先日、業務改善とシステム開発を一緒にやってしまう「業務ハック」に関する勉強会が大阪で開催された。以前の東京での業務ハック勉強会の様子はこちら。
業務ハックの大きなポイントは、継続的なシステム改修がセットになっている点であり、一回ドカンと作って使わせるシステムと違って、現場の声を吸い上げて変えていくことができることだ。
業務とシステムの両方を同時に、そして継続的に改善をしていくことで、社内の関係性が対立から協調に変わり、それまでのルーチンワークの業務処理を、システム改修というクリエイティブな仕事に変えてしまうことが出来る。
今回の大阪での業務ハック勉強会では、一つの事例を掘り下げることで、その変化について参加者の皆さんと共有してきたので、こちらでも紹介しよう。
目次
月68時間を節約、月3日だけ出勤を実現した事例
ドイツからドリルなどを輸入販売されている会社で、倉庫管理などの業務を担当されていて、業務ハックに取り組まれた方が登壇された。通勤時間を月68時間も節約することに成功した驚異の事例だ。
その事例については、以前に、こちらの記事で書いた。会社の規模が徐々に大きくなっていったものの、業務の処理に使うのはExcelのまま。情報のタイムラグや、手動バックアップの不安などExcel管理の限界を感じて、業務ハックを行った。
会社全体を一気にシステム化するようなやり方はせず、もっとも重要な倉庫管理の部分から取り掛かった。倉庫まで行って管理システムを使っていたところ、業務の見える化と見直しを行い、クラウドの上で動くようにシステム化を実現した。
クラウド化したことで、場所に関係なく仕事が出来るようになり、倉庫の移転などに影響を受けない在宅勤務を実現することが出来たという訳だ。それも良い話だが、それよりも印象的だったのは、社内の現場が今まで以上に活性化されたという話だ。
「業務ハック」は業務担当と現場を助け合うチームに変える
今回の事例では、実際に使ってもらう現場の人たちとハンズオン形式で一緒に使い方を学んでもらうことをした。上意下達で一方的に押し付けるのではなく、操作をして詰まったら目の前でサポートをして、最初の一歩を一緒に進めたのだ。
そのハンズオンの場に、業務ハックでシステム開発を担当したエンジニアも同席してもらった。ハンズオンはエンジニアにとっては、現場の人たちが実際に使う様子を見えて、現場からの要望や声を直接きくことの出来る機会になった。
業務ハックでは継続的に改善していくので、ハンズオンで出た要望もそんなに待たせることなく改修を行うことが出来た。自分たちの言った改善要望が実際に反映されたことで、現場の人たちは非常に前向きに新しいシステムに取り組んでくれるようになった。どうすれば良くなるのか、一緒に考えてくれるようになったのだ。
往々にして、システム導入は現場に受け入れられずに失敗しがちだが、ハンズオンで一体感を作ったことと、継続的に改善されていくシステムにすることで、いわゆる「問題vs私たち」の構造を作り上げることが出来たのではないだろうか。
「業務ハック」はルーチンワークをクリエイティブに変える
業務担当の仕事が、それまでのルーチンワークから、業務ハックで改善をしていくことにシフトしていく。業務ハックで効率化されて空いた時間を、さらに業務ハックに注ぎ込むことで、良いサイクルに入ることが出来るのだ。
コンピュータが得意なことは、間違いのない繰り返しや機械的なチェックだ。そこは人間がするのではなく、コンピュータに任せてしまって、業務担当がする仕事は、業務の仕組みを考えて用意するクリエイティブな仕事に変わるのだ。
淡々と手を動かすルーチンワークの方が楽だという人もいるかもしれないが、根源的には楽しさは少ないように思う。新しいアイデアを出して、仕組みの改善をしていく仕事は、難しいかもしれないが楽しいものだ。仕事そのものが楽しくなる。
今回の事例でも、プログラミングそのものはソニックガーデンの顧問プログラマに二人三脚でお願いしつつも、kintoneの設定やカスタマイズなどは、もう自分でやってしまえるようになって、そうして仕組みを用意することが楽しいと仰っていた。
「業務ハック」で仕事が楽しくなることが本当の働き方改革
どこかの誰かが考えた業務改善を現場に導入するのではなく、業務を担当している自分たち自身で、業務を見直してシステム化もする。しかも、一度きりのシステム導入でなく、継続的な改善を続けていくのだ。押し付けよりも自主的な方が楽しいのは間違いない。
業務を担当している人にしても、システムに仕事を奪われるのではなく、自分たちがシステムを考える側にまわることで、自分自身の価値を高めていける。これからの人口減少時代において、このワークシフトは避けられないものになるだろう。
なによりも、仕事そのものが楽しくなる。ルーチンワークは労働の側面が強いが、クリエイティブワークは仕事そのものに楽しさがある。
「働き方改革」の文脈で、労働の時間を減らすことには同意するが、楽しい仕事までは減らす必要がない。労働の仕事を減らし、楽しい仕事を増やしていくことが、本当の働き方改革と言えるのではないか。
「業務ハック」は、あらゆる企業の中で行われている業務そのものを、クリエイティブな仕事に変えてしまうための取り組みでもあるのだ。日本中から、つまらないルーチンワークは無くしていきたい。
業務ハック勉強会を主催しているソニックガーデンのメンバーが書いているブログがあります。業務ハックのノウハウ、業務ハッカーとしての学びを毎日書いてます。