書評:グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

書評:グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

本書は、日本ではあまり有名でないグレイトフル・デッドという1960年代にアメリカ西海岸でうまれ、ビートルズやストーンズよりも大きな市場を作ったというバンドの活動を通じて、最新のマーケティングを学ぼうというビジネス書です。

TwitterやFacebookで話題になっていたので興味は持っていたのですが、またイロモノなのかなぁと敬遠してましたが、違ってました。割と硬派な内容で、無理矢理こじつけた訳でなく、ちゃんとしたマーケティングの本でした。

しかも、フリーミアムやバイラルなどといった最近のウェブ界隈で行われている最先端のマーケティングをインターネットの無い時代にやっていたという話で、グレイトフル・デッドの活動を紹介すると共に、事例としてDropboxや、Yコンビネーター、Google、MySQL、Mashable、Amazonなどの話が出てきます。ここに並んでいる名前を見ているだけで読みたくなりますよね。

グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ

本書で紹介されているマーケティングは、実際はこうだったら良いのになぁと思ってしまうようなマーケティングを実際にやってみた様子が紹介されています。これまでのマーケティングの常識に従っていたら出来ないことをやってのける彼らにしびれます。

本書には共感出来るところが沢山ありましたが、中でも私がぐっときたところから、学んだことを幾つか残しておきます。

1章 ユニークなビジネスモデルをつくろう

p.62「グレイトフル・デッドは、ビジネスモデルの革新が、製品の革新と同じかそれ以上に重要であることを教えてくれる。」

彼らは、業界の常識だったアルバム販売による売上を目指すのではなく、ライブから収入を得ることに全力を注ぐというビジネスモデルの転換をしたそうです。それによって、新たな「ファン体験」を生み出すことができ、ライバルとの差別化だけでなく、バンドとファンの両方が連鎖的に恩恵をうけることが出来るようになった、と。

ここから学べることは、業界の常識に闇雲に従うのではなく、自社と顧客にとって本当の利益は何かを考え、それを実行に移すということだと思います。

4章 ありのままの自分でいよう

p.92「ファンは、グレイトフル・デッドの”偽りのない本物らしさ”に親しみを覚えた」

勘違いしがちだけど、企業としての活動は「ちゃんと」してないといけないと思い込んでるところがある。プレスリリースや広報などは特に。しかし、ちゃんとすればするほど個性がなくなってしまうのも確かで、そうでなくて自分たち自身の個性を出して良いんだということを教えてくれました。

5章 「実験」を繰り返す

p.104「グレイトフル・デッドは、リスクを取り、新しいことに挑み、失敗と成功から学び、前進し続けることを教えてくれる。」

失敗は悪いことではなく、そこから学びとって次に活かせば、それは実験なんだと言うことができる。挑戦を繰り返して、失敗から学んでいかなければ、成功は産まれないという主張は、とても共感できます。見直しのサイクルを短くして、何度も実験をしてみることが大事です。

8章 変わり者でいいじゃないか

p.133「私たちは、ある意味ではみんな変わり者なのだ。賢い会社は、変わり者を理解し、そこから市場を作り出す。」

当たり前だけど、すべての人が同じ嗜好を持つ訳ではなく好き嫌いがあって、全員に好かれるものは作り出せない。変わり者の集まりが市場になることを改めて再確認させてくれます。しかも、このインターネットの時代に本当に変わり者だけを集めたとしても、それなりの市場になるはずです。

12章 中間業者を排除しよう

p.182「グレイトフル・デッドは、自分と顧客との間にある何層もの中間業者を取り去り、顧客を直接取り込むことを教えてくれる。」

直販の方式は、本当に顧客を大事にするのならば、とても重要で、中間業者による付加価値のないマージンを搾取することを防ぐことができます。本当にその中間業者が必要かどうか考え直すべきで、今やインターネットによって様々な中間業者をなくすことが出来る時代になっています。

19章 自分が本当に好きなことをやろう

p.253「グレイトフル・デッドは、自分たちがやっていたことが本当に好きだったのでそれをやり通した。そしてもちろん、結果的に成功した。」

好きなこと、情熱を持てることを仕事にすることが、人生にとって非常に意味のあることだと思わせてくれます。そして、情熱を持って仕事をすることの方が成功する可能性が高くなることを示してくれています。

グレイトフル・デッドほどの成功までいかなくとも、好きなことを仕事にしている方が、きっとうまくいく確率は高くなるだろうし、何よりも、そうして過ごした人生の方がなんと楽しいことだろうか。

目次 こちらから引用

  • 序章 「グレイトフル・デッドのライブほど素晴らしいものはない」
  • PART ONE THE BAND バンド
  • 1章 ユニークなビジネスモデルをつくろう
  • 2章 忘れられない名前をつけよう
  • 3章 バラエティに富んだチームを作ろう
  • 4章 ありのままの自分でいよう
  • 5章 「実験」を繰り返す
  • 6章 新しい技術を取り入れよう
  • 7章 新しいカテゴリーを作ってしまおう
  • PART TWO THE FANS  ファン
  • 8章 変わり者でいいじゃないか
  • 9章 ファンを「冒険の旅」に連れ出そう
  • 10章 最前列の席はファンにあげよう
  • 11章 ファンを増やそう
  • PART THREE THE BUSINESS  ビジネス
  • 12章 中間業者を排除しよう
  • 13章 コンテンツを無料で提供しよう
  • 14章 広まりやすくしよう
  • 15章 フリーから有料のプレミアムへアップグレードしてもらおう
  • 16章 ブランドの管理をゆるくしよう
  • 17章 個人事業者と手を組もう
  • 18章 社会に恩返しをしよう
  • 19章 自分が本当に好きなことをやろう

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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