シンプルで無駄のないプレゼン資料のつくり方 〜 能力の差を考えかたで凌駕する本当の効率とは

シンプルで無駄のないプレゼン資料のつくり方 〜 能力の差を考えかたで凌駕する本当の効率とは

このところ講演などでプレゼンテーションをする機会が多くあったので、講演資料を作ることにも段々と慣れてきました。プレゼン資料を準備するのは結構大変ですが、なるべく省エネで作って、その時間を他にまわしたいものです。

そんなプレゼン作成の悩みについて、牛尾さんがブログにされていました。

プレゼン作成の効率化について考えてみる

その記事の中で、私のプレゼン資料を褒めて頂いて、とても嬉しかったので、私のプレゼン資料のつくり方について、ブログにしてみようと思いました。私の場合、すごく時間のかかるコンセプトのフェーズと、すごく短時間で仕上げる資料作成のフェーズの2つに分けてつくります。

そこで、今回は、私なりのシンプルで無駄のないプレゼン資料のつくり方について書きました。タイトルの「シンプルで無駄のない」は、「プレゼン資料」と「つくり方」の両方にかけてみました。

Zen garden
Zen garden / Edward Dalmulder

プレゼンにおいて心がけていること

プレゼン資料作りについて書くまえに、まずはプレゼンに臨むときに私がなるべく心がけていることから始めたいと思います。

私も以前は、講演の機会などを頂くと、資料づくりに悶々と時間をかけて毎回苦しんでいました。なんとか主催者の期待に応えたいと思うし、参加者の人たちにがっかりされたくないと思って、すごく時間をかけていたと思います。

しかし、あるときに気付いたんですが、なぜ苦しむのか、なぜ時間をかけすぎてしまうのかを考えました。

なぜ時間をかけて苦しむのか、それは、自分に持っていないものや、自分の知らないことを話そうとすると、新しく考えなければいけないことや調べないといけないことが多いからなんです。それはそうですね。

そこで、私は考えかたを変えました。プレゼンの時に、もう背伸びをするのはやめようと決めました。それまで自分が考えていたことや、知っていたことを話せばよくて、それ以上に、その時点で自分にないものやわからないことは話さないようにしようと。

虚勢をはることをやめました。結局、そのときの自分に出せないものは出せないし、たとえ何か調べて準備したとしても、それは自分の言葉ではなく借り物でしかありません。聞きにくる人は、そんな言葉を聞きたい訳ではない筈です。

もちろん、聴衆の期待に応えられなかったら苦しいですし、しょうもないプレゼンをして自己嫌悪に陥るのも嫌なことです。しかし、虚勢を張るのではなく、その時の自分で全力を出して駄目だったら、仕方ないと思うしかないんです。まぁ、オファーを出した開催側が悪かったんだと思うくらいで良いと思います。

そう考えるようになって、プレゼンの準備がとても楽になりました。余計な資料を作る必要はありませんし、その資料はすべて自分から出たものであれば、本番の発表のときに脚本なんて必要ありません。

プレゼンの発表も普段考えていることを話せば良いだけなので、時間配分も大体の目安さえ用意しておけば柔軟に調整できるし、足りなければアドリブで増やせば良いんです。普段、自分が話すことを話せば良いんですね。

まず、こんな風に心がけるだけで、生産性は驚くほど変わります。プレゼン作りの小手先のテクニックをどれだけ磨くよりも、本当の効率を得ることができます。能力の差を考えかたで凌駕できる訳です。

私の考える良いプレゼンテーション

私が考える良いプレゼン資料というのはどういうものか考えてみました。

自分が納得のいくプレゼン資料の条件は、ただ一つ。プレゼンの全体を通して、ストーリーとして流れが出来ていて、ロジカルに繋がっていること、です。最初から最後までスッと通る自然さが大事です。

プログラマだったからか話の筋道が通っていなければ気持ち悪いと思ってしまうのです。

プレゼンテーションを進めていく際に、スライドとスライドの間、次のスライドへ向けては、必ず自然な接続詞が入るようになっていると気持ちが良いです。それは、プレゼンを聞いている人にとっても、次へ次へと自然と誘われるように見えると思います。

その理想のプレゼンのために作るときに気をつけているのは、聴衆の人たちの頭の中を想像することです。もちろん、そのためにどんな人たちが聞くのかを知っていなければいけません。なるべく聴衆の視点になることが大事です。

聞いている人の頭の中にスライドと理解を、積み木のように順番に積みあげていくようなイメージで作ります。そこに説明が足りなかったり、ロジカルになっていなければ、うまく積み上がりません。聞いている人が段々と階段を登るようにわかっていくようなストーリーが理想です。

そうしたときに使えるフレームワークとして、私が以前に書いた記事「技術者でも出来る、非技術者にも聞いてもらえるプレゼンテーションのフレームワーク」も参考になると思います。

ここから、ようやく私のプレゼン資料のつくり方の説明ですが、私の場合、大きく分けて2つのフェーズがあります。前半は「コンセプトを考えるフェーズ」で、後半は「資料を作るフェーズ」です。

後半の「資料を作るフェーズ」では手を動かすだけになっているので、かなり速く作っていると思います。そこだけ見ると、私のプレゼン資料作りは、とても速いです。しかし、実は前半の「コンセプトを考えるフェーズ」では、わりと時間をかけています。

その前半から説明していきましょう。

コンセプトを考えるフェーズ(プレゼン資料づくり前半)

講演などのオファーを頂いて、最初に考えるのが、「タイトル」と「概要」です。実は、一番時間がかかるのはここだったりしますし、ここを乗り越えることが出来たら、もう後は楽なものだったりします。

タイトルと概要が書けるということは、中身で話すことが決まってますからね。

そのタイトルと概要を決めるためにすることは、誰が聞きに来るのか、どれくらいの人数の人が聞きに来るのか。開催側の狙いは何か、何を伝えられたら講演としては成功か。といったところを探っていきます。

なので、開催側があまり意図をもたずに手放しでオファーしてこられたら、割と困ります。ガチガチに決めてこられても困るんですが、一方的な感じではなく、講演内容を一緒に考えてもらえるところが嬉しいです。

ともあれ、その段階でかなり考えます。そのタイミングでは、私の場合では、あまり紙もパソコンも使いません。ターゲットとオファー頂いた内容をメモしたものを読んで、頭の中で考える訳です。

そして、ここが一番時間がかかります。ただ、時間がかかるといっても、ずっと考えている訳ではなくて、普段の仕事と生活をしながら、なんとなく頭のどこかで考えておきます。そうすると、ふとアイデアがおりてきます。私はシャワーを浴びてるときが多いですね。

そうしておりてきたアイデアを少しずつメモの形で、テキストにして残していきます。私の経験では、こういうのはじっくりと集中して時間をとっても出てこなくて、細切れの時間の中でぼんやり考えてるときにアイデアが出ます。

そうして、観点とコンセプトを自分の中で練っていって、メモを集めたテキストが出来上がります。それを、もとにしてタイトルと概要を考える訳です。その時点で、「伝えたいこと」「伝わっていたいこと」が何かを明確になっていれば、タイトルと概要が決まります。

プレゼン資料の準備としては、ここまで出来れば、もう出来たも同然なので、私の場合、本番の日の近くまで放置して、このことは忘れてしまいます。

資料を作るフェーズ(プレゼン資料づくり前半)

発表に使う資料作りに着手するのは、前日か前々日くらいに時間をあけておいて作ります。よくパワーポイントから作ってはいけない、という話がありますが、私は先ほどのメモをもとにパワーポイントを作りはじめます。

最初にするのは、自分用のテンプレートがあるので、まずはそれを用意します。これも時間短縮のポイントでしょう。毎回テンプレートから考えると時間がいくつあっても足りません。

そして、最初のスライドから作っていきます。これも私の場合ですが、この段階から、わりとちゃんと綺麗につくります。2枚、3枚と作っていきながら、話の筋道がちゃんとしているかどうかを確認するために、最初から戻って、自分で読みながら、作っていきます。

新しいスライドを作るときに、1枚目から読み直して、話す内容を確認してから、その次のスライドを作ります。枚数の多いプレゼンになると、後半のスライドを追加するときは、かなり大変になってくるんですが、何度も読み返すし、何度も気になる所を直していくので、最初の方から、徐々に洗練されていきます。

読み返していて途中で思いついたら、新しいスライドを差し込むなんてこともしますし、順番を入れ替えたりもします。なので、とにかく、新しいスライドを作る前に最初から読み返すことをしています。

余談ですが、プログラミングで言えば、リファクタリングしてから、新しい機能にとりかかる、みたいな感覚かもしれません。実はブログを書く時も同じで、続きの文章を書く時は、とにかく最初から読み返してから追記してます。

そうこうして作っていくと、最後のスライドを入れてる頃には、プレゼンの中身も大体頭の中に入っているし、スライド全体もロジカルに洗練されているし、ということで、ほぼ完成といえます。仕上げとして、全体の講演時間にあわせて、どれ位の枚数でどこまで話す、という目安をつけていきます。

あとは、本番での緊張を楽しみながらプレゼンすればOKです。

そのプレゼンの目的は何か?

プレゼンテーションをするときの目的は一体なんでしょうか。キレイなスライドを作ることではありません。聴衆に自分の考えを伝えることです。伝われば目的を達したと言えます。だとしたら、あまり細部に拘りすぎる必要は無い、と割り切ってしまっても良いと思っています。

時間対効果を考えて、自分の時間を大切にしたいものです。もっとすべきことが沢山あるはずです。プレゼンテーションの本番は、発表のときなので、その発表自体がうまくいけば、スライドは多少だめでもなんとかなります。

人前で話すときに大事なことは、普段から考えておくことなんでしょう。普段から考えていることを話すだけであれば、大変なことはなにもありません。質疑応答も怖くはありません。

そして、プレゼンテーションをするのであれば、もっとも大事な時間は何でしょうか?それは、プレゼンテーションをしている時間です。プレゼン資料を準備する時間も大切ですが、本当に大切なのは、プレゼンテーションで聴いてくれている人たちに伝えている時間です。そこに集中しましょう。

かっこつけなくなってから、プレゼンがとても楽になりました。シンプルな資料というのは、着飾らない気持ちを持つことから産まれるような気がします。

プレゼンは、今の自分を見せる舞台です。プレゼンするときに、着飾らなくてもいいように普段から考える癖をつけておきたいものですね。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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