ここ数年で、クラウドのプラットフォームが広まることで、従来のSIビジネスの市場が影響を受けるということが起きてます。
そこで多くの大手SIerが採った戦略は、自社でIaaSのようなクラウド環境を作るといったものです。自社が持つデータセンターに仮想化のエッセンスを加えて「クラウド」の冠を付けて売るというもので、あまり目新しさはありません。
今、それでは付加価値が薄いということで、PaaSに手を出そうとしているところもあるかと思います。ゼロから作って徐々に上にのせていくという戦略です。
こういう戦略は、非常にお金を持った大手企業で、かつエンジニアが採りたい戦略に感じます。
なぜならば、これはGAEやAWSなどのプラットフォームが日本上陸したときに、その中で使われている技術を勉強して、自分たちでゼロから同じレイヤのプラットフォームを作ろうという発想ですよね。
おそらく技術的には可能だし、技術者としてのプライドもあるのかもしれませんが、正直、その領域でこれから戦おうとしても追いつきこそすれ、追い抜かすことは難しいのではないでしょうか。WindowsやMacOSXを見たからといって、各社が自社製のOSを作ろうなんて思わないはずです。
ここは思い切って、すでにあるプラットフォームの上でどう戦うかを考えた方が良いように思います。黒船を作るのではなく、操船技術をまずは磨くのです。
お金や資産を持たないスタートアップにとっては、そもそも、そんなゼロから作る戦略はとれるはずもなく、すでにあるプラットフォームにうまく乗れるように考えます。そして、その土壌をベースに、さらなるプラットフォームを作ろうとする訳で、そうするからこそベンチャーが大きくなれるチャンスがある訳です。
ゼロから作って同じレイヤのものを作ろうとしても、先行者には勝てないですし、品質で戦おうとしてもユーザの多い大手には体力勝負で勝てません。
しかし、既にプラットフォームがあるのであれば、その上にプラットフォームを作ろうと狙えば、勝ち目は産まれます。
大手になった企業は「イノベーションのジレンマ」に囚われがちですし、「破壊的イノベーション」というのは最初は品質が低くても市場には受け入れられます。米国で起きてる企業の世代交替はこうして起きているように思いますし、あちらの人たちは乗っかるのが上手な気がします。
まじめで優秀なエンジニアほど勉強家だったりするので、新しい技術などがあれば、自分のものにしようと勉強します。そして、最近の新しい技術はクラウドの企業から産まれていることが多いです。
勉強すること、それ自体はとても大事なことなのですが、中の技術を知れば知るほど、自分たちで同じようなものを作ってみたくなってしまう症候群にかかってしまうのかもしれません。私もエンジニアだったので、その気持ちはとてもわかります。
そういえば、Javaでサーバサイドを作り始めた頃に、SIerが各社でオレオレフレームワークを作っていましたよね。デジャブを感じます。