在宅勤務でも仲間と顔を合わせて働きたい 〜 「物理出社」から「論理出社」へ

在宅勤務でも仲間と顔を合わせて働きたい 〜 「物理出社」から「論理出社」へ

在宅勤務のメリットは、通勤にかかる時間とストレスの軽減や、居住地に縛られずに勤務先を選べることなどがありますが、一方で、孤独感であったり、新しいアイデアを生み出すことができない、というような批判も目にします。

この記事では、私たちがやってきたリモートワークの経験から、在宅勤務で起こりうるとされる問題の考察と、在宅勤務であってもチームの仲間と共に顔を合わせて意見交換し、ワイワイガヤガヤと働くためのポイントを書きました。

「Face to Face」が意思の疎通にはベストな手段である

在宅勤務をしていると「Face to Face」で話をする機会がないため、やっぱりオフィスで働く方が良いという意見があります。確かに「Face to Face」が最も意思疎通しやすい手段ということに関しては異論はありません。

しかし、だからといって在宅勤務はダメだというのは短絡的です。「Face to Face」とは文字どおり顔と顔を合わせてコミュニケーションすることですが、リモートワークであってもテレビ会議を使って実現できるからです。

私たちの会社のメンバーの多くは在宅勤務をしていますが、「Face to Face」でのコミュニケーションを大事にしていて、仕事中にちょっと相談に乗ってほしいことや、仕様で不明な点などあれば、すぐにテレビ会議を行います。

実際に同じ場所にいなくて「Face to Face」と言えるのか、同じ密度でコミュニケーションができるのか、という疑問もあるかと思いますが、私たちの経験で言えば、慣れてしまえば、まったく問題ないと感じています。

手に触れることや肩を組むことは出来ませんが、それって本当に必要なことでしょうか。必ずしも「Face to Face」を理由にして、盲目的にオフィスに人を集める必要などないと私は考えています。

オフィスにいればいつでも気軽に声をかけることができる

「Face to Face」の良さは、そのコミュニケーションの密度もありますが、何よりオフィスなら声をかけて話を始められることにあるのではないでしょうか。仲間に気軽に声をかけられることの大事さについても異論はありません。

在宅勤務で多くの人がイメージするのは、遠く離れたところから発注や指示を受けて、一人で作業して成果を提出するフリーランスのような働き方です。確かにそれでは気軽に声をかけて話をするようなイメージはありません。

ただし、これも本当に在宅勤務の問題でしょうか。オフィスか在宅かではなく、チームとしての仕事の仕方に起因する問題です。チーム内にもかかわらず、請負のように仕事をしていたなら、オフィスにいても声はかけにくいはずです。

まずは、仕事とは仲間と相談しながらチームとして成果を出していくようにマネジメントをすべきで、いつでも気軽に声をかけられるようにするためのポイントは、チームの全員が同じ時間帯で働くということです。

時差があると気軽な相談はできなくなってしまうからです。私たちの会社では、コアタイムなどのルールはありませんが、各自がお互いに相談しあえるようにすることを考えて、自主的に同じ時間帯で働くようにしています。

同僚とのなにげない会話がきっかけになりひらめきを生む

またオフィス至上主義の意見としてあるのは、通路やロビーフロア、休憩コーナーあたりで同僚と会ったときのなにげない会話がきっかけになって、新しいヒラメキを得られるもので、在宅勤務にはそれがない、というものです。

同僚との雑談にこそ新しいアイデアが隠されているという意見には本当に同意します。その通りでしょう。仕事の打ち合わせは、その担当している仕事の話しかできないし、新しいアイデアが出るのはリラックスしている時です。

そうした偶然に生まれる会話はさすがに在宅勤務では難しいことのように思えます。確かに物理的に同僚とばったり出会うというシチュエーションは難しいですが、なにげない会話をすることは在宅勤務でも可能です。

私たちの会社では、仕事をするときは誰もが必ず「Remotty」という自作のコミュニケーションツールを起動してオンラインになっているようにしています。必要な時だけ繋ぐのではなくて、ずっとブラウザのタブを開いておくのです。

せっかく同じ時間帯に働くので、働く仲間の様子が見える方が安心できるし、ずっと繋がっている同士なら、決められた打ち合わせの時間以外でも話をするきっかけはいくらでもあるものです。そうして生まれたアイデアもたくさんあります。

オフィスに行く物理出社から、Remottyに入る論理出社へ

今では私たちにとって「Remotty」はオフィスのようなものになっています。これまでの働きかたがオフィスに出社することイコール働いていることだったように、Remottyを使っていることが働いていることになったのです。

だから、これまでと同じように朝一番にRemottyにログインしたら「おはよう」の挨拶から始まって、仕事中は用はなくても開いたままにして声を掛け合えるようにして、仕事が終わる時は「お疲れ様」と言って終わるようにしています。

特にRemottyでは同僚たちの働く様子が見えるので、一人きりで働いているのではないと感じることができることにもオフィスらしさがあります。働く様子をずっと写されるのは抵抗があるかもしれませんが、オフィスなら普通のことです。

テレビ会議もボタンひとつで起動できるので、オフィスにいるように気軽に「Face to Face」の話が始まります。カメラで写されるしテレビ会議もいつでも始まるので、在宅勤務といえど、ちゃんと顔を洗って着替えてなければいけません。

まるでオフィスに行くようにRemottyを使っている私たちの会社では、データベースの論理削除と物理削除の言葉を借りて、オフィスに行くことを「物理出社」と呼んで、Remottyに入ることを「論理出社」と呼んでいます。

チームで働く限りは完全に自由にはなれないが仲間とは働ける

論理出社をする働きかたができれば、在宅勤務で起こりうるとされる問題の多くを解決することができます。しかし、一方で同じ時間帯に働いたり、仕事中はずっとお互いの様子を見えるようにするなど、完全な自由さは無くなります。

しかし、そこはトレードオフです。仲間と一緒に働きたいのなら、ただ自分が成果さえ出せば良いという考え方ではうまくいきません。仲間と助け合い、チームで成果を出したいなら、ある程度の縛りを受け入れることが必要なのです。

そこを受け入れさえすれば、在宅勤務でもオフィスで働くように仲間と顔を合わせて意見交換したり、ワイワイガヤガヤと働くことができます。居住地に縛られることなく、働きたい会社を選ぶことができるのです。

人間は社会の中で生きる動物で、ずっと一人きりでいると辛くなるし、やはり誰かと一緒に協働していくことに楽しみを覚えます。だからと言って在宅勤務を諦めることなく出来るようにするのがリモートワークの本当の価値です。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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