2011年に「納品のない受託開発」を始めてから、これまで非常に沢山のお客様からご相談頂きました。本当にありがとうございます。この2年間でお客さまと一緒に実現させて頂いた事例の中から、3つの事例を紹介したいと思います。
「納品のない受託開発」では、一般的なプロジェクトのように終わりのある関係ではないので、どこまでやって事例と言うのも難しいところで、今回は既にローンチされているサービスから選びました。
この記事では、「納品のない受託開発」の3つの事例を紹介することと、そこから見えて来たニーズについて書きました。
目次
子育てシェアサービス ー 株式会社AsMama様
AsMama様は、子育てを助け合い、頼りあうことのできる地域ネットワークを実現する「子育てシェアサービス」( http://asmama.jp/ )を提供されています。
長い期間、信頼できるお抱えのエンジニアがいない状態が続き、システムに関する相談や対応ができず困ってらっしゃいました。そこで、ソニックガーデンは、バーチャルCTO(*1)という形で、AsMama様の期待されるビジネス案をシステム設計に落とし込むところから、プログラムの開発を行い、日々の運用までの全てを担当させて頂いています。
テレビメディアの取材によりホームページの負荷対策が必要な際などは、ソニックガーデンのインフラを統括するCIOが登場して対応させて頂くなど、担当するプログラマをチーム全体でバックアップするソニックガーデンならではの対応をさせて頂いたこともあります。
*1 – CTO:チーフテクニカルオフィサーの略。スタートアップにおいては、開発から運用までの全てを担当することが多い。
お客さまの声
子育てを頼り合えるプラットフォームを創りたい、と創業当初から思っていましたがその実現には市場とターゲットニーズに応じたシステムを継続的に開発し続けられる環境が必要でした。しかし私たちは開発に関する専門知識がないため、志を同じくする優秀なエンジニアをどう見つけていいかがわかりませんでした。
ソニックガーデン様との出会いにより、自分たちがかなえたかったことがシステム化できるようになっただけでなく、運用や改善の在り方まですべて示唆頂けるので、今では目的や問題点を共有し合えるCTOが外部にいる感覚です。
※AsMama様の事例は、BCNの取材記事をウェブからも見ることができます。・・・<THE決断!ユーザーのIT導入プロセスを追う>子育て支援のシステムを構築 「仕様書不要」でスタートアップ企業が容易に導入
OUR FUTURES ー 株式会社フューチャーセッションズ様
フューチャーセッションズ様は、さまざまな複雑な問題を解決するために、多様な人々との創造的な対話を通して、未来に向けてのアクションを生み出すための場づくり「フューチャーセッション」を広めるためのプラットフォーム「OUR FUTURES」( https://www.ourfutures.net/ )を提供されています。
フューチャーセッションズ様が起業を決めて、法人登記をする以前から、ソニックガーデンを信頼してご相談を頂きました。起業後すぐに開催したイベント「フューチャーセッション・ウィーク 2012」のサービスの立ち上げからお手伝いさせて頂きました。それ以来、フューチャーセッションズ様のお抱えプログラマとして、エンジニアリングの全てを担当させて頂いています。
フューチャーセッションズ様が考える世界観を理解し、そのビジネスにおける付加価値となるよう、ウェブサービスの実現方法からご提案させて頂いています。最大限の費用対効果を出すためにも、余計な機能であれば作らない提案をさせて頂くこともあります。
お客さまの声
自分たちの夢・想いを共有し、そこに向けたサービスの実現方法を共創してくれる相手は、ソニックガーデン以外にないと直感していましたし、今まさにそれを実感しています。
一人ひとりの未来を支援し、つなげる、フューチャーセッション・プラットフォームをさらに良いものにしていくために、これからもよろしくお願いします!
ワークコラボレーション・レビュー ー 株式会社スコラ・コンサルト
スコラ・コンサルト様は、企業内の風土改革を実現するための支援をされている会社です。「ワークコラボレーション・レビュー」( http://www.scholar.co.jp/workcollaboration/ )は、「個と個の関係性」と「一緒に仕事をするために必要な関係性」の状態を見える化することで、日々の仕事のしかたをふり返って考える機会を提供し、ワークコラボレーションのレベルを高めていくためのツールです。
スコラ・コンサルト様とソニックガーデンは、企業内の風土改革や組織活性化に関して、近いビジョンを持って協業関係にもありました。スコラ・コンサルト様が、その事業における付加価値のためのITを活用したツールの提供という新しいチャレンジを行う際に、ソニックガーデンにご相談頂き、最初の企画段階からお手伝いさせて頂いています。
情報システムの部署をもたないスコラ・コンサルト様にとってソニックガーデンが、ITに関することならば、いつでも気軽にご相談頂けるような、そんな関係をご提供できているとしたら、私たちも幸いです。
お客さまの声
ワークコラボレーション・レビューの開発は、スコラ・コンサルトにとって新しいビジネスモデルを構築するための大きなトライでした。成功する確信はありましたが、もちろん確証はありません。そんな中での開発着手には、大きなリスクが伴います。当然、誰に開発を依頼するのかは大きな決断となりました。
私たちが、ソニックガーデンさんを選んだ理由は1つです。
それは私たちが開発を通じて実現したいと願う世界観に対する深い理解と共感力です。実際、今回の開発も、ソニックガーデンさんに「何をつくるかではなく、何の為につくるのか?」と問われるところから始まりました。リスクのある開発であるからこそ、私たちが実現したい世界を深く理解し共感してくれる会社にお願いしたいと思うもの。
当たり前だけど、これこそ唯一無二の価値だと思います。
スタートアップに共通するニーズ
私たちソニックガーデンのお客様の多くは、スタートアップの皆様です。それは少人数で起業したベンチャー企業としてのスタートアップもありますし、既存企業の中での新しい事業の取り組みとしてのスタートアップもあります。なので少し広義のスタートアップを考えています。そして私たちが「納品のない受託開発」で支援させて頂くのは、エンジニアが不在のスタートアップです。
スタートアップの皆さんにとって、そのソフトウェア開発に対するニーズとは、以下の4点に集約されます。
・スピード重視 ・・・初期ユーザを獲得するため早期に市場に出したい
・フィードバック ・・・開始後に出るニーズや得た経験を反映していきたい
・スモールスタート ・・・事業初期にかかる初期投資額はなるべく下げたい
・スケールアウト ・・・事業が軌道に乗るに従いKPIに応じた拡大をしたい
このニーズを満たすためには、従来の開発の一括請負のような契約だと、開発会社にとってはあまり旨味がありません。そのため、引き受けてくれるところは少ないでしょう。本来であれば内製して自分たちで開発するのがベストな選択になるはずですが、そうは簡単にはいきません。
ビジネスを立ち上げたり、社会を変えたいという思いを持つ人が必ずしもエンジニアとは限りません。むしろ、そうでない場合の方が多いかもしれません。ビジネスやマーケティング、資金調達はできるけれども、エンジニアが不在で困っているようなスタートアップは多くいらっしゃるのではないでしょうか。
エンジニアでない経営者にとって、エンジニアの腕の善し悪しや、その仕事ぶりの評価をすることは非常に難しいことだと思います。ある意味、信じて任せるしかない、ということになります。そうであるときに、フリーランスのエンジニアに頼んだとたら、いついなくなるかわからないのは不安だし、その人をフルタイムで契約するとしても、おそらく得意不得意の分野があるはずで、一人で足りなくなってしまう可能性もあります。
そして、それは正社員でも同じ課題があります。そもそも、社員としてもエンジニアの応募が少ないというのも実情でしょうし、良いエンジニアかどうかを見極めて採用することが困難です。どれだけ履歴書を読んだとしても、どれだけ話を聞いても、良いエンジニアかどうか確実にはわかりません。
かといって、システム開発を提供する開発会社に頼もうとすると、ほとんどの所で、要件定義のような「何を作るか」ということを最初に決めようとするはずで、それは先ほどのスタートアップのニーズとはあいません。そもそもスタートアップで要件定義が出来るとしたら、誰もが大儲けできてしまうでしょう。そして、仮に要件定義できたとしても、バッファの積まれた高い見積りが出てくるはずです。
試行錯誤しながら開発をしていきたいスタートアップと、従来の開発会社でのやり方は向いていないのです。従来の開発会社が目指すのは、どうしても「ソフトウェアの完成」になってしまいます。それを納めることで対価を得ることができるビジネスモデルだからです。そのためには、要件を確定させる必要がありますし、リリースすることが目標になってしまいます。
私たちの「納品のない受託開発」では、ソフトウェアの完成だけを目指すことはありません。月額定額でサービス提供するため、作り上げたからといって対価をもらえる訳ではありません。月額定額の「納品のない受託開発」にとって大事なことは、私たちのお客様に利益を出し続けてもらって、そこから私たちに投資し続けて頂くことです。そうすると、私たちにとってもよけいな営業コストがかからないため嬉しいことになります。
「納品のない受託開発」のビジネスモデルでは、お客様と私たちの利点とリスクを、同じ方向に向けたという点が大きな発明になっています。お客様の成功が、私たち開発会社の成功でもあるのです。それが、ただのスローガンではなく、ビジネスモデルになっているという点が大事なポイントです。
私たちが目指しているのは、要件の予測が困難な中で、試行錯誤をしていきたいという要件に対して、長期的に開発を続けてサービスを育てていき、「ビジネスの成長」を求めているお客様に喜んで頂くことです。逆に決められたものを決められた期間に作ることは出来ません。だからこそ、スタートアップの皆さまには喜んで頂いています。
私たちは、この「納品のない受託開発」を通じて、エンジニアがいなくて困っていらっしゃるスタートアップのお客様を支援させて頂き、その結果として、私たちのお客様であるスタートアップの皆様の社会を変えたいビジョンの実現に貢献させて頂くことが出来たとすれば、それは私たちにとっても社会変革に僅かながらでも寄与できるということで、大変嬉しく思うのです。
「納品のない受託開発」の事例は、こちらからもご覧いただけます。