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和智右桂さんと対談しました:アーキテクトを置かない開発と、共通の言葉で育てる徒弟制度

和智右桂さんと対談しました:アーキテクトを置かない開発と、共通の言葉で育てる徒弟制度

和智右桂さんと対談しました。和智さんが主宰するコミュニティ「MoAL」のサイトに、前編・後編の二本立てで掲載されています。

MoALのテーマは「モダン・アーキテクチャ」で、ソフトウェアに限らず、組織やプロセスまで含めた構造や仕組みを指しているそうです。対談もそこから始まりました。いまの環境で開発や組織を運営するなら、何を前提にすべきか、という問いかけです。

前編は「受託脳」から「提案脳」へ。構成は以下の通りです。

  • 現在のモダンは5年後のレガシー 成功を捨ててでも変化を選ぶ組織のあり方
  • エンジニアリングとビジネスの断絶を越えて 分業と納品のないソフトウェア開発
  • アーキテクトは不要なのか 「仕組みの中で動く人」と「仕組みを考える人」

後編は、技芸としてのソフトウェア開発と徒弟制度です。

  • 「守・破・離」で学ぶ育成ステップ ソニックガーデンの徒弟制度
  • 文化資本:ソニックガーデンの若手育成を支える共通言語
  • 主体性こそが仕事を面白くし、キャリアを切り拓く

専任のアーキテクトを置くと、作って終わりになる

変化に耐えるプラットフォームを作り込み、後から別の人が変更や追加をしやすい構造を用意しておく。それを専門に担う人を「アーキテクト」と呼ぶのなら、私たちソニックガーデンには要りません。そういう職種を置くと、作り終えたら手を離す、納品して終わりの発想に戻ってしまうからです。

和智さんの見方は少し違っていて、プログラマとアーキテクトの違いは職種ではなく「その場での頭の使い方の違い」ではないか、というものでした。仕組みを考えるほうに寄ればアーキテクトで、作るほうに寄ればプログラマ。

設計そのものを否定しているわけではありません。必要ならクラウドも選ぶし、アーキテクチャも設計します。ただ、一度決めたら終わりにはしない。インフラもフレームワークも言語も、事業に合わせて作り変え続けます。そうしないと、ソフトウェアと経営が一体になりません。私たちが自分たちをプログラマと呼ぶのも、作り変え続けるところまで、作る人が担うからです。

共通の言葉が、教える側と学ぶ側を助けている

後編は、若手の育成についてです。入社した若手は弟子として親方につき、いったん自己流を手放して、親方と同じことができるところを目指します。エディタまで親方に揃えてもらうこともあります。いいコードを書けるようになったら設計へ、そこから顧客との対話へと、担う範囲を少しずつ外側へ広げていく。私たちの徒弟制度は、守・破・離の考え方で運用しています。

和智さんは、アーキテクトとして身につけてきたことを分解して人に教える難しさを感じている、と話していました。一流のプレイヤーでも、自分のしていることを自覚しているとは限らない。そのうえで、「受託脳」「提案脳」「タスクばらし」といった言葉が社内の共通言語になっている点を挙げていました。言葉があれば、教える側も学ぶ側も、同じものを指して話せます。

私たちは、こうした共通の言葉や考え方、一つひとつのプラクティスの積み重ねを文化資本と呼んでいます。もとは社会学者のピエール・ブルデューが提唱した概念で、家庭や周囲の文化のなかで育つうちに、知識や言葉、ふるまいが自然と身につく、という考え方だとされています。会社でも同じことが起きるなら、その文化のなかで育った若手は、教え込まなくても自然とそちらへ育っていくのではないか。そう考えています。

提案とは、頼まれていないことを自分から始めること

ソフトウェア開発を技芸と捉えるなら、上達の過程が欠かせません。そして、主体性がなければ技芸は上達しない。趣味は主体的にやるから上達して、上達すればもっと面白くなる。仕事も同じで、頼まれていないことまで自分から始めたら、それはもう提案です。私たちが創業から言ってきた「遊ぶように働く」も、同じことを指しています。

主体性を分解すると使命感に近いのではないか、と和智さんが言いました。私の場合、思い当たるのは2000年頃にXPのユーザーグループやアジャイルを広める活動をしていた頃のことです。誰にも頼まれていないし、会社の評価にもならない、一円にもならない。それでも「これを広めなければ」という謎の使命感がありました。いまなら、いいソフトウェアを作ること、「納品のない受託開発」を広めること、いいプログラマを育てることが、それにあたります。

言われたことだけをきちんとやる、受託脳で済む仕事なら、もうAIでいい。私が一緒に働きたいのは、抱えている問題を一緒に考えて動き、責任まで負ってくれる人です。それはパートナーで、AIにはできません。私たちも、顧客にとってそういう存在でありたいと考えています。

後編の最後では、新刊『自分と社会をいい感じにする 仕事技芸論』も紹介させていただきました。

声をかけてくださった和智さん、取材・執筆をしてくださった鍋島理人さん、ありがとうございました。

「受託脳」から「提案脳」へ~分業と納品のない開発を掲げる倉貫義人氏の挑戦(前編)
https://www.moal.jp/contents/260917/

技芸としてのソフトウェア開発と徒弟制度~ソニックガーデン流人材育成術(後編)
https://www.moal.jp/contents/20260928/

倉貫 義人
倉貫 義人
ソニックガーデン 創業者
クラシコム 取締役CTO

「納品のない受託開発」の実践者。著書多数。心はプログラマ、仕事は経営者。

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