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私たちソニックガーデンでは、かねてより全社でリモートワークに取り組んできました。今では24名いる常勤メンバーの半数以上は地方に住む在宅勤務者です。採用応募の殆ども地方からであるため、今後もリモートワーカーは増えていくでしょう。

それでも、これまでは東京の渋谷にオフィスを構えていました。しかし、2016年6月末の契約更新の際に解約を行い、次の移転先は用意せず物理的な「オフィス」という概念を一旦やめて、複数のワークプレイスに分散させることにしました。

今回の物理オフィスをなくした取り組みは、TechWaveでも記事にして頂きました。ありがとうございます。それがこちらの記事。「本日でオフィスなくします」自律的リモートワーク先進企業の門出 【@maskin】

本記事では、その補足として、私たちがオフィスをなくした理由と狙い、そして、新しい分散型ワークプレイスのコンセプトと実践について書きました。

リモートワーカーをマイノリティのままにしない

私たちのワークスタイルの根底にあるのは、「全員リモートワーク」という考え方です。東京近郊に住んでいて事務所へ通える人も、地方に住んでいて通えない人も、共通のワークスタイルで働くようにしています。

在宅勤務を例外的に一部の人だけに認める、という訳ではなく、全員が同じワークスタイルにすることが、うまくいくための重要なポイントだと感じています。つまり、リモートワーカー側をマイノリティにしない、ということです。

そのため、普段は「Remotty」を使って、ログインすると出社したことになる「論理出社」の概念で働いています。これによって、働く場所が家だろうと事務所だろうと関係なく、一緒に働くことができます。

物理オフィスをなくすまでの検討の経緯

この「論理出社」のワークスタイルが定着してきたおかげで、渋谷に借りていたオフィスに滞在している人の数がかなり減りました。渋谷神南のオフィスを借りたのは3年前で、その前の移転から、わずか1年での移転だったため、次は長くいれるように大きめのところを借りようと選んだのですが・・・

それから3年が経ち、おかげさまで借りた当時に想定していた位の会社規模と人数には成長できたのですが、リモートワークが当たり前となったために、オフィスにいる人の数はむしろ減ってしまったのです。これは、想定外でした。

同じだけの広さのオフィスを維持するのは無駄なので、契約更新と同時に移転を考えましたが、そもそも本当にオフィスらしいオフィスがいるのか、と、そこから考えるのがソニックガーデンらしいところです。

通勤して勤怠管理をするためのオフィスはいらない。だけど、「働きやすさ」や生産性を高めるために必要なものは用意すれば良い。そこで、備品を借りるような気持ちで、ワークプレイスを3つ用意することにしました。

その1:住居型ワークプレイス in 自由が丘

ワークプレイス1つ目が、自由が丘にある大きめのマンションの1室を借りました。1室と言いつつ、中は4部屋ある形になっています。

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前のオフィスは壁のないオープンスペースにしたため、打ち合わせでの会話の混線に困っていました。リアルな打ち合わせならよかったのですが、オンライン会議が増えるに従い、他の打ち合わせの声が入ってしまう問題が起きていました。ここでは部屋が分かれているので、その問題はクリアされます。

自由が丘ワークプレイス(WP)では、住居型にして宿泊設備を用意するようにしました。地方に住む社員たちが、出張や家族の旅行などに自由に使えるように準備しています。いわゆる「保養所」みたいなもので、通常なら地方の別荘地などに保養所を用意するところ、リモートワーカーたちは全国各地にいるので、東京に保養所を用意したという形です。言ってみれば、社員専用の"AirBnb"です。

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風呂もキッチンも完備しているので、簡易な合宿も実施できますし、外食に行かなくてもランチを作れたり、ホームパーティー的な宴会をすることもできます。かなりアットホームな感じに仕上がっています。また、新卒採用した弟子たちは、一人前になるまでリモートワークは原則禁止のため、この自由が丘WPに通うようになります。

自由が丘という立地のチョイスは、メンバーたちの自宅からの距離が近いところを検討した結果です。社長である私だけが、以前よりも遠くなってしまうのですが、私の都合よりもメンバーの働きやすさを優先した結果です。私たちの経営スタイルと同じで、社長のいる場所が会社の中心という訳ではないのです。

その2:職住近接ワークプレイス in 岡山県

もう一つのワークプレイスは、岡山県に用意しました。ワークプレイスと言っても、ただのマンスリー契約のマンションです。

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これまで岡山県で在宅勤務をしていたメンバーが、家にいるよりも仕事のしやすい快適な環境が必要だ、ということで借りることにしました。岡山県には、ソニックガーデンのメンバーはもう1人いたり、顧問デザイナーもいたりするので、その人たちにとってのワークプレイスでもあります。

岡山ワークプレイスのコンセプトは「職住近接」です。家よりも働きやすい場所のために、結局、長い移動時間があるとしたら本末転倒です。ベストなのは、家から歩いてすぐの距離にワークプレイスがあることです。ランチは家に帰れる距離です。(ちなみに、自由が丘WPは、副社長の家から数分なので、あちらも職住近接)

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取引先のお客様などの来客は想定しておらず、基本的には作業場として使うことになりますが、一応ロフトもあるので、気心の知れたメンバー同士などであれば、泊まることもできます。

ソニックガーデンとしては、トップクラスのエンジニアが働きやすさと生産性を追求するためであれば、そのための経費を惜しむことはしません。プロスポーツ選手と同じようにトップクラスになれば得られる権利であり、それだけの成果を出してくれることを期待し、それに応えてくれるから実現しています。

その3:住み込みワークプレイス in 町田市

3つ目のワークプレイスは、東京の都心から少し離れた町田市に用意しました。

ここは少し変わっていて、普段はソニックガーデンの弟子の一人が住むことになっています。弟子3年目になって「兄弟子」というキャリアアップをしたので、リモートワークの練習を始めるためと、町田の近くに住むトップクラスのエンジニアにとってのワークプレイスにするため、の2つの目的で用意しました。

元々は、岡山の職住近接ワークプレイスと同じ発想で探していたのですが、ちょうど兄弟子になる彼も自由が丘に通うには遠くなるため引越しを検討していて、それならば、会社から補助を出して、ワークプレイス付きの大きな部屋を借りるとどうだろう、というアイデアが生まれました。

そのため、ある意味で「住み込み」のスタイルで働くことになります。先輩メンバーが定期的にワークプレイスを利用するために通ってくれるので、リモートワークとは言っても、放置することはなく、生身のコミュニケーションも取り入れながら、仕事をすることが出来ます。これで、リモートワークの練習にもなります。

自由が丘の「住居型ワークプレイス」、岡山の「職住近接ワークプレイス」、町田市の「住み込みワークプレイス」の3つのワークプレイスから実験を始めていきます。

オフィスのない問題を、テクノロジーで解決する

実際のところ、オフィスがない状態で困ることは何でしょうか。私たちは、どの問題もテクノロジーの力で解決できると考えています。

例えば、お客様とのミーティング。これは、ほとんどのお客様との定例でのミーティングを、オンライン会議に移行しています。オンライン会議が初めて同士だと難しい場面があるかもしれませんが、私たちは慣れていますからサポートしていきますし、そうして出来るようになると、それまで慣れてなかったお客様たちも、オンライン会議の楽さや便利さに感動して、積極的に取り入れてくださいます。

毎週の打ち合わせであれば、オンライン会議にしてサッと終わらせてしまって、一緒に飲みに行くとか懇親するタイミングだけ会えば十分ですし、その機会は4半期に一度か半年に一度あれば十分なのです。そして、その際は今後は自由が丘ワークプレイスに来ていただければ、食事を振る舞うなどのおもてなしもすることが出来ます。その方が良い懇親になりそうな予感はしています。

営業はどうするのでしょうか。私たちは基本的に客先に営業訪問をしていません。全て、お問い合わせを頂く形をとっています。そして、お問い合わせを頂いての初回の相談から、オンライン会議にさせて頂いています。"appear.in"や"Google Hangout"を使えば、事前にコンタクトの承認などは不要なため、非常にスムースに初回打ち合わせができます。

お問い合わせからの初回の打ち合わせでは、お互いにミスマッチだったりすることがあって、次につながらない時があります。そうした時に、オンライン会議であれば、お互いに時間の無駄にならずにサッと終わらせることもできることも利点です。

社内で言えば、働く人同士のチームワークのためのコミュニケーション、これもRemottyを使った「論理出社」で問題なく実現できます。内部的には書類などはなく、完全にペーパーレスで情報は電子化されているため、そこにオフィスの必要性はありません。

分散型の経営だから、物理的にも中央集権をやめる

私たちは、セルフマネジメントできる人材で構成されたチームを志向しており、メンバーの誰もが自主的に納得感のある仕事だけをすることで、ナレッジワーカーにとって高い生産性を実現しようと考えてきました。

そのため、社内にヒエラルキーで構成された組織図などなく、指示命令をするラインもありません。経営にしても、経営者に一極集中をするのではなく、会社全体に意思決定や権限を分散させることで、ボトルネックが生まれないようにしてきました。それもチームとして高い生産性を出すために、です。

そのように、論理的には分散型でフラット、各自が自律的に動くことで成り立つようにしているのだから、物理的なオフィスが中心にあって、地方から繋ぐというスタイルは、実態に即さなくなりました。中央集権の象徴になりがちな「物理的なオフィス」というものをなくしてしまうこと、これが論理的な本質を表した新しい会社の形になると考えました。