私は今でこそ経営の仕事をしていますが、もともとはプログラマ(今も心はプログラマ)で、その後、アジャイル開発の実践のためにプロジェクトマネージャをしたり、社内ベンチャーを始めてマーケティングを学んだりと、立場を変えてきました。
これまで沢山の本を読んできて、どの本からも学ぶところがあるので何冊かだけを選ぶのは難しいのですが、そんな立場を変えてきた私がそれぞれの節目や転機のタイミングで読んで大きく影響を受けた本を5冊だけピックアップしてみました。
目次
達人プログラマー システム開発の職人から名匠への道
本来の職人としてのプログラマのあり方、姿勢などを学ぶことができる1冊。これは技術書ではなく、技術者として生きていくため、達人になるための考えかたを記した本です。
私は社会人になって間もない時期に、この本に出会ったことで大変な影響を受けました。ここに書かれた具体的かつ実践的なアドバイスはプログラマとして熟達したいと願っていた当時の私にとって大きな指針となってくれました。
今、改めて読んでみると技術的な部分については古くなっている部分もありますが、その背景にある考え方や哲学については今でも通用することばかりで、本書のエッセンスを抜き出した本があれば、と思うほどです。
この本で学んだ考え続ける姿勢や仕事に臨む哲学などは、私が経営する会社に流れる「職人集団を目指す」というDNAに受け継がれているように思います。
ピープルウェア ヤル気こそプロジェクト成功の鍵
プロジェクトや組織のマネジメントをする立場になった人なら絶対に読んでほしい1冊。マネジメントに関するテクニックやメソッドではなく、その本質を学ぶことのできる本です。
達人プログラマを目指しながらも、ソフトウェア開発の世界に起きているプロジェクトの失敗や開発プロセスの理不尽さに疑問を持っていた時に出会い、感銘を受けたのがこの本です。マネジメントを任されつつあった当時の私の教科書になりました。
「ソフトウェア開発上の問題の多くは、技術的というより社会学的なものである」というテーマのもと、人は交換不能という前提とするマネジメントの考えかたは今も私の経営を考える際のベースとなっています。
ソフトウェアは機械的に作ることのできるものではなく、人が作るものなので、人を大切にしなければ良いソフトウェアができることはありません。そして、私たちはソフトウェアの会社なのだから、人を大事にするという経営をするのは当然なのです。
革新的ソフトウェア企業の作り方 Eric Sink on the Business of Software
この著者と同じプログラマ出身で企業経営をしている私にとっての経営指南書になった1冊。急成長しない小さなソフトウェア会社でも幸せに働くことができるというビジョンを得た本です。
本書に書かれた内容は、会社の経営やマーケティングについてのことにも関わらず、プログラマにとっても読みやすく理解しやすいものになっているため、経営を考えるようになった当時の私にとって非常に参考になった本でした。
ソフトウェア開発が好きで、プログラマを天職だと思う人たちが集まって、そんな好きな仕事を長く続けていくことをビジョンとしている私たちの会社のルーツの一つが、この本だったのかもしれません。
以前、このブログでも紹介しました。
小さなチーム、大きな仕事
37signals(現Basecamp社)というアメリカのソフトウェア企業の人たちが自分たちのチームのあり方や働き方について書いた書籍。37signalsの非常に尖っているけれども、現実的かつ論理的な哲学を知ることができます。
確か社内ベンチャーを始めようかという頃に出会った本でもあり、自分たちのワークスタイルや常識を見直していくきっかけになった本です。本書を読んで変化する勇気をもらえなければ、今のソニックガーデンはなかったかもしれません。
こちらも以前、このブログでも紹介しました。
奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ
2015年の今年に出会った本です。3000人もの社員を抱えながら、組織階層や組織図もなく、社員の自主性に任せ、それでも市場で成功し成長している、まるで奇跡の経営を実現しているブラジルのセムコ社の社長によって書かれた書籍です。
これはホラクラシーについて学んでみようと色々な本を読んでいる中で出会った1冊です。私たちが目指す経営に近いことをしていながらも、人数の壁を超えて実現している企業があると知れて、私にとって「脳のブレーキ」が壊れました。
こちらの私の記事の中で少し紹介しています。
ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書 大賞
今回、オススメの書籍を選ぶきっかけは「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書 大賞 2016」のゲスト審査員に選んで頂いたからでした。
昨年の「ITエンジニアに読んでほしい!技術書・ビジネス書 大賞」では、ビジネス書部門で拙著「納品をなくせばうまくいく」を大賞に選んで頂けたこともあって、今回は審査員として貢献できればと思います。