硬い組織よりも、折れない組織づくり 〜 チームのレジリエンスを高めるザッソウ

仕事が多様化して複雑になり、成果を出すために組織やマネジメントの変化が求められています。そんな時代において「チームの強さ」とは一体どのようなものでしょうか。

これまでであれば、ミスをなるべく減らすための徹底した管理や、売上や利益、営業成績や契約件数などといったわかりやすい指標が、チームの強さをあらわすものだったのかもしれません。

しかし、変化が激しく不確実性が高い現代においては、ミスや失敗をしないということはありえません。たった1つの指標に根ざした強みの設計をしてしまえば変化に対応できずに、むしろ強みだったものが一変して大きな負債になってしまうことさえあります。

本稿では、これからの時代における本当に強いチームとは何かを考えます。(ちなみに、書籍「ザッソウ」から最終稿に残らなかった原稿から再構成しました。ザッソウ本も合わせて、ご覧頂けると幸いです。)

これからのチームにも必要な「レジリエンス」

寛容さが足りない社会や会社の中で、たった一度の失敗さえ許されない状況に置かれ、ストレスに耐えながら働いていると、強くあろうと思えば思うほど、いつかポッキリと心が折れてしまうかもしれません。

それに対抗するには「鋼のような強い心を持て」ということではなく、あえて柔軟な心持ちでいることです。しなやかな心でいることで折れずに済むというのは、高層建築物が地震の際にあえて揺れるように設計していることに似ています。

そうした問題に対する柔軟さ、失敗に対する寛容さ、落ち込んでも回復できる力を「レジリエンス」といい、ストレスの多い社会で求められる個人の資質として注目されるようになりました。 ただ、レジリエンスは個人にだけ必要なわけではありません。チームとしてもレジリエンスがある方が、本当の意味で強いチームといえるのです。

いま新規事業に取り組む企業は多くありますが、成功するのはごく少数です。それも一度の挑戦でうまくいくほど甘い世界ではありません。何度かの挑戦と失敗を経て、ノウハウを得たり勘所をつかむことで、かろうじて成功する事業が出てくるのです。

新規事業の特徴は、芽が出るまで進捗はずっとゼロのままであり、その中で何度も挑戦して、何度か失敗するものであるということです。ここで求められるのは、ひたすら我慢することや、がむしゃらに何も考えずに取り組む力ではなくて、成功に至るまで創意工夫を重ねて試行錯誤を続けていけることです。

多少の失敗があってもへこたれない、そんな「折れない強さ」こそがチームには必要です。すなわちレジリエンスの高いチームこそが成功に近づけるのです。

チームの「レジリエンス」を高めるザッソウ

レジリエンスとは、挫折や失敗がないことや、何があっても強くあるということではありません。むしろ、何か失敗をしてしまったときに、どれだけ前向きに立ち直ることができるか、そこから学びを得ることができるか、ということです。

たとえば、プロジェクトを進めているとトラブルが起きてしまうことは当然あります。スケジュールが遅延して約束した納期に間に合わない、情報セキュリティの問題が発生した、顧客からクレームがきた、急に社員がいなくなって連絡がとれなくなった……

そんな場面においてチームにまとまりがないとしたら、その局面を乗り越えることなど決してできません。チームとしての助け合いが本当に求められるのは、こうしたトラブルに直面したイザというときです。ただ、イザという場面がきてからチームビルディングをしていたら間に合うはずがありません。

普段からの関係性があるからこそ、トラブル時に一致団結できるのです。それに何か困った状況にある仲間を助けようと思うのは、そこに関係性があるからです。人間である限り、知らない人と知っている人の両方が困っていたら、やはり知っている人を助けようと思ってしまうものです。

そうした人の関係性をつくるためにも「ザッソウ(雑談+相談)」は有効です。

前向きなチームを作るのはザッソウ

大変な状況に追い込まれると、どうしてもチームの雰囲気が悪くなってしまいます。悲壮感が漂い始めたプロジェクトは、刻一刻とその深刻さを増し、ネガティブなことしか考えられなくなります。そんなときこそ、仲間と雑談・相談をし合うことで、前向きな空気にすることができます。

とくにプロジェクトのマネージャやリーダーといった立場にいる人は、しばしば孤独を感じてしまうことがあります。役割上プロジェクトの責任を一身に背負い、最終決定を下していかないといけません。その決断がうまくいっても、ダメだったとしても、誰かに責任を負わせることができない立場なのです。

これは非常にストレスのかかる立場でもあります。こうした立場の人こそ自身のレジリエンスを高めるためにザッソウをするといいでしょう。

最終的に考えて決断するのはリーダー本人であっても、その置かれた状況や大変だと感じている感情などについて話をするだけで、気持ちが楽になることもあります。ここで話すべきは明確な課題に対する相談というよりも、ただ話を聞いてもらう対話であり、求めているのは共感です。

だからこそ、重大な相談事という形にするよりも、雑談のような相談、雑な相談で構わないのです。誰かに話しをしているうちに自分の中で確信できたり、納得がいったりしているうちに、前向きに進めようという気持ちになれるものです。

ザッソウで堅牢さよりも柔軟さを手に入れる

レジリエンスのあるチームでいるためには、どれだけ制度やルールを整備したり、目標管理をしっかりしたとしても実現することはできません。むしろ、そうした外側をしっかり守っていくような取り組みは、堅牢にはなっていきますが柔軟にはなりません。

その関係は、人間の筋肉でいえば「アウターマッスル」「インナーマッスル」に近いものです。インナーマッスルと組織マネジメントについては、以前にnoteの記事を書きました。

インナーマッスルと組織、そして働き方
https://note.com/kuranuki/n/n711cbc0a3b09

ビジョンや価値観、理念といった数字のように外側に見えないものが「組織のインナーマッスル」であり、それらを鍛えることで、外的環境の変化やトラブルが起きたときにも、柔軟さをもって対応することができるという話です。それ以外にも柔軟さをもたらすのは、組織のコミュニケーションのあり方です。

週に一度といった頻度で定例ミーティングをするのは、会議体がないよりも全然マシですが、だからといって、そこだけが話をする機会になるとコミュニケーションの単位が大きくて柔軟性は下がります。

何か困ったことがあったり、確認したら解決するようなことがあれば、すぐに「ちょっといい?」と声をかけて話ができれば、確信をもって早く進められたり、間違いがあっても早い段階で解決していけます。

柔軟さというのは関節部分が多いこと、コミュニケーションで言えば、その単位を小口化することで手に入れることができるでしょう。小口化したコミュニケーションというのは、ホウレンソウよりもザッソウということです。

では、どうすればザッソウがうまくチームで取り組むことができるのか。それは書籍をご覧ください。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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