やりたいことがうまくいかないのは、頭の中に成功があるからだ

会社を15年やってきて、振り返ってわかったことがある。自分がやりたいと思って始めたことは、だいたいうまくいかない。

うまくいったのは、やむにやまれず始めたことばかりだった。

起業したのも、起業家になりたかったからではない。前職で、事業を続けるには買い取るしかない状況になって独立した。オフィスをなくしたのも、地方の社員が増えて、そうするしかなかったからだ。

一方で、余裕が出てきたからと自分で考えて始めたことは、案外うまくいかずに、すっと終わっている。だから、やりたいことがあっても、二の足を踏むようになっていた。

ストレングスファインダーによると、私の強みのひとつは「戦略性」だそうだ。頭の中で先々を読んで、つなげて考えるのは得意なはずなのに、考えて始めたことほど、うまくいかない。

なぜ、自分で考えたことはうまくいかないのか。

この相談を、ザッソウラジオの収録でしてみた。エフェクチュエーションをテーマにした回だ。そこで仲山さんに言われた一言に、目から鱗が落ちた。

「自分がやりたいことは、コーゼーションになりがち」

コーゼーションとは、目標を先に決めて、逆算で計画する考え方。エフェクチュエーションの対になる概念だ。

そう、頭の中で考えた時点で、成功のイメージを先に作ってしまっているのだ。計画を立てて、思った通りにいかないと「失敗した」と認定して、やめてしまう。

うまくいかないから失敗するのではない。頭の中の成功と比べるから、失敗になるのだ。戦略性が強みというのも裏目に出て、つい成功の形まで作り込んでしまう。だが、現実は頭の中で考えた通りにはいかない。

やむにやまれず始めたことは、そもそも成功のイメージがない。ゴールは「なんとかする」だけ。抽象的だから、状況に合わせて形を変えられる。失敗と認定する瞬間が来ないまま、なんとかなるまで続けられる。

もちろん、流されていればいいという話ではない。引き受けたからには、うまくいくように必死で頑張る。そこは変わらない。

プログラミングの世界に「YAGNI」という原則がある。You Aren't Gonna Need It、そんなの要らないよ、の略だ。先を見越して作った機能はたいてい使われない。必要になってから作ればいい、という教えだ。

頭の中の予測はあてにならない。目の前の必要から作ったものだけが残る。エフェクチュエーションで大事なことは、YAGNIだったのだ。

だとすれば、手放すべきは、やりたいことではなく、頭の中で先に作ってしまう成功のイメージだ。やりたいことは、諦めなくてもいいのかもしれない。

この話をしたザッソウラジオのエフェクチュエーション回は、9月から配信されます。ゲストは『エフェクチュエーション』の著者の一人・神戸大学の吉田満梨さんと、デザイナーの青木亮作さんです。

倉貫 義人
倉貫 義人
ソニックガーデン 創業者
クラシコム 取締役CTO

「納品のない受託開発」の実践者。著書多数。心はプログラマ、仕事は経営者。

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