建築家の堀部安嗣さんと対談しました:建築とソフトウェア、時間をかけて効いてくるもの
9月28日の夜、青山ブックセンター本店で、建築家の堀部安嗣さんと対談しました。新刊『自分と社会をいい感じにする 仕事技芸論』(ミシマ社)の刊行記念で、テーマは「仕事を『道』として深めるには?」。建築とソフトウェア開発、それぞれの仕事から話しました。
堀部さんとは、開演の15分前が初対面でした。楽屋で、私たちは施工会社ではなく、設計事務所の側だと思っている、という話をしました。ソフトウェアは組み立てをコンピュータがしてくれるので、設計した時点でほぼ出来上がるからです。堀部さんは、それはそうでしょうね、とすぐにわかってくださいました。業界の中でもなかなか伝わらないところなので、嬉しかったです。
印象に残ったのは、設計料の話です。設計料は工事費の何割かで決まることが多く、大きく作るほど増えます。それでも堀部さんは、お客さんにちょうどいい大きさを提案し、設計料が減ることをもったいないと感じたことはないそうです。住む人とは10年、20年と付き合っていくので、住みやすく、手入れのしやすい家を建てたい、と。
ある家のお客さんに、住んで1、2年してから住み心地を尋ねたら、住み心地よりも、いい人間関係ができたことのほうが大きい、と言われたそうです。家を建てたというより、人とのつながりを手に入れた。
私たちが納品をなくしたのも、同じところにつながっています。納品して終わりではなく、お客さんとずっと付き合っていく。だから、手入れのしやすいソフトウェアを最初から作ります。その先で、いい関係ができたと言ってもらえたら嬉しい。
後半は、AIの話になりました。AIは見ることや聞くことはできても、木の香りや、杉の床の足触りまではわからない。むしろAIが広まるほど、体を持った人間にできることがはっきりしてくる、というのが堀部さんの見立てでした。
堀部さんにも、修行した師匠がいます。修行していたころに言われたことの意味は、20年、30年とたつうちに、だんだんわかってきたそうです。師弟関係は、効いてくるのが遅い。いまは、すぐに役に立つことにとらわれすぎている、という話もありました。
私の会社では、親方と弟子という関係で人を育てています。成果が出るまでに時間がかかることは、わかっているつもりでした。それでも、30年という長さで語られると、この関係にはまだずっと先があるのだと思わされます。
会場を用意してくださった青山ブックセンター本店のみなさん、ミシマ社のみなさん、そして堀部さん、ありがとうございました。
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