営業担当ゼロ人・広告宣伝費ゼロ円でも行列ができるマーケティングの秘密

営業担当ゼロ人・広告宣伝費ゼロ円でも行列ができるマーケティングの秘密

Queue by a Wall / garryknight

「納品のない受託開発」でよく聞かれることに「どうやって顧客を説得するのか?」「顧客をどうやって見つけているのか?」という2つの質問があります。

実はこの2つの質問に対する回答は1つで「お客様から見つけてもらうから説得はいらない」ということになります。一体どういうことでしょうか。この記事では、私たちが行っているマーケティングについて紹介します。

なぜ行列ができるのか?

おかげさまで納品のない受託開発へのお問い合わせを非常にたくさん頂いています。ありがとうございます。

今の私たちだけでは対応できないほどご相談を頂いていて、なんとかしたいと頑張ってはいますが、どうしてもお待ち頂くかお断りせざるを得ない状況になっています。それでも是非に、と待ってくださるお客さまもいて、本当にありがたいことです。

もしかすると普通の会社や経営者であれば、そこで大きく人を募集して急拡大を狙うこともあるのかもしれませんが、案件よりも人を優先する経営哲学の私たちは、その選択をしないのです。

私たちがお客さまへ提供する価値の一つが「本当に優秀なエンジニアが揃っていること」であり、そのために採用と教育を慎重に時間をかけて行っています。そこを妥協して人を入れても、お客さまへの価値が下がってしまうだけなので、本当にいい人が準備できるまでお待ち頂くしかないのです。

また、社員の皆にも協力してもらい、出来る限り多くのお客さまを担当してもらっていますが、それでもゆとりを無くすほど案件を詰め込むことはしません。事業拡大のために既存のお客さまへのサービス品質を落としてしまったら、本末転倒だからです。

そうしたこともあって、今は行列ができてしまっている状態です。経営者としてはもちろん心苦しいですし、より多くのお客さまを助けたいので、そのための施策は打っていますので、状況打開までお待ちください。

営業担当ゼロ人・広告宣伝費ゼロ円は本当か?

こうしたありがたい状況を作り出せたのは、運の要素も過分にしてあると思います。しかし、全てを運のおかげにしてしまうと学びがないので、次につなげるために何がよかったのか分析してみたいと思います。

私たちソニックガーデンは急成長を狙う価値観ではなく、会社はむしろ小さい方が良いとも思っていることと、継続的なビジネスをしているので無理に案件を取りに行く必要がありません。

そのため営業担当者は一人もおらず、客先に訪問して関係を築きにいくような営業活動はしていません。そもそも客先に行くことがありません。

案件が始まるのは、ウェブからのお問い合わせか、お客さまからのご紹介か、どちらかしかありませんが、そのための広告宣伝費は一切使っていません

では一体どうしているのか、疑問に思う方も多くいらっしゃいます。私たちがやっていることは、これまでのマーケティングで当たり前だと思われてきた常識を逆転の発想で、改めて考え直してみた結果なのです。

顧客を見つけるのでなく見つけてもらう

「顧客をどうやって見つけているのか?」に対する答えは、自分たちが探すのではなく、顧客に見つけてもらえるようにしている、ということです。

今の時代、何か買い物をするときや誰かに依頼するとき、必ずインターネットで評判を調べます。特に高額なものになればなるほど、事前にしっかりと自分で調べるはずです。そしてソフトウェア開発は高い買い物です。

だから私たちはなるべく沢山の情報を公開するようにしています。私のブログや会社のブログ、ウェブサイトを通じて、ノウハウや考えを公開したり、FacebookやTwitterを通じて活動やポリシーを紹介することを続けています。

インターネットでビジネスをしていくときに、情報発信をしないことは存在していないことと同義です。またウェブサイトも、作って放置すれば、それもすぐに伝わります。最終更新日が1年前の企業へ問い合わせをする気は起きないですよね。

つまり継続的な情報発信が大事なのです。常に新しい情報を出し続けるしかありません。そうした継続的な情報発信が、たとえ今すぐにビジネスにならなくても、覚えてくれている人たちが増えることで、いつか身を結ぶことになるはずです。

お問い合わせからお客さまのありがたい点は「納品のない受託開発」について説得する必要がなくなることです。私たちのウェブサイトでは、自分たちが出来ることと出来ないことを明記しているので、改めて説得する必要などないのです。

ターゲットやキーワードを絞りすぎない

これまでのマーケティングでは最初に「ターゲットは誰か」と考えます。しかし、私たちが扱うのは「ITで実現する問題解決」です。解決すべき問題は文脈に依存しており、その文脈は非常に多種多様です。そのためターゲットを絞るのは諦めました。

そこで取り組んでいるのは「私たちがどんな思いで始めて、どんな価値観で仕事をして、どんな社会を目指しているのか」といったことを伝えることです。技術力やサービス内容も大事ですが、それよりも思想や哲学について語るようにしています。

自分たちの目指すビジョンや価値観をハッキリと示すことで、共感してもらえる方もいれば、反感を買うこともあります。反感はつらいですが、それで良いのです。ファンとアンチがいることがマーケティングの第1歩です。

私たちが発信した内容に共感してもらえた方たちが結果としてターゲットだったと考えています。もしターゲットを先に考えると、自分たちの思いや価値観を捻じ曲げてしまうことになりかねず、そんな姿勢では共感してもらうことなどできません。

またコンテンツの内容では、検索キーワードを重視していません。もし顧客自身が今すぐに欲しているものが言葉でわかっているなら検索できるでしょうが、簡単に検索できるものはコモディティ化しやすいものですし、見つけてすぐに買ってもらうものでもありません。

だから、検索やSEOからの集客に頼りすぎなくて良いと考えました。継続的に情報発信の努力を続けていくことでしか認知度は広げていくことはできないし、それができる企業だけがお客さまに選ばれる、むしろそれでいいのではないでしょうか。

企業である前に人であることを表現する

企業向けのビジネスをしているならば、発信する情報はちゃんとしているべきだし、そうした印象は伝わります。ただし、真摯さは必要ですが、堅苦しさは必要ありません。堅苦しさは、そこから生身の人の気配を消してしまいます

これも私たちの仕事は何か?を考えると、どうすればいいか見えてきます。私たちは誰かの難しい問題を顧問プログラマとして責任をもって解決してお付き合いしていくことをビジネスとしています。誰がするのか、という点はとても重要なのです。

そのために私たちの方針としては、なるべく中の人の顔を出すこと、個性を出していくことを考えてやっています。企業からの発信だからといって、誰が書いても同じような内容になるものだったら、他の企業との差別化にもなりません。

とはいえ会社ブログや社長ブログで、なんでもない日常や役に立たない自己満足のコンテンツばかりだと意味はありません。「自分たちは何者だと覚えてもらいたいのか」を考えた一貫性のあるものでなければ、効果は薄いでしょう。

堅苦しすぎず、内輪ネタにもしない、このさじ加減は非常に難しいです。いきなりできるようにはならないので、経験を積むしかないでしょう。そのためにも、まずは情報発信を始めるべきなのです。始めなければうまくはなりません。

また、効率を求め過ぎないことも大事なことです。効率を求めて、コンテンツ会社に丸投げなどしてしまうと、そこから人の顔が消えてしまいます。足りないスキルはアウトソースしても、コンテンツそのものは自分たちで取り組みます。魂を込めれば伝わるものです。

まとめ:お客さまである前に好きになってもらう

企業でやっているマーケティングでよく言われるのは、見込み顧客を有望顧客へ育てて成約に結びつける、と言ったりします。しかし、私はどうしても、その「育てる(ナーチャリング)」という世界観が好きじゃなかったんですね。

それって、自分たちのお客さまをお金の流れにしか見てない気がするのです。仕事として数を稼ぐマーケティングをしようとすると、そうなってしまうのかもしれませんが、少なくても良いからお客さま自身の意思で心から私たちを選んでもらいたいと思っていました。

そこで試行錯誤した結果、マーケティング的に正しいかどうかはわかりませんが、今のスタイルに行き着きました。

私たちがやっているマーケティングは、まずは広く発信することで多くの人に知ってもらうこと、そして継続的に発信することで覚えてもらうこと、その上で思いに共感してもらって好きになってもらうことを使命としてやっています。

ドラッカー曰く「マーケティングの究極の目的は、セリングを不必要とすることである」ということですが、そのために私たちは、まずは私たちのことを好きになってもらうことから始めているのです。そんな関係から仕事につながるとしたら、どちらも幸せなことだと思いませんか?

私たちのお問い合わせから始まるマーケティングは、こんな形で取り組んでいます。次回の記事では、口コミや紹介からのお仕事につながるマーケティングについて、書こうと思います。

続きを公開しました。 → 新規顧客の獲得より既存顧客を大事にするマーケティングでチームは強くなる

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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