マネジメントが学べるサッカー漫画まとめ

マネジメントが学べるサッカー漫画まとめ

仕事におけるチームのマネジメントをしていて、サッカーの監督がとる戦術が参考になるな、と昔から感じていた。

サッカーの世界で有名な「トータルフットボール」すなわち「ポジションが流動的で、且つ全員攻撃全員守備」(by Wikipedia)という戦術は、各々が自分で考えて働かないと成果の出ないアジャイル開発プロジェクトのマネジメントで参考になった。

サッカーを題材にした漫画はいくつもあるが、その中でもマネジメントをする立場の人にとって参考になるのは、優れた監督が登場する漫画だ。今回の記事では、マネジメントの参考になると感じた私の愛読する3つのサッカー漫画を紹介しよう。

アオアシ

「アオアシ」は、名門サッカークラブの強豪ユースに入団した主人公が、監督やコーチのもとで、ライバルでもある同年代の仲間たちと切磋琢磨しながら、サッカー選手として成長していく物語だ。現在もまだ連載中。

優れた才能を秘めながらも、サッカーの戦術理解や基礎的なスキルが足りないために苦悩する主人公と、その隠れた才能を発掘し、様々な試練やチャンスを与えながら育てていく指導者である監督。この、もう一人の主人公とも言える監督、そしてコーチたちの育成方法が良い。

この指導者の育て方は、徹底的に自分で考えさせることにこだわっている。フィジカルな成長よりも、サッカー選手としての頭の使い方を身につけさせる。それも、教えるのではなく、自分で気づくような機会を与えるだけに留まる。

なぜ、こんなことをするのか、なぜ、こんな課題が与えられるのか、そこに込められた意図を主人公は自分で見つけなければいけない。主人公は、一つ一つ、試練を乗り越えていくことで、自分の力にして成長していく。身体の成長よりも、思考の変化を知ることができるのが、この漫画の面白さだ。

「正解をさっさと教えるなんて、指導者の怠慢さ。考えさせることにーー意義がある。」

フットボールネーション

「フットボールネーション」は、「足のきれいな選手」ばかりを集めたアマチュアチームが、独自のポリシーをもった監督の元、斬新な指導法を駆使して天皇杯を勝ち上がっていくというストーリーだ。こちらも連載中。

「足のきれいな選手」を集める理由は、足の筋肉の付き方と使い方にポイントがあり、太腿のもも前の筋肉はブレーキ筋、もも裏はアクセル筋であり、足がムキムキの選手では動き出しが遅く、すっきりした選手には勝てない。と、監督は語り、そこからチームづくりが始まっている。

このように、本作品ではサッカーとそれにまつわるウンチクがふんだんに登場する。ウンチクとストーリー、試合が三等分されているような構成だ。この監督の語る理論の正しさはわからないが、少なくとも非常に合理的な考え方をもとにしたチームづくり、指導方法は仕事のマネジメントにも応用できる。

私たちの会社では、プログラマの採用では「TIPS」を見ているという記事を以前に書いたが、このTIPSという言葉は、この作品から学んだものだ。アオアシにも共通するが、サッカーで頭を使って戦い勝つ点が非常に面白いのだ。

「良い文章を読んだことのない者が決して良い文章を書けないようにーー良いサッカーをじっくり見たことのない選手が、良いサッカーを実行できるとは思えないんだ。」

ジャイアントキリング

「ジャイアントキリング」は、上記2作品よりも非常に有名な作品となったので、知っている人も多いだろう。Jリーグの弱小チームが、そのチーム出身で日本代表にまでなった主人公を監督を迎えて、格上のチームをジャイアントキリング(大物食い)して、勝利を重ねていく群像劇だ。

それなりのポテンシャルはあっても、毎年残留争いをしてきたチームが格上のチームに勝っていくために、選手を発掘したり育成してチーム力を高め、勝つための戦略と戦術を駆使し、クラブチームの首脳陣やスカウト、地元のサポーターを巻き込んでいく。そうして、勝利を重ねて、チームは強くなっていくのだ。

この漫画には、主人公である監督に抜擢されることで大きく成長する若手選手が登場し、その彼も主人公のような扱いに近いが、それでも本作品は監督目線が中心なので、そこにはマネジメントに関わる人にとって、共感する点も多く、新しく気付きを得るシーンも多い。

何より、元々が優れたプレイヤーで、選手たちの気持ちがわかりつつ、監督という仕事を全うする主人公の姿に、今はマネージャや経営者をしている人にとっては感じ入る部分も少なくないだろう。ぜひ30巻まで読んでみてほしい。そして、まだ連載中でいま時点で43巻まで出ている。

「何でも思いどおりにいって何が楽しいよ 俺が楽しいのは俺の頭ん中より、スゲーことが起こった時だよ」

そんな、マネージャ視点からのチーム育成、チームビルディングとして、ジャイアントキリングを分析した本が、『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則 『ジャイアントキリング』の流儀』だ。こちらも、ジャイアントキリングを読んで面白いと感じたマネージャにとっては、楽しみつつ学べる本になっている。

おわりに

サッカーというスポーツは、試合が始まると、監督がゆっくりと考えてピッチの選手に細かな指示を出すことはできない。試合に望む前の育成や練習、スカウティングなどの戦略が重要で、その戦略を活かす戦術を立てることが監督の主な仕事。試合が始まれば選手たちが自分たち自身で判断をしていくしかない。

そんなところは、実は現代のビジネスシーンに重なる部分が多いのではないだろうか。昔ながらの毎日同じことを繰り返すだけの仕事や、上司に言われたことだけをする仕事は減り、指示命令の難しいクリエイティブな仕事や、各々が現場で考えて判断するスピードの求められる仕事が増えてきている。

共通点は、プレイヤーたちがモチベーティブに自律的に動くようなチームを作ることこそがマネジメントだということだ。そんなマネジメントを求められるチームのマネージャにとって、この3作品の漫画からは学ぶことも多いのではないだろうか。

(まぁ小難しく書きましたが、単純に面白いからオススメの漫画です。)

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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