兼業のススメ〜トータルフットボールなチームを目指して

兼業のススメ〜トータルフットボールなチームを目指して

Soccer Beijing / IvanWalsh.com

人数の少ないベンチャーや小さな会社では、仕事の「かけもち」はよく発生します。SonicGardenでも同様です。

SonicGardenでプログラマは、お客様との要求開発からデータベースや画面の設計、プログラミングからクラウドでの運用、サポートなどもします。それだけでなく、会社の経営上の必要なことであれば、割となんでもしますし、案件の掛け持ちも普通にあります。

一般的には、掛け持ちや兼務は効率を落とすため悪いことだと思われていますが、私は組織にとって逆に良いことではないか、と思うようになりました。確かに、効率だけを考えたら一つの仕事だけに専任することの方が良さそうに思えます。実際に、それなりの組織になると総務や経理といった部門に分けますし、もっと大きな会社になれば人事部門、企画部門などより専門性をもった細かな部署に分かれるようになります。

しかし、そうした専門部署が会社を悪くする原因の一つではないか、と思うのです。

専門部署が無駄を生む

役割分担のしっかりした組織では、忙しそうに見えて実は暇な社員が沢山いるんです。細分化された役割と目標の中で、もし早く仕事が終わってしまったとしたらどうするか?その役割を超えて別の何かをする訳ではなく、その役割の中で品質を高めようと努力してしまうんです。世の中の仕事の大半は、80%程度の品質で済んでしまうはずですが、それ以上の品質向上を目指すのはかけるコストに対して見合う成果としては非常に小さいです。

もしExcelの見栄えを直したり、印刷物をキレイに出そうとしてる人がいたら、それは暇な人です。

実は、ソフトウェア開発でよくある「人月」の契約でも、それが起きがちなんじゃないかと思っています。発注側の意識というよりも、受注側は人数分のコストを受け取ってしまったら、他にすることもないので、それだけに専念しすぎてしまって、無駄に綺麗な仕様書とかに拘ってしまうのです。

かけもちせずに一つの役割だけでお金をもらってしまうと、それに依存せざるを得ないため、本末転倒することがおきてしまうことがあります。政治家が掛け持ちできずに選挙に当選することが仕事だと思ってしまう政治屋になるという話もよく聞きます。大企業だと、品質管理部やセキュリティ監査部といった部署がありますが、その部署の人たちにとって「取り締まること」が仕事になると、会社のパフォーマンスを落としかねなくなります。

この問題は、専門部署の人たちが真面目であればあるほど、その役割を全うしようとし過ぎて起きてしまうのです。

掛け持ちが助け合いをうむ

人がいないために、やむなく仕事のかけもちをやったりしますが、そうすると自分の役割を超えた視点を持つようになります。もちろん本業があってのことですが、組織全体のゴールは何かを常に考えていなければいけないので、お互いに助け合うようになります。それぞれの人にとって好き嫌いや得意不得意があるので、適材適所に人を配置することは大事ですが、一つだけの役割で業務分掌を決めずに、なんでもするというスタンスが助け合いの文化をつくります。

掛け持ちすると、とても忙しくなります。そこで100%の品質や成果を求めるのではなく、組織のゴールが明確に共有されてさえいれば、しなくて良いことも沢山みえてくるんです。掛け持ちしてると無駄なことをしてる余裕がなくなるんです。キレイなExcelとか用意してる暇なんて無い。大事なポイントは、すべてを100%にしないという割り切りを全員に浸透させることです。

100%を超えた掛け持ちは、ただのブラック企業の過労働になってしまいます。

また、一人に一つの役割だけしか持たないとなると、個人の目標も一つになってしまって、それに賭けるしか無いということが起きます。それが本人の頑張りだけで何とかなるのであれば良いのですが、世の中そうはいきません。掛け持ちしてれば、一つ駄目だったとしても、もう一つの方で頑張れば良いんだという気持ちも起きたりするので、精神的にも良いんじゃないかと思います。

トータルフットボールが出来るチームへ

私は、サッカーでいう「トータルフットボール」という戦術が好きで、チームとして理想的だと考えています。「全員攻撃・全員守備」の意識で、ポジションはあるにしても、ゴールのためにはお互いに遠慮しあわない。トータルフットボールは「選手一人一人が同じくらい高い技術と戦術眼を併せ持ち、なおかつかなりのスタミナが必要」ということですが、むしろ、社員にはそんな風に育ってほしいと思うし、そういうチームを目指したいと思うのです。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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