しながら長く使ってもらうことです。

サッとシステムが欲しいお客さまからすると、とってもめんどくさいのが「納品のない受託開発」です。ぜんぜんファストでもハイスピードでもなく、なぜ必要なのか?から始まります。そのスタイルは言うなれば「スローSI」です。

「ファストSI」も「スローSI」も、どちらが良いかではなく、お客さまにとって選択肢が出てきたことに価値があります。従来型のシステム開発だけでなく、新しい選択肢が出てきたことが「オルタナティヴSI」の本当の価値なのです。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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