今回は、牛尾さんの記事『「Be Lazy」を極めるためには残業をしてはいけない』にインスパイアされて書きました。
私たちのように小さな会社が大きな成果を出すためには、無駄なことはしていられません。時間に対して高いパフォーマンスを出す「時間対効果」の高い働き方を徹底する必要がありますよね。
この記事では、私たちのチームで「時間対効果」を高めるために、前提においている働き方の価値観やマネジメントについて書いてみました。
目次
時間をかけすぎてはいけない
中途入社で入った人がやりがちなのが、頑張りすぎること。いや、頑張ることは良いのだけど、時間をかけて成果を出そうとしてしまう。しかし、それでは「時間対効果」で見ると低いです。
私たちのチームでは「ふりかえり」で、仕事の進め方についてメンターがレビューをしますが、最初の頃に指摘するのが、沢山働いて成果を出そうとすることについて。限られた時間の中で、どれだけ成果を上げられるかを考えるように指導します。
徹夜や夜なべして仕事すると怒られます。限られた時間の中で出来なかったとしたら、それが実力なので受け入れるしかありません。それは精神的につらいかもしれませんが、時間をかけて成果を出せば良いという考え方になるよりは良いのです。
ここが「時間対効果」の働き方の出発点です。時間が制約で、その中で成果を出すことを考えるのです。それは時間をかけるよりも、とても大変なことです。しかし、制約があるからこそ、新しい発想が出てくるのです。それがアイデアです。
ゴールを再設定して楽をする
「時間対効果」を最大にする秘訣の一つは、ゴールの再設定です。100メートル走のレースで、どれだけ努力をしても、いつか限界はくるでしょう。しかし、50メートルでゴールなんだとしてしまえば、圧倒的な勝利につながります。
私たちのチームでは「そもそも」という言葉をよく使います。何か仕事をしなければいけないとき、何か頼まれたとき、それは「そもそも」なんのためにやるのだろうか、考えるのです。そこまで遡ると、全く別のアプローチも浮かびます。
頼んだ側もゴールさえ達成すれば良いので、「そもそも」からロジカルに説明されたら受け入れます。そこは社長だから、先輩だからということのないカルチャーです。なるべく楽して勝てるなら、それに越したことはないのです。
誰も仕事で苦労してほしい訳じゃないし、100メートル走と違って、仕事にはルールなどないのだから、楽をするためのアイデアをしっかり考えた方がスマートですね。
やったほうが良いことはしない
やるかやらないか、で言えば、やった方が良いことは世の中に沢山ある。でも、それが本当にやらないといけないことかと言えば、やらなくても良いことの方が多いのが現実です。
「時間対効果」を出したいのなら、「やった方が良い」とされる程度のことはやめてしまいましょう。社内のミーティングのために立派な資料を用意することも、議事録の誤字脱字のレビューなんかも要りません。
もっとやるべきことだけにフォーカスした方が良いでしょう。
100%の品質と完成度は目指さない
パレートの法則で考えます。80%の完成度には2割の時間でよくて、残り20%を高めるために8割の時間がかかる、というものです。そうであるならば、もういっそ80%を目指してしまえば良いのです。
もし80%で確認して満足がいったなら、それで圧倒的な「時間対効果」を出したことになります。もちろんケースバイケースですが、少なくとも社内での仕事において100%を目指す必要などありません。
私たちは「遅巧よりも拙速」と言っています。そして、ザッカーバーグの言葉が有名ですね。「完璧を目指すよりまず終わらせろ(Done is better than perfect.)」
気合いや根性で頑張ることはしない
「ふりかえり」をしていると、TRY(次にやること)に「頑張る」「気をつける」などの精神論が出ることがありますが、それはNGです。人は弱いので精神論だけでは改善できる訳がないと考えているからです。
だから楽にできるような仕組みを考えます。仕組み化だったり自動化できないか考えるのです。その仕組みを作るために時間をかけたりしますが、トータルで考えると「時間対効果」が高くなるなら良いのです。
優れたプログラマの資質の一つが「怠惰であること」であり、よく使う言葉が「楽をするための苦労は厭わない」です。これも私たちのカルチャーです。
お金で解決できることはお金を使う
今は一人一台のパソコンで仕事をしていますが、もし処理時間を短くできるなら、良いコンピュータを買うべきです。貴重なのはコンピュータよりも人の時間です。仕事道具にお金をかけることは「時間対効果」を高めてくれます。
また、ソフトウェア開発を仕事にしていますが、今は世の中に多くのサービスがあります。自前のサーバよりもクラウドを使うのも一つですし、自分たちで負荷対策をするよりも、お金をかけてサーバのスペックを上げた方が「時間対効果」が高いです。
エンジニア的には作りたい気持ちがあっても、「時間対効果」で出せる生産性に比べたら、仕事ならお金で解決すべきなのです。趣味はまた別です。
抱え込まずにさっさと相談しよう
中途入社した人の最初の壁は「相談しにくい」ということです。プライドもあるでしょうし、忙しそうなメンバーの時間を取ることも気がひけるというのもわかります。しかし、そこはさっさと相談した方がチームで見た生産性は高まります。
メンバーの全員にチーム全体の生産性という意識があれば、相談に乗ることはマイナスになりません。全体の生産性を高めた方がいいし、相談に乗った相手が早く頼もしい仲間になってくれた方が嬉しいからです。
「時間対効果」を短期的な視点で見ないことです。瞬間的な効果は下がっても、仕組み化と同じトータルで見たときに「時間対効果」が高まれば良いのです。
過剰な礼儀や儀式はいらない
社内に限って言えば、チャットで会話するときに「お疲れ様です」から始める必要なんてないし、IDでメンションするときなど呼び捨てですし、普通に呼ぶときも肩書きでは呼ばず、ニックネームやさん付けで呼び、過剰な敬語は使いません。
サッカーなどのチームスポーツをするとき、ピッチの中で敬語を使ったり、上下関係を気にしていたら、スピード感は失われてしまうでしょう。それと同じことで、「時間対効果」を意識するなら、余計な気遣いは無用です。
もちろん、前提には互いに認め合いリスペクトする気持ちがなければ成立しませんが、儀礼より成果を出すことの方が大事だという共通認識があります。
「時間対効果」のために何が大事か共有しているか
ここで書いた働き方は、もしかすると社会一般の会社で良しとされている常識とは違っているかもしれません。しかし、常識にこだわっていては高い「時間対効果」を出すことなどできません。
こうした「時間対効果」を大事にした働き方をしていく上で、マネジメントとしてすべきことは、仕事が早い人を称賛し、残業する人はダサいというカルチャーにすることです。なるべく楽した人が偉いんだという共通の価値観を持つことです。
私たちは「ふりかえり」を通じて、この考え方を伝えていきます。価値観はマニュアルを読んで学べるものではなく、自分で体験して初めて気付くものだからです。
私たちが「時間対効果」で発揮したいものは「良いソフトウェアを作ること」です。それが最も大事で、それさえ達成できれば、それ以外のことは大したことはないのです。